四周目 肆
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
退院し、蜜璃に付き添われて煉獄家へと帰ってきた杏寿郎さん。
家の前の道で、三人で抱き合って喜んでいるのが見える。
千寿郎なんか嬉し涙をこぼしてるや。父杏寿郎、母蜜璃、息子千寿郎。まるで親子の再会のようにも見えて微笑ましい。
え?嫉妬しないのかって?しないしない。
まだ出会ってなくとも蜜璃には未来の旦那様がいるじゃん。二人がくっつくところを見るまで私は死んでも死にきれない。
その後、柱になる報告のため槇寿朗さんの部屋を訪れた杏寿郎さん。
先に帰っていた私から報告してしまってもよかったんだけど……こういうのは本人がしたほうがいいし、何より私、キレるかもしれない槇寿朗さんの矛先を向けられたくなかったのよね。
逃げるな卑怯者って?それは私じゃなくて上弦の参に言う言葉だよ私の頭の中の炭治郎。
結果から言うと、槇寿朗さんはほぼ怒らなかった。面倒臭いというのもあるのか褒めることもなかったけれど、『前』のような苛烈な怒りを向けられることはなかった。
まあ、杏寿郎さんが炎柱になり、お役御免とばかりにクビを言い渡された時は腹立たしく思っていたみたいだけども。ぴくりと動いた眉毛が物語っていた。
そりゃそうか。御館様からではなく、まず最初に言い渡してきたのが息子なんだから。息子にクビとか言われたくないよね。私なら恥ずかしすぎて真っ赤になった顔を隠そうとしてキレる。すごくすごくキレる。
それでも諦めの境地に入っていた槇寿朗さんは動かなかった。何も言わなかった。
ただし、槇寿朗さんが怒らない代わりに新たにキレた者がいる。
杏寿郎さんだ。
柱になるという報告だけでなく、杏寿郎さんは私と男と女としてお付き合いをしていると。恋仲だと。これから先、伴侶として迎えると報告したのだ。
階級が甲、もしくは柱になると同時に私に手を出すと決めているくらいだからそろそろ槇寿朗さんにも報告する気はしてたけど、まだ早くない?せめて「言う」と一言欲しかった。心の準備くらいさせて。
「なんとなくそんな気はしていた。兄と妹ではなく、男と女として好き合っていると。千寿郎すらお前達の気持ちに気がついていたくらいだからな。俺には丸わかりだった」
「それならば話は早い!父上には、俺が朝緋と婚姻を結ぶ許可をいただきたく考えております!」
「父様、私も同じ気持ちです」
畳に頭を押し付ける杏寿郎さんに倣い、私も頭を下げてお願いする。しかし答えはNO。
「許可しない」
「な……っ!?何故ですか父上!!」
まさかの却下を前に私は固まってしまった。固まった私とは反対に、杏寿郎さんは動いた。頭を上げて叫ぶように問う。
「飯事のようなものだろうからいずれ別れると思っていた」
「……は?ままごと、ですか?父上は俺と朝緋が遊びで共にいると、そう言うのですか?」
低い、低い声だ。
私達の真剣なお付き合いを飯事などと罵られ、怒り心頭の御様子。鬼と相対した時のように額には青筋も浮かんでいた。杏寿郎さん、相手は父親だよ。
「師範、落ち着いて」
「朝緋は呼び方を直せ!そして黙っていろ!!」
「アッハイ」
怒られた。怖いので朝緋ちゃんは言われた通りおとなしく黙るぅん。お口チャック。
「父上。俺は朝緋と遊びではなく、真剣に愛を育んでおります!!」
「それでも駄目だ。別れろ」
「いいえ俺は絶対に朝緋と別れません」
バチバチと二人の間に静かな火花が散っている。
襖向こうでは息を飲む音がしていた。
あー。杏寿郎さんの大声で千寿郎も聞きに来ちゃったわけね。こんな内容は聞かせたくなかったなぁ……。
「はあ……直接の血の繋がりもないから別にいいだろうと許していたのが仇となったな。もっと早く別れさせるべきだった」
ぼりぼりと頭を掻いてから、槇寿朗さんが今度は私を見てきた。
「朝緋」
「あ、はい」
なんだろう。蚊帳の外だと思っていたのに、私にも矛先向くの?いや、私もめちゃくちゃ関係する話だから会話に参加して当然か。黙るよう言ってきたのだって杏寿郎さんであって槇寿朗さんではない。
「お前に釣書が来ている。杏寿郎と別れてこの中の人から伴侶を選びなさい。
杏寿郎もだ。お前はこの家の嫡男。煉獄家を存続させるに最適な女子を俺が探しておく」
蛇腹折りの釣書をチラつかせてくる槇寿朗さん。え、それ全部釣書?多くない?
そういえば『前』に釣書を投げつけられたのも大体この時期だったなあ。
今回は投げつけられたわけでなく手渡され……え。
それは私の手に渡ることなく、杏寿郎さんの手に渡った。
ビリビリビリ、全てが一瞬にして紙屑へと変わる。
「何をする杏寿郎!!」
「朝緋にはこんなもの必要ありません。釣書中の男共なんぞに朝緋をくれてやるものか。朝緋をその目に映すことも、朝緋と言葉を交わすことすら許せんというに……!
