四周目 肆
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春。
隊士になった蜜璃へのお祝いにと、お花見を計画し羽織を仕立てておいた。そのついでに共にスイートポテトを一緒に作ったりもした。
思えば蜜璃とはここまでたくさん料理をしてきた。任務の合間にカフェーにもお邪魔したし、蜜璃のご実家に遊びにも行った。その時もお料理したっけ。
これが妹弟子とのお勝手場での最後の共同作業かもしれない。
そう思うと感慨深いものもあり……なぜかスイートポテトの材料はものすごい量になった。他の料理の材料もだ。
もしかしてさつま穴に保存していたさつまいも、全部持ってきた?時期的にもそろそろ全部使わないととは思っていたけど多くない?
「嬉しいが見事にさつまいもばかりだな!?わっしょい!」
「でたー!わっしょい!!
でもよく見て?他のお料理もありますよ。お肉いっぱい食べて活力つけてね!」
並んだ料理を前にして食べる前からわっしょいが聞こえていた。って、蜜璃はさっそく食べてる早いし速い!美味しそうにたくさん頬張って食べてるのは見ていて気持ちがいいけれど、そのままだと私の分がなくなりそう。
「肉か……精力もつきそうだな?なぁ朝緋」
「ぶふっ!?」
ここには千寿郎も蜜璃もいる。私にだけ聞こえるように耳に囁いてこられて、盛大にお茶吹いた。
そういう話につながりそうな『下ネタ』系の話はやめてほしいものだ。
そして何事もなかったかのように、蜜璃と同じスピードで食べ始めるのもやめて。頼むから私の分の稲荷寿司は残しておいて。控えめに取り分けてる千寿郎を見習って?
食後落ち着いたところで、出来上がったまっさらな羽織を蜜璃にプレゼントする私達。
その際また『いつものように』蜜璃のばいんばいんな胸を強調するあの隊服をお披露目されたんだけど。
あられもない。なかなか破廉恥だ。と杏寿郎さんが言葉を放った。
確かにこれが正式な隊服と思い込む蜜璃も蜜璃で箱入り娘がすぎる気がしないでもないけど。でも杏寿郎さん。私に対して破廉恥な言動してくる貴方には、蜜璃も言われたくないと思うよ。
そしてなんで蜜璃の隊服だけ公式なら仕方ないって言うのかな?だったら私の時もゲス眼鏡に一言言ってやってよね。
それにしても少し展開が違う。
『前』だとお花見と隊服の公開は違う時期だったし、隊服の時には豪勢な料理ではなく蜜璃の稽古後の甘味休憩でのスイートポテトと桜餅で茶を傾けた。
杏寿郎さんの階級は『甲』に上がっているからこれはいつもと一緒か。
一番変化があったのは、槇寿朗さんだ。
お酒を飲み続けていた時期が悪かったとでもいうのか、結局槇寿朗さんは少しばかり臓腑を痛めていて。今、柱を降ろす降ろさないの瀬戸際に追い込まれていた。
おこりんぼは治ってきて私達に直接的な暴言を吐くことは減ったけれど、不貞腐れた彼はそもそもが任務にいかない時期も続いていて。クビは秒読み状態にあるといっていい。
元々任務に行きたがらなかったし、鬼殺を辞めたかった彼は、クビになろうと構いやしないようで。項垂れ気味のその背中で語っていた。
だから今、炎柱は空席同然。
何かあれば本部に呼ばれることはあるだろうけど……。多分、柱合会議くらいは参加するかな。だといいな。でも、……どうだろうなあ。
周りがどうなろうと……というのは良くない考えだけれど私は結局、杏寿郎さんが生きてさえくれればそれでいい。
無事に無限列車の任務を終えられるならそれだけでいい。
『以前』と違うこの展開が、良い方に転ぶことを望む。
その時、槇寿朗さんの烏が伝令を伝えにきた。
半年ほど経つと開かれる柱が集う会議。柱合会議だ。
ああ、ここは一緒なんだね。もう柱合会議の時期に入っていたんだ。
杏寿郎さんが呼びに行ったけれど、槇寿朗さんは柱合会議に出席しないようで。私の嫌な予感は的中した。
ただ、体の調子も呼吸法もままならないのはしかたないけれど、柱合会議の出席を息子とはいえ柱でもない隊士に任せるなんて……。
そう、代わりに杏寿郎さんが出席するのだ。
これもまた『前』と同じ。轍を進んでいるような気分だった。
『以前』と違い、私側に任務はまだ言い渡されていなかったので、本部の近くまで私も同行した。本部は隠の皆さんに連れられないと行けない場所だから、関係のない私はそこから一番近いであろう茶屋で待機だ。
あっここの三色団子うんまっ!?ちゃんと赤紫蘇や蓬で色が付けてあるせいか、素材の味がついてる。きっとここは桜餅もおはぎも美味しい。リピありだね。
「ただいま朝緋!」
「師は……んんん?どしたのその顔」
声の方を振り向くとそこには殴られた跡のある杏寿郎さんが立っていた。殴られたことなんて嘘のように快活に笑っている。
つい、大事な団子を落としそうになった。
「鬼にやられたの?まだ任務にも鬼が出るにも早い時間だよ」
「風柱殿に殴られた!」
「ええっ!?」
不死川さんに?どして?
