四周目 肆
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影の中から落とされた爆弾が、そのまま次々に爆発した。
カッ!ドォン!!
夜に走る閃光。爆風の熱さ。腹の底にまで響くその衝撃。
鬼の上半身が吹き飛んでいるのが見える。自分の体もろとも爆発させたのか!数字持ちだからすぐ治るっていいたいのね卑怯者め。実際すぐ回復していってる。
体がニョキニョキ生えてくるの気持ち悪い。
……待って、杏寿郎さんは?鬼の体が吹き飛んでるってことはまさか!
「杏寿郎さん!!」
居ても立っても居られず、その姿を探して瓦礫の中を進む。
ガラ……、崩れた瓦礫が動き、どかそうとした瞬間。
「炎の呼吸、伍ノ型・炎虎!」
ゴォォォォ……!
瓦礫から飛び出した杏寿郎さんの炎の虎が吠え、回復した鬼の体を噛み砕いた。
衝撃で弾かれる鬼の体。
「師範……っ!」
「不覚を取った。だがまだ動ける。
朝緋、やはり奴は俺を父上と勘違いして固執しているようだ。もしも煉獄家の者とわかれば矛先が君にも行くかもしれん。黙っているように」
「……え」
頬が切れ、頭を血に濡らし、そこかしこが焼け焦げ、切り傷まみれ血まみれの満身創痍の姿。肩や腕の部分が血で染まりきっていた。
それでもよかった。『前』は足も折れていたけれど、今は折れていない。いや、折れていないからなんだというのだ。
ホッとできる部分なんて一つもない!
なのに、私に大人しくしろと、そう言うの?
「お前は俺が倒す!!」
杏寿郎さんが日輪刀を鬼に向ける。一つとして強さにも何にも翳りはない。
「倒すだと?俺の頸は絶対に斬れない」
それは影が鬼の体を覆い、刃を塞いでしまうから。刀を取り込んでしまうから。
頸周りを強化する鬼はこれまで何度も相手にしてきたけど、取り込む事で刃の進行を妨げるタイプは初めてだ。
スライムのようで、底なし沼のようで。力強く斬り落とすを得意とする炎の呼吸とは相性最悪だ。
「いくら剣を極めようとも銃器には勝てん。同じく、鬼殺隊が鬼に勝てるわけがないというに……」
「お前は此方に恨みがあるようだが、あいにく俺はその対象ではない。だがお前が鬼である以上、見逃したりはしない!
俺の名は煉獄杏寿郎だ!来いッ!お前の怨恨ごと、俺が切り伏せるッ!!」
戦いの幕が再び切って落とされる。
「血鬼術、鹵獲腔・影狼」
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!」
血鬼術が発動し、鬼の影という影。往来の影からも、ギザギザの目のようなものがたくさんついた狼が大量に現れる。
蜜璃が言っていた可愛くないわんちゃんってこいつらのことか!!
行動範囲がどこまで広いのかはわからない。けれど大量に帝都の中へと狂犬が放たれた!
その一部が私にも向かってくる。
「はぁっ!犬は犬らしく伏せでもしてなさいっ!」
げっ、この狼も影と同じなのっ!?刀が取り込まれそう!重い……っ!これは生半可な斬撃では斬れない。けれど私には蜜璃のような膂力も、杏寿郎さんのような力も技の強さもない。あるのは必死に磨いた速さだけ。
ううん、それだけで十分。
「壱ノ型不知火っ!!」
最速の不知火が向かってきた狼達の体を両断した。
杏寿郎さんにも向かっていった狼達は、彼の炎の呼吸で消し飛んでいた。
けれど間髪入れずに投げられた爆弾で、敵の頸までは刃が届かない。
届いたところで下手な攻撃では取り込まれる。
鬼が言うようにあの頸を斬るのは難しい。一筋縄ではいかないようだ。
杏寿郎さんが押され始めている!
目の中に血が流れ込んで見えにくい状態なのも大きい。
何で手を出しちゃ駄目なの!何で黙ってなくちゃいけないの!私だって鬼殺隊士なのに!
これじゃただ突っ立ってるだけの足手纏いじゃないの!私が来た意味は!?
バン!!
私が憤りを感じたと同時、また鬼が自分の頭を撃ち抜いた。あの行動は一体何……?
意味を考える暇も与えられぬまま、体から出した銃が杏寿郎さんを狙う。
見間違いではなければあれは秒間に何発もの弾丸を発射し、相手を蜂の巣に変えてしまうというミニガンでは!?あんなものまで……!!
