四周目 肆
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鬼が私の上から下まで舐めるように見てくる。私と話をすることにしたらしく、攻撃が一時止んだ。
「煉獄のあの態度、あのカオ!言葉通りなら家族で師弟!ついでに男と女としてもデキているな?」
下位の鬼と違い、会話が可能で言葉が通じるところは数字持ちの鬼は好きよ。好きでいてあげるから頸オイテケ。
「なかなかに鋭いね。貴方こそ顔にも髪にもだんだら模様。もしかして人間の時は新撰組の隊士だったりして。壬生狼という言葉に聞き覚えはない?」
「なんだそれは!俺にそのような記憶はほとんどない!!」
「あっそう。もしそうなら銃器を使うなんて武士の風上にも置けない新撰組の名折れだなって詰れたんだけど……。
もはや影でしか生きられないジメジメ虫の鬼だもんね!太陽や日輪刀に怯えて逃げ惑うしかのうのない卑怯者だもんね!そんなことどうでもいいか!!」
煽りに煽るような口調を使えば、奴のこめかみがぴくりと反応を返した。
「影でしか生きられない、だと?逃げ惑うしかのうがない、だと?」
本当のことしか言っていないけれど私の煽りが効いたよう。口調ではなく言葉の何かが鬼の逆鱗に触れた。
「煉獄の一番大事な人間……奴から全て奪ってやる。人間がおおよそ考え付かぬありとあらゆる苦痛を与えて拷問してやる……!
復讐、してやる……っ!!」
「あはは、やっと私の相手もしてくれる気になったんだ?」
「おしゃべりはここまでだ!!」
ドパパパパパ!!
銃口が私に向けられ、そして発射された。
これで私も存分に日輪刀を振るえる!
杏寿郎さんを傷つけた報い、受けさせてやるんだから!!
「気をつけろ朝緋!それは当たれば致命傷だ!!」
「大丈夫!私は銃弾より……奴より速いっ!炎の呼吸ーー」
鋭い杏寿郎さんの一声。
「くそぉ!ちょこまかと!」
「お前は遅い!当たらないよっ!ーー気炎万象と昇り炎天!!」
素早く上段から斬り下ろし、続け様に下段から斬り上げる。影を纏っているはずなのにやわらかい!斬れる!!
しかしその刃は鬼の体の途中で止まった。
「かかったな?至近距離なら避けられまい!」
「なっ!?」
ドォン!!
ピストルの銃口が私の頭に向いた。
「朝緋ーーっ!」
「大丈夫、側頭部に掠っただけです!ーー不知火っ!!」
間一髪、顔を逸らしてよかった。
流れる血はそのままに、壱ノ型を放ったのち素早く刀を入れ替える。鋼鐵塚さんに鍛えてもらった、私の二本目の日輪刀 だ。
「からの雷の呼吸、弐ノ……、!?」
ずぅん……!
呼吸が重いっ!?体の動きも重苦しい!!
ああ、駄目だ。呼吸が途切れる、まだ。まだ私には使えない。『このまま』では、雷の呼吸そのもののままでは、使えない!
せっかくの日輪刀が、何の意味もない!!
突然動けなくなった。
「ほぉ、貴様は稀血なのだな」
「!?」
ズズズ、影が私の周りに展開する。取り囲むようにして大量の狼が現れた。
嘘でしょ。こんなの捌ききれない……!
飛びかかってくる狼に急いで普段の日輪刀、伍ノ型・炎虎改乱れ咬みを放ってはみたけれど間に合わない。
「やっ、うぐっ……!!」
腕を噛まれた!?いや、引きずられて影の中に取り込まれ……っ!
「はぁははははぁ!稀血なら別だ!食い殺して我が血肉にしてくれる!!」
食われる食われる食われる!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!痛い痛い痛い、引き摺らないで……っ!
ズルズルズル、体が滑る!
