四周目 肆
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杏寿郎さんの尋問は後半戦に入ったらしい。
「それに、君……獪岳と会って何やらしていたようではないか」
「うっわなんでそんな事まで知ってるの!」
「剣筋が乱れた!当たるぞ!!」
「当たるぞじゃなくて当ててきてるよね!?
わ、危なっ!!」
ブォンブォンと遠慮なしに顔や体近くを通り過ぎる木刀。
此方も一瞬にして木刀を構えなかったらと思うと……ゾッとする。瑠火さんに似た私の綺麗なお顔がボッコボコに腫れちゃうじゃん。
「獪岳本人から聞いた!」
「なんですとー!?」
あいつ、まさか私が雷の呼吸を習っている事まで言ってないよね?秘密にしてって言ってるから大丈夫だと思ったのに。
「逢引だろう!彼にはそんな言い方をされた!朝緋、一体獪岳と何をしていた!」
あっ違う〜〜!秘密にしてくれてた〜〜って、逢引とか嘘でしょ獪岳!杏寿郎さん怒り狂ってますわよ!?
怒りは全て私に向かうんだから勘弁して。
「任務!任務で一緒になったからそのままちょっとお茶しただけだよ!?」
「男と二人きりで茶などありえない!!」
「あんまり嫉妬しないでよ相手は獪岳でしょ同期だよ!」
「彼だからこそだ!!」
「は?あんなに口悪く私の事罵ってくるのに?この間なんて馬鹿馬鹿ボケボケ言われたんですよ!」
馬鹿馬鹿ボケボケ言われなくとも、会えばいつだって悪口を言ってくる獪岳。手紙だとそんな事ないのになぁ。実は私の顔嫌いでしょあの子。それともただ単に本当に口が悪いだけ?
……なんかそんな気がしてきた。
「なんだと!?俺の朝緋に馬鹿やらボケだと…?万死に値するな……。どうしたら馬鹿ボケだなんて言うんだ!」
「彼は努力家で今や私より階級一個上だけど、口が悪くて偉そうなとこが玉に瑕なだけ!それが獪岳!師範も知ってるでしょうが盛炎のうねり!!」
「あまり他の男を褒めてくれるな昇り炎天からの壱ノ型不知火っ!!」
「わ、わ、わっ!伍ノ型改・炎虎乱れ咬み!!」
その後、五百本の打ち込み全てに炎の呼吸の型が使われた。
激しすぎて早く終わったのは嬉しいけど、呼吸の連続で疲労度が半端ない。
終わった後その場に倒れる私を杏寿郎さんが腕を組んで見下ろしている。息こそ切れ気味だけど超元気な杏寿郎さん凄すぎる。さすが未来の炎柱。
いつになったらその位置に私も立てるんだろ……。無理そう。
「あーーもう駄目だ全集中の呼吸使っても脳が酸欠で追いついてない目がチカチカする……。きょじゅろさ、お水ちょうだいー」
今はまだ鍛錬真っ最中なのに、つい呼び方までそのまま杏寿郎さんになってしまった。その言葉にぴくりと嬉しそうに反応しながら、杏寿郎さんが竹筒に入った水を。
「ぶふぇ!?
……顔にかけないでよ」
私の顔にかけた。
「だが気持ちいいだろう?」
「私は飲みたいのー」
改めて手渡されたそれを傾ける。がぶ飲みする私に視線を向けられるのを感じた。
飲み切れなかった水が、汗が。首筋にだらだらこぼれ落ちて垂れていく。胸元なんか水や汗が張り付いて気持ち悪い。杏寿郎さんもそれを指摘してきた。
「汗がすごいな」
「何刻もぶっ続けでやってましたからね。あー暑い暑い」
ぱたぱたと手で仰いだところで意味はなく。涼しい顔した心が熱い男をジト目で睨む。
「なんで師範は私ほど汗かいてないんだか……」
「俺も汗はかいている。……それより朝緋、眼福極まりない感じに道着が透けているぞ。なるほど、意外と君は着痩せするのだなぁ」
「えっ!見ないで!?」
じっと舐めるように見つめてくるからおかしいと思った!慌てて腕で体を隠すがあまり意味はなさそうだ。
「やだ嘘、それほど汗かいてるってこと!?でもこれさ、さっき師範がぶっかけてきた水のせいもあるよね!?あーとにかく水浴びしたい!水浴びて着替えてきま、」
「なあ朝緋、今から組手の稽古もつけようか。五百本の打ち稽古も意外と早めに終わったからな」
にっこり笑う杏寿郎さんに強制的に立ち上がらされた。
腕を組んでそうやって目の前で立たれると、ラスボス感半端ないね。この炎の魔王、絶対倒せそうにない。
「ちょ、勘弁してください。もう私動きたくないよぉ……まだ言い渡されてないけど夜には私にも任務が来るかもしれないのに、今から疲労困憊してられない……!」
それに組手だなんて。汗だくでろでろべちょべちょの状態でなんて絶対嫌だ。恥ずかしいし触られたくない。
「問答無用だ!捕まらんよう受け流し此方を投げ飛ばす勢いで来い!!」
言うが早いか杏寿郎さんが風を切って向かってきた。空気がグオオ、って音立ててるよ!
