四周目 伍
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お刺身は鮮度が命。こんな事に使って申し訳ないけれど、全集中の呼吸、炎の呼吸・常中を足に纏わせフグ刺しを抱え、音柱邸に駆ける私。
わーい多分今の私、風になってる〜。
氷も入れてくれたから大丈夫なのはわかってるけど、好物なら早く届けないとね。
全速力のノリでウキウキしながら音柱邸の戸を叩いた。
けれど中から現れた人物を前にして私の顔は真顔?ううん、ある意味凍りついたと言っていい。荷物を落とさなかったことは褒めて欲しい。
いきなり着流しを纏った超絶イケメンが出てきたのだ。こんなのびっくりするに決まってるでしょ?
見たことない人だけど、イケメンの不審者?なんで中から?
「よぉ朝緋」
「誰ですか貴方」
しかも私の名前知ってる!
鬼かと思うほどの美丈夫が私の名前知ってる!
え、でも今は昼間だし……。やっぱり不審者?ううん、声かけてきたから変質者?お巡りさん杏寿郎さんついでに宇髄さんここです!
「いや、俺だよ俺」
「俺俺詐欺なら間に合って……って、宇髄さん?」
「おー」
私服の宇髄さんだった。
えっ素だとさらにかっこいいのこの人。
派手な顔の化粧もないし、額当てがないから全くわからなかった。ムキムキの腕が着物で隠れているのも大きい。髪も下ろしている!
確かに髪の色もいつもと一緒だし、目の色もガーネットみたいにキラキラしてて綺麗なあの色だ。
ただし何度も言うけど杏寿郎さんの太陽のような瞳には負ける。だって私の中では、杏寿郎さんが一番かっこいい人なんだもの。
フグ刺しをお渡しし、さあ帰ろうと思ったらぐいと手を掴まれた。
「ま、入れよ」
「でも」
過ちは冒さないけれど、こんな美丈夫と一つ屋根の下は落ち着かない。でも上官だし断りにくい。
「せっかく来たんだし茶くらい出す。それに、会いたいって言ってる奴もいる」
「会いたい?……わかりました。お邪魔します」
誰だかわからないけど、宇髄さんの他に誰かいるならいいか。そう思い戸をくぐる。
「おーいお前ら、来たぞー。茶ぁ淹れてくれや!」
宇髄さんが言った瞬間、奥からわらわらと三人の女性が現れた。
「……は?」
おっとり優しそうな人、しっかりしていそうな人、賑やかそうな人。皆、一様に美しい人だ。
「あとコレ、あっちに冷やしといてくれ」
「なんですかぁー?」
「言っといたろ?俺の好物のフグ刺し」
「美味しそうですね!」
「冷やしておきます」
きゃいきゃいわいわい。美人達が宇髄さんを囲んでいる。宇髄さん、美女を周りに侍らせている……!
「なっ……、」
一体どういうこと?音柱邸じゃなくて、どこかの花街にでも来てしまった?
「さっきから口ぱくぱくしてなんだよ朝緋。お前もフグになったって?食ってやろうか?」
にやにや笑うその御綺麗な顔に拳を入れたくなった。
「宇髄さん!?ここ御館様から賜った音柱用のお屋敷でしょ!三人も女性連れ込んで何やってるんですか貴方!?
あと誰がフグですか!師範に食べられる予定がありますので結構です!!」
「おー、おー。言うようになったな!煉獄に食べられる予定ねぇ!」
「あっ……!うう、穴があったら入りたぃ……」
思いっきり失言ぶちかました。
周りに人いるのに何言ってんだろう私のおばか。これでは欲求不満みたいではないか。
「まあそんな恥ずかしがんなって。
んで、女を連れ込んでるわけじゃねぇよ。全員俺の嫁さんだからな」
「須磨です!よろしくね!」
「須磨!アンタ年少者の癖に何先に自己紹介してるのさ!……あ、私はまきをよ」
「賑やかでごめんなさいね。雛鶴です」
「これはこれは御丁寧にどうも煉獄朝緋です……ってお嫁さん?三人とも!?一夫多妻制っ!ここは大奥か何かですか!?」
自己紹介されて反射的に自分も名乗りを上げたけど、それどころではない。三人もお嫁さんって今は大正時代ですが!