あ……私のお団子……。私が驚いている隙にす自然な動きで団子を食べ始める杏寿郎さん。
大好物ってわけじゃないからいいか。
待て。そういえば『以前』も殴りかかってきたとか言ってなかっただろうか?
どのくらい強いかと腕試しにだっけ?喧嘩っ早い不死川さんがしそうなことだ。でも杏寿郎さんは手は出さなかったらしい。今回もまた手は出さなかったようだ。
ちなみに『前回』は杏寿郎さんも殴りかかったと聞いている。……それも嫉妬心でである。
そういう意味では鬼殺隊の人達全員喧嘩っ早いし、口より先に手が出る者が多い気がする。え、私?そんな喧嘩っ早くなんて……手は早いや。
「帝都での任務……?」
歩きながら柱合会議の内容を教えていただいた。帝都というと下弦の弐の任務に違いない。詳細を聞くのは初めてだから、一言一句聞き逃さぬよう耳をそば立てる。
「ああ、帝都付近で十二鬼月の可能性が高い鬼が出るそうだ。その討伐を命じられた!」
「十二鬼月って強い鬼だよね。普通は柱に回る任務だと思うけど、なんで師範に?」
幸か不幸か相手をした鬼が下弦や上弦の鬼だった、という流れは存在するんだけど、最初から十二鬼月だとわかっているのに柱でなく何故杏寿郎さんに?
そりゃあ相手は煉獄家に恨みのある鬼だからいいと思うよ?でも、前々から疑問だったのよね。この任務がきっかけで柱に就任するとはいえ、杏寿郎さんはまだ柱じゃないもの。
「今の柱の方々は九人揃ってはいない。欠けた柱の担当地区をも現柱が担当している状況。人手不足だからというのが大きいな!
それに帝都は元々父上の担当地区でもある」
帝都も担当地区ぅ〜!?初めて知った!ああだから、お土産を買ってきてくれる時はハイカラなお菓子が多かったのか!
シベリアやチョコレート食べたい。今はもう自分で買えるけどお土産だと一味違う。
「それもその鬼は煉獄家のことを知っているらしいとの情報がある。おそらく父上が前に逃したあの鬼が強くなり現れたのだろう。
このままでは煉獄家が。千寿郎が。そして稀血を持つ朝緋が狙われてしまう。報復に君を食われでもしたら。君を守れなかったら思うと俺は気が気じゃない!」
また。また杏寿郎さんが私を守るような発言をしてくださった。
嬉しい。幸せ。胸があったかくなる。
でも私はただ守られる女ではない。肩を並べ共に戦うことを望む鬼殺隊。
「何を言ってるんですか。今や私も鬼殺隊士ですよ?私は逃げも隠れもしない。
狙われるなら好都合。それを利用して頸を取りに行くくらいの気持ちでいます」
共に戦い、そして貴方の生を。未来を掴み取る。その為にはこの身、命、稀血をも利用するのを厭わない。
隊士になった蜜璃へのお祝いにと、お花見を計画し羽織を仕立てておいた。そのついでに共にスイートポテトを一緒に作ったりもした。
思えば蜜璃とはここまでたくさん料理をしてきた。任務の合間にカフェーにもお邪魔したし、蜜璃のご実家に遊びにも行った。その時もお料理したっけ。
これが妹弟子とのお勝手場での最後の共同作業かもしれない。
そう思うと感慨深いものもあり……なぜかスイートポテトの材料はものすごい量になった。他の料理の材料もだ。
もしかしてさつま穴に保存していたさつまいも、全部持ってきた?時期的にもそろそろ全部使わないととは思っていたけど多くない?