そのほか、ありとあらゆる銃火器が体から飛び出している。ライフル、その前身となった火縄銃、小型ピストル……この時代の日本にそぐわぬものまで!
その銃口の全てが杏寿郎さんに向いた。
「復讐だ、復讐してやる!煉獄杏寿郎!!」
ドドドドド!!
銃弾の雨が降り注いだ!
日輪刀で防ぎ、斬り払うにも限界がある!
杏寿郎さんの体に穴が開いてしまう!!
もう、傷つく姿は見たくないのに。
「復讐は貴様が最も苦しむ方法で完遂してやる!虫の息になった貴様の目の前で同僚、家族、大切な者を拷問して殺す……!」
「くっ、そのような真似させるかっ!!」
家族を、大切な者を拷問して殺す……?ああ、本当だ。煉獄家の者とわかれば、矛先は私に向くだろう。
そして向いた矛先の中、私が鬼の影を引き剥がせば……!そうすれば隙もできる。鬼が油断して頸が取れやすい瞬間がやってくる。
杏寿郎さんが回復する時間も取れる。
判断した私の行動は早く、取りついてくる狼を一刀両断して鬼と、そして膝をつきつつある杏寿郎さんの戦いに割り込んだ。
「下弦の弐!私も煉獄家の者ですが復讐しますか!その人の妹です……よっ!」
「あ゛?」
試しに後ろから鬼の頸に刃を突き立てながら、問いかける。ああ、駄目か。日輪刀を取り込む力が狼より強い!すぐに離脱したのは正解ね。
「朝緋!よせ、何も言うな!!君をまた失うわけには……っ」
『また』ーー?今、杏寿郎さんがまたと言った。いや、今はそれどころじゃない。目の前の鬼のことが先。
「師範は一度下がってその傷を急ぎ塞いで!それじゃ血も邪魔して前が見えないでしょ!」
怪我の程度はぱっと見ではわからないけれど、頭からだらだら垂れた血が目に入り、杏寿郎さんの視界を遮っている状態で。片目では距離が計りづらい。
杏寿郎さんは視界に頼らない戦闘だってできるのはわかってる。でも、私だって杏寿郎さんの力になりたい。
「そんな暇はない!」
「大丈夫!その間この鬼は私が相手する……!」
「……ぐっ……!かたじけない。すぐ交代する!」
よかった、承諾してくれた。
カッ!ドォン!!
夜に走る閃光。爆風の熱さ。腹の底にまで響くその衝撃。
鬼の上半身が吹き飛んでいるのが見える。自分の体もろとも爆発させたのか!数字持ちだからすぐ治るっていいたいのね卑怯者め。実際すぐ回復していってる。
体がニョキニョキ生えてくるの気持ち悪い。
……待って、杏寿郎さんは?鬼の体が吹き飛んでるってことはまさか!
「杏寿郎さん!!」
居ても立っても居られず、その姿を探して瓦礫の中を進む。
ガラ……、崩れた瓦礫が動き、どかそうとした瞬間。
「炎の呼吸、伍ノ型・炎虎!」
ゴォォォォ……!
瓦礫から飛び出した杏寿郎さんの炎の虎が吠え、回復した鬼の体を噛み砕いた。
衝撃で弾かれる鬼の体。
「師範……っ!」
「不覚を取った。だがまだ動ける。
朝緋、やはり奴は俺を父上と勘違いして固執しているようだ。もしも煉獄家の者とわかれば矛先が君にも行くかもしれん。黙っているように」
「……え」
頬が切れ、頭を血に濡らし、そこかしこが焼け焦げ、切り傷まみれ血まみれの満身創痍の姿。肩や腕の部分が血で染まりきっていた。
それでもよかった。『前』は足も折れていたけれど、今は折れていない。いや、折れていないからなんだというのだ。
ホッとできる部分なんて一つもない!
なのに、私に大人しくしろと、そう言うの?
「お前は俺が倒す!!」
杏寿郎さんが日輪刀を鬼に向ける。一つとして強さにも何にも翳りはない。
「倒すだと?俺の頸は絶対に斬れない」
それは影が鬼の体を覆い、刃を塞いでしまうから。刀を取り込んでしまうから。
頸周りを強化する鬼はこれまで何度も相手にしてきたけど、取り込む事で刃の進行を妨げるタイプは初めてだ。
スライムのようで、底なし沼のようで。力強く斬り落とすを得意とする炎の呼吸とは相性最悪だ。
「いくら剣を極めようとも銃器には勝てん。同じく、鬼殺隊が鬼に勝てるわけがないというに……」
「お前は此方に恨みがあるようだが、あいにく俺はその対象ではない。だがお前が鬼である以上、見逃したりはしない!
