一周目 壱
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「それでも。
人と手をとりあい、支え合うことのできる優しい鬼。そういう存在がいるって、私は信じてみたいと思うよ。
どうか、妹さんに人を襲わせないでね」
とても優しい人だ。
朝緋さんは嘘偽りなく、禰󠄀豆子を信じたいとそう言ってくれた。匂いからもそれがわかる。
この人の期待に応えたい。
「妹さんが人を襲った瞬間、私は問答無用で頸を刎ねてしまうだろうから」
と、同時に。ゾッとするほど冷たい、射殺すような視線と共に付け加えられた言葉。
その言葉通りにならないよう、俺も禰󠄀豆子も、もっともっと頑張らなくてはいけない。
「俺の継子がすまないな!!
だが!普通の鬼殺隊隊士の考えは朝緋のように優しく情けをかけてはくれないぞ!それこそ話をする前に頸を刎ねられるだろう!
鬼殺隊に身を置く以上、君も君の妹も、悪意や殺意に晒される。気をつけろ」
「き、気をつけてがんばります!!
それと、朝緋さんは継子だったんですね」
「ああ!紹介が遅れた!!彼女は俺の自慢の継子だ!
朝緋、改めて挨拶を!!」
目と髪の毛の色が一部煉獄さんと同じだから、てっきり妹さんだと思っていた。
頭の高い位置で括られた馬の尻尾のような長い髪。黒く長いその髪に混じるようにして、煉獄さんのような黄金色と橙色がちらほらとみえているのだ。
色はともかく羽織の柄も似ている事だし、これで血縁ではないと言われた方が不思議なくらいだ。
にっこり笑うと「階級を示せ」と呟き、手の甲に藤花紋を出してくれた。そこには『甲』という文字が浮き上がっていた。
柱のすぐ下の階級だ。強さの匂いも柱に限りなく近い。
「階級『甲』炎柱継子の、煉獄朝緋です。
継子というのは、柱に目をかけてもらって直接指導を受けられる、弟子みたいなものだけど……もしかして知っていたかな?」
朝緋さんという名前は煉獄さんの話でわかっていたが、苗字も煉獄だ。
継子の定義はわからないけれど、お互いが認めれば親子だろうと兄妹だろうと、師弟関係にはなれると思うしやはり兄妹なのだろうか。
……それにしては、煉獄さんから朝緋さんに向く感情の匂いも、朝緋さんから煉獄さんに送られる感情の匂いも、兄妹のものとは少し違っていた。
「階級も柱の次に高いし、朝緋さんはすごい人なんですね!!」
「そ、そんなことないんだけどー……」
「謙遜するな!朝緋は柱に次ぐ実力者だ!!俺も鼻が高い!!」
「師範まで……」
心からそう思った言葉をかけると、照れて一生懸命否定している。煉獄さんが言えばさらに顔を赤くして照れていた。
少し年上に感じるけど、優しいだけでなく、可愛い人だとも思った。
「でも朝緋さんは稀血ですよね。鬼殺隊で鬼を倒す側に回るなんて、自殺行為じゃないんですか?」
「エッ」
その場の空気が一瞬で凍りついた。朝緋さんがピシリと固まる。
何か、まずいこと言ったか?
「ま、稀血!正一君とこの清君と同じ稀血!?」
「何だと!?って、ノリで聞いちまったじゃねぇか!うがー!!」
善逸は鼓屋敷で救出した兄弟達を思い出したようだ。
正確には、稀血である清君よりも正一君の方をより鮮明に思い出しているようだったが。
そういえば伊之助とはあの時に出会ったんだったな。相変わらず賑やかだ。
「……よもや、君は気がついていたのか」
「はい、稀血の匂いがします」
煉獄さんがいきなり声を小さく落としたので、俺も声を少し小さくする。
よく考えたら、鬼に狙われやすい稀血である情報なんて、あまり周りには知られたくないよな。
「えええ、そんなに匂う……?やだなー、体臭きついかな……。これでも湯浴みは済ませてから来てるのにぃ」
困るはずの当の本人が、一番のんびりしてすんすんと自分の体の匂いを嗅ぎながら、涙目になっているけれど。
「朝緋の匂いは悪くない!良い匂いだ!!」
「師範は黙っててください!あとそうやって嗅がないでください!」
煉獄さん……そこでなぜ、朝緋さんの腰を引き寄せて匂いを嗅ぎ出すんだろう。
あ、朝緋さんに頭を叩かれて離した。この人達、柱と継子だよな?上官を叩いたのに、お咎めなし?
それになんで、煉獄さんは叩かれたのに嬉しそうな匂いを発してるんだろう……?
「んー……血が出るような怪我は今のところしてない。
なのに人間である竈門君にバレた?これじゃ鬼にもバレちゃうってことじゃない……困ったなあ」
「あ、ち!ちがうんです!俺は普通の人より鼻が利くんです!!
