四周目 肆
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『煉獄朝緋隊士、最近綺麗になったよな』
だなんて最近、隊士の間で噂されているらしい。久しぶりに雷の呼吸について教わっている時に、獪岳から言われた。
「おい、朝緋お前最近綺麗になったとか隊士達の間で言われてんぞ。知ってたか?」
「何それ知らない。私はただの妖怪頸オイテケですが?」
「知ってるよ。初めて会った時の衝撃は忘れねぇ……」
藤襲山の中で獪岳と会った時の私は、遭遇した一般の鬼の頸を片っ端から斬って回っていた。逃げる鬼。追う私。鬼事の鬼は私だった。
口元に薄く笑みすら浮かべて「頸を差し出せ」「頸落ちて死ね」と呟きながら日輪刀を振り回して鬼の血に濡れていたのだ。
あれ?今思えばこの台詞どこかで聞いたことあるや。んー、どこだろう?まあいいか。
そんな恐ろしい鬼女、いや妖怪の私と会った瞬間の獪岳の引き攣った顔と言ったら!
ほんっと申し訳ない。
「あっねぇねぇ、もしかして獪岳も綺麗とか思ってくれてんの?」
「ばっ……!
馬鹿いってんじゃねぇぞばーかばーか!」
途端に馬鹿を連発された。馬鹿馬鹿言いすぎじゃない?獪岳、照れ隠しだったりして?ま、そんなわけないか!
「誰がそんな事を言ってるんだろう?」
「お前と俺の同期の……ほら、なんて言ったかな。お前が異形の鬼から助けた男が発端らしいぞ」
「へぇ〜……誰?」
「覚えてないのかよ!?」
名前を忘れてしまった!それだけ『今回』はそこそこの人数を生存させることができたのだ。でも獪岳には言われたくない。
「んな事より雷の呼吸だろ、こうやるんだ……よっ!」
ーーやはり雷の呼吸の動きは速い。
雷の呼吸、弐ノ型・稲魂。
素早い振り斬りと、蓮撃が地を割って進み、まっすぐに抉ってゆく。
「おお、雷の呼吸、弐ノ型だね!かっこいい!すっご、地面抉れてる!!」
パチパチ
「……ふん」
満更でもなさそうだ。獪岳は褒められたり、認められたりと評価されることに物凄く価値を見出している節があるから、私如きに拍手喝采されたとしても嬉しいんだろうな。
これがもっと強い人からなら、もっともっと嬉しいんだろう。例えば柱とか。
真偽は定かじゃないけど壱ノ型は使えないとの噂だから、自尊心の高い獪岳にそのことを聞きはしないし話題にも出さない。ついでに善逸の話もだ。
善逸は獪岳に手紙を送っているらしいけど返事が返ってきた試しがないそうだ。本当なら、返事してあげないの?と聞きたい。
でも下手なことを言えば、多分一生雷の呼吸を教えてもらえなくなる。もっと悪いと嫌われてしまうかもしれないものね。
私は彼が教えてくれるものを自分のものにすべく励むのみだ。
「拍手はいいから今のやってみろよ」
「あ、そうだったそうだった!」
「……ったく、覚える気あんのか?こちとら任務後の貴重な休憩時間なんだからな。さっさとやれやボケ」
「覚える気はあるに決まってるでしょ!私だって任務後じゃんボケって言うな」
「ボケにボケって言って何が悪いボケ」
んまー!あいっかわらず口悪いー!!
こんな人が照れ隠しだのなんだのするわけがない!!
***
その頃の煉獄杏寿郎は、キレていた。傍目からは全くそうとはわからないだろうが、内心キレていた。
なぜって、合同任務の折、例によって他の隊士から朝緋にモテ期到来の話を聞いてしまったからだ。
今恋人がいるのかどうか、いないのなら立候補をしたいと願い出る男が多い。
そしてそれは『兄』であり『師範』である煉獄へと問われる。
「朝緋は俺の恋人なのに、他の男にそんなことを言われるとはな」
言えない現状がもどかしい。言ってしまってもいいと思うのだが、いかんせん自分はまだ甲の階級に上がったわけでも柱になったわけでもない。あと少し、あと少しなのだ。だから言わない。
望む階級に上がるまではと、自分を律している状態だ。……朝緋自体もあまり人に言ってほしくないと言っていることだし。
何よりブチギレ寸前なのが、その発端となる人物からの話。
最終選別時に異形の鬼から助けてもらったそうで、彼女の振るう壱ノ型……その剣技の美しさに、幼い顔立ちながら凛々しく美しい横顔に惚れていたとのこと。
応急処置の際に見えた細腰、そこにあった傷はきっと今も傷跡として残ってしまっているだろう事。傷物にした責任は自分が取らねばいけないから求婚したい事までもべらべらと語っていた。
この男からもまた、今の朝緋の恋愛の状況を聞かれた。
「なぜ俺が君にそんな事を教えねばならない?求婚など許可しないし知っていても教えはしない」
相手は階級が下。それも朝緋と同期の割に、朝緋よりもかなり下の階級で、鬼を退治できているのか?と疑いたくなるような位置にいる。
そんな相手だからこそかもしれないが、自分がここまで冷たい目をできる人間だったとは、煉獄は思わなかったそうだ。
氷のように冷たい怒りと反応は男たちへ。
そしてその炎の呼吸のように熱く激しい怒りは全て、朝緋本人へとぶつけられる。
だなんて最近、隊士の間で噂されているらしい。久しぶりに雷の呼吸について教わっている時に、獪岳から言われた。
「おい、朝緋お前最近綺麗になったとか隊士達の間で言われてんぞ。知ってたか?」
「何それ知らない。私はただの妖怪頸オイテケですが?」
「知ってるよ。初めて会った時の衝撃は忘れねぇ……」
藤襲山の中で獪岳と会った時の私は、遭遇した一般の鬼の頸を片っ端から斬って回っていた。逃げる鬼。追う私。鬼事の鬼は私だった。
口元に薄く笑みすら浮かべて「頸を差し出せ」「頸落ちて死ね」と呟きながら日輪刀を振り回して鬼の血に濡れていたのだ。
あれ?今思えばこの台詞どこかで聞いたことあるや。んー、どこだろう?まあいいか。
そんな恐ろしい鬼女、いや妖怪の私と会った瞬間の獪岳の引き攣った顔と言ったら!
