四周目 肆
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振り向いて杏寿郎さんの目を見つめる。
「だからね、わがまま言うよ。私もその任務に行きたいって」
「!!」
杏寿郎さんの目が見開かれた。
「だ……駄目だ駄目だ!朝緋は稀血で相手は十二鬼月で!君は狙われてしまう!食われてしまう!いや、俺が守るが……だが相手は強き鬼!悔しいが守れると言い切れん!!」
「稀血なのは今更でしょ。十二鬼月であろうとなかろうとどんな鬼でも油断禁物だもの。
師範が駄目って言ってくるなら御館様に聞いてみます。継子のような存在なんだし一緒の任務にしていただけるならしていただきます。
あずま、その旨頼んだよ」
「ハァーイ!」
すらすらと述べ立てて鎹烏のあずまに丸投げ。私の意を汲んでスィーッとすぐさま本部方面に飛んでいく。もう私にも止められない。
「朝緋!君、なんてことをしてくれたんだ!?」
「ぷー」
「何がぷー、だ!頬を膨らませて無視か!かわいいなぁおい!?
……ああ、せめて御館様が同行を許可しないでくれたら……はぁ〜」
杏寿郎さんは、ああああ……と声を吐き出しながら頭を抱え、同行拒否を願った。
けれど杏寿郎さんの願いむなしく、私は同行を許可された。
もともとこの任務には隊士が多めに投下されている。つまり人員は多ければ多いほど良いような任務だ。
有利になりこそすれ、不利になることはない。増えるなら願ったり叶ったりだろう。
「手筈通り、二人一組での行動を!鬼を発見次第鎹烏にて連絡!すぐ応援に駆けつけるからな!!
優先事項は市民の避難!命だ!帝都の平穏を俺達で守るぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
杏寿郎さんのハキハキした指示で士気を高めた隊士達が、大きく返事する。
それぞれの配置場所へと移動する中、私は杏寿郎さんの羽織をちょいちょい引っ張る。あー、いーなぁこの真っ白羽織。蜜璃と二人おそろじゃん。
「師範、私は?誰と一緒に行けばいいの?」
「む!人員が奇数だったからな!君は俺達と共に行動を」
「了解です」
二人一組。杏寿郎さんと蜜璃のグループに入れて貰えた。
「任務を共にするのは初めてだな甘露寺!俺は君の活躍に期待している!!」
「はい!」
「そういえばそうだね。蜜璃ちゃん、がんばろうね!」
「うん!!」
蜜璃も来ている今回のこの任務。確かこの任務がきっかけで蜜璃は炎の呼吸を独自の呼吸へと昇華させる。その邪魔はしたくない。未来の恋柱は失わせない。
だから一緒のグループだとて、積極的に蜜璃を手伝うことはしないし、私はただ今回のリーダーである杏寿郎さんから与えられた命令を全うするのみだ。
いや、鬼を見つけたら斬りかかっていっちゃうかも。全く、私も血気盛んなことで。
その時、蜜璃に子供がぶつかり転んだ。
そこで一悶着あり、蜜璃は髪色について一般の人に『変』という意味の言葉を言われてしまった。
杏寿郎さんも言われていたけど、彼はわはわは笑って「海老天の食べすぎでなった」と言って気にしていなかった。いやいや海老天って。
でも蜜璃は髪色をとても気にしている。
『今回』はあまり深く聞くタイミングはなかったけれど、私はその悩みをよく知っている。お見合い相手に酷いことを言われて傷ついたこともだ。
「気に病む必要はない!」
「そうだよ蜜璃ちゃん。私は蜜璃ちゃんの髪が大好きだなぁ。桃色も桜の花弁みたいでふんわり女の子らしくて、若草色も芽吹いたばかりの春の芽吹きのようで可愛くて大好き」
「朝緋ちゃん……」
「それに私の髪色だってこんなまだらな色合いだよ?でも私は気にしてない。むしろ師範と同じ髪色が入っているこの髪が好き。同じ髪色であることを誇りに思って、」
杏寿郎さんに抱きつかれた。
「なんで抱きつくの師範!TPO考えて!?」
「てぇぺぇおなんて知らん!嬉しくなったら手が勝手に君を抱きしめていた!」
「手が勝手に動くわけないでしょ!今任務中なのでやめてください!」
「痛っ!バシバシ叩くな!」
脳天チョップ、何度も杏寿郎さんの頭に手刀を振り下ろした。そしてやっと離してくれたと同時だった。
ドン!!!!
「ば、爆発!?」
物凄い爆発音と共に、建物が崩れて吹き飛んだ。火の手があがり煙が立ち込める。
爆風吹き荒ぶ中、風が強く当たりそうだった蜜璃を杏寿郎さんがガードし守ってくれたようだ。よかった。
それにしてもこの任務、銃火器だけじゃなくて爆弾まで使いこなす鬼を相手にするの?飛び道具使いすぎじゃない?こんなことなら『前』の時にもっとどんな任務内容だったか杏寿郎さんから聞かせて貰えばよかった!