「そんな大層なもんじゃねぇよ。大奥と違ってみんな仲良いし。な?」
「はいっ!仲良しこよしです!まきをさんは怖くてよく私をいじめるけど!」
「なんだって須磨ぁ!私がいつアンタをいじめたよ!!」
「うわぁん雛鶴さん!まきをさんがまたいじめるぅ!」
「須磨が余計なことを言うからでしょう?まきを、お客様の前だから貴女も静かにね。
こんなでも、仲はいいのよ」
きっといつもこんな感じで、須磨さんがまきをさんに怒られ、それを雛鶴さんがたしなめて。そんな関係でやってきているんだと思う。そこに嘘偽りはなさそうだった。
「ほんと、仲良いですね」
「まあ、忍びの里からの仲間だからな」
「みんなみーんなくのいちで、天元様と一緒に里を抜けて来たんですよ!」
間違っていたら申し訳ないんだけど、忍びって里抜けに厳しいのではなかっただろうか。
「朝緋さん煉獄という家名ってことは、炎柱の所のですよね?」
「ああ、煉獄の妹で継子で好い人だ」
「妹で継子で恋仲とは、アンタ欲張りだね!」
今思えば家族で妹で同じ隊士で継子で。おまけに恋人同士だなんて、欲張りのハッピーセットすぎるかも。
バシバシ背中を叩かれながら、出されたお茶とお菓子をいただく。
あ、この酒饅頭美味しい〜。聞いたら三人の手作りの品だそうで。今度作り方を教えてくれるそうだ。
そんなことを思いながら宇髄さんの顔を見れば、彼はこちらを見ながら雛鶴さんの腰を抱き寄せた。続くようにして他の二人が宇髄さんに抱きつく。わお、ハーレムだ。
ちょっと羨ましい光景。
「朝緋もなるか?四人目に」
「ぇ、……ちょ、」
手を伸ばされ引き寄せられる。至近距離にイケメンが!?
「きゃー!朝緋ちゃんが天元様のお嫁さんに!!ぜひぜひ私とも仲良くしましょ!そうしましょ!!」
「ぅん……?」
須磨さん、大興奮で抱きついてきたと思ったら、なぜか胸を揉んできた。
「きゃあ!?えっえっ……!」
え?胸揉まれた!?なんで!!
「須磨!まーたアンタって子は!」
「また悪い癖が出たわね……」
「あー、その……須磨は女もイケる口でな。わりィな」
「えへへ、ごめんねー!」
三人揃って須磨さんをべりりと剥がしてくれたけど、最後に頬にチュッとキスされた。……ま、頬ならいいか。
「大丈夫です。どっちにしろ宇髄さんのお嫁さんになんて私がなるわけないですけどね」
「知ってる。冗談だ。煉獄からお前を盗ったらこの世が地獄に変わる」
ずいぶんな言われよう。
「……そこまで酷い?」
「……そこまで酷いな」
「んー、じゃあ師範より早く帰らないといけませんね。この世が地獄になる前に……」
「そうだな。俺はせっかくのフグ刺しも食べねぇとだしな。あれは新鮮な内に食いたい」
「はいぜひ、美味しいお酒と共にでも召し上がってください」
またいつでも来い、お前なら歓迎する。
宇髄さんはその言葉と共にぐりぐりと私の頭を撫で、四人全員で送り出してくれた。
みんなみんな良い人達だ。鬼殺隊関係者でくのいちでもあるけども、一般人の友達が出来るのなんて久しぶりで嬉しかった。
でもやっぱりお嫁さんが三人は多い。否定する気はないけど多い。
私からしたら、杏寿郎さんが三人いるようなものでしょ?たくさん愛せて嬉しいけど怖い。
主に、愛情が独り占めできないと暴走した一人一人による嫉妬の行動が。ひぇ、絶対体が持たないと思う……。
帰ってから宇髄さんにお嫁さんが三人いるという話をしたら、杏寿郎さんも同じく「嫁が三人は多い!」と言っていた。
私は。俺は。
愛する人はたった一人でいい。
わーい多分今の私、風になってる〜。
氷も入れてくれたから大丈夫なのはわかってるけど、好物なら早く届けないとね。
全速力のノリでウキウキしながら音柱邸の戸を叩いた。
けれど中から現れた人物を前にして私の顔は真顔?ううん、ある意味凍りついたと言っていい。荷物を落とさなかったことは褒めて欲しい。
いきなり着流しを纏った超絶イケメンが出てきたのだ。こんなのびっくりするに決まってるでしょ?
