四周目 陸
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それはそうと、目の前で倒れている炭治郎のことだ。
気絶している?それとも眠っている?
体もだけど、顔のあちこち傷だらけじゃないのさ。
報告によると、下弦の伍が冨岡さんに倒されたって話だよね。その場に炭治郎達がいたとも聞いた。任務後に禰󠄀豆子ちゃんの存在が露見して拘束されたのかな?
「隠の……えーと?
彼、あちこち怪我してますが、治療はちゃんとしてあるんですか?」
「炎柱様継子の朝緋さん!?じ、自分は後藤と言います。
……こいつなら、応急処置を施してあるはずですので、問題ないかと」
これで?せめて顔についた土埃を払ってあげようよ。大体、転がされたままだなんてかわいそうでしょ。
「朝緋!それ以上近づくのは禁止だ!!」
私が動いた瞬間、先ほどまでの雰囲気が嘘のように鋭い声が飛んできた。
「でも、痛そうだし汚れてますし、手拭いでちょっと拭いてあげるくらいは、」
「朝緋。約束は?」
「…………はぁい」
大人しく杏寿郎さんの傍に並ぶ。ごめん炭治郎、杏寿郎さん怒らせたらあとが怖くて。
ところで禰󠄀豆子ちゃんはどこなんだろう。特徴あるあの箱がない。
いつだって炭治郎と共にあるイメージがあっただけに、ついきょろりと探してしまう。日陰にもなかった。
再び炭治郎に目線を戻した時、後藤さんが彼に呼びかけて起こしていた。ちょっと強引に。
「おい、おい起きろ!……やいてめぇ!いつまで寝てんだ!!さっさと起きねぇか!!」
「はっ!?」
あ、起きた。杏寿郎さんとは違う赤の目が、困惑げに揺れる。おはようと声をかけたいけど、そういう雰囲気ではない。
そして起きた炭治郎を、品定めをするかのようにジロジロ観察する柱達。うわ。私だったらそんな目で見られるのいやだな……。
派手な隊士を期待していた宇髄さんが炭治郎を地味だ、の一言でぶった斬り。
悲鳴嶼さんは何も言わずにいつも通り、数珠をじゃりじゃり。
他の人が声を発さない中、杏寿郎さんは。
「うむ!これからこの少年の裁判を行うと!なるほど!」
何を納得してるんだろう。さすがにわからない。
「なんだこの人達」
「まだ口を挟むな馬鹿野郎。誰の前にいると思ってんだ!柱の前だぞ!」
「……私は柱じゃないけどね。って、後藤さん!そんなに押さえつけては……」
見上げる炭治郎を後藤さんが一喝し、そして殴るようにしながら押さえつけて動けないようにした。
柱の意味も、今いるところがどこなのかもわかっていなさそうな炭治郎に、しのぶが声をかけた。
ここが鬼殺隊総本部であり、今から柱による裁判ーーただし、有罪確定のーーを、受けると教えている。
有罪は確定していようとも、そこは優しいしのぶだ。裁判前に炭治郎に説明を求めていた。
「裁判の必要などないだろう!」
「「え」」
ただ、杏寿郎さんが鋭く斬り込むように遮った。
「鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!!」
「えええええ!?ざ、斬首!?」
「ああ、斬首で十分だ!
俺は早く柱合会議に移りたい!会議も早く終われば早く任務に行ける!早く任務に行ければ帰りも早くなる!そしたら早く朝緋といられる!!わっしょい!!」
「そこ!?そこなの!!なんでわっしょい!?」
わっしょいの掛け声と共に強く握られた手が痛い。
「斬首か!
ならば俺が派手に首を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう、派手派手だ」
こっちはこっちで派手派手言い過ぎだ!派手だろうが地味だろうが、血飛沫は見たくない。未だに鬼の頸が飛ぶ瞬間も、血が出る瞬間も、全て気持ち悪いのに。なのに頑張って斬ってる私すごい!えらい!!
悲鳴嶼さんもいつも通りかわいそうかわいそうと言っているところを見るに、斬首に賛成なようで。他の柱の反応を見ても、斬首反対の意見を持ち上げる人は今の所皆無だった。
私は柱じゃないから、口出しはできない。もしここにいるのが杏寿郎さんと私だけだったとしても、柱である杏寿郎さん相手に意見をぶつけることはできない。
柱とは、それだけ雲の上の存在。
「お前、柱が話をしているのにどこを見ている。このお方達は、鬼殺隊で最もくらいの高い九名の剣士だぞ」
「柱……?」
何かを探す動きが加速する炭治郎の目線を、止める後藤さん。炭治郎の動きは一瞬止まり。
「禰󠄀豆子……禰󠄀豆子どこだ!」
柱が殺す算段を立てる中、それを無視して禰󠄀豆子ちゃんを探した。ん?善逸と伊之助はわかるけど村田さん?誰ぞそれ。
「そんなことより冨岡はどうするのかね」
ここに来て初めて、木の上の伊黒さんが言及した。
……隊律違反?冨岡さんも?
