四周目 伍
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私の階級がとうとう『甲』にあがった。柱に次ぐ実力者といわれる、甲に。
鬼殺隊に在籍している期間が長ければ長いほどに、階級はおのずと上がっていく。そう思っている人も多いかもしれない。
違う。そこはやはり実力や経験が物を言う。
鬼を滅した数やその強さが大事だ。鬼を退治できない隊士は結局、下の方の階級止まりで。
そもそもが志半ばで折れてしまう者、亡くなってしまう者があとを経たず。
甲の階級にまで上がる隊士は総じて強く、そして珍しい。
つまり、毎回継子として甲の階級になれている自分は、とても運がいいのだ。
あっ!助平な鍛錬だけじゃなくて、ちゃんと普通の鍛錬もしたし、鬼の頸もバンバン取ったよ。
その日もまた、鍛錬日和で。私は朝から木刀を振って振っての素振りに勤しんでいた。
「おはよう朝緋!いい天気だな!!」
「おはようございます!こんな晴れてると洗濯物はよく乾くし、よき鍛錬日和になりそうですね!」
朝餉を軽く作り終え、あとは食卓に並べるのみ。溜まっていた洗濯物も干したし、杏寿郎さんが起きてくるまではと鍛錬していたのだ。
「非番の時まで鍛錬三昧とは感心だな!」
「どこも出かける予定ないからね〜素振りと打ち込みに力入れようかと!」
天気もよくて楽しく振れていることだし、今日は非番なので一日中そうして過ごす予定でいる。脳筋でもある私は、鍛錬するのがとても好きだ。やればやった分だけ、自分の力に還元される……。筋肉は裏切らない!
「うんうん、そうかそうか。
だが、少し俺のためにも予定を開けてくれないだろうか?」
「まぁ、いいですけど……どんな用事です?」
デートは却下だぞ〜。より強くなりたい今、甲に階級を上げたからと言ってその上に胡座をかきたくない。他の呼吸ももっと覚えたい。
「実は今日は臨時柱合会議でな。朝緋を御館様や他の柱達に継子として紹介しておかねば、と」
継子としての紹介!少し早いけどそんな時期まで来ていたの!?
御館様にまたお目通りが叶う……!これは貴重な機会。
「共に来てくれるだろうか?」
「いいともー!」
どこかで聞いたような古い感じの返答で答えた。
「ただ、代わりに何本かお手合わせ願えます?寝起きの杏寿郎さんに喝を入れる勢いで叩きのめしたいなー?」
「ああ!やれるものなら来いッ!寝起きだが俺は強いぞ!!」
私達はしばらく木刀で激しい打ち合いを続けた。炎の呼吸がばんばん飛び出して、空を焔色に舐め上げる。
本気を出してしまったので、終わった時は言葉よりも腹の虫で会話したくらいの空腹に陥っていた。
脳筋で食いしん坊な柱と継子……。
それから一刻ほど。
柱ではなく一般の隊士相手には、情報も場所も漏洩しないよう、厳重に隠された場所。鬼殺隊総本部。
継子とはいえ扱いは一般隊士と変わらず、私は耳栓と目隠しをされ隠に連れられてやってきた。
『今回』は恋仲に早くからなった余裕なのだろうか、杏寿郎さんが連れてくることも、隠に文句を言うこともなくスムーズにお運びいただけ……あ、顔が不機嫌だわ。私を運んだ隠の男の子をめちゃくちゃ睨んでる。
私に関することだと心狭いな杏寿郎さん。
御目通りが叶って久方ぶりに御顔を拝見した御館様は相変わらず落ち着く声で私を。そして皆を癒してくださった。
なんでも言うことをはいはい聞きたくなってしまう不思議な声色だ。こんな声色を杏寿郎さんが持っていなくて本当によかった。言われたこと全部聞いてしまったら、私は今頃布団から出られない。
また、この時期はいつ拝見しても片方の視力を失っており、呪いの進行の深さを窺い知れる。
なんとかできればいいのに……。なんで鬼舞辻に行かないで何もしていないむしろ良いことしかしていない御館様に行くの?不公平すぎる。
