四周目 肆
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食べ終わっても時間はそんなに経っていなかった。
回転のいい店なのか、いや、提供時間も早く食べ終わるのも早かったせいだ。
朝の日差しが眩しい。
眩しいといえば杏寿郎さん。確か蜜璃との任務が立て続けに入ったって鎹烏からの連絡であったけど、もう終わってるかな?
千寿郎や私へのお土産を買い、わんこ蕎麦も食べたって言ってたな。いいなぁわんこ蕎麦。私なら何杯食べられるだろう。
杏寿郎さんや蜜璃は超えられないと思う。
「まだこんな時間かぁ……あ、腹ごなしになのですが、水の呼吸をお教え下さいませんか?」
雷の呼吸に続き、水の呼吸。教えてもらうにちょうどいい機会だった。
土手下の草原を指差す。時間的にも場所的にも誰〜もいないそこは静かで、修行にもってこい。
「別に構わないが水の呼吸を?いや……その前にそちらの日輪刀は?」
取り出した二本目の日輪刀を驚いたように見つめる冨岡さん。二本持ってるのなんて、宇髄さんくらいだものね。あとは刀じゃないけれど、悲鳴嶼さんが特殊な日輪……武具?をお持ちだ。
「これは他の呼吸を使っても折れぬように耐久性を高めてある、特殊な日輪刀です」
「短い」
「ええ。少しだけ短いですね。短いだけでなく、耐久性が高い分だけ重くって振り抜きがしにくいです。ま、その辺は筋力つければ問題ないかなあ」
つんつん刀を突いてくる彼に、試しに渡してみる。見た目に反した重さにまた驚いていた。
「この前、雷の呼吸を使おうとしたら放てなくて。まだ筋力が足りてないのかな?まあ、その辺は精進あるのみですよねぇ……」
「お前は炎の呼吸を使えるだろう。雷の呼吸は知らんが、水の呼吸までとなると負担が大きい」
刀を返してもらい、その柄を、刃を撫でながらお願いする。
「知ってます。知っていてご教授願いたいのです。お願いします。
ただ、師範には絶対、絶対、ぜーったいに!内緒にしてくださると嬉しいです」
こくり。冨岡さんはまたいつものように頷いた。
水、雷、風、岩。派生の音や蟲、恋、花、霞など。私は、常々他の呼吸を試したい、覚えたいと思っていた。
水の呼吸は私に合うかも、なんて槇寿朗さんも『前』に言っていたこともその念頭にはある。私はちょっと言われただけでその気になるちょろい子だ。
でも結果はあの通り。
ある時は合わずに木刀が折れた。ある時は呼吸が続かず技が発動しなかった。
炎の呼吸と混ぜて合わせる……なんて芸当はできないのだろうか。でもそれって、派生で生まれる呼吸とはちょっと違うものになるだろうな。
そんなことを頭の隅で思いつつも、冨岡さんに言われたままに鍛錬する。
水はどんな形にも姿を変える。どこまでもどこまでも流れていく。その動きを自らにも当て嵌め、適応させる。
「水の呼吸、壱ノ型……水面斬り!!」
私の日輪刀からすっごく薄いエフェクトの型が出現した。ほんとに薄い!けど成功した!
さすがは一番扱いやすく、使う隊士も一番多いといわれる水の呼吸!!
「見てください冨岡さん!私、炎の呼吸の使い手なのに水の呼吸が使えました!壱ノ型が放てましたよ!!」
「!!」
「冨岡さんの教え方が良かったんですね〜!いやー、本当にありがとうございます!
