四周目 陸
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炭治郎達とは一度別れた。隠も足が速い子多いよねぇ……もう見えないや。
私を本部から外へ戻してくれた隠の子によると、蝶屋敷には善逸と伊之助もいるらしい。ということは、治療か訓練かのどちらか?
度合いはわからないけど、炭治郎だってあの怪我だ。療養のためしばし入院はするだろう。しのぶもそのつもりで自分の屋敷にと言ったのだろうし。
というか時透君に思い切り石ぶつけられてたね。怪我人なのに一瞬気をやるほどの強さってさあ……それとも、よっぽど当たりどころ悪かったのかな?
本部を出てから、お見舞い用にとお菓子を買い占めてきた。なんで買い占めるかって?自分の分もある。私もお腹すいちゃったんだもの。
……あ、炭治郎達が大部屋で寝てる。
コンコン。入口の戸はあってないようなものなので、壁の縁を叩いて入室を知らせる。
「やあ、竈門少年」
普通に呼ばず、何の気なしに杏寿郎さん式の呼び方をしてみた。ということは、善逸は黄色い少年、伊之助は猪頭少年になる。確か、そう呼んでいたよね……。でもあの、杏寿郎さんがそう呼んでいた時の、『最初』の場面はあまり思い出したくないかも。涙が止まらなくなるじゃん?
気がついた炭治郎が、そして遅れて善逸達がこちらを向いた。
「貴女はさっき本部にいた……」
「煉獄朝緋。私が師範、と呼んでいた炎みたいな柱の妹で継子だよ」
炭治郎ならば鼻が利くし、炎みたい。で大体わかるはず。杏寿郎さんは外側も中身も熱い炎のような男だもの。
あ、でも継子はわかるかな?聞いてみれば、こくりと頷く炭治郎。
そして相変わらずうるさいのが。
「誰!?誰!この女の子誰!?朝緋ちゃんっていうの!?炭治郎てめぇいつこんなかわい子ちゃんと知り合ったんだよ!!」
善逸だった。ってあれ?手足短くないか?目の錯覚??萌え袖の進化系が過ぎるよ。
「君どうしたの?服と背丈合ってないね?手足が短く見えるのは、気のせい……?」
「君じゃなくて我妻善逸です。善逸とお呼びください」
キリッと言い切ったけど、全然かっこよく見えない。手足のせいもあるけど、私の目は杏寿郎さんしかかっこよく見えない病気にかかっている。恋は盲目病だ。
「うーん。格好がつかない……どうしよう炭治郎〜」
「格好をつける必要ないと思うぞ。
朝緋さん、善逸は蜘蛛にされかけたんです。それで手足が短くなってしまって」
「ゲッ蜘蛛!?それは嫌すぎる……」
虫は嫌い。蜘蛛は虫と違うって?虫が嫌いな人にとって、足が多い時点で虫同然!
善逸には悪いけど、この話は終わりにしよう。
そういえば伊之助はなんで静かなんだろう。寝てる?
「えー、あー。ところでそこの伊之す……、猪頭の子は?眠ってるの?」
「嘴平伊之助です。ほとんど声が出せないくらいに、喉を痛めています。眠ってはいないかと」
「喉かぁ」
デスメタルでも叫んだ?まあ、大人しくしていれば早く治るだろう。
「竈門君や我妻君、嘴平君の怪我も心配だけど、禰󠄀豆子ちゃんは大丈夫?」
「ついさっきまでずっと怒っていました。怪我は眠れば治るかと思います」
「あー。やっぱり嫌だったよね……ごめん」
「貴女というより、あの怖い人のせいですので、お気になさらず!」
「風柱の不死川さんね……。
あの方はね、鬼のことがもンのすごーく嫌いなだけなのよ。それ以外では甘いもの好きで頼りになる優しい人だよ。顔は傷のせいもあってちょっと強面だけど」
おはぎ好きだし。甘いものを好きな人に、悪い人はいない。
「優しいとは思えません!それに禰󠄀豆子を傷つけたこと、俺は絶対に許しません!!」
根が深い……。大事な禰󠄀豆子ちゃんがあんなひどいことされたんだもんね。気持ちはわかる。私だって、杏寿郎さんが同じ状況で同じことされたらブチギレてしまうだろう。
「甘いものといえば。お土産……というかお見舞いを買ってきたよ。美味しいお団子盛り合わせ〜。はいどうぞ」
どすん!!巨大な風呂敷を置いて開けた中に包まれていたのは、みたらし、磯部に、餡子に胡麻、きな粉の団子。
「多くない!?ねぇ多くない!?夜逃げするのかってくらい大荷物で何だろうと思ってたけどそれ全部団子とか多くない!?」
いっぱいあるけど、私や杏寿郎さん、蜜璃はいつも頼む量だ。あー美味しそう我慢できないパクッ。
「俺は匂いでわかってたぞ?