そしてやっぱり、御館様は私が過去からやり直していることに、それとなく気がついている。完全にではないけれど、言葉の端々にその片鱗を感じる。
鬼に対する先見の力も働くことだし、あり得なくもない。でも真相は聞けない。
少なくともこの場では。
どちらにせよ何度やり直そうともあの鬼を討ち果たし、いずれ鬼舞辻無惨も討つ。
私の代で鬼舞辻を討ちたい。その御館様の気持ちは私も同じ。いや、鬼殺隊士全員の総意だ。
臨時の柱合会議が終わり、柱の皆さんに挨拶した。
まだ霞柱の時透くん、蛇柱の伊黒さん、そして恋柱として開花する蜜璃はいない。彼らや彼女が柱になるのはあと少し先かな?私も今回は、少し早めに継子として紹介されてしまったことだし。
相変わらず立ってるだけで眼福の人達だ。
しのぶは巷で話題になっている女優さんなんかよりもよほど美しくて素敵だし。蝶々が彼女の周りから離れないのもわかる気がするよ。いい匂いするし、甘い蜜と優しさを放っているもの。ただし毒も持っているから危うい美しさも兼ね備えてる。
冨岡さんも涼やかな目元がきらきら光り、誰もが納得できそうなイケメンだよね。顔で語る寡黙な男、と思ったら言葉足らずなだけで天然ボケが入っていて。言葉は少ないけど優しくて素敵。
宇髄さんはとにかくかっこいいイケメン。なんでそんなにかっこいいの?派手で目立つし忍者じゃなくて役者さんの家系じゃない?杏寿郎さんがいなくて、言い寄られて迫られたらはいって言いそうになる素敵さだよ。言いそうになるだけで絶対言わない。
悲鳴嶼さんはかっこよさというより逞しくてワイルドで、頼りになるタイプのイケメンだ。猫好きというギャップもたまらない。声も低くて素敵。
不死川さんも強面だけどよーく見てほしい。かなりのイケメンだ。それに、中身はとても優しいしふんわり笑った時はかなりチャーミングかつ素敵な方だ。
杏寿郎さん?いちいち言わなくてもわかるでしょ。スーパーパーフェクトな殿方です。日本一、いや世界一、いやいや宇宙一素敵な人。異論は認めない。
素敵素敵言ってるけど、恋の呼吸の前身とかではない。蜜璃ほど胸をバクバク、どっきゅんどっきゅんしていないもの。
ああでも、その内恋の呼吸も使えるようになってしまうかも?恋の呼吸自体、炎の呼吸からの派生だものね。
より交流を深める目的……というのは建前になってしまうけれど、この柱の皆様達に今更ながら縄抜けの仕方を教わることにした。
どこまでも私を追いかけてくる杏寿郎さんから逃れるため、って『前』は思っていた。杏寿郎さんの場合は縄なんて使わず自らの腕で拘束してくるけど。
けれどそうじゃない。
鬼に協力する人間や、鬼より鬼な人間がいる。鬼の作った縄は頑丈で切れないことが多い。切る方法は駄目という場合もある。
だからこそ、切らずにほどくやり方を改めて知ろうと思ったのだ。
……それに普通の縄なら、大抵引きちぎることが可能。だって呼吸法のせいか人間やめてる?ってくらい強い鬼殺隊の一員だものね。
柱の皆々様とそこそこ。そう、そこそこ仲良くなるためだと、杏寿郎さんも了承してくれたし。
ちなみにしのぶは煉獄さんに聞けばいいじゃない?で終わった。その杏寿郎さんが他の柱に教えてもらいなさい、と言ってくれたんだよねぇ。そのあとすぐ帰ってしまった。
烏からの連絡で、急患だそうだ。残念。
不死川さんと悲鳴嶼さんは、挨拶の後すぐに任務だからと帰ってしまって聞くことすら叶わず。
冨岡さん?無言だよ、無言。相変わらずのコミュ障っぷりを発揮された。
水の呼吸教えてくれた時は最終的におしゃべりしてくれるようになったじゃん!あの時を思い出してよ!?
結局ちゃんとした方法を教えてくれたのは、宇髄さんで。
なぜか水遁の術火遁の術も教えてくれた。ここ御館様のお庭……。池使っていいの?勝手に火を起こして怒られないの?
