四周目 伍
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「わっしょい!!」
「……はい?」
台所に立っていたら後ろから抱きつかれ、いきなりその言葉をかけられた。
わっしょい。
杏寿郎さんがさつまいもを食べた時に発せられる、摩訶不思議な言葉だ。
さつまいもを食べると頭の中で盛大な祭りが催されて、神輿を担いでいるような気分になると本人は言っていた。
わかる気がする。私の場合、嬉しかったり幸せだと思うことがあると、頭の中で大量のクラッカーがパンパン鳴らされるし、エレクトリカルパレードが開催されちゃうもの。……海側に売っているチュロス食べたいな。作る?作っちゃう?
生薬としての方が有名だけど、シナモンの代替品としてこの時代には肉桂だっけ?八ツ橋でお馴染みのニッキ存在するよ?
「杏寿郎さん、どうしたんですか?ん……っ、くすぐったい」
まるでマーキングだ。抱きしめたままむぐむぐすりすり、首筋や髪に顔や鼻を押し付けてきてまさぐってくる。
くすぐったさと快感は紙一重らしい。杏寿郎さんの呼気や鼻先が素肌に触れるたび、くすぐったい半面甘い吐息が漏れそうになる。
口を押さえても至近距離だからバレてしまう。声が出ないよう必死に耐える。
「んん〜……朝緋の体から芋の匂いがするなと思ってな」
「えっ」
「よもや俺に内緒で芋を食べたか?」
「……すみません。食べました」
確かに食べた。浅草の芋羊羹を食べた。任務の帰りに、蜜璃とだ。
でも、食べたのは昨日だし歯磨きもしたのに。なのにわかるの?すごいな杏寿郎さん。好物に関して言えば炭治郎と変わらない嗅覚を持ってるのね。
……当然、入浴もしたんだけどなぁ。鬼殺のあとは鬼の血、私の血、汗、土埃。私の場合、よほど忙しくない限りは一刻も早く体を洗いたくてたまらなくなるのだ。ちなみに鬼に匂いでバレるので、匂いのある石鹸は使わない。
「やはりそうか。だが今は芋を持っていなさそうだな……残念だ」
「ごめん……外で食べてきちゃったから……」
「別にいい。今ここにある芋以外の特別な好物を食むからな!」
「特別な好物?ここにある?」
さつまいも以外っていうとここにあるのは、ご飯とお味噌汁、今ぐつぐつコトコト煮ている肉じゃがになってしまう。
食べ物全般が好物ではある杏寿郎さんだけど、特別というほどの好物は見当たらない。
「炊きはすぐ終わるだろうか」
「終わるも何も、あとは火を止めて余熱で熱を入れるだけですよ」
そしたら肉じゃが完成!器に盛ったらゆがき絹さやを飾って出すだけ〜。こっくり濃いめの味付けにしたから、汁ごとご飯にかけて食べたい……。
ぽわわーんと今日のご飯について考えていたらよだれが垂れそうになった。
「なるほどな!」
「あっ!?」
ジュッ!!
杏寿郎さんが火に勝手に水をかけて消した。なんということを!すぐそばに火消し道具があるのが見えないのかこの男は!
濡れちゃったからこの炭はもう駄目かもしれない。
「水かけたら次に使う時に湿り気のせいで火がつきにくなっちゃうでしょーが!」
「そんなもの新しい炭に換えなさい」
「資源は有限。大事に使おうよ……ひゃ」
無視して抱き上げられた。
「どこへ……?」
「どこへとは?俺の部屋に決まっているだろう」
ドカドカと足早にご自分の部屋へ向かい、性急に障子戸を開けて中へ私をポーンと投げ入れる。
ちょっと〜私の扱い〜〜!?と、思ったけれど、体が落ちたのは綺麗に敷かれたふかふかオフトゥン。
わぁ……干したばかりの布団だからおひさまの匂いするぅ……。寝たい。
「じゃなくて!」
なんでこのパターン!?『前』にもこんなことがあったようななかったような……?
「杏寿郎さん!いきなり猫か何かみたいに人を投げ入れて!何なのです……、か?」
さすがにまだ少しばかり早いと、そう思っていたのに。杏寿郎さんは我慢の限界だとよく言ってはいたけども、なんだかんだ言ってそういう『まだお前達には早い!BY槇寿朗』的な空気が私達の間には流れていたのに。
なのに、目の前に広がるのは杏寿郎さんのドアップで。杏寿郎さんの体ですべて覆われて暗くて。顔の脇に置かれた両腕で外界から閉じ込められていて。
私は彼に押し倒されていた。
「猫か。そうだな、確かに朝緋は俺の猫だ」
うっそり笑う杏寿郎さんが私の顎下に手を置き、くるくる指で掻くように撫でてきた。
うっ……またくすぐったい。それと背筋がゾクゾクしてきて……。
「俺だけが飼うことを許された、かわいいかわいい子猫だな」
「ん、うぅ、……はぅぅ……!