……朝緋さん。どうぞって言いながら自分も食べるんですね。いただきます」
「うん。私、炎の呼吸を使うんだけど……んぐんぐ、炎の呼吸使いってね、もぐもぐ!健啖家なことが多……、もっもっ、多いの、うーん、美味しいね」
「飲み込んでから話してください」
炭治郎に叱られた。たぶん、杏寿郎さんに見られても叱られるやつ。
「……ちょっと変わってるけどいい人だよな、炭治郎」
「ああ……そうだな……」
「聞こえてるぞ善逸君。
ふーん。お薬一日五回かぁ、多いね。ここのお薬は苦いから大変でしょ。
よかったら君も口直しに食べてね」
その多さと苦いであろう薬を見てから、善逸にも勧める。
「よかったらって言うか、食べなきゃ消費できないでしょ!ありがたくいただくけどね!!」
「はいはいどぞどぞ。あ、嘴平君は喉を負傷してるんだって?お団子が食べにくいといけないから、キャラメルも置いておくよー」
私のポケットには、たくさんのお菓子が入っている。実は、杏寿郎さんのポケットにもお菓子が入っている。
ちなみに、最初の頃入れて持ち歩いていた焼き芋は、すぐに止めてもらった。だって、ポケットの中で崩れてぼろぼろになるんだもの。誰が隊服を洗うと思って?洗いにくいから禁止にしたんだよね。
ポケットにティッシュ入れたまま洗濯機を回してしまった時の、あの苛立ちに近い。
「ウン……アリガトウ」
って、え?伊之助がありがとうだなんて、肉体的にも精神的にも相当弱ってるのかな?早く元気になりますようにと、頭をそっと撫でる。……猪の毛皮ってゴワゴワなんだね。
こんな状態になるまでの怪我をした経緯、任務についてを聞いた。なぜ冨岡さんが隊律違反になるのかも、ようやくわかった。
しのぶの鬼殺の邪魔をし、鬼を逃した。相手が人を傷つけない禰󠄀豆子ちゃんだとはいえ、立派な隊律違反だ。
それと、炭治郎達を呼び捨てで呼ぶ権利も流れで再び得た。やった。これで来たるあの任務で咄嗟に呼び捨てになろうと問題ない。
あんな任務、ないのが一番だけど。
……機能回復訓練の頃、また来ようかな。
まだまだこの子達は弱い。呼吸の基本、常中もきちんとできていない。
「決めた。私も炭治郎達がもっともっと強くなれるよう、協力するね」
「えっ」
「だって、鬼舞辻無惨を倒すんでしょ」
途端、本部での一件を思い出したか、顔が真っ赤になる炭治郎。そういえばみんなに笑われてたっけ。
「恥ずかしがらないでいいよ。気持ちは私も一緒。一緒に鍛錬しよう!」
「朝緋さん……」
その両手をぎゅっと握り、炭治郎をまっすぐ見つめた。相変わらず綺麗な赤の瞳だなあ。
……あ、こんなことしたら女の子が好きだという、善逸にも同じことをしなくちゃいけなくなるかな。
でも違った。善逸は青い顔をしていた。
「あ、ああああの!朝緋さん!そこに鬼のような音をさせてる人が……!」
「えっ」
入口に目を向ければ。
「朝緋?君は男子の手を握って、一体何をしているんだ?」
顔は笑顔だけど、目が笑っていない。額にビキビキと青筋を立てている杏寿郎さんが。
怒りのオーラで、炎の羽織すら、燃え広がって見えた。
「ヒッ」
あとが怖いどころじゃない。私はこれからさらに恐ろしい目に合うだろうことが決定した。
私を本部から外へ戻してくれた隠の子によると、蝶屋敷には善逸と伊之助もいるらしい。ということは、治療か訓練かのどちらか?
