四周目 陸
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それからすぐに『臨時』の柱合会議が開かれた。
え、なになに?この前、柱合会議終わったばかりだよね?何の用事?
疑問に思うも、質問する暇なく杏寿郎さんに連れられ、私は再び本部へと足を踏み入れた。
必ず参加しろとは言われてないんだけどなぁ……。
御館様に『臨時の柱合会議には好きに参加していいよ』と言われていたことを、杏寿郎さんは私以上にしっかりと覚えていたらしい。
……逃げられない。臨時なら私は参加しなくてもいいんだし、任務をくれ。任務を。
鬼の頸が恋しい。
そりゃあ一緒にいられるのは嬉しいし、繋がれた手のひらも幸せでたまらない。けど他の柱もいるのよ。一般隊士の私は緊張の連続よ。胃も痛くなるというもの。
御館様の美しいお庭の中、遠い目をしてしまう。
何の用事かわからないのは、他の柱も同じなようで、不死川さんがさっそく怒りを露わにしながら悲鳴嶼さんに詰め寄っていた。
もしかして悲鳴嶼さんが呼び出した臨時の柱合会議ということ?
しかし内容的には御館様のご意志。緊急の用事だというではないか。これにはさすがの不死川さんも黙らざるを得なかった。
しのぶが柱の数を数える。冨岡さんがいない。
冨岡さん不在について、伊黒さんによる憶測での話が飛び交い、不死川さんがまた怒る。ほんと、伊黒さんと不死川さんは冨岡さんには当たりがきついんだから。
でも冨岡さんには半刻後の時刻に来るようにと、伝えてあるとのことだ。
え?なんで?協調性に欠ける水柱をついにクビに……だなんて、宇髄さんも、何言ってるの?
言っちゃ悪いけど、コミュニケーションが取りにくいくらいで柱はクビにできないでしょ。鬼殺隊はいつだって、人手不足です。
水柱はいつの時代もいた人です。いないと困る。
大体、本人がいないところでそんな話するなんて。陰口は大嫌いだ。
「陰でこそこそやるなど駄目だ!やるなら正々堂々、不平不満を言えば良かろう!!」
杏寿郎さんも私と同じ考えを持ってくれていた。便乗して発言するだなんて、出来ないけれども。代わりに小さく拍手すれば、にこりと笑顔を返され、頭を撫でられた。
「ありがとう朝緋!」
けれど、宇髄さんの言葉に賛同するのは、またも不死川さんと伊黒さん。
この二人、冨岡さんのこと嫌いすぎない?少しは、皆仲良くしなくちゃ、と言っている蜜璃を見習え。
冨岡をどう料理してやろう……ベキベキ両手を鳴らして怒りのボルテージを上げてゆく中、悲鳴嶼さんが静まるように、パァンと両手を打った。
御館様からのミッションが悲鳴嶼さんによって言い渡された。
『冨岡義勇を笑わせろ』、と。
義勇が心から笑った顔が見れたら、どんなに嬉しいだろう……って。御館様ぁぁ!どっちかっていうと、それただの愉快犯じゃないの!?
難易度高そう。……これは鮭大根が必要かな。笑顔というと、鮭大根を食べている時の、鬼さえ滅されてしまいそうなあの顔だけだもの。
ただ、そんな場面に何で私まで?私何もできないんですけど。面白いから?私面白くないよ御館様!
でもこれ多分、笑わせるのが目的じゃなくって、柱同士の交流が目的なんだろうな。
他の柱はそれぞれ程度こそ違うけど、比較的上手く交流できている。見ればわかるだろうけど杏寿郎さんなんてその筆頭だ。
なのに冨岡さんは、柱の中でいつも孤立してるみたいで。本人もそれを望み、殻に閉じこもっている節さえある。何より柱としての自覚が、自負が、そして言葉が足りていない。
交流を、という御館様の思惑には、しのぶも気がついているはず。表情が語っていた。
でも誰一人それに気がつかないんだなぁっ!これがっっ!!