私を捕まえようとして振りかぶってきた腕もまた、音を立てて唸っていた。
こわっ!?ベアハッグも真っ青の鯖折りスタイル!?私の背骨折れるじゃない!
それに杏寿郎さんを投げ飛ばす?どうやって?ある意味鬼より恐ろしい空気を纏ってるこの杏寿郎さんを?
つい走って逃げてしまったけれど、その気持ち他の隊士ならわかるはず。
でも逃げても逃げても追いかけてくる。この道場って追いかけっこのための場所じゃないからそこまで広くはないし、逃げ続けるには不利すぎる。このままだと捕まるのは避けられない。
でも私から仕掛けるなんて難しすぎる。
疲労してる今、そんな事は本当ハードモードだ。
「ねえ貴方鬼でしょ師範!こんなに過酷な修行ってしたことないと思う!いつだって休憩挟んでた!!」
「過酷なものか!ただ長時間ぶっ続けなだけだろう!!体力が足りんぞ!
そのような状態で俺の隣に並べるとでも?
俺の体をその身に受け入れられるとでも!?」
「俺の体を私の身に……って、まだ夜じゃないのに変な話しないでよ助平!」
「意味がわかる朝緋こそ助平だろう……がっ!!」
「!?」
ヒュンッーー!!
顔に青筋立てた杏寿郎さんが本気を出してきた!
全集中、炎の呼吸。その本気の走りでもって、私を捕らえにかかる。一瞬のうちに間合いを詰められーー。
「捕まえた」
にんまりと鬼が笑った。
「それに、君……獪岳と会って何やらしていたようではないか」
「うっわなんでそんな事まで知ってるの!」
「剣筋が乱れた!当たるぞ!!」
「当たるぞじゃなくて当ててきてるよね!?
わ、危なっ!!」
ブォンブォンと遠慮なしに顔や体近くを通り過ぎる木刀。
此方も一瞬にして木刀を構えなかったらと思うと……ゾッとする。瑠火さんに似た私の綺麗なお顔がボッコボコに腫れちゃうじゃん。
「獪岳本人から聞いた!」
「なんですとー!?」
あいつ、まさか私が雷の呼吸を習っている事まで言ってないよね?秘密にしてって言ってるから大丈夫だと思ったのに。
「逢引だろう!彼にはそんな言い方をされた!朝緋、一体獪岳と何をしていた!」
あっ違う〜〜!秘密にしてくれてた〜〜って、逢引とか嘘でしょ獪岳!杏寿郎さん怒り狂ってますわよ!?
怒りは全て私に向かうんだから勘弁して。
「任務!任務で一緒になったからそのままちょっとお茶しただけだよ!?」
「男と二人きりで茶などありえない!!」
「あんまり嫉妬しないでよ相手は獪岳でしょ同期だよ!」
「彼だからこそだ!!」
「は?あんなに口悪く私の事罵ってくるのに?この間なんて馬鹿馬鹿ボケボケ言われたんですよ!」
馬鹿馬鹿ボケボケ言われなくとも、会えばいつだって悪口を言ってくる獪岳。手紙だとそんな事ないのになぁ。実は私の顔嫌いでしょあの子。それともただ単に本当に口が悪いだけ?