度合いはわからないけど、炭治郎だってあの怪我だ。療養のためしばし入院はするだろう。しのぶもそのつもりで自分の屋敷にと言ったのだろうし。
というか時透君に思い切り石ぶつけられてたね。怪我人なのに一瞬気をやるほどの強さってさあ……それとも、よっぽど当たりどころ悪かったのかな?
本部を出てから、お見舞い用にとお菓子を買い占めてきた。なんで買い占めるかって?自分の分もある。私もお腹すいちゃったんだもの。
……あ、炭治郎達が大部屋で寝てる。
コンコン。入口の戸はあってないようなものなので、壁の縁を叩いて入室を知らせる。
「やあ、竈門少年」
普通に呼ばず、何の気なしに杏寿郎さん式の呼び方をしてみた。ということは、善逸は黄色い少年、伊之助は猪頭少年になる。確か、そう呼んでいたよね……。でもあの、杏寿郎さんがそう呼んでいた時の、『最初』の場面はあまり思い出したくないかも。涙が止まらなくなるじゃん?
気がついた炭治郎が、そして遅れて善逸達がこちらを向いた。
「貴女はさっき本部にいた……」
「煉獄朝緋。私が師範、と呼んでいた炎みたいな柱の妹で継子だよ」
炭治郎ならば鼻が利くし、炎みたい。で大体わかるはず。杏寿郎さんは外側も中身も熱い炎のような男だもの。
あ、でも継子はわかるかな?聞いてみれば、こくりと頷く炭治郎。
そして相変わらずうるさいのが。
「誰!?誰!この女の子誰!?朝緋ちゃんっていうの!?炭治郎てめぇいつこんなかわい子ちゃんと知り合ったんだよ!!」
善逸だった。ってあれ?手足短くないか?目の錯覚??萌え袖の進化系が過ぎるよ。
「君どうしたの?服と背丈合ってないね?手足が短く見えるのは、気のせい……?」
「君じゃなくて我妻善逸です。善逸とお呼びください」
キリッと言い切ったけど、全然かっこよく見えない。手足のせいもあるけど、私の目は杏寿郎さんしかかっこよく見えない病気にかかっている。恋は盲目病だ。
「うーん。格好がつかない……どうしよう炭治郎〜」
「格好をつける必要ないと思うぞ。
朝緋さん、善逸は蜘蛛にされかけたんです。それで手足が短くなってしまって」
「ゲッ蜘蛛!?それは嫌すぎる……」
虫は嫌い。蜘蛛は虫と違うって?虫が嫌いな人にとって、足が多い時点で虫同然!
善逸には悪いけど、この話は終わりにしよう。
そういえば伊之助はなんで静かなんだろう。寝てる?
「えー、あー。ところでそこの伊之す……、猪頭の子は?眠ってるの?」
「嘴平伊之助です。ほとんど声が出せないくらいに、喉を痛めています。眠ってはいないかと」
「喉かぁ」
デスメタルでも叫んだ?まあ、大人しくしていれば早く治るだろう。
「竈門君や我妻君、嘴平君の怪我も心配だけど、禰󠄀豆子ちゃんは大丈夫?」
「ついさっきまでずっと怒っていました。怪我は眠れば治るかと思います」
「あー。やっぱり嫌だったよね……ごめん」
「貴女というより、あの怖い人のせいですので、お気になさらず!」
「風柱の不死川さんね……。
あの方はね、鬼のことがもンのすごーく嫌いなだけなのよ。それ以外では甘いもの好きで頼りになる優しい人だよ。顔は傷のせいもあってちょっと強面だけど」
おはぎ好きだし。甘いものを好きな人に、悪い人はいない。
「優しいとは思えません!それに禰󠄀豆子を傷つけたこと、俺は絶対に許しません!!」
根が深い……。大事な禰󠄀豆子ちゃんがあんなひどいことされたんだもんね。気持ちはわかる。私だって、杏寿郎さんが同じ状況で同じことされたらブチギレてしまうだろう。
「甘いものといえば。お土産……というかお見舞いを買ってきたよ。美味しいお団子盛り合わせ〜。はいどうぞ」
どすん!!巨大な風呂敷を置いて開けた中に包まれていたのは、みたらし、磯部に、餡子に胡麻、きな粉の団子。
「多くない!?ねぇ多くない!?夜逃げするのかってくらい大荷物で何だろうと思ってたけどそれ全部団子とか多くない!?」
いっぱいあるけど、私や杏寿郎さん、蜜璃はいつも頼む量だ。あー美味しそう我慢できないパクッ。
「俺は匂いでわかってたぞ?