額面通りに受け取って御館様の言葉を伝えた悲鳴嶼さんに、冨岡さんを笑わせるべく立ち上がる杏寿郎さんと蜜璃。そして、蜜璃に続かんと伊黒さんも立ち上がる。
不死川さんは馬鹿馬鹿しいからと、帰ろうとした。でも御館様の名前を出され、渋々残った。御館様の御言葉は?ゼッターイ!!
ちなみに笑いには詳しくないからと、悲鳴嶼さんは進行役になった。んー、僧侶ネタとかないのかな。
「しのぶちゃん……、」
「朝緋さん……。皆さんものの見事に勘違いされていらっしゃいますね」
ハァ……と、ため息を吐き出し合うと同時、宇髄さんが腕相撲勝負を持ちかけた。
全員で腕相撲をしている時にやってきた冨岡さんに勝負を挑み、勝たせて良い気分にして笑顔を引き出すという作戦のよう。
……八百長か。悪い手ではないものの、その程度で冨岡さんが笑うかどうかが疑問。
半刻後やってきた冨岡さんは、柱が会しての場にそぐわぬ腕相撲大会を前に、踵を返そうとした。しのぶが言いくるめてなかったら、本当に帰っていたと思う。
けれど、やっと行われた腕相撲の結果はーー。
上から順に、悲鳴嶼さん、宇髄さん。
僅差で、杏寿郎さん、不死川さん、そして勝たせるべき冨岡さん、蜜璃……と順位が続いた。
その下に時透君、同じくらいの強さになぜか参加させられた私。さらに下に伊黒さん、しのぶと続く。
負けず嫌いが揃う柱間で、この手の勝負は八百長なんて無理だった。
「もー!師範!何で勝っちゃうの!意味ないじゃん!?」
「むう……仕方なかろう!つい、熱くなってしまったんだ!!宇髄だ!宇髄が本気を出したせいだ!!あれを見たら俺も本気を出したくなる!!」
「えっ俺のせい!?それいうなら悲鳴嶼さんや不死川も悪いんじゃね?力入れすぎだったろ!普通に勝ってるのみたろ!」
「お二人とも人のせいにしてはいけません!!」
「すまん!だがそれよりも、朝緋もなかなかに強いな!伊黒と胡蝶に勝てたではないか!かっこいいぞ!さすが俺の朝緋だっ!!」
「話逸らさないで」
あと、この手はなんだ。場所が場所だから腰に手を回すのはやめてください杏寿郎さん。
傍では続けて私と同じように宇髄さんを叱り飛ばすしのぶが見られた。悲鳴嶼さんは今ようやく、わざと負けるという意図に気がついたようだった。ああだから瞬殺……って、気がついてなかったんかーい!
お、次は蜜璃が挑戦しに行った。むずかる弟達を笑わせてきた腕を、とくとご覧あれ!と言って。
ちょっと待て蜜璃。君の弟達と冨岡さんじゃ笑いのツボも、何より年齢も違う!!
アレはやるべきでは……!
時すでに遅し。
蜜璃が全力で冨岡さんの脇をくすぐりだした。
しかしなにもおこらない。
笑いもしない。それどころか、引いて怯えているくらいで。
我にかえり、恥ずかしさで顔を赤くしてうずくまる蜜璃を、伊黒さんが。そして私が支えた。
伊黒さんに至っては、冨岡さんを睨みつけ、斬り殺さんばかりに怒り狂っている。
「よくも甘露寺の健気な頑張りを踏み躙りおったな!お前には人の心がないのか!!」
「蜜璃ちゃん、君はよくがんばった……。
冨岡さんはきっと脇が弱点じゃないのだよ……。私なら耐えきれずに笑って転げ回っちゃうけど、あの人は色々と鈍感なのだよ……」
「伊黒さん〜朝緋ちゃん〜!!」
ちょっとひどい言いようだけど、どちらかというと私は自分の妹弟子でもあり、大事な女友達である蜜璃の味方である。冨岡さんごめん。優先順位の天秤は、いつだって蜜璃に向いてるの……。
あ、杏寿郎さんは比べようもなく最優先されるよ。
え、なになに?この前、柱合会議終わったばかりだよね?何の用事?