「嬉しいが見事にさつまいもばかりだな!?わっしょい!」
「でたー!わっしょい!!
でもよく見て?他のお料理もありますよ。お肉いっぱい食べて活力つけてね!」
並んだ料理を前にして食べる前からわっしょいが聞こえていた。って、蜜璃はさっそく食べてる早いし速い!美味しそうにたくさん頬張って食べてるのは見ていて気持ちがいいけれど、そのままだと私の分がなくなりそう。
「肉か……精力もつきそうだな?なぁ朝緋」
「ぶふっ!?」
ここには千寿郎も蜜璃もいる。私にだけ聞こえるように耳に囁いてこられて、盛大にお茶吹いた。
そういう話につながりそうな『下ネタ』系の話はやめてほしいものだ。
そして何事もなかったかのように、蜜璃と同じスピードで食べ始めるのもやめて。頼むから私の分の稲荷寿司は残しておいて。控えめに取り分けてる千寿郎を見習って?
食後落ち着いたところで、出来上がったまっさらな羽織を蜜璃にプレゼントする私達。
その際また『いつものように』蜜璃のばいんばいんな胸を強調するあの隊服をお披露目されたんだけど。
あられもない。なかなか破廉恥だ。と杏寿郎さんが言葉を放った。
確かにこれが正式な隊服と思い込む蜜璃も蜜璃で箱入り娘がすぎる気がしないでもないけど。でも杏寿郎さん。私に対して破廉恥な言動してくる貴方には、蜜璃も言われたくないと思うよ。
そしてなんで蜜璃の隊服だけ公式なら仕方ないって言うのかな?だったら私の時もゲス眼鏡に一言言ってやってよね。
それにしても少し展開が違う。
『前』だとお花見と隊服の公開は違う時期だったし、隊服の時には豪勢な料理ではなく蜜璃の稽古後の甘味休憩でのスイートポテトと桜餅で茶を傾けた。
杏寿郎さんの階級は『甲』に上がっているからこれはいつもと一緒か。
一番変化があったのは、槇寿朗さんだ。
お酒を飲み続けていた時期が悪かったとでもいうのか、結局槇寿朗さんは少しばかり臓腑を痛めていて。今、柱を降ろす降ろさないの瀬戸際に追い込まれていた。
おこりんぼは治ってきて私達に直接的な暴言を吐くことは減ったけれど、不貞腐れた彼はそもそもが任務にいかない時期も続いていて。クビは秒読み状態にあるといっていい。
元々任務に行きたがらなかったし、鬼殺を辞めたかった彼は、クビになろうと構いやしないようで。項垂れ気味のその背中で語っていた。
だから今、炎柱は空席同然。
何かあれば本部に呼ばれることはあるだろうけど……。多分、柱合会議くらいは参加するかな。だといいな。でも、……どうだろうなあ。
周りがどうなろうと……というのは良くない考えだけれど私は結局、杏寿郎さんが生きてさえくれればそれでいい。
無事に無限列車の任務を終えられるならそれだけでいい。
『以前』と違うこの展開が、良い方に転ぶことを望む。
その時、槇寿朗さんの烏が伝令を伝えにきた。
半年ほど経つと開かれる柱が集う会議。柱合会議だ。
ああ、ここは一緒なんだね。もう柱合会議の時期に入っていたんだ。
杏寿郎さんが呼びに行ったけれど、槇寿朗さんは柱合会議に出席しないようで。私の嫌な予感は的中した。
ただ、体の調子も呼吸法もままならないのはしかたないけれど、柱合会議の出席を息子とはいえ柱でもない隊士に任せるなんて……。
そう、代わりに杏寿郎さんが出席するのだ。
これもまた『前』と同じ。轍を進んでいるような気分だった。
『以前』と違い、私側に任務はまだ言い渡されていなかったので、本部の近くまで私も同行した。本部は隠の皆さんに連れられないと行けない場所だから、関係のない私はそこから一番近いであろう茶屋で待機だ。
あっここの三色団子うんまっ!?ちゃんと赤紫蘇や蓬で色が付けてあるせいか、素材の味がついてる。きっとここは桜餅もおはぎも美味しい。リピありだね。
「ただいま朝緋!」
「師は……んんん?どしたのその顔」
声の方を振り向くとそこには殴られた跡のある杏寿郎さんが立っていた。殴られたことなんて嘘のように快活に笑っている。
つい、大事な団子を落としそうになった。
「鬼にやられたの?まだ任務にも鬼が出るにも早い時間だよ」
「風柱殿に殴られた!」
「ええっ!?」
不死川さんに?どして?