あと少しで取り込まれるという時。
「させるかぁ!炎の呼吸壱ノ型不知火伍ノ型炎虎っ!!」
豪速かつ強力な炎の攻撃が、私と影とを分断。鬼の体を斬り裂いた。
「し、はん……、」
まだ回復しきっていなくてボロボロの風体。なのに力強く頼もしい腕は、私をしっかりと支えてくれていた。血と汗に濡れていようと美しい横顔をついぼーっと眺めてしまう。
「動けるか?」
小さくつぶやかれた言葉に頷き返すと、頭にぽんと手が置かれ、そして突き離される。
「もういい。朝緋は他の隊士とともに獣共を倒し爆弾の解体に回れ。ここから離れろ」
「でも師範……っ」
「行け」
また頷くしかなかった。
これ以上はここにいても邪魔になるだけだとわかった。余計なことをしてしまった。
でもこれで少しでも貴方の怪我が減ればそれでいい。
どうか気をつけて。離れながら放ったその言葉ににこりと笑みを返し、杏寿郎さんは鬼に向き直る。
「愛しい女との最期の話は終わったようだなぁ煉獄!あの稀血女は貴様を殺したあとでゆっくりいただくとしよう……」
「食わせるわけがないだろう。お前の頸は俺がここで落とす!!」
その叫びと共に戦いが再び始まった。
狼を退治して回る私の目にも、杏寿郎さんに銃弾が大量に浴びせられるのが見えた。爆発に何度も巻き込まれる姿も。
でもきっともう、杏寿郎さんは倒れやしない。何度だって立ち上がる。
戦いの終わりが近いと分かったのは、私が蜜璃と合流して杏寿郎さんの元へと向かうその時だった。
全ての銃弾を使い切って弾切れを起こした鬼が、刃こぼれだらけのぼろぼろの刀を手に取る。
日輪刀?いや違う。この鬼は鬼殺隊士を積極的に殺め、その日輪刀をコレクションしていたと聞く。でも握ったその刀は日輪刀ではない普通の刀だった。
「血鬼術、鹵獲腔・戦禍陣狼」
影が鬼の元へと集結していく。帝都に放たれていた残り少ない狼も含めてだ。そしてその身に纏い、人狼のような姿に変貌を遂げる。
体毛がギザギザと尖り、触れただけでこちらが削られそうだ。
その手には先ほどの刀が影により鋭さを増して握られていた。
「確か、煉獄杏寿郎だったな?」
「ああ」
「……そうか。俺は佩狼。煉獄杏寿郎、ここからは一人の武士として貴様を殺す!」
「ああ、望むところだ」
一人の武士。そして『狼』の響き。扱う血鬼術。どれをとっても、やはりこの鬼は……。
いや、歴史上の偉人かもしれなくても、鬼は鬼。
でも、その武士道を見届けたいと。杏寿郎さんもまた、一人の武士らしく一騎討ちに持ち込んだ。
取り込む力がより強く変貌した鬼相手にできることはただ一つ。
相手よりも強く、早く剣を振るう事。
ゴォォォォオ!!