疑問に思うも、質問する暇なく杏寿郎さんに連れられ、私は再び本部へと足を踏み入れた。
必ず参加しろとは言われてないんだけどなぁ……。
御館様に『臨時の柱合会議には好きに参加していいよ』と言われていたことを、杏寿郎さんは私以上にしっかりと覚えていたらしい。
……逃げられない。臨時なら私は参加しなくてもいいんだし、任務をくれ。任務を。
鬼の頸が恋しい。
そりゃあ一緒にいられるのは嬉しいし、繋がれた手のひらも幸せでたまらない。けど他の柱もいるのよ。一般隊士の私は緊張の連続よ。胃も痛くなるというもの。
御館様の美しいお庭の中、遠い目をしてしまう。
何の用事かわからないのは、他の柱も同じなようで、不死川さんがさっそく怒りを露わにしながら悲鳴嶼さんに詰め寄っていた。
もしかして悲鳴嶼さんが呼び出した臨時の柱合会議ということ?
しかし内容的には御館様のご意志。緊急の用事だというではないか。これにはさすがの不死川さんも黙らざるを得なかった。
しのぶが柱の数を数える。冨岡さんがいない。
冨岡さん不在について、伊黒さんによる憶測での話が飛び交い、不死川さんがまた怒る。ほんと、伊黒さんと不死川さんは冨岡さんには当たりがきついんだから。
でも冨岡さんには半刻後の時刻に来るようにと、伝えてあるとのことだ。
え?なんで?協調性に欠ける水柱をついにクビに……だなんて、宇髄さんも、何言ってるの?
言っちゃ悪いけど、コミュニケーションが取りにくいくらいで柱はクビにできないでしょ。鬼殺隊はいつだって、人手不足です。
水柱はいつの時代もいた人です。いないと困る。
大体、本人がいないところでそんな話するなんて。陰口は大嫌いだ。
「陰でこそこそやるなど駄目だ!やるなら正々堂々、不平不満を言えば良かろう!!」
杏寿郎さんも私と同じ考えを持ってくれていた。便乗して発言するだなんて、出来ないけれども。代わりに小さく拍手すれば、にこりと笑顔を返され、頭を撫でられた。
「ありがとう朝緋!」
けれど、宇髄さんの言葉に賛同するのは、またも不死川さんと伊黒さん。
この二人、冨岡さんのこと嫌いすぎない?少しは、皆仲良くしなくちゃ、と言っている蜜璃を見習え。
冨岡をどう料理してやろう……ベキベキ両手を鳴らして怒りのボルテージを上げてゆく中、悲鳴嶼さんが静まるように、パァンと両手を打った。
御館様からのミッションが悲鳴嶼さんによって言い渡された。
『冨岡義勇を笑わせろ』、と。
義勇が心から笑った顔が見れたら、どんなに嬉しいだろう……って。御館様ぁぁ!どっちかっていうと、それただの愉快犯じゃないの!?
難易度高そう。……これは鮭大根が必要かな。笑顔というと、鮭大根を食べている時の、鬼さえ滅されてしまいそうなあの顔だけだもの。
ただ、そんな場面に何で私まで?私何もできないんですけど。面白いから?私面白くないよ御館様!
でもこれ多分、笑わせるのが目的じゃなくって、柱同士の交流が目的なんだろうな。
他の柱はそれぞれ程度こそ違うけど、比較的上手く交流できている。見ればわかるだろうけど杏寿郎さんなんてその筆頭だ。
なのに冨岡さんは、柱の中でいつも孤立してるみたいで。本人もそれを望み、殻に閉じこもっている節さえある。何より柱としての自覚が、自負が、そして言葉が足りていない。
交流を、という御館様の思惑には、しのぶも気がついているはず。表情が語っていた。
でも誰一人それに気がつかないんだなぁっ!これがっっ!!