見たことない人だけど、イケメンの不審者?なんで中から?
「よぉ朝緋」
「誰ですか貴方」
しかも私の名前知ってる!
鬼かと思うほどの美丈夫が私の名前知ってる!
え、でも今は昼間だし……。やっぱり不審者?ううん、声かけてきたから変質者?お巡りさん杏寿郎さんついでに宇髄さんここです!
「いや、俺だよ俺」
「俺俺詐欺なら間に合って……って、宇髄さん?」
「おー」
私服の宇髄さんだった。
えっ素だとさらにかっこいいのこの人。
派手な顔の化粧もないし、額当てがないから全くわからなかった。ムキムキの腕が着物で隠れているのも大きい。髪も下ろしている!
確かに髪の色もいつもと一緒だし、目の色もガーネットみたいにキラキラしてて綺麗なあの色だ。
ただし何度も言うけど杏寿郎さんの太陽のような瞳には負ける。だって私の中では、杏寿郎さんが一番かっこいい人なんだもの。
フグ刺しをお渡しし、さあ帰ろうと思ったらぐいと手を掴まれた。
「ま、入れよ」
「でも」
過ちは冒さないけれど、こんな美丈夫と一つ屋根の下は落ち着かない。でも上官だし断りにくい。
「せっかく来たんだし茶くらい出す。それに、会いたいって言ってる奴もいる」
「会いたい?……わかりました。お邪魔します」
誰だかわからないけど、宇髄さんの他に誰かいるならいいか。そう思い戸をくぐる。
「おーいお前ら、来たぞー。茶ぁ淹れてくれや!」
宇髄さんが言った瞬間、奥からわらわらと三人の女性が現れた。
「……は?」
おっとり優しそうな人、しっかりしていそうな人、賑やかそうな人。皆、一様に美しい人だ。
「あとコレ、あっちに冷やしといてくれ」
「なんですかぁー?」
「言っといたろ?俺の好物のフグ刺し」
「美味しそうですね!」
「冷やしておきます」
きゃいきゃいわいわい。美人達が宇髄さんを囲んでいる。宇髄さん、美女を周りに侍らせている……!
「なっ……、」
一体どういうこと?音柱邸じゃなくて、どこかの花街にでも来てしまった?
「さっきから口ぱくぱくしてなんだよ朝緋。お前もフグになったって?食ってやろうか?」
にやにや笑うその御綺麗な顔に拳を入れたくなった。
「宇髄さん!?ここ御館様から賜った音柱用のお屋敷でしょ!三人も女性連れ込んで何やってるんですか貴方!?
あと誰がフグですか!師範に食べられる予定がありますので結構です!!」
「おー、おー。言うようになったな!煉獄に食べられる予定ねぇ!」
「あっ……!うう、穴があったら入りたぃ……」
思いっきり失言ぶちかました。
周りに人いるのに何言ってんだろう私のおばか。これでは欲求不満みたいではないか。
「まあそんな恥ずかしがんなって。
んで、女を連れ込んでるわけじゃねぇよ。全員俺の嫁さんだからな」
「須磨です!よろしくね!」
「須磨!アンタ年少者の癖に何先に自己紹介してるのさ!……あ、私はまきをよ」
「賑やかでごめんなさいね。雛鶴です」
「これはこれは御丁寧にどうも煉獄朝緋です……ってお嫁さん?三人とも!?一夫多妻制っ!ここは大奥か何かですか!?」
自己紹介されて反射的に自分も名乗りを上げたけど、それどころではない。三人もお嫁さんって今は大正時代ですが!