連鎖するように帝都の各地で、同じように爆発が起こる。人々の叫び声も聞こえた。
「私、救助に……っ」
「待て!」
蜜璃が動こうとした時だ。
ダァン!!
その背後の壁に穴が開く。
この音、弾痕。遠くから撃たれた。あの建物の屋上か!!
私達は狙われていたらしい。殺気に気がついた杏寿郎さんが止めなかったら今ごろ蜜璃は……。
横で杏寿郎さんが素早く動いた。建物の壁を駆け上がり、あっという間に鬼の元へと辿り着く。
一人でも平気だとは思うけれど、でも……。あの鬼は数字を持ちし下弦の弐であり、かつて杏寿郎さんに大怪我を負わせた相手だ。私は何のためにここにきた?
あの怪我を負わせたくないからというのが大きいからだろうが!
「蜜璃ちゃん、私は師範の補佐に回るから要救助者の対応をお願い!多分だけどまだ爆弾はあると思う!爆発に気をつけてね!!」
「わかったわ!朝緋ちゃんも気をつけて!」
炎の呼吸を足に纏わせ、私も屋上へと駆け上がる。
杏寿郎さんは鬼と話をしていた。
やはり鬼は煉獄家に相当の恨みがあるようだった。しかし、杏寿郎さんはこの鬼と面識がない。面識があるのは杏寿郎さんではなく、槇寿朗さんだからだ。噛み合わぬ会話に、奇声をあげて自らの頭を撃ち抜く鬼。
「師範!」
「朝緋!前には出るな。待機命令!」
「ええっ!?」
私が杏寿郎さんの隣に並んだのはその瞬間だった。待機させられたけど。
同時に、帝都の各地でまた爆弾が爆発する。時限爆弾だと、鬼がのたまう。
ブチ切れた杏寿郎さんが日輪刀を構える。
体の中から、影から銃器を出現させて鬼はこちらに向け弾丸を一斉に発射した。
だが、私にではない。杏寿郎さんだけを狙ってだ。
なんだよもう!私の事は眼中にないってか!
槇寿朗さんは一体この鬼に何をしでかしたの……?
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!!」
杏寿郎さんが弾丸をものともせず、逆に巻き込みながら攻撃を仕掛けた。
ーー上手い!盛炎のうねりなら相手の攻撃の中を掻い潜りながら斬り込める!!
鬼の頸まで一直線に刃が届く!斬った……!
けれど鬼の頸が跳ぶ事はなく、杏寿郎さんの日輪刀が鬼の体が纏う影に沈み込むだけだった。
「だからね、わがまま言うよ。私もその任務に行きたいって」
「!!」
杏寿郎さんの目が見開かれた。
「だ……駄目だ駄目だ!朝緋は稀血で相手は十二鬼月で!君は狙われてしまう!食われてしまう!いや、俺が守るが……だが相手は強き鬼!悔しいが守れると言い切れん!!」
「稀血なのは今更でしょ。十二鬼月であろうとなかろうとどんな鬼でも油断禁物だもの。
師範が駄目って言ってくるなら御館様に聞いてみます。継子のような存在なんだし一緒の任務にしていただけるならしていただきます。
あずま、その旨頼んだよ」
「ハァーイ!」
すらすらと述べ立てて鎹烏のあずまに丸投げ。私の意を汲んでスィーッとすぐさま本部方面に飛んでいく。もう私にも止められない。
「朝緋!君、なんてことをしてくれたんだ!?」
「ぷー」
「何がぷー、だ!頬を膨らませて無視か!かわいいなぁおい!?
……ああ、せめて御館様が同行を許可しないでくれたら……はぁ〜」
杏寿郎さんは、ああああ……と声を吐き出しながら頭を抱え、同行拒否を願った。
けれど杏寿郎さんの願いむなしく、私は同行を許可された。
もともとこの任務には隊士が多めに投下されている。つまり人員は多ければ多いほど良いような任務だ。
有利になりこそすれ、不利になることはない。増えるなら願ったり叶ったりだろう。
「手筈通り、二人一組での行動を!鬼を発見次第鎹烏にて連絡!すぐ応援に駆けつけるからな!!