っあぁぁぁもうっ!やめてくださいよっ!」
変な気分になりそうなところで、その手を振り払う。
体までは退かしてくれなかったけど、顎を撫でるのはやめてくれた。
「うーむ。おかしいな、猫はこうすると気持ちよさそうにごろごろりと啼くと聞いたが」
「私は猫じゃありませんから当たり前です!」
「ほぉ?」
あと『なく』の響きが違った感じに聞こえた。にやにや笑いおってこの助平柱め!
「猫ではないと。うむ!そうなのかもな!
こんな格好をしているのだしな!!」
先ほどまで料理中だった私。普通なら割烹着を着ていただろう私の格好は、服の上からカフェーのお給仕さんがつけているようなドレープの利いたエプロンを身に纏った姿だ。
蜜璃がくれたものですごくかわいい。大正浪漫って感じ。あっ今大正時代だったねあはは!
ぴらり、エプロンを捲るまではいい。そう思ってエプロンをまじまじと観察する杏寿郎さんの好きにさせていたら……。
「えっ、ちょっ……!」
ぐるん、回る視界。うつ伏せになるように、体を転がして回転させられる。そしてそのまま再びのし掛かられ私は逃走不可能だ。
「!?杏寿郎さ、何を……っ!えっ!!」
エプロンを固定する背中の大きなリボン。しゅるり、結んであるそれを解かれる。
おかげさまで隊服に使われているようなシャツブラウスに、ゲス眼……コホン、被服担当の前田隊士に御厚意でいただいた私服のスカートという姿になってしまった。
「うーむ。解いたあとの姿が裸なら最高だったのだがなぁ」
「!?」
背後上部から残念そうな声が聞こえる。
それって裸エプロン……!?男の人のロマンだと言われるあの?
ふわーお!頭の中に、破廉恥極まりない裸エプロン姿の自分が思い描かれてしまった。
嫌だ、絶対にそんな格好したくない。
……でも待って、私は嫌だけど杏寿郎さんはそれが見たい、それを望んでいるのよね?好きな相手の望みだし、その願いは叶えなくちゃいけないのかな……うーん。
なら、いつかその願いを叶えてあげ、ーー!?
「……はい?」
台所に立っていたら後ろから抱きつかれ、いきなりその言葉をかけられた。
わっしょい。
杏寿郎さんがさつまいもを食べた時に発せられる、摩訶不思議な言葉だ。
さつまいもを食べると頭の中で盛大な祭りが催されて、神輿を担いでいるような気分になると本人は言っていた。
わかる気がする。私の場合、嬉しかったり幸せだと思うことがあると、頭の中で大量のクラッカーがパンパン鳴らされるし、エレクトリカルパレードが開催されちゃうもの。……海側に売っているチュロス食べたいな。作る?作っちゃう?
生薬としての方が有名だけど、シナモンの代替品としてこの時代には肉桂だっけ?八ツ橋でお馴染みのニッキ存在するよ?
「杏寿郎さん、どうしたんですか?ん……っ、くすぐったい」
まるでマーキングだ。抱きしめたままむぐむぐすりすり、首筋や髪に顔や鼻を押し付けてきてまさぐってくる。
くすぐったさと快感は紙一重らしい。杏寿郎さんの呼気や鼻先が素肌に触れるたび、くすぐったい半面甘い吐息が漏れそうになる。
口を押さえても至近距離だからバレてしまう。声が出ないよう必死に耐える。
「んん〜……朝緋の体から芋の匂いがするなと思ってな」
「えっ」
「よもや俺に内緒で芋を食べたか?」
「……すみません。食べました」
確かに食べた。浅草の芋羊羹を食べた。任務の帰りに、蜜璃とだ。
でも、食べたのは昨日だし歯磨きもしたのに。なのにわかるの?すごいな杏寿郎さん。好物に関して言えば炭治郎と変わらない嗅覚を持ってるのね。
……当然、入浴もしたんだけどなぁ。鬼殺のあとは鬼の血、私の血、汗、土埃。私の場合、よほど忙しくない限りは一刻も早く体を洗いたくてたまらなくなるのだ。ちなみに鬼に匂いでバレるので、匂いのある石鹸は使わない。
「やはりそうか。だが今は芋を持っていなさそうだな……残念だ」
「ごめん……外で食べてきちゃったから……」
「別にいい。今ここにある芋以外の特別な好物を食むからな!」
「特別な好物?ここにある?」
さつまいも以外っていうとここにあるのは、ご飯とお味噌汁、今ぐつぐつコトコト煮ている肉じゃがになってしまう。
食べ物全般が好物ではある杏寿郎さんだけど、特別というほどの好物は見当たらない。
「炊きはすぐ終わるだろうか」
「終わるも何も、あとは火を止めて余熱で熱を入れるだけですよ」
そしたら肉じゃが完成!器に盛ったらゆがき絹さやを飾って出すだけ〜。こっくり濃いめの味付けにしたから、汁ごとご飯にかけて食べたい……。
ぽわわーんと今日のご飯について考えていたらよだれが垂れそうになった。
「なるほどな!」
「あっ!?」
ジュッ!!