前に任務で稀血の人を助けたことがあって、それで稀血の匂いを覚えてて」
「なんだ、臭いって言われたのかと思った」
慌てて嗅覚がいいことを言えば、朝緋さんはふへ、なんて屈託なく笑いかけてきた。
ぎゅん!その笑顔を見た瞬間、胸が痛くなった気がする。
「だ、大丈夫です!体臭は良い匂いがしています!」
「……うん。良い匂いだろうと体臭がどうのこうの言われるのは女としてはちょっと恥ずかしいかな」
「すみません!!」
女性になんてことを言ってしまったんだ。
俺は真っ赤になりながら、謝った。
人と手をとりあい、支え合うことのできる優しい鬼。そういう存在がいるって、私は信じてみたいと思うよ。
どうか、妹さんに人を襲わせないでね」
とても優しい人だ。
朝緋さんは嘘偽りなく、禰󠄀豆子を信じたいとそう言ってくれた。匂いからもそれがわかる。
この人の期待に応えたい。
「妹さんが人を襲った瞬間、私は問答無用で頸を刎ねてしまうだろうから」
と、同時に。ゾッとするほど冷たい、射殺すような視線と共に付け加えられた言葉。
その言葉通りにならないよう、俺も禰󠄀豆子も、もっともっと頑張らなくてはいけない。
「俺の継子がすまないな!!
だが!普通の鬼殺隊隊士の考えは朝緋のように優しく情けをかけてはくれないぞ!それこそ話をする前に頸を刎ねられるだろう!
鬼殺隊に身を置く以上、君も君の妹も、悪意や殺意に晒される。気をつけろ」
「き、気をつけてがんばります!!
それと、朝緋さんは継子だったんですね」
「ああ!紹介が遅れた!!彼女は俺の自慢の継子だ!
朝緋、改めて挨拶を!!」
目と髪の毛の色が一部煉獄さんと同じだから、てっきり妹さんだと思っていた。
頭の高い位置で括られた馬の尻尾のような長い髪。黒く長いその髪に混じるようにして、煉獄さんのような黄金色と橙色がちらほらとみえているのだ。
色はともかく羽織の柄も似ている事だし、これで血縁ではないと言われた方が不思議なくらいだ。
にっこり笑うと「階級を示せ」と呟き、手の甲に藤花紋を出してくれた。そこには『甲』という文字が浮き上がっていた。
柱のすぐ下の階級だ。強さの匂いも柱に限りなく近い。
「階級『甲』炎柱継子の、煉獄朝緋です。
継子というのは、柱に目をかけてもらって直接指導を受けられる、弟子みたいなものだけど……もしかして知っていたかな?」
朝緋さんという名前は煉獄さんの話でわかっていたが、苗字も煉獄だ。
継子の定義はわからないけれど、お互いが認めれば親子だろうと兄妹だろうと、師弟関係にはなれると思うしやはり兄妹なのだろうか。
……それにしては、煉獄さんから朝緋さんに向く感情の匂いも、朝緋さんから煉獄さんに送られる感情の匂いも、兄妹のものとは少し違っていた。
「階級も柱の次に高いし、朝緋さんはすごい人なんですね!!」
「そ、そんなことないんだけどー……」
「謙遜するな!朝緋は柱に次ぐ実力者だ!!俺も鼻が高い!!」
「師範まで……」
心からそう思った言葉をかけると、照れて一生懸命否定している。煉獄さんが言えばさらに顔を赤くして照れていた。
少し年上に感じるけど、優しいだけでなく、可愛い人だとも思った。
「でも朝緋さんは稀血ですよね。鬼殺隊で鬼を倒す側に回るなんて、自殺行為じゃないんですか?」
「エッ」
その場の空気が一瞬で凍りついた。朝緋さんがピシリと固まる。
何か、まずいこと言ったか?
「ま、稀血!正一君とこの清君と同じ稀血!?」
「何だと!?って、ノリで聞いちまったじゃねぇか!うがー!!」
善逸は鼓屋敷で救出した兄弟達を思い出したようだ。
正確には、稀血である清君よりも正一君の方をより鮮明に思い出しているようだったが。
そういえば伊之助とはあの時に出会ったんだったな。相変わらず賑やかだ。
「……よもや、君は気がついていたのか」
「はい、稀血の匂いがします」
煉獄さんがいきなり声を小さく落としたので、俺も声を少し小さくする。
よく考えたら、鬼に狙われやすい稀血である情報なんて、あまり周りには知られたくないよな。
「えええ、そんなに匂う……?やだなー、体臭きついかな……。これでも湯浴みは済ませてから来てるのにぃ」
困るはずの当の本人が、一番のんびりしてすんすんと自分の体の匂いを嗅ぎながら、涙目になっているけれど。
「朝緋の匂いは悪くない!良い匂いだ!!」
「師範は黙っててください!あとそうやって嗅がないでください!」
煉獄さん……そこでなぜ、朝緋さんの腰を引き寄せて匂いを嗅ぎ出すんだろう。
あ、朝緋さんに頭を叩かれて離した。この人達、柱と継子だよな?上官を叩いたのに、お咎めなし?
それになんで、煉獄さんは叩かれたのに嬉しそうな匂いを発してるんだろう……?
「んー……血が出るような怪我は今のところしてない。
なのに人間である竈門君にバレた?これじゃ鬼にもバレちゃうってことじゃない……困ったなあ」
「あ、ち!ちがうんです!俺は普通の人より鼻が利くんです!!
前に任務で稀血の人を助けたことがあって、それで稀血の匂いを覚えてて」
「なんだ、臭いって言われたのかと思った」
慌てて嗅覚がいいことを言えば、朝緋さんはふへ、なんて屈託なく笑いかけてきた。
ぎゅん!その笑顔を見た瞬間、胸が痛くなった気がする。
「だ、大丈夫です!体臭は良い匂いがしています!」
「……うん。良い匂いだろうと体臭がどうのこうの言われるのは女としてはちょっと恥ずかしいかな」
「すみません!!」
女性になんてことを言ってしまったんだ。
俺は真っ赤になりながら、謝った。