一体、先の鬼殺で何があったんだろう。その辺を詳しく聞きたいところだけど……。
「なんとか言ったらどうだ、冨岡」
わお、聞かれてるのに。注目されてるのになおも無言だ。
「まあいいじゃないですか。大人しくついてきてくれましたし。処罰は後で考えましょう。
それよりも私は、坊やの方から話が聞きたいですよ」
ぼ、坊や!?炭治郎ってそんな歳だったっけ?しのぶとだって、数個しか変わらないはずじゃ……。あ、でも階級的には坊や同然か。
しのぶが鬼殺隊員でありながら鬼を連れて任務にあたる。隊律違反にしかなりえないことについての説明を求めた。
答える前に、宇髄さんが「聞くまでもない」と、その背に差す二本の日輪刀の柄に手をかけた。
今この場で殺す気!?
つい、足が出そうになって。でも柱の顔をした杏寿郎さんに止められた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
「俺の!俺の妹……ガハッ、カッ、……、」
ああ!やっぱり!?
大して応急処置なんてされてないじゃん!!
顎!顎痛いよあれ!顎の骨割れてるやつ!かわいい炭治郎の顎がケツアゴになったらどうするの!ひぃぃ誰か治療を……!
そう。私にとって炭治郎は時に兄に見える存在とはいえ、基本的にはかわいいかわいい弟分に近い存在なので、できるだけ傷ついてほしくないのだ。
瓢箪を取り出し、炭治郎に鎮痛薬入りの中身を与えるしのぶ。そんなものを持ち歩くとは、さすがは医療に明るい蝶屋敷の主人。私が持ち歩いてるのなんて、お菓子ばっかりだよ。
しかし、無理はいけないといいながらも、有無を言わさずに先を促すしのぶはやはり柱だった。
気絶している?それとも眠っている?
体もだけど、顔のあちこち傷だらけじゃないのさ。
報告によると、下弦の伍が冨岡さんに倒されたって話だよね。その場に炭治郎達がいたとも聞いた。任務後に禰󠄀豆子ちゃんの存在が露見して拘束されたのかな?
「隠の……えーと?
彼、あちこち怪我してますが、治療はちゃんとしてあるんですか?」
「炎柱様継子の朝緋さん!?じ、自分は後藤と言います。
……こいつなら、応急処置を施してあるはずですので、問題ないかと」
これで?せめて顔についた土埃を払ってあげようよ。大体、転がされたままだなんてかわいそうでしょ。
「朝緋!それ以上近づくのは禁止だ!!」
私が動いた瞬間、先ほどまでの雰囲気が嘘のように鋭い声が飛んできた。
「でも、痛そうだし汚れてますし、手拭いでちょっと拭いてあげるくらいは、」
「朝緋。約束は?」
「…………はぁい」
大人しく杏寿郎さんの傍に並ぶ。ごめん炭治郎、杏寿郎さん怒らせたらあとが怖くて。
ところで禰󠄀豆子ちゃんはどこなんだろう。特徴あるあの箱がない。
いつだって炭治郎と共にあるイメージがあっただけに、ついきょろりと探してしまう。日陰にもなかった。
再び炭治郎に目線を戻した時、後藤さんが彼に呼びかけて起こしていた。ちょっと強引に。
「おい、おい起きろ!……やいてめぇ!いつまで寝てんだ!!さっさと起きねぇか!!」
「はっ!?」
あ、起きた。杏寿郎さんとは違う赤の目が、困惑げに揺れる。おはようと声をかけたいけど、そういう雰囲気ではない。
そして起きた炭治郎を、品定めをするかのようにジロジロ観察する柱達。うわ。私だったらそんな目で見られるのいやだな……。
派手な隊士を期待していた宇髄さんが炭治郎を地味だ、の一言でぶった斬り。
悲鳴嶼さんは何も言わずにいつも通り、数珠をじゃりじゃり。
他の人が声を発さない中、杏寿郎さんは。
「うむ!これからこの少年の裁判を行うと!なるほど!」
何を納得してるんだろう。さすがにわからない。
「なんだこの人達」
「まだ口を挟むな馬鹿野郎。誰の前にいると思ってんだ!柱の前だぞ!」
「……私は柱じゃないけどね。って、後藤さん!そんなに押さえつけては……」
見上げる炭治郎を後藤さんが一喝し、そして殴るようにしながら押さえつけて動けないようにした。
柱の意味も、今いるところがどこなのかもわかっていなさそうな炭治郎に、しのぶが声をかけた。
ここが鬼殺隊総本部であり、今から柱による裁判ーーただし、有罪確定のーーを、受けると教えている。
有罪は確定していようとも、そこは優しいしのぶだ。裁判前に炭治郎に説明を求めていた。
「裁判の必要などないだろう!」
「「え」」
ただ、杏寿郎さんが鋭く斬り込むように遮った。
「鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!!」
「えええええ!?ざ、斬首!?」
「ああ、斬首で十分だ!