あ……私のお団子……。私が驚いている隙にす自然な動きで団子を食べ始める杏寿郎さん。
大好物ってわけじゃないからいいか。
待て。そういえば『以前』も殴りかかってきたとか言ってなかっただろうか?
どのくらい強いかと腕試しにだっけ?喧嘩っ早い不死川さんがしそうなことだ。でも杏寿郎さんは手は出さなかったらしい。今回もまた手は出さなかったようだ。
ちなみに『前回』は杏寿郎さんも殴りかかったと聞いている。……それも嫉妬心でである。
そういう意味では鬼殺隊の人達全員喧嘩っ早いし、口より先に手が出る者が多い気がする。え、私?そんな喧嘩っ早くなんて……手は早いや。
「帝都での任務……?」
歩きながら柱合会議の内容を教えていただいた。帝都というと下弦の弐の任務に違いない。詳細を聞くのは初めてだから、一言一句聞き逃さぬよう耳をそば立てる。
「ああ、帝都付近で十二鬼月の可能性が高い鬼が出るそうだ。その討伐を命じられた!」
「十二鬼月って強い鬼だよね。普通は柱に回る任務だと思うけど、なんで師範に?」
幸か不幸か相手をした鬼が下弦や上弦の鬼だった、という流れは存在するんだけど、最初から十二鬼月だとわかっているのに柱でなく何故杏寿郎さんに?
そりゃあ相手は煉獄家に恨みのある鬼だからいいと思うよ?でも、前々から疑問だったのよね。この任務がきっかけで柱に就任するとはいえ、杏寿郎さんはまだ柱じゃないもの。
「今の柱の方々は九人揃ってはいない。欠けた柱の担当地区をも現柱が担当している状況。人手不足だからというのが大きいな!
それに帝都は元々父上の担当地区でもある」
帝都も担当地区ぅ〜!?初めて知った!ああだから、お土産を買ってきてくれる時はハイカラなお菓子が多かったのか!
シベリアやチョコレート食べたい。今はもう自分で買えるけどお土産だと一味違う。
「それもその鬼は煉獄家のことを知っているらしいとの情報がある。おそらく父上が前に逃したあの鬼が強くなり現れたのだろう。
このままでは煉獄家が。千寿郎が。そして稀血を持つ朝緋が狙われてしまう。報復に君を食われでもしたら。君を守れなかったら思うと俺は気が気じゃない!」
また。また杏寿郎さんが私を守るような発言をしてくださった。
嬉しい。幸せ。胸があったかくなる。
でも私はただ守られる女ではない。肩を並べ共に戦うことを望む鬼殺隊。
「何を言ってるんですか。今や私も鬼殺隊士ですよ?私は逃げも隠れもしない。
狙われるなら好都合。それを利用して頸を取りに行くくらいの気持ちでいます」
共に戦い、そして貴方の生を。未来を掴み取る。その為にはこの身、命、稀血をも利用するのを厭わない。