刀と刀がぶつかり合う。
その衝撃は爆弾の爆発をも凌ぎ、帝都のどこからでもはっきりと見えた。
「杏寿郎さん……っ!」
「煉獄さん!!」
燃えるような斬撃が鬼へと向かう。
炎の呼吸 奥義 玖ノ型・煉獄
命、魂。その全てごと相手にぶつける必殺の斬撃。その威力は凄まじく、全てを抉り燃やす。
鬼の影が炎に焼き払われていく。
鬼の頸が文字通り燃え尽き、消し飛んだ。
「やった、十二鬼月を……倒した……」
誰か他の隊士の声がする。すぐ近くなはずなのに、どこか遠くで聞こえるかのようだ。
上弦の参の時以来の、一対一の戦いだった。
ああ……こんなにも、過酷で苛烈で、激しい戦いだったとは思わなかった。
私は蜜璃と二人、大怪我とそして全力で玖ノ型をはなって意識が朦朧としている杏寿郎さんに抱きつき、いつまでも泣いた。
「煉獄のあの態度、あのカオ!言葉通りなら家族で師弟!ついでに男と女としてもデキているな?」
下位の鬼と違い、会話が可能で言葉が通じるところは数字持ちの鬼は好きよ。好きでいてあげるから頸オイテケ。
「なかなかに鋭いね。貴方こそ顔にも髪にもだんだら模様。もしかして人間の時は新撰組の隊士だったりして。壬生狼という言葉に聞き覚えはない?」
「なんだそれは!俺にそのような記憶はほとんどない!!」
「あっそう。もしそうなら銃器を使うなんて武士の風上にも置けない新撰組の名折れだなって詰れたんだけど……。
もはや影でしか生きられないジメジメ虫の鬼だもんね!太陽や日輪刀に怯えて逃げ惑うしかのうのない卑怯者だもんね!そんなことどうでもいいか!!」
煽りに煽るような口調を使えば、奴のこめかみがぴくりと反応を返した。
「影でしか生きられない、だと?逃げ惑うしかのうがない、だと?」
本当のことしか言っていないけれど私の煽りが効いたよう。口調ではなく言葉の何かが鬼の逆鱗に触れた。
「煉獄の一番大事な人間……奴から全て奪ってやる。人間がおおよそ考え付かぬありとあらゆる苦痛を与えて拷問してやる……!
復讐、してやる……っ!!」
「あはは、やっと私の相手もしてくれる気になったんだ?」
「おしゃべりはここまでだ!!」
ドパパパパパ!!
銃口が私に向けられ、そして発射された。
これで私も存分に日輪刀を振るえる!
杏寿郎さんを傷つけた報い、受けさせてやるんだから!!
「気をつけろ朝緋!それは当たれば致命傷だ!!」
「大丈夫!私は銃弾より……奴より速いっ!炎の呼吸ーー」
鋭い杏寿郎さんの一声。
「くそぉ!ちょこまかと!」
「お前は遅い!当たらないよっ!ーー気炎万象と昇り炎天!!」
素早く上段から斬り下ろし、続け様に下段から斬り上げる。影を纏っているはずなのにやわらかい!斬れる!!
しかしその刃は鬼の体の途中で止まった。
「かかったな?至近距離なら避けられまい!」
「なっ!?」
ドォン!!
ピストルの銃口が私の頭に向いた。
「朝緋ーーっ!」
「大丈夫、側頭部に掠っただけです!ーー不知火っ!!」
間一髪、顔を逸らしてよかった。
流れる血はそのままに、壱ノ型を放ったのち素早く刀を入れ替える。鋼鐵塚さんに鍛えてもらった、私の二本目の
「からの雷の呼吸、弐ノ……、!?」
ずぅん……!
呼吸が重いっ!?体の動きも重苦しい!!
ああ、駄目だ。呼吸が途切れる、まだ。まだ私には使えない。『このまま』では、雷の呼吸そのもののままでは、使えない!
せっかくの日輪刀が、何の意味もない!!
突然動けなくなった。
「ほぉ、貴様は稀血なのだな」
「!?」
ズズズ、影が私の周りに展開する。取り囲むようにして大量の狼が現れた。
嘘でしょ。こんなの捌ききれない……!
飛びかかってくる狼に急いで普段の日輪刀、伍ノ型・炎虎改乱れ咬みを放ってはみたけれど間に合わない。
「やっ、うぐっ……!!」
腕を噛まれた!?いや、引きずられて影の中に取り込まれ……っ!
「はぁははははぁ!稀血なら別だ!食い殺して我が血肉にしてくれる!!」
食われる食われる食われる!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!痛い痛い痛い、引き摺らないで……っ!
ズルズルズル、体が滑る!