ほんっと申し訳ない。
「あっねぇねぇ、もしかして獪岳も綺麗とか思ってくれてんの?」
「ばっ……!
馬鹿いってんじゃねぇぞばーかばーか!」
途端に馬鹿を連発された。馬鹿馬鹿言いすぎじゃない?獪岳、照れ隠しだったりして?ま、そんなわけないか!
「誰がそんな事を言ってるんだろう?」
「お前と俺の同期の……ほら、なんて言ったかな。お前が異形の鬼から助けた男が発端らしいぞ」
「へぇ〜……誰?」
「覚えてないのかよ!?」
名前を忘れてしまった!それだけ『今回』はそこそこの人数を生存させることができたのだ。でも獪岳には言われたくない。
「んな事より雷の呼吸だろ、こうやるんだ……よっ!」
ーーやはり雷の呼吸の動きは速い。
雷の呼吸、弐ノ型・稲魂。
素早い振り斬りと、蓮撃が地を割って進み、まっすぐに抉ってゆく。
「おお、雷の呼吸、弐ノ型だね!かっこいい!すっご、地面抉れてる!!」
パチパチ
「……ふん」
満更でもなさそうだ。獪岳は褒められたり、認められたりと評価されることに物凄く価値を見出している節があるから、私如きに拍手喝采されたとしても嬉しいんだろうな。
これがもっと強い人からなら、もっともっと嬉しいんだろう。例えば柱とか。
真偽は定かじゃないけど壱ノ型は使えないとの噂だから、自尊心の高い獪岳にそのことを聞きはしないし話題にも出さない。ついでに善逸の話もだ。
善逸は獪岳に手紙を送っているらしいけど返事が返ってきた試しがないそうだ。本当なら、返事してあげないの?と聞きたい。
でも下手なことを言えば、多分一生雷の呼吸を教えてもらえなくなる。もっと悪いと嫌われてしまうかもしれないものね。
私は彼が教えてくれるものを自分のものにすべく励むのみだ。
「拍手はいいから今のやってみろよ」
「あ、そうだったそうだった!」
「……ったく、覚える気あんのか?こちとら任務後の貴重な休憩時間なんだからな。さっさとやれやボケ」
「覚える気はあるに決まってるでしょ!私だって任務後じゃんボケって言うな」
「ボケにボケって言って何が悪いボケ」
んまー!あいっかわらず口悪いー!!
こんな人が照れ隠しだのなんだのするわけがない!!
***
その頃の煉獄杏寿郎は、キレていた。傍目からは全くそうとはわからないだろうが、内心キレていた。
なぜって、合同任務の折、例によって他の隊士から朝緋にモテ期到来の話を聞いてしまったからだ。
今恋人がいるのかどうか、いないのなら立候補をしたいと願い出る男が多い。
そしてそれは『兄』であり『師範』である煉獄へと問われる。
「朝緋は俺の恋人なのに、他の男にそんなことを言われるとはな」
言えない現状がもどかしい。言ってしまってもいいと思うのだが、いかんせん自分はまだ甲の階級に上がったわけでも柱になったわけでもない。あと少し、あと少しなのだ。だから言わない。
望む階級に上がるまではと、自分を律している状態だ。……朝緋自体もあまり人に言ってほしくないと言っていることだし。
何よりブチギレ寸前なのが、その発端となる人物からの話。
最終選別時に異形の鬼から助けてもらったそうで、彼女の振るう壱ノ型……その剣技の美しさに、幼い顔立ちながら凛々しく美しい横顔に惚れていたとのこと。
応急処置の際に見えた細腰、そこにあった傷はきっと今も傷跡として残ってしまっているだろう事。傷物にした責任は自分が取らねばいけないから求婚したい事までもべらべらと語っていた。
この男からもまた、今の朝緋の恋愛の状況を聞かれた。
「なぜ俺が君にそんな事を教えねばならない?求婚など許可しないし知っていても教えはしない」
相手は階級が下。それも朝緋と同期の割に、朝緋よりもかなり下の階級で、鬼を退治できているのか?と疑いたくなるような位置にいる。
そんな相手だからこそかもしれないが、自分がここまで冷たい目をできる人間だったとは、煉獄は思わなかったそうだ。
氷のように冷たい怒りと反応は男たちへ。
そしてその炎の呼吸のように熱く激しい怒りは全て、朝緋本人へとぶつけられる。