御館様、私がやったわけじゃないから怒らないでね?
鬼殺隊に在籍している期間が長ければ長いほどに、階級はおのずと上がっていく。そう思っている人も多いかもしれない。
違う。そこはやはり実力や経験が物を言う。
鬼を滅した数やその強さが大事だ。鬼を退治できない隊士は結局、下の方の階級止まりで。
そもそもが志半ばで折れてしまう者、亡くなってしまう者があとを経たず。
甲の階級にまで上がる隊士は総じて強く、そして珍しい。
つまり、毎回継子として甲の階級になれている自分は、とても運がいいのだ。
あっ!助平な鍛錬だけじゃなくて、ちゃんと普通の鍛錬もしたし、鬼の頸もバンバン取ったよ。
その日もまた、鍛錬日和で。私は朝から木刀を振って振っての素振りに勤しんでいた。
「おはよう朝緋!いい天気だな!!」
「おはようございます!こんな晴れてると洗濯物はよく乾くし、よき鍛錬日和になりそうですね!」
朝餉を軽く作り終え、あとは食卓に並べるのみ。溜まっていた洗濯物も干したし、杏寿郎さんが起きてくるまではと鍛錬していたのだ。
「非番の時まで鍛錬三昧とは感心だな!」
「どこも出かける予定ないからね〜素振りと打ち込みに力入れようかと!」
天気もよくて楽しく振れていることだし、今日は非番なので一日中そうして過ごす予定でいる。脳筋でもある私は、鍛錬するのがとても好きだ。やればやった分だけ、自分の力に還元される……。筋肉は裏切らない!
「うんうん、そうかそうか。
だが、少し俺のためにも予定を開けてくれないだろうか?」
「まぁ、いいですけど……どんな用事です?」
デートは却下だぞ〜。より強くなりたい今、甲に階級を上げたからと言ってその上に胡座をかきたくない。他の呼吸ももっと覚えたい。
「実は今日は臨時柱合会議でな。朝緋を御館様や他の柱達に継子として紹介しておかねば、と」
継子としての紹介!少し早いけどそんな時期まで来ていたの!?
御館様にまたお目通りが叶う……!これは貴重な機会。
「共に来てくれるだろうか?」
「いいともー!」
どこかで聞いたような古い感じの返答で答えた。
「ただ、代わりに何本かお手合わせ願えます?寝起きの杏寿郎さんに喝を入れる勢いで叩きのめしたいなー?」
「ああ!やれるものなら来いッ!寝起きだが俺は強いぞ!!」
私達はしばらく木刀で激しい打ち合いを続けた。炎の呼吸がばんばん飛び出して、空を焔色に舐め上げる。
本気を出してしまったので、終わった時は言葉よりも腹の虫で会話したくらいの空腹に陥っていた。
脳筋で食いしん坊な柱と継子……。
それから一刻ほど。
柱ではなく一般の隊士相手には、情報も場所も漏洩しないよう、厳重に隠された場所。鬼殺隊総本部。
継子とはいえ扱いは一般隊士と変わらず、私は耳栓と目隠しをされ隠に連れられてやってきた。
『今回』は恋仲に早くからなった余裕なのだろうか、杏寿郎さんが連れてくることも、隠に文句を言うこともなくスムーズにお運びいただけ……あ、顔が不機嫌だわ。私を運んだ隠の男の子をめちゃくちゃ睨んでる。
私に関することだと心狭いな杏寿郎さん。
御目通りが叶って久方ぶりに御顔を拝見した御館様は相変わらず落ち着く声で私を。そして皆を癒してくださった。
なんでも言うことをはいはい聞きたくなってしまう不思議な声色だ。こんな声色を杏寿郎さんが持っていなくて本当によかった。言われたこと全部聞いてしまったら、私は今頃布団から出られない。
また、この時期はいつ拝見しても片方の視力を失っており、呪いの進行の深さを窺い知れる。
なんとかできればいいのに……。なんで鬼舞辻に行かないで何もしていないむしろ良いことしかしていない御館様に行くの?不公平すぎる。
そしてやっぱり、御館様は私が過去からやり直していることに、それとなく気がついている。完全にではないけれど、言葉の端々にその片鱗を感じる。