優先事項は市民の避難!命だ!帝都の平穏を俺達で守るぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
杏寿郎さんのハキハキした指示で士気を高めた隊士達が、大きく返事する。
それぞれの配置場所へと移動する中、私は杏寿郎さんの羽織をちょいちょい引っ張る。あー、いーなぁこの真っ白羽織。蜜璃と二人おそろじゃん。
「師範、私は?誰と一緒に行けばいいの?」
「む!人員が奇数だったからな!君は俺達と共に行動を」
「了解です」
二人一組。杏寿郎さんと蜜璃のグループに入れて貰えた。
「任務を共にするのは初めてだな甘露寺!俺は君の活躍に期待している!!」
「はい!」
「そういえばそうだね。蜜璃ちゃん、がんばろうね!」
「うん!!」
蜜璃も来ている今回のこの任務。確かこの任務がきっかけで蜜璃は炎の呼吸を独自の呼吸へと昇華させる。その邪魔はしたくない。未来の恋柱は失わせない。
だから一緒のグループだとて、積極的に蜜璃を手伝うことはしないし、私はただ今回のリーダーである杏寿郎さんから与えられた命令を全うするのみだ。
いや、鬼を見つけたら斬りかかっていっちゃうかも。全く、私も血気盛んなことで。
その時、蜜璃に子供がぶつかり転んだ。
そこで一悶着あり、蜜璃は髪色について一般の人に『変』という意味の言葉を言われてしまった。
杏寿郎さんも言われていたけど、彼はわはわは笑って「海老天の食べすぎでなった」と言って気にしていなかった。いやいや海老天って。
でも蜜璃は髪色をとても気にしている。
『今回』はあまり深く聞くタイミングはなかったけれど、私はその悩みをよく知っている。お見合い相手に酷いことを言われて傷ついたこともだ。
「気に病む必要はない!」
「そうだよ蜜璃ちゃん。私は蜜璃ちゃんの髪が大好きだなぁ。桃色も桜の花弁みたいでふんわり女の子らしくて、若草色も芽吹いたばかりの春の芽吹きのようで可愛くて大好き」
「朝緋ちゃん……」
「それに私の髪色だってこんなまだらな色合いだよ?でも私は気にしてない。むしろ師範と同じ髪色が入っているこの髪が好き。同じ髪色であることを誇りに思って、」
杏寿郎さんに抱きつかれた。
「なんで抱きつくの師範!TPO考えて!?」
「てぇぺぇおなんて知らん!嬉しくなったら手が勝手に君を抱きしめていた!」
「手が勝手に動くわけないでしょ!今任務中なのでやめてください!」
「痛っ!バシバシ叩くな!」
脳天チョップ、何度も杏寿郎さんの頭に手刀を振り下ろした。そしてやっと離してくれたと同時だった。
ドン!!!!
「ば、爆発!?」
物凄い爆発音と共に、建物が崩れて吹き飛んだ。火の手があがり煙が立ち込める。
爆風吹き荒ぶ中、風が強く当たりそうだった蜜璃を杏寿郎さんがガードし守ってくれたようだ。よかった。
それにしてもこの任務、銃火器だけじゃなくて爆弾まで使いこなす鬼を相手にするの?飛び道具使いすぎじゃない?こんなことなら『前』の時にもっとどんな任務内容だったか杏寿郎さんから聞かせて貰えばよかった!
連鎖するように帝都の各地で、同じように爆発が起こる。人々の叫び声も聞こえた。
「私、救助に……っ」
「待て!」
蜜璃が動こうとした時だ。
ダァン!!
その背後の壁に穴が開く。
この音、弾痕。遠くから撃たれた。あの建物の屋上か!!
私達は狙われていたらしい。殺気に気がついた杏寿郎さんが止めなかったら今ごろ蜜璃は……。
横で杏寿郎さんが素早く動いた。建物の壁を駆け上がり、あっという間に鬼の元へと辿り着く。
一人でも平気だとは思うけれど、でも……。あの鬼は数字を持ちし下弦の弐であり、かつて杏寿郎さんに大怪我を負わせた相手だ。私は何のためにここにきた?
あの怪我を負わせたくないからというのが大きいからだろうが!
「蜜璃ちゃん、私は師範の補佐に回るから要救助者の対応をお願い!多分だけどまだ爆弾はあると思う!爆発に気をつけてね!!」
「わかったわ!朝緋ちゃんも気をつけて!」
炎の呼吸を足に纏わせ、私も屋上へと駆け上がる。
杏寿郎さんは鬼と話をしていた。
やはり鬼は煉獄家に相当の恨みがあるようだった。しかし、杏寿郎さんはこの鬼と面識がない。面識があるのは杏寿郎さんではなく、槇寿朗さんだからだ。噛み合わぬ会話に、奇声をあげて自らの頭を撃ち抜く鬼。
「師範!」
「朝緋!前には出るな。待機命令!」
「ええっ!?」
私が杏寿郎さんの隣に並んだのはその瞬間だった。待機させられたけど。
同時に、帝都の各地でまた爆弾が爆発する。時限爆弾だと、鬼がのたまう。
ブチ切れた杏寿郎さんが日輪刀を構える。
体の中から、影から銃器を出現させて鬼はこちらに向け弾丸を一斉に発射した。
だが、私にではない。杏寿郎さんだけを狙ってだ。
なんだよもう!私の事は眼中にないってか!
槇寿朗さんは一体この鬼に何をしでかしたの……?
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!!」
杏寿郎さんが弾丸をものともせず、逆に巻き込みながら攻撃を仕掛けた。
ーー上手い!盛炎のうねりなら相手の攻撃の中を掻い潜りながら斬り込める!!
鬼の頸まで一直線に刃が届く!斬った……!
けれど鬼の頸が跳ぶ事はなく、杏寿郎さんの日輪刀が鬼の体が纏う影に沈み込むだけだった。