朝緋、君もだ!何故釣書を受け取ろうとした!?君には要らないものだろう!!」
怒る、怒る、怒る。
炎が激しく燃え盛るように、杏寿郎さんが怒りをあらわにして槇寿朗さんを圧倒している。背中には炎虎が見えるようだ。
「私は反射的に受け取ろうとしてしまっただけで……」
「はぁ!?」
「ヒッ」
こわっ!この返事すら反論になるというのか。
もっかい黙ろう……。私は貝です。閉じた貝です。お味噌汁はアサリよりシジミ派です。
家の前の道で、三人で抱き合って喜んでいるのが見える。
千寿郎なんか嬉し涙をこぼしてるや。父杏寿郎、母蜜璃、息子千寿郎。まるで親子の再会のようにも見えて微笑ましい。
え?嫉妬しないのかって?しないしない。
まだ出会ってなくとも蜜璃には未来の旦那様がいるじゃん。二人がくっつくところを見るまで私は死んでも死にきれない。
その後、柱になる報告のため槇寿朗さんの部屋を訪れた杏寿郎さん。
先に帰っていた私から報告してしまってもよかったんだけど……こういうのは本人がしたほうがいいし、何より私、キレるかもしれない槇寿朗さんの矛先を向けられたくなかったのよね。
逃げるな卑怯者って?それは私じゃなくて上弦の参に言う言葉だよ私の頭の中の炭治郎。
結果から言うと、槇寿朗さんはほぼ怒らなかった。面倒臭いというのもあるのか褒めることもなかったけれど、『前』のような苛烈な怒りを向けられることはなかった。
まあ、杏寿郎さんが炎柱になり、お役御免とばかりにクビを言い渡された時は腹立たしく思っていたみたいだけども。ぴくりと動いた眉毛が物語っていた。
そりゃそうか。御館様からではなく、まず最初に言い渡してきたのが息子なんだから。息子にクビとか言われたくないよね。私なら恥ずかしすぎて真っ赤になった顔を隠そうとしてキレる。すごくすごくキレる。
それでも諦めの境地に入っていた槇寿朗さんは動かなかった。何も言わなかった。
ただし、槇寿朗さんが怒らない代わりに新たにキレた者がいる。
杏寿郎さんだ。
柱になるという報告だけでなく、杏寿郎さんは私と男と女としてお付き合いをしていると。恋仲だと。これから先、伴侶として迎えると報告したのだ。
階級が甲、もしくは柱になると同時に私に手を出すと決めているくらいだからそろそろ槇寿朗さんにも報告する気はしてたけど、まだ早くない?せめて「言う」と一言欲しかった。心の準備くらいさせて。
「なんとなくそんな気はしていた。兄と妹ではなく、男と女として好き合っていると。千寿郎すらお前達の気持ちに気がついていたくらいだからな。俺には丸わかりだった」
「それならば話は早い!父上には、俺が朝緋と婚姻を結ぶ許可をいただきたく考えております!」
「父様、私も同じ気持ちです」
畳に頭を押し付ける杏寿郎さんに倣い、私も頭を下げてお願いする。しかし答えはNO。
「許可しない」
「な……っ!?何故ですか父上!!」
まさかの却下を前に私は固まってしまった。固まった私とは反対に、杏寿郎さんは動いた。頭を上げて叫ぶように問う。
「飯事のようなものだろうからいずれ別れると思っていた」
「……は?ままごと、ですか?父上は俺と朝緋が遊びで共にいると、そう言うのですか?」
低い、低い声だ。
私達の真剣なお付き合いを飯事などと罵られ、怒り心頭の御様子。鬼と相対した時のように額には青筋も浮かんでいた。杏寿郎さん、相手は父親だよ。
「師範、落ち着いて」
「朝緋は呼び方を直せ!そして黙っていろ!!」
「アッハイ」
怒られた。怖いので朝緋ちゃんは言われた通りおとなしく黙るぅん。お口チャック。
「父上。俺は朝緋と遊びではなく、真剣に愛を育んでおります!!」
「それでも駄目だ。別れろ」
「いいえ俺は絶対に朝緋と別れません」
バチバチと二人の間に静かな火花が散っている。
襖向こうでは息を飲む音がしていた。
あー。杏寿郎さんの大声で千寿郎も聞きに来ちゃったわけね。こんな内容は聞かせたくなかったなぁ……。
「はあ……直接の血の繋がりもないから別にいいだろうと許していたのが仇となったな。もっと早く別れさせるべきだった」
ぼりぼりと頭を掻いてから、槇寿朗さんが今度は私を見てきた。
「朝緋」
「あ、はい」
なんだろう。蚊帳の外だと思っていたのに、私にも矛先向くの?いや、私もめちゃくちゃ関係する話だから会話に参加して当然か。黙るよう言ってきたのだって杏寿郎さんであって槇寿朗さんではない。
「お前に釣書が来ている。杏寿郎と別れてこの中の人から伴侶を選びなさい。
杏寿郎もだ。お前はこの家の嫡男。煉獄家を存続させるに最適な女子を俺が探しておく」
蛇腹折りの釣書をチラつかせてくる槇寿朗さん。え、それ全部釣書?多くない?
そういえば『前』に釣書を投げつけられたのも大体この時期だったなあ。
今回は投げつけられたわけでなく手渡され……え。
それは私の手に渡ることなく、杏寿郎さんの手に渡った。
ビリビリビリ、全てが一瞬にして紙屑へと変わる。
「何をする杏寿郎!!」
「朝緋にはこんなもの必要ありません。釣書中の男共なんぞに朝緋をくれてやるものか。朝緋をその目に映すことも、朝緋と言葉を交わすことすら許せんというに……!
朝緋、君もだ!何故釣書を受け取ろうとした!?君には要らないものだろう!!」
怒る、怒る、怒る。
炎が激しく燃え盛るように、杏寿郎さんが怒りをあらわにして槇寿朗さんを圧倒している。背中には炎虎が見えるようだ。
「私は反射的に受け取ろうとしてしまっただけで……」
「はぁ!?」
「ヒッ」
こわっ!この返事すら反論になるというのか。
もっかい黙ろう……。私は貝です。閉じた貝です。お味噌汁はアサリよりシジミ派です。