鬼に対する先見の力も働くことだし、あり得なくもない。でも真相は聞けない。
少なくともこの場では。
どちらにせよ何度やり直そうともあの鬼を討ち果たし、いずれ鬼舞辻無惨も討つ。
私の代で鬼舞辻を討ちたい。その御館様の気持ちは私も同じ。いや、鬼殺隊士全員の総意だ。
臨時の柱合会議が終わり、柱の皆さんに挨拶した。
まだ霞柱の時透くん、蛇柱の伊黒さん、そして恋柱として開花する蜜璃はいない。彼らや彼女が柱になるのはあと少し先かな?私も今回は、少し早めに継子として紹介されてしまったことだし。
相変わらず立ってるだけで眼福の人達だ。
しのぶは巷で話題になっている女優さんなんかよりもよほど美しくて素敵だし。蝶々が彼女の周りから離れないのもわかる気がするよ。いい匂いするし、甘い蜜と優しさを放っているもの。ただし毒も持っているから危うい美しさも兼ね備えてる。
冨岡さんも涼やかな目元がきらきら光り、誰もが納得できそうなイケメンだよね。顔で語る寡黙な男、と思ったら言葉足らずなだけで天然ボケが入っていて。言葉は少ないけど優しくて素敵。
宇髄さんはとにかくかっこいいイケメン。なんでそんなにかっこいいの?派手で目立つし忍者じゃなくて役者さんの家系じゃない?杏寿郎さんがいなくて、言い寄られて迫られたらはいって言いそうになる素敵さだよ。言いそうになるだけで絶対言わない。
悲鳴嶼さんはかっこよさというより逞しくてワイルドで、頼りになるタイプのイケメンだ。猫好きというギャップもたまらない。声も低くて素敵。
不死川さんも強面だけどよーく見てほしい。かなりのイケメンだ。それに、中身はとても優しいしふんわり笑った時はかなりチャーミングかつ素敵な方だ。
杏寿郎さん?いちいち言わなくてもわかるでしょ。スーパーパーフェクトな殿方です。日本一、いや世界一、いやいや宇宙一素敵な人。異論は認めない。
素敵素敵言ってるけど、恋の呼吸の前身とかではない。蜜璃ほど胸をバクバク、どっきゅんどっきゅんしていないもの。
ああでも、その内恋の呼吸も使えるようになってしまうかも?恋の呼吸自体、炎の呼吸からの派生だものね。
より交流を深める目的……というのは建前になってしまうけれど、この柱の皆様達に今更ながら縄抜けの仕方を教わることにした。
どこまでも私を追いかけてくる杏寿郎さんから逃れるため、って『前』は思っていた。杏寿郎さんの場合は縄なんて使わず自らの腕で拘束してくるけど。
けれどそうじゃない。
鬼に協力する人間や、鬼より鬼な人間がいる。鬼の作った縄は頑丈で切れないことが多い。切る方法は駄目という場合もある。
だからこそ、切らずにほどくやり方を改めて知ろうと思ったのだ。
……それに普通の縄なら、大抵引きちぎることが可能。だって呼吸法のせいか人間やめてる?ってくらい強い鬼殺隊の一員だものね。
柱の皆々様とそこそこ。そう、そこそこ仲良くなるためだと、杏寿郎さんも了承してくれたし。
ちなみにしのぶは煉獄さんに聞けばいいじゃない?で終わった。その杏寿郎さんが他の柱に教えてもらいなさい、と言ってくれたんだよねぇ。そのあとすぐ帰ってしまった。
烏からの連絡で、急患だそうだ。残念。
不死川さんと悲鳴嶼さんは、挨拶の後すぐに任務だからと帰ってしまって聞くことすら叶わず。
冨岡さん?無言だよ、無言。相変わらずのコミュ障っぷりを発揮された。
水の呼吸教えてくれた時は最終的におしゃべりしてくれるようになったじゃん!あの時を思い出してよ!?
結局ちゃんとした方法を教えてくれたのは、宇髄さんで。
なぜか水遁の術火遁の術も教えてくれた。ここ御館様のお庭……。池使っていいの?勝手に火を起こして怒られないの?
御館様、私がやったわけじゃないから怒らないでね?