残りの型も練習しますね!!」
口をあんぐり開ける冨岡さんの手を取り、ぶんぶん振って感謝を伝えた。彼は、ニコリともせず、でも私に。
「水柱にはお前がなれ」
と言ってきた。
「……は?冨岡さん何言ってるんですか?冨岡さんが水柱でしょ」
「俺は水柱ではない。煉獄朝緋、お前がなるべきだ」
「は、はあ……?今の水柱って冨岡さんじゃん。それに私が主力として使う呼吸は炎なんで、水柱にはなる気ありませんよ」
「いいや、俺は違う。なるべきはお前だ。飲み込みも早く、一刻ほどで覚えた。炎に続き水をも使えるその才は柱に向いている」
「ああ……そうですか」
言ってる意味わからないけど、うん。水柱になるくらいの気持ちで頑張れってことだよね?多分。そういうことにしておこう。何言っても堂々巡りだ。スルーするほかない。
礼だけはよくよく述べてその日は別れた。
あ、帰る前に墓前にお供えするお菓子を買っていこう。
***
その後、泥と水でべちょべちょのナリで杏寿郎さんが帰宅した。どこもかしこも晴れていたはずだけど通り雨にでも降られたのだろうか。そう聞けば、血鬼術だそうで。
槇寿朗さんと鍛錬する千寿郎を二人で見守る傍ら、今回のお互いの任務内容について会話した。
二人の鬼が出現したそうで。動きが緩慢だが刀の通りにくい巨躯を持つ鬼と、その鬼のおこぼれを頂戴する形で行動し、当たると厄介な血鬼術の雨を降らせてくる鬼を相手取ったそうだ。
協力し合う鬼も一定数いるが、他の鬼を利用するそんな鬼もいるのね。
あ、この杏寿郎さんのお土産美味しい。千寿郎には本のお土産だったな。
私へのお土産ってお洋服や装飾品も多いけど、最近は食べ物が圧倒的に多い。たくさん食べてたくさん鍛錬してもっともっと強くなれってことかな?
私も千寿郎に負けてられない。お土産のお菓子を飲み込んで、その場をあとにする。
木刀を手に取り、槇寿朗さんと千寿郎の元へ割り込んだ。
「父様、私も参戦します!」
「お前もか朝緋。よし千寿郎と共に来い、どこまで強くなったか見てやる」
「やったぁ!行くよ千寿郎!連撃だー!」
「はい!姉上!!」
柱を辞めようとも臓腑を悪くしようとも、現役と変わらぬ強さの槇寿朗さん。彼に修行を付けてもらうのは、久しぶりで腕がなる。
と思ったら、隣から杏寿郎さんまで現れた。
「父上!俺も貴方と刃を交えたい!」
「は!?お前まで来るのか!柱になったのだからもうよかろう!」
「まだまだ俺の強さは貴方に届いておりませんゆえ!!」
揉みくちゃになりながら三人で槇寿朗さんに挑みかかる。
私と千寿郎はあっという間に転がされた。
こうやって槇寿朗さんが一緒にいることからわかるだろうけど、『今回』の命日は彼も一緒にお墓参りに行く。
夢見ていた望む未来が近づいた気がした。
回転のいい店なのか、いや、提供時間も早く食べ終わるのも早かったせいだ。
朝の日差しが眩しい。
眩しいといえば杏寿郎さん。確か蜜璃との任務が立て続けに入ったって鎹烏からの連絡であったけど、もう終わってるかな?
千寿郎や私へのお土産を買い、わんこ蕎麦も食べたって言ってたな。いいなぁわんこ蕎麦。私なら何杯食べられるだろう。
杏寿郎さんや蜜璃は超えられないと思う。
「まだこんな時間かぁ……あ、腹ごなしになのですが、水の呼吸をお教え下さいませんか?」
雷の呼吸に続き、水の呼吸。教えてもらうにちょうどいい機会だった。
土手下の草原を指差す。時間的にも場所的にも誰〜もいないそこは静かで、修行にもってこい。
「別に構わないが水の呼吸を?いや……その前にそちらの日輪刀は?」
取り出した二本目の日輪刀を驚いたように見つめる冨岡さん。二本持ってるのなんて、宇髄さんくらいだものね。あとは刀じゃないけれど、悲鳴嶼さんが特殊な日輪……武具?をお持ちだ。
「これは他の呼吸を使っても折れぬように耐久性を高めてある、特殊な日輪刀です」
「短い」
「ええ。少しだけ短いですね。短いだけでなく、耐久性が高い分だけ重くって振り抜きがしにくいです。ま、その辺は筋力つければ問題ないかなあ」
つんつん刀を突いてくる彼に、試しに渡してみる。見た目に反した重さにまた驚いていた。
「この前、雷の呼吸を使おうとしたら放てなくて。まだ筋力が足りてないのかな?まあ、その辺は精進あるのみですよねぇ……」
「お前は炎の呼吸を使えるだろう。雷の呼吸は知らんが、水の呼吸までとなると負担が大きい」
刀を返してもらい、その柄を、刃を撫でながらお願いする。
「知ってます。知っていてご教授願いたいのです。お願いします。
ただ、師範には絶対、絶対、ぜーったいに!内緒にしてくださると嬉しいです」
こくり。冨岡さんはまたいつものように頷いた。
水、雷、風、岩。派生の音や蟲、恋、花、霞など。私は、常々他の呼吸を試したい、覚えたいと思っていた。
水の呼吸は私に合うかも、なんて槇寿朗さんも『前』に言っていたこともその念頭にはある。私はちょっと言われただけでその気になるちょろい子だ。
でも結果はあの通り。
ある時は合わずに木刀が折れた。ある時は呼吸が続かず技が発動しなかった。
炎の呼吸と混ぜて合わせる……なんて芸当はできないのだろうか。でもそれって、派生で生まれる呼吸とはちょっと違うものになるだろうな。
そんなことを頭の隅で思いつつも、冨岡さんに言われたままに鍛錬する。
水はどんな形にも姿を変える。どこまでもどこまでも流れていく。その動きを自らにも当て嵌め、適応させる。
「水の呼吸、壱ノ型……水面斬り!!」
私の日輪刀からすっごく薄いエフェクトの型が出現した。ほんとに薄い!けど成功した!