杏寿郎さんが火に勝手に水をかけて消した。なんということを!すぐそばに火消し道具があるのが見えないのかこの男は!
濡れちゃったからこの炭はもう駄目かもしれない。
「水かけたら次に使う時に湿り気のせいで火がつきにくなっちゃうでしょーが!」
「そんなもの新しい炭に換えなさい」
「資源は有限。大事に使おうよ……ひゃ」
無視して抱き上げられた。
「どこへ……?」
「どこへとは?俺の部屋に決まっているだろう」
ドカドカと足早にご自分の部屋へ向かい、性急に障子戸を開けて中へ私をポーンと投げ入れる。
ちょっと〜私の扱い〜〜!?と、思ったけれど、体が落ちたのは綺麗に敷かれたふかふかオフトゥン。
わぁ……干したばかりの布団だからおひさまの匂いするぅ……。寝たい。
「じゃなくて!」
なんでこのパターン!?『前』にもこんなことがあったようななかったような……?
「杏寿郎さん!いきなり猫か何かみたいに人を投げ入れて!何なのです……、か?」
さすがにまだ少しばかり早いと、そう思っていたのに。杏寿郎さんは我慢の限界だとよく言ってはいたけども、なんだかんだ言ってそういう『まだお前達には早い!BY槇寿朗』的な空気が私達の間には流れていたのに。
なのに、目の前に広がるのは杏寿郎さんのドアップで。杏寿郎さんの体ですべて覆われて暗くて。顔の脇に置かれた両腕で外界から閉じ込められていて。
私は彼に押し倒されていた。
「猫か。そうだな、確かに朝緋は俺の猫だ」
うっそり笑う杏寿郎さんが私の顎下に手を置き、くるくる指で掻くように撫でてきた。
うっ……またくすぐったい。それと背筋がゾクゾクしてきて……。
「俺だけが飼うことを許された、かわいいかわいい子猫だな」
「ん、うぅ、……はぅぅ……!
っあぁぁぁもうっ!やめてくださいよっ!」
変な気分になりそうなところで、その手を振り払う。
体までは退かしてくれなかったけど、顎を撫でるのはやめてくれた。
「うーむ。おかしいな、猫はこうすると気持ちよさそうにごろごろりと啼くと聞いたが」
「私は猫じゃありませんから当たり前です!」
「ほぉ?」
あと『なく』の響きが違った感じに聞こえた。にやにや笑いおってこの助平柱め!
「猫ではないと。うむ!そうなのかもな!
こんな格好をしているのだしな!!」
先ほどまで料理中だった私。普通なら割烹着を着ていただろう私の格好は、服の上からカフェーのお給仕さんがつけているようなドレープの利いたエプロンを身に纏った姿だ。
蜜璃がくれたものですごくかわいい。大正浪漫って感じ。あっ今大正時代だったねあはは!
ぴらり、エプロンを捲るまではいい。そう思ってエプロンをまじまじと観察する杏寿郎さんの好きにさせていたら……。
「えっ、ちょっ……!」
ぐるん、回る視界。うつ伏せになるように、体を転がして回転させられる。そしてそのまま再びのし掛かられ私は逃走不可能だ。
「!?杏寿郎さ、何を……っ!えっ!!」
エプロンを固定する背中の大きなリボン。しゅるり、結んであるそれを解かれる。
おかげさまで隊服に使われているようなシャツブラウスに、ゲス眼……コホン、被服担当の前田隊士に御厚意でいただいた私服のスカートという姿になってしまった。
「うーむ。解いたあとの姿が裸なら最高だったのだがなぁ」
「!?」
背後上部から残念そうな声が聞こえる。
それって裸エプロン……!?男の人のロマンだと言われるあの?
ふわーお!頭の中に、破廉恥極まりない裸エプロン姿の自分が思い描かれてしまった。
嫌だ、絶対にそんな格好したくない。
……でも待って、私は嫌だけど杏寿郎さんはそれが見たい、それを望んでいるのよね?好きな相手の望みだし、その願いは叶えなくちゃいけないのかな……うーん。
なら、いつかその願いを叶えてあげ、ーー!?