……なんかそんな気がしてきた。
「なんだと!?俺の朝緋に馬鹿やらボケだと…?万死に値するな……。どうしたら馬鹿ボケだなんて言うんだ!」
「彼は努力家で今や私より階級一個上だけど、口が悪くて偉そうなとこが玉に瑕なだけ!それが獪岳!師範も知ってるでしょうが盛炎のうねり!!」
「あまり他の男を褒めてくれるな昇り炎天からの壱ノ型不知火っ!!」
「わ、わ、わっ!伍ノ型改・炎虎乱れ咬み!!」
その後、五百本の打ち込み全てに炎の呼吸の型が使われた。
激しすぎて早く終わったのは嬉しいけど、呼吸の連続で疲労度が半端ない。
終わった後その場に倒れる私を杏寿郎さんが腕を組んで見下ろしている。息こそ切れ気味だけど超元気な杏寿郎さん凄すぎる。さすが未来の炎柱。
いつになったらその位置に私も立てるんだろ……。無理そう。
「あーーもう駄目だ全集中の呼吸使っても脳が酸欠で追いついてない目がチカチカする……。きょじゅろさ、お水ちょうだいー」
今はまだ鍛錬真っ最中なのに、つい呼び方までそのまま杏寿郎さんになってしまった。その言葉にぴくりと嬉しそうに反応しながら、杏寿郎さんが竹筒に入った水を。
「ぶふぇ!?
……顔にかけないでよ」
私の顔にかけた。
「だが気持ちいいだろう?」
「私は飲みたいのー」
改めて手渡されたそれを傾ける。がぶ飲みする私に視線を向けられるのを感じた。
飲み切れなかった水が、汗が。首筋にだらだらこぼれ落ちて垂れていく。胸元なんか水や汗が張り付いて気持ち悪い。杏寿郎さんもそれを指摘してきた。
「汗がすごいな」
「何刻もぶっ続けでやってましたからね。あー暑い暑い」
ぱたぱたと手で仰いだところで意味はなく。涼しい顔した心が熱い男をジト目で睨む。
「なんで師範は私ほど汗かいてないんだか……」
「俺も汗はかいている。……それより朝緋、眼福極まりない感じに道着が透けているぞ。なるほど、意外と君は着痩せするのだなぁ」
「えっ!見ないで!?」
じっと舐めるように見つめてくるからおかしいと思った!慌てて腕で体を隠すがあまり意味はなさそうだ。
「やだ嘘、それほど汗かいてるってこと!?でもこれさ、さっき師範がぶっかけてきた水のせいもあるよね!?あーとにかく水浴びしたい!水浴びて着替えてきま、」
「なあ朝緋、今から組手の稽古もつけようか。五百本の打ち稽古も意外と早めに終わったからな」
にっこり笑う杏寿郎さんに強制的に立ち上がらされた。
腕を組んでそうやって目の前で立たれると、ラスボス感半端ないね。この炎の魔王、絶対倒せそうにない。
「ちょ、勘弁してください。もう私動きたくないよぉ……まだ言い渡されてないけど夜には私にも任務が来るかもしれないのに、今から疲労困憊してられない……!」
それに組手だなんて。汗だくでろでろべちょべちょの状態でなんて絶対嫌だ。恥ずかしいし触られたくない。
「問答無用だ!捕まらんよう受け流し此方を投げ飛ばす勢いで来い!!」
言うが早いか杏寿郎さんが風を切って向かってきた。空気がグオオ、って音立ててるよ!
私を捕まえようとして振りかぶってきた腕もまた、音を立てて唸っていた。
こわっ!?ベアハッグも真っ青の鯖折りスタイル!?私の背骨折れるじゃない!
それに杏寿郎さんを投げ飛ばす?どうやって?ある意味鬼より恐ろしい空気を纏ってるこの杏寿郎さんを?
つい走って逃げてしまったけれど、その気持ち他の隊士ならわかるはず。
でも逃げても逃げても追いかけてくる。この道場って追いかけっこのための場所じゃないからそこまで広くはないし、逃げ続けるには不利すぎる。このままだと捕まるのは避けられない。
でも私から仕掛けるなんて難しすぎる。
疲労してる今、そんな事は本当ハードモードだ。
「ねえ貴方鬼でしょ師範!こんなに過酷な修行ってしたことないと思う!いつだって休憩挟んでた!!」
「過酷なものか!ただ長時間ぶっ続けなだけだろう!!体力が足りんぞ!
そのような状態で俺の隣に並べるとでも?
俺の体をその身に受け入れられるとでも!?」
「俺の体を私の身に……って、まだ夜じゃないのに変な話しないでよ助平!」
「意味がわかる朝緋こそ助平だろう……がっ!!」
「!?」
ヒュンッーー!!
顔に青筋立てた杏寿郎さんが本気を出してきた!
全集中、炎の呼吸。その本気の走りでもって、私を捕らえにかかる。一瞬のうちに間合いを詰められーー。
「捕まえた」
にんまりと鬼が笑った。