さすがは一番扱いやすく、使う隊士も一番多いといわれる水の呼吸!!
「見てください冨岡さん!私、炎の呼吸の使い手なのに水の呼吸が使えました!壱ノ型が放てましたよ!!」
「!!」
「冨岡さんの教え方が良かったんですね〜!いやー、本当にありがとうございます!
残りの型も練習しますね!!」
口をあんぐり開ける冨岡さんの手を取り、ぶんぶん振って感謝を伝えた。彼は、ニコリともせず、でも私に。
「水柱にはお前がなれ」
と言ってきた。
「……は?冨岡さん何言ってるんですか?冨岡さんが水柱でしょ」
「俺は水柱ではない。煉獄朝緋、お前がなるべきだ」
「は、はあ……?今の水柱って冨岡さんじゃん。それに私が主力として使う呼吸は炎なんで、水柱にはなる気ありませんよ」
「いいや、俺は違う。なるべきはお前だ。飲み込みも早く、一刻ほどで覚えた。炎に続き水をも使えるその才は柱に向いている」
「ああ……そうですか」
言ってる意味わからないけど、うん。水柱になるくらいの気持ちで頑張れってことだよね?多分。そういうことにしておこう。何言っても堂々巡りだ。スルーするほかない。
礼だけはよくよく述べてその日は別れた。
あ、帰る前に墓前にお供えするお菓子を買っていこう。
***
その後、泥と水でべちょべちょのナリで杏寿郎さんが帰宅した。どこもかしこも晴れていたはずだけど通り雨にでも降られたのだろうか。そう聞けば、血鬼術だそうで。
槇寿朗さんと鍛錬する千寿郎を二人で見守る傍ら、今回のお互いの任務内容について会話した。
二人の鬼が出現したそうで。動きが緩慢だが刀の通りにくい巨躯を持つ鬼と、その鬼のおこぼれを頂戴する形で行動し、当たると厄介な血鬼術の雨を降らせてくる鬼を相手取ったそうだ。
協力し合う鬼も一定数いるが、他の鬼を利用するそんな鬼もいるのね。
あ、この杏寿郎さんのお土産美味しい。千寿郎には本のお土産だったな。
私へのお土産ってお洋服や装飾品も多いけど、最近は食べ物が圧倒的に多い。たくさん食べてたくさん鍛錬してもっともっと強くなれってことかな?
私も千寿郎に負けてられない。お土産のお菓子を飲み込んで、その場をあとにする。
木刀を手に取り、槇寿朗さんと千寿郎の元へ割り込んだ。
「父様、私も参戦します!」
「お前もか朝緋。よし千寿郎と共に来い、どこまで強くなったか見てやる」
「やったぁ!行くよ千寿郎!連撃だー!」
「はい!姉上!!」
柱を辞めようとも臓腑を悪くしようとも、現役と変わらぬ強さの槇寿朗さん。彼に修行を付けてもらうのは、久しぶりで腕がなる。
と思ったら、隣から杏寿郎さんまで現れた。
「父上!俺も貴方と刃を交えたい!」
「は!?お前まで来るのか!柱になったのだからもうよかろう!」
「まだまだ俺の強さは貴方に届いておりませんゆえ!!」
揉みくちゃになりながら三人で槇寿朗さんに挑みかかる。
私と千寿郎はあっという間に転がされた。
こうやって槇寿朗さんが一緒にいることからわかるだろうけど、『今回』の命日は彼も一緒にお墓参りに行く。
夢見ていた望む未来が近づいた気がした。