俺は早く柱合会議に移りたい!会議も早く終われば早く任務に行ける!早く任務に行ければ帰りも早くなる!そしたら早く朝緋といられる!!わっしょい!!」
「そこ!?そこなの!!なんでわっしょい!?」
わっしょいの掛け声と共に強く握られた手が痛い。
「斬首か!
ならば俺が派手に首を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう、派手派手だ」
こっちはこっちで派手派手言い過ぎだ!派手だろうが地味だろうが、血飛沫は見たくない。未だに鬼の頸が飛ぶ瞬間も、血が出る瞬間も、全て気持ち悪いのに。なのに頑張って斬ってる私すごい!えらい!!
悲鳴嶼さんもいつも通りかわいそうかわいそうと言っているところを見るに、斬首に賛成なようで。他の柱の反応を見ても、斬首反対の意見を持ち上げる人は今の所皆無だった。
私は柱じゃないから、口出しはできない。もしここにいるのが杏寿郎さんと私だけだったとしても、柱である杏寿郎さん相手に意見をぶつけることはできない。
柱とは、それだけ雲の上の存在。
「お前、柱が話をしているのにどこを見ている。このお方達は、鬼殺隊で最もくらいの高い九名の剣士だぞ」
「柱……?」
何かを探す動きが加速する炭治郎の目線を、止める後藤さん。炭治郎の動きは一瞬止まり。
「禰󠄀豆子……禰󠄀豆子どこだ!」
柱が殺す算段を立てる中、それを無視して禰󠄀豆子ちゃんを探した。ん?善逸と伊之助はわかるけど村田さん?誰ぞそれ。
「そんなことより冨岡はどうするのかね」
ここに来て初めて、木の上の伊黒さんが言及した。
……隊律違反?冨岡さんも?
一体、先の鬼殺で何があったんだろう。その辺を詳しく聞きたいところだけど……。
「なんとか言ったらどうだ、冨岡」
わお、聞かれてるのに。注目されてるのになおも無言だ。
「まあいいじゃないですか。大人しくついてきてくれましたし。処罰は後で考えましょう。
それよりも私は、坊やの方から話が聞きたいですよ」
ぼ、坊や!?炭治郎ってそんな歳だったっけ?しのぶとだって、数個しか変わらないはずじゃ……。あ、でも階級的には坊や同然か。
しのぶが鬼殺隊員でありながら鬼を連れて任務にあたる。隊律違反にしかなりえないことについての説明を求めた。
答える前に、宇髄さんが「聞くまでもない」と、その背に差す二本の日輪刀の柄に手をかけた。
今この場で殺す気!?
つい、足が出そうになって。でも柱の顔をした杏寿郎さんに止められた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
「俺の!俺の妹……ガハッ、カッ、……、」
ああ!やっぱり!?
大して応急処置なんてされてないじゃん!!
顎!顎痛いよあれ!顎の骨割れてるやつ!かわいい炭治郎の顎がケツアゴになったらどうするの!ひぃぃ誰か治療を……!
そう。私にとって炭治郎は時に兄に見える存在とはいえ、基本的にはかわいいかわいい弟分に近い存在なので、できるだけ傷ついてほしくないのだ。
瓢箪を取り出し、炭治郎に鎮痛薬入りの中身を与えるしのぶ。そんなものを持ち歩くとは、さすがは医療に明るい蝶屋敷の主人。私が持ち歩いてるのなんて、お菓子ばっかりだよ。
しかし、無理はいけないといいながらも、有無を言わさずに先を促すしのぶはやはり柱だった。