「そんな大層なもんじゃねぇよ。大奥と違ってみんな仲良いし。な?」
「はいっ!仲良しこよしです!まきをさんは怖くてよく私をいじめるけど!」
「なんだって須磨ぁ!私がいつアンタをいじめたよ!!」
「うわぁん雛鶴さん!まきをさんがまたいじめるぅ!」
「須磨が余計なことを言うからでしょう?まきを、お客様の前だから貴女も静かにね。
こんなでも、仲はいいのよ」
きっといつもこんな感じで、須磨さんがまきをさんに怒られ、それを雛鶴さんがたしなめて。そんな関係でやってきているんだと思う。そこに嘘偽りはなさそうだった。
「ほんと、仲良いですね」
「まあ、忍びの里からの仲間だからな」
「みんなみーんなくのいちで、天元様と一緒に里を抜けて来たんですよ!」
間違っていたら申し訳ないんだけど、忍びって里抜けに厳しいのではなかっただろうか。
「朝緋さん煉獄という家名ってことは、炎柱の所のですよね?」
「ああ、煉獄の妹で継子で好い人だ」
「妹で継子で恋仲とは、アンタ欲張りだね!」
今思えば家族で妹で同じ隊士で継子で。おまけに恋人同士だなんて、欲張りのハッピーセットすぎるかも。
バシバシ背中を叩かれながら、出されたお茶とお菓子をいただく。
あ、この酒饅頭美味しい〜。聞いたら三人の手作りの品だそうで。今度作り方を教えてくれるそうだ。
そんなことを思いながら宇髄さんの顔を見れば、彼はこちらを見ながら雛鶴さんの腰を抱き寄せた。続くようにして他の二人が宇髄さんに抱きつく。わお、ハーレムだ。
ちょっと羨ましい光景。
「朝緋もなるか?四人目に」
「ぇ、……ちょ、」
手を伸ばされ引き寄せられる。至近距離にイケメンが!?
「きゃー!朝緋ちゃんが天元様のお嫁さんに!!ぜひぜひ私とも仲良くしましょ!そうしましょ!!」
「ぅん……?」
須磨さん、大興奮で抱きついてきたと思ったら、なぜか胸を揉んできた。
「きゃあ!?えっえっ……!」
え?胸揉まれた!?なんで!!
「須磨!まーたアンタって子は!」
「また悪い癖が出たわね……」
「あー、その……須磨は女もイケる口でな。わりィな」
「えへへ、ごめんねー!」
三人揃って須磨さんをべりりと剥がしてくれたけど、最後に頬にチュッとキスされた。……ま、頬ならいいか。
「大丈夫です。どっちにしろ宇髄さんのお嫁さんになんて私がなるわけないですけどね」
「知ってる。冗談だ。煉獄からお前を盗ったらこの世が地獄に変わる」
ずいぶんな言われよう。
「……そこまで酷い?」
「……そこまで酷いな」
「んー、じゃあ師範より早く帰らないといけませんね。この世が地獄になる前に……」
「そうだな。俺はせっかくのフグ刺しも食べねぇとだしな。あれは新鮮な内に食いたい」
「はいぜひ、美味しいお酒と共にでも召し上がってください」
またいつでも来い、お前なら歓迎する。
宇髄さんはその言葉と共にぐりぐりと私の頭を撫で、四人全員で送り出してくれた。
みんなみんな良い人達だ。鬼殺隊関係者でくのいちでもあるけども、一般人の友達が出来るのなんて久しぶりで嬉しかった。
でもやっぱりお嫁さんが三人は多い。否定する気はないけど多い。
私からしたら、杏寿郎さんが三人いるようなものでしょ?たくさん愛せて嬉しいけど怖い。
主に、愛情が独り占めできないと暴走した一人一人による嫉妬の行動が。ひぇ、絶対体が持たないと思う……。
帰ってから宇髄さんにお嫁さんが三人いるという話をしたら、杏寿郎さんも同じく「嫁が三人は多い!」と言っていた。
私は。俺は。
愛する人はたった一人でいい。