……朝緋さん。どうぞって言いながら自分も食べるんですね。いただきます」
「うん。私、炎の呼吸を使うんだけど……んぐんぐ、炎の呼吸使いってね、もぐもぐ!健啖家なことが多……、もっもっ、多いの、うーん、美味しいね」
「飲み込んでから話してください」
炭治郎に叱られた。たぶん、杏寿郎さんに見られても叱られるやつ。
「……ちょっと変わってるけどいい人だよな、炭治郎」
「ああ……そうだな……」
「聞こえてるぞ善逸君。
ふーん。お薬一日五回かぁ、多いね。ここのお薬は苦いから大変でしょ。
よかったら君も口直しに食べてね」
その多さと苦いであろう薬を見てから、善逸にも勧める。
「よかったらって言うか、食べなきゃ消費できないでしょ!ありがたくいただくけどね!!」
「はいはいどぞどぞ。あ、嘴平君は喉を負傷してるんだって?お団子が食べにくいといけないから、キャラメルも置いておくよー」
私のポケットには、たくさんのお菓子が入っている。実は、杏寿郎さんのポケットにもお菓子が入っている。
ちなみに、最初の頃入れて持ち歩いていた焼き芋は、すぐに止めてもらった。だって、ポケットの中で崩れてぼろぼろになるんだもの。誰が隊服を洗うと思って?洗いにくいから禁止にしたんだよね。
ポケットにティッシュ入れたまま洗濯機を回してしまった時の、あの苛立ちに近い。
「ウン……アリガトウ」
って、え?伊之助がありがとうだなんて、肉体的にも精神的にも相当弱ってるのかな?早く元気になりますようにと、頭をそっと撫でる。……猪の毛皮ってゴワゴワなんだね。
こんな状態になるまでの怪我をした経緯、任務についてを聞いた。なぜ冨岡さんが隊律違反になるのかも、ようやくわかった。
しのぶの鬼殺の邪魔をし、鬼を逃した。相手が人を傷つけない禰󠄀豆子ちゃんだとはいえ、立派な隊律違反だ。
それと、炭治郎達を呼び捨てで呼ぶ権利も流れで再び得た。やった。これで来たるあの任務で咄嗟に呼び捨てになろうと問題ない。
あんな任務、ないのが一番だけど。
……機能回復訓練の頃、また来ようかな。
まだまだこの子達は弱い。呼吸の基本、常中もきちんとできていない。
「決めた。私も炭治郎達がもっともっと強くなれるよう、協力するね」
「えっ」
「だって、鬼舞辻無惨を倒すんでしょ」
途端、本部での一件を思い出したか、顔が真っ赤になる炭治郎。そういえばみんなに笑われてたっけ。
「恥ずかしがらないでいいよ。気持ちは私も一緒。一緒に鍛錬しよう!」
「朝緋さん……」
その両手をぎゅっと握り、炭治郎をまっすぐ見つめた。相変わらず綺麗な赤の瞳だなあ。
……あ、こんなことしたら女の子が好きだという、善逸にも同じことをしなくちゃいけなくなるかな。
でも違った。善逸は青い顔をしていた。
「あ、ああああの!朝緋さん!そこに鬼のような音をさせてる人が……!」
「えっ」
入口に目を向ければ。
「朝緋?君は男子の手を握って、一体何をしているんだ?」
顔は笑顔だけど、目が笑っていない。額にビキビキと青筋を立てている杏寿郎さんが。
怒りのオーラで、炎の羽織すら、燃え広がって見えた。
「ヒッ」
あとが怖いどころじゃない。私はこれからさらに恐ろしい目に合うだろうことが決定した。