額面通りに受け取って御館様の言葉を伝えた悲鳴嶼さんに、冨岡さんを笑わせるべく立ち上がる杏寿郎さんと蜜璃。そして、蜜璃に続かんと伊黒さんも立ち上がる。
不死川さんは馬鹿馬鹿しいからと、帰ろうとした。でも御館様の名前を出され、渋々残った。御館様の御言葉は?ゼッターイ!!
ちなみに笑いには詳しくないからと、悲鳴嶼さんは進行役になった。んー、僧侶ネタとかないのかな。
「しのぶちゃん……、」
「朝緋さん……。皆さんものの見事に勘違いされていらっしゃいますね」
ハァ……と、ため息を吐き出し合うと同時、宇髄さんが腕相撲勝負を持ちかけた。
全員で腕相撲をしている時にやってきた冨岡さんに勝負を挑み、勝たせて良い気分にして笑顔を引き出すという作戦のよう。
……八百長か。悪い手ではないものの、その程度で冨岡さんが笑うかどうかが疑問。
半刻後やってきた冨岡さんは、柱が会しての場にそぐわぬ腕相撲大会を前に、踵を返そうとした。しのぶが言いくるめてなかったら、本当に帰っていたと思う。
けれど、やっと行われた腕相撲の結果はーー。
上から順に、悲鳴嶼さん、宇髄さん。
僅差で、杏寿郎さん、不死川さん、そして勝たせるべき冨岡さん、蜜璃……と順位が続いた。
その下に時透君、同じくらいの強さになぜか参加させられた私。さらに下に伊黒さん、しのぶと続く。
負けず嫌いが揃う柱間で、この手の勝負は八百長なんて無理だった。
「もー!師範!何で勝っちゃうの!意味ないじゃん!?」
「むう……仕方なかろう!つい、熱くなってしまったんだ!!宇髄だ!宇髄が本気を出したせいだ!!あれを見たら俺も本気を出したくなる!!」
「えっ俺のせい!?それいうなら悲鳴嶼さんや不死川も悪いんじゃね?力入れすぎだったろ!普通に勝ってるのみたろ!」
「お二人とも人のせいにしてはいけません!!」
「すまん!だがそれよりも、朝緋もなかなかに強いな!伊黒と胡蝶に勝てたではないか!かっこいいぞ!さすが俺の朝緋だっ!!」
「話逸らさないで」
あと、この手はなんだ。場所が場所だから腰に手を回すのはやめてください杏寿郎さん。
傍では続けて私と同じように宇髄さんを叱り飛ばすしのぶが見られた。悲鳴嶼さんは今ようやく、わざと負けるという意図に気がついたようだった。ああだから瞬殺……って、気がついてなかったんかーい!
お、次は蜜璃が挑戦しに行った。むずかる弟達を笑わせてきた腕を、とくとご覧あれ!と言って。
ちょっと待て蜜璃。君の弟達と冨岡さんじゃ笑いのツボも、何より年齢も違う!!
アレはやるべきでは……!
時すでに遅し。
蜜璃が全力で冨岡さんの脇をくすぐりだした。
しかしなにもおこらない。
笑いもしない。それどころか、引いて怯えているくらいで。
我にかえり、恥ずかしさで顔を赤くしてうずくまる蜜璃を、伊黒さんが。そして私が支えた。
伊黒さんに至っては、冨岡さんを睨みつけ、斬り殺さんばかりに怒り狂っている。
「よくも甘露寺の健気な頑張りを踏み躙りおったな!お前には人の心がないのか!!」
「蜜璃ちゃん、君はよくがんばった……。
冨岡さんはきっと脇が弱点じゃないのだよ……。私なら耐えきれずに笑って転げ回っちゃうけど、あの人は色々と鈍感なのだよ……」
「伊黒さん〜朝緋ちゃん〜!!」
ちょっとひどい言いようだけど、どちらかというと私は自分の妹弟子でもあり、大事な女友達である蜜璃の味方である。冨岡さんごめん。優先順位の天秤は、いつだって蜜璃に向いてるの……。
あ、杏寿郎さんは比べようもなく最優先されるよ。