俺の名は煉獄杏寿郎だ!来いッ!お前の怨恨ごと、俺が切り伏せるッ!!」
戦いの幕が再び切って落とされる。
「血鬼術、鹵獲腔・影狼」
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!」
血鬼術が発動し、鬼の影という影。往来の影からも、ギザギザの目のようなものがたくさんついた狼が大量に現れる。
蜜璃が言っていた可愛くないわんちゃんってこいつらのことか!!
行動範囲がどこまで広いのかはわからない。けれど大量に帝都の中へと狂犬が放たれた!
その一部が私にも向かってくる。
「はぁっ!犬は犬らしく伏せでもしてなさいっ!」
げっ、この狼も影と同じなのっ!?刀が取り込まれそう!重い……っ!これは生半可な斬撃では斬れない。けれど私には蜜璃のような膂力も、杏寿郎さんのような力も技の強さもない。あるのは必死に磨いた速さだけ。
ううん、それだけで十分。
「壱ノ型不知火っ!!」
最速の不知火が向かってきた狼達の体を両断した。
杏寿郎さんにも向かっていった狼達は、彼の炎の呼吸で消し飛んでいた。
けれど間髪入れずに投げられた爆弾で、敵の頸までは刃が届かない。
届いたところで下手な攻撃では取り込まれる。
鬼が言うようにあの頸を斬るのは難しい。一筋縄ではいかないようだ。
杏寿郎さんが押され始めている!
目の中に血が流れ込んで見えにくい状態なのも大きい。
何で手を出しちゃ駄目なの!何で黙ってなくちゃいけないの!私だって鬼殺隊士なのに!
これじゃただ突っ立ってるだけの足手纏いじゃないの!私が来た意味は!?
バン!!
私が憤りを感じたと同時、また鬼が自分の頭を撃ち抜いた。あの行動は一体何……?
意味を考える暇も与えられぬまま、体から出した銃が杏寿郎さんを狙う。
見間違いではなければあれは秒間に何発もの弾丸を発射し、相手を蜂の巣に変えてしまうというミニガンでは!?あんなものまで……!!
そのほか、ありとあらゆる銃火器が体から飛び出している。ライフル、その前身となった火縄銃、小型ピストル……この時代の日本にそぐわぬものまで!
その銃口の全てが杏寿郎さんに向いた。
「復讐だ、復讐してやる!煉獄杏寿郎!!」
ドドドドド!!
銃弾の雨が降り注いだ!
日輪刀で防ぎ、斬り払うにも限界がある!
杏寿郎さんの体に穴が開いてしまう!!
もう、傷つく姿は見たくないのに。
「復讐は貴様が最も苦しむ方法で完遂してやる!虫の息になった貴様の目の前で同僚、家族、大切な者を拷問して殺す……!」
「くっ、そのような真似させるかっ!!」
家族を、大切な者を拷問して殺す……?ああ、本当だ。煉獄家の者とわかれば、矛先は私に向くだろう。
そして向いた矛先の中、私が鬼の影を引き剥がせば……!そうすれば隙もできる。鬼が油断して頸が取れやすい瞬間がやってくる。
杏寿郎さんが回復する時間も取れる。
判断した私の行動は早く、取りついてくる狼を一刀両断して鬼と、そして膝をつきつつある杏寿郎さんの戦いに割り込んだ。
「下弦の弐!私も煉獄家の者ですが復讐しますか!その人の妹です……よっ!」
「あ゛?」
試しに後ろから鬼の頸に刃を突き立てながら、問いかける。ああ、駄目か。日輪刀を取り込む力が狼より強い!すぐに離脱したのは正解ね。
「朝緋!よせ、何も言うな!!君をまた失うわけには……っ」
『また』ーー?今、杏寿郎さんがまたと言った。いや、今はそれどころじゃない。目の前の鬼のことが先。
「師範は一度下がってその傷を急ぎ塞いで!それじゃ血も邪魔して前が見えないでしょ!」
怪我の程度はぱっと見ではわからないけれど、頭からだらだら垂れた血が目に入り、杏寿郎さんの視界を遮っている状態で。片目では距離が計りづらい。
杏寿郎さんは視界に頼らない戦闘だってできるのはわかってる。でも、私だって杏寿郎さんの力になりたい。
「そんな暇はない!」
「大丈夫!その間この鬼は私が相手する……!」
「……ぐっ……!かたじけない。すぐ交代する!」
よかった、承諾してくれた。