あと少しで取り込まれるという時。
「させるかぁ!炎の呼吸壱ノ型不知火伍ノ型炎虎っ!!」
豪速かつ強力な炎の攻撃が、私と影とを分断。鬼の体を斬り裂いた。
「し、はん……、」
まだ回復しきっていなくてボロボロの風体。なのに力強く頼もしい腕は、私をしっかりと支えてくれていた。血と汗に濡れていようと美しい横顔をついぼーっと眺めてしまう。
「動けるか?」
小さくつぶやかれた言葉に頷き返すと、頭にぽんと手が置かれ、そして突き離される。
「もういい。朝緋は他の隊士とともに獣共を倒し爆弾の解体に回れ。ここから離れろ」
「でも師範……っ」
「行け」
また頷くしかなかった。
これ以上はここにいても邪魔になるだけだとわかった。余計なことをしてしまった。
でもこれで少しでも貴方の怪我が減ればそれでいい。
どうか気をつけて。離れながら放ったその言葉ににこりと笑みを返し、杏寿郎さんは鬼に向き直る。
「愛しい女との最期の話は終わったようだなぁ煉獄!あの稀血女は貴様を殺したあとでゆっくりいただくとしよう……」
「食わせるわけがないだろう。お前の頸は俺がここで落とす!!」
その叫びと共に戦いが再び始まった。
狼を退治して回る私の目にも、杏寿郎さんに銃弾が大量に浴びせられるのが見えた。爆発に何度も巻き込まれる姿も。
でもきっともう、杏寿郎さんは倒れやしない。何度だって立ち上がる。
戦いの終わりが近いと分かったのは、私が蜜璃と合流して杏寿郎さんの元へと向かうその時だった。
全ての銃弾を使い切って弾切れを起こした鬼が、刃こぼれだらけのぼろぼろの刀を手に取る。
日輪刀?いや違う。この鬼は鬼殺隊士を積極的に殺め、その日輪刀をコレクションしていたと聞く。でも握ったその刀は日輪刀ではない普通の刀だった。
「血鬼術、鹵獲腔・戦禍陣狼」
影が鬼の元へと集結していく。帝都に放たれていた残り少ない狼も含めてだ。そしてその身に纏い、人狼のような姿に変貌を遂げる。
体毛がギザギザと尖り、触れただけでこちらが削られそうだ。
その手には先ほどの刀が影により鋭さを増して握られていた。
「確か、煉獄杏寿郎だったな?」
「ああ」
「……そうか。俺は佩狼。煉獄杏寿郎、ここからは一人の武士として貴様を殺す!」
「ああ、望むところだ」
一人の武士。そして『狼』の響き。扱う血鬼術。どれをとっても、やはりこの鬼は……。
いや、歴史上の偉人かもしれなくても、鬼は鬼。
でも、その武士道を見届けたいと。杏寿郎さんもまた、一人の武士らしく一騎討ちに持ち込んだ。
取り込む力がより強く変貌した鬼相手にできることはただ一つ。
相手よりも強く、早く剣を振るう事。
ゴォォォォオ!!
刀と刀がぶつかり合う。
その衝撃は爆弾の爆発をも凌ぎ、帝都のどこからでもはっきりと見えた。
「杏寿郎さん……っ!」
「煉獄さん!!」
燃えるような斬撃が鬼へと向かう。
炎の呼吸 奥義 玖ノ型・煉獄
命、魂。その全てごと相手にぶつける必殺の斬撃。その威力は凄まじく、全てを抉り燃やす。
鬼の影が炎に焼き払われていく。
鬼の頸が文字通り燃え尽き、消し飛んだ。
「やった、十二鬼月を……倒した……」
誰か他の隊士の声がする。すぐ近くなはずなのに、どこか遠くで聞こえるかのようだ。
上弦の参の時以来の、一対一の戦いだった。
ああ……こんなにも、過酷で苛烈で、激しい戦いだったとは思わなかった。
私は蜜璃と二人、大怪我とそして全力で玖ノ型をはなって意識が朦朧としている杏寿郎さんに抱きつき、いつまでも泣いた。