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四周目 陸

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炭治郎の話が無事に終わったところで。下がっていいとの話の折り、私は挙手した。

「すみません御館様!」
「ん?」
「こら朝緋!御館様の言葉を遮ってはいけない!」

他の柱も『遮るな』との顔をこちらに向けてくる。杏寿郎さんのそれはお叱りだけど、他の柱のは怖い。

「ごめんなさい!でも……」
「いいよ杏寿郎。朝緋、どうしたのかな」

発言の許可をいただいたので、頭を地につけてようやく話す。

「私の血でも試させて欲しいのです。禰󠄀豆子ちゃんに私の血を近づけて、検証したいことがございまして」
「はぁ!?何を言っているんだ朝緋!!そんな危ないことは許されな「いいよ」御館様っ!?」

杏寿郎さんの素っ頓狂な「はぁ!?」なんて初めて聞いたかもしれないなあ。

「炭治郎……きみも、平気かな?」
「……、…………はい……、平気です」

私を探るような目。また禰󠄀豆子ちゃんが傷つけられたりしないかと不安なのよね?でも大丈夫、私はそんなことしないよ。
きっと、私の感情の匂いを嗅ぎ取れる君にはわかるはずだ。

「ありがと」

すれ違いざま、炭治郎の頭を撫でて座敷にお邪魔する。あーあ……背負箱の一部、壊れてるじゃん。

「正気なのか朝緋!相手は飢えた鬼!それ以上近づいては……!」
「煉獄ぅー、お前心配しすぎじゃねえ?朝緋なら、食らいつかれそうになったら頸を刎ねるくらいわけないだろ」
「そうだぞ。自分の継子を信用してやれ。朝緋はそれに値する隊士だと、俺も多少は信用しているのだ。お前が信用せずにどうする」
「……ぬぅ」

あらま珍し。宇髄さんはともかくとして、伊黒さんが私の肩を持ってくれた。そんな君には、蜜璃とデートできる券を進呈しよう!

不死川さんの影響だろう。ぷんぷんしながら箱の中に戻って小さくなっている禰󠄀豆子ちゃんに近寄る。ウッ……かわいい……。
可愛さに目が眩みそうになるのを耐えながら、不死川さんがしたように自分の皮膚を日輪刀で傷つける。
ただし範囲も深さも狭い。だって痛いもん。
でも、どんなに薄い傷だろうと、杏寿郎さんは顔を歪めていた。あとで怒られそう。

ツツゥと血が肌を伝う。それを突き出しながら、禰󠄀豆子ちゃんに一歩、また一歩と近づく。

「ごめんね禰󠄀豆子ちゃん。つらいかもしれないけど、私の血の匂いを嗅いでくれる?」
「………………」
「……お願い」
「……ゥー。……ムゥ」

すごく、すごーく嫌そうな顔をしながらも、禰󠄀豆子ちゃんは私のお願いを聞いてくれた。

「我慢ができる度合いを教えて欲しいの。さっきのこわぁい傷だらけのお兄ちゃんと、どっちの血が美味しそうだとか、そういうのも含めて」
「怖いってのは俺のことかィ?」
「貴方以外に誰がいるんです、不死川さん」

言いたかったことをしのぶが代弁してくれた〜!ありがとう、しのぶ!

「ム!」
「ああ、我慢はきくのね。ふむふむ、私の血の方が美味しそうかぁ、そっかぁ」

この辺りは想定内だ。
同じ稀血と稀血では、性別的に女性の血肉の方が美味しいだろう。鬼がよく『女の肉は男の肉より美味い』だなんて言っているからそうだと思っていた。
我慢だって、禰󠄀豆子ちゃんならできるとわかっていた。さっきだって、不死川さんの稀血に耐えたもの。

「なら、変な感じはする?ふわふわするとか、私のことがやけに魅力的に見えちゃう〜とか」

さすがに性的興奮を覚える?なんて聞けない。禰󠄀豆子ちゃんにも聞けないし、御館様や他の柱がいる場でなんて……恥ずかしさの極み!

「血など関係なく朝緋は魅力的だ!!」
「ありがとうけど師範は黙ってて」

一刀両断で杏寿郎さんは無視。
反対に禰󠄀豆子ちゃんは困ったように眉根を下げ、首をかしげるばかりだ。

「??ムームウ……。……、ム」

禰󠄀豆子ちゃんが私の腕に触れてきた。小さくてふっくらした指に、人なんて傷つけられるかどうかわからないような、かわいらしい鬼の爪がついている。

朝緋!!」
「大丈夫です」

その指で、血だけは避けながらそっと私の傷口まわりをなぞる。
痛くないように、労わるように。優しく優しく。

「禰󠄀豆子ちゃん……。ありがとうね」
「ム!」

そのままスルスルと箱の中に戻っていく。
大きくなったり小さくなったり、質量保存の法則はどうなってるんだろう。それ言ったら変な力使ってくる鬼や呼吸法でどこまでも強化される鬼殺隊士は?となるから、考えてはいけない。
とりあえず特殊な稀血酔いはほとんどない、で合ってるみたい。うーん……。

私はただ、どんな鬼にこの力が作用するのか、どうしても知りたかったのだ。自分の特殊な稀血について理解することで、今後の役に立つ。あの鬼に一泡吹かせる一枚のカードになるかもしれないと思って。
でも理性のある鬼はほとんどいないから聞けないし、理性があり言葉も通じる鬼は総じて強い。そんなことを聞いていたら食われておしまい。
頼れるのは味方である禰󠄀豆子ちゃんだけで。無限列車の任務中に聞く話でもなくて。

朝緋は自分の稀血の特殊な効果について調べたかったんだね」
「はい」

御館様も私の真意に気がつかれたようだ。

「私の見解ではね。朝緋の稀血のその効果は、男性の……それも子供ではなく大人の鬼により強く出てしまうんだと思うんだ。禰󠄀豆子は女の子だし小さくなれるからその効果が薄いんじゃないかな。
心当たりはないかい?」

そういえばそうだ。
言われてみれば確かに、男性の鬼に効果が高かった。そして幼い鬼にはあまり効かず、大人の鬼によく効いた。
そりゃ、稀血なのは変わらないから私の血を飲めばどの鬼も強化されるし、それ相当の美味しさはあるだろうけど。
ただし美味しさと言われても全くわからない。自分で舐めても美味しくないし。

とりあえず、惚れ薬のような稀血効果は、男性で大人の鬼に効きやすいというのがわかっただけでもよしとしよう。


これから柱合会議がはじまる。私はここにいて、それを聞くわけにはいかない。炭治郎と共に蝶屋敷に行っておくことにしたけど……。
また、またあの目だ。
炭治郎と一緒に行くことが許せないのか、それとも席を外すとはいえ目の届く範囲にいないことが許せないのか、杏寿郎さんが怒っている時の目をしていた。
本気であとが怖い!なのに、体は勝手にそういう展開を期待して熱くなっていった。

「もう一つ朝緋
「ひゃい!?」

めくるめく官能の世界に浸ってきていた私にかけられる、御館様の癒しの声音。うう、変なお返事してしまった。

「臨時の柱合会議の時は好きに来ていいからね。杏寿郎に連れてきてもらうといいよ」
「??はい。ありがとうございます」

意味がよくわからないままに、私とそして炭治郎、禰󠄀豆子ちゃんは本部をあとにした。
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