四周目 参
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その後、鋼鐵塚さんから二本目の日輪刀を渡された。
生家だと二本目をいただいたことが槇寿朗さんや千寿郎に、というか彼らを通して杏寿郎さんにまでバレてしまいそうなので、古くなり朽ち果てた寺で受け取る。
ここ、夜になったら鬼か幽霊でそう……。鬼ならまだしも、幽霊は嫌だな。
受け取ったそれは短いのに耐久性に優れているせいなのか、いつもの日輪刀より少し重く、でもまだ振るってもいないのに自分の手にはやけに馴染んだ。
「他の呼吸をも扱えるほどの耐久性を持たせる。これはなかなか大変でな。ほんっっとうにものっっすごく大変だったがつくってきてやったぜ」
「すごい……、絶対折れないって意志が刀からも伝わってくるね。それに握りやすい。
ありがとうございます」
「おう。
刀には意志と使う者の願いが宿ってるからな。朝緋はまだ使ってないが、鍛刀の際に俺がたーんとお前の願いを込めて打ったからそうなった。
握りやすいのもお前のための刀として生まれたからだろ」
再び作って手渡した、鋼鐵塚さんご所望の大量みたらし団子。一心不乱に食べている。美味しいとは何も言わないけれど食べる様子でよくわかる。美味しいなら何よりだ。
彼はその串を口に咥えながら説明をしてくれた。
って、えええ?火男のお面はどうしたよ。いや、食べるためだとはいえ、側頭部に移動している!?
はあ……本当に顔だけはイケメンだったんだ。
杏寿郎さんにしか興味無いから何とも思わないけれど。
二本目を一度返すと、その場で最後の研磨に入る。ついでだからと鋼鐵塚さんはいつもの日輪刀も研いでくれた。
鬼は多数斬っているはずなのに、私の正規の日輪刀はまだ刃毀れもなく綺麗な状態だと褒められた。
よかった。自分の顔と同じように毎日お手入れしてるからね。それに折ったり刃毀れさせたらこの人怒るし。
この刀鍛冶は自分の打った刀一本一本が恋人だ。研いでいる時の目がそう語っていた。
「さあ、一番の目玉だな。
そいつを強く握って、早く俺に色変わりするところを見せろ!」
短く重い二本目の子を手渡される。
通常は色変わりの儀は一隊士につき一度きり。
けれど刀鍛冶ならば毎回見たいものなはずで。鋼鐵塚さんはその傾向が特に強く、ずずいと顔を至近距離まで近づけて迫ってきた。
ウッ……イケメンの圧がすごい。
どこか杏寿郎さんを彷彿とさせる力強い顔だ。こんなところ杏寿郎さんに見られたらやばいな。勘違いされそう。
とりあえず目の前のこの人には火男のお面を被ってて欲しい。
そんな思いを込めながら、強く、強く握りしめる。
ズ……ズズズ……。
根本からまず青に徐々に染まっていく。いつもと同じだ。
全てが一度青に染まり、そしてまた根本から炎の呼吸の赤に変わっていく。
まるで炎の温度変化のようにだ。
仕上げにと、熱い火の粉が飛ぶように、白の模様が刀身を美しく彩る。
いつもの色合いに染まりきった。
けれどそれだけでは終わらなかった。
刃がじわじわと黒ずんでいく。全体的に黒っぽく明度を落とした暗い色合いだ。
黒の絵の具をひとしずく混ぜ込んだような輝きと色。
仄暗い寺の中で、鈍く光る。
「……綺麗だが暗いな?」
「……そうですね」
美しさに見惚れてはいるので、刀鍛冶としては大変満足らしい。
この人は炎の呼吸使いの刀を作るのが好きなのか、昔から赤い色変わりの刀にご執心の気がある。
今回もまた、嬉しそうに刀を眺めていた。
それにしても黒まじりか。
炭治郎の刀は黒刀だ。
黒刀とはどの呼吸として扱えばいいのかわからない刀だと聞く。それだけ聞けばマイナスなイメージしかないけれど、プラスに考えてみよう。プラスに考えれば、どの呼吸とも合う可能性を秘めている、と取れると思うのだ。
ならこの黒を混ぜ込まれた炎刀は、他の呼吸と合わせやすく仕上がっているのかもしれない。
私が目指した日輪刀だ。
そうそう獪岳にお教授頼めるわけでもないし、まだちゃんと雷の呼吸は一つも習得できてないけれど。でも雷の呼吸に限らず他の呼吸を少しでも使えたなら。
私が強かったなら。
カナエさんも助けられたかもしれない。他の、鬼によって命を奪われた人を助けられたかもしれない。
この手のひらからこぼれ落ちる命を掬い上げられたのかも……。
せめてもう、誰も鬼に奪わせない。
杏寿郎さんの命も、それから私の命も鬼に奪わせやしない。
生家だと二本目をいただいたことが槇寿朗さんや千寿郎に、というか彼らを通して杏寿郎さんにまでバレてしまいそうなので、古くなり朽ち果てた寺で受け取る。
ここ、夜になったら鬼か幽霊でそう……。鬼ならまだしも、幽霊は嫌だな。
受け取ったそれは短いのに耐久性に優れているせいなのか、いつもの日輪刀より少し重く、でもまだ振るってもいないのに自分の手にはやけに馴染んだ。
「他の呼吸をも扱えるほどの耐久性を持たせる。これはなかなか大変でな。ほんっっとうにものっっすごく大変だったがつくってきてやったぜ」
「すごい……、絶対折れないって意志が刀からも伝わってくるね。それに握りやすい。
ありがとうございます」
「おう。
刀には意志と使う者の願いが宿ってるからな。朝緋はまだ使ってないが、鍛刀の際に俺がたーんとお前の願いを込めて打ったからそうなった。
握りやすいのもお前のための刀として生まれたからだろ」
再び作って手渡した、鋼鐵塚さんご所望の大量みたらし団子。一心不乱に食べている。美味しいとは何も言わないけれど食べる様子でよくわかる。美味しいなら何よりだ。
彼はその串を口に咥えながら説明をしてくれた。
って、えええ?火男のお面はどうしたよ。いや、食べるためだとはいえ、側頭部に移動している!?
はあ……本当に顔だけはイケメンだったんだ。
杏寿郎さんにしか興味無いから何とも思わないけれど。
二本目を一度返すと、その場で最後の研磨に入る。ついでだからと鋼鐵塚さんはいつもの日輪刀も研いでくれた。
鬼は多数斬っているはずなのに、私の正規の日輪刀はまだ刃毀れもなく綺麗な状態だと褒められた。
よかった。自分の顔と同じように毎日お手入れしてるからね。それに折ったり刃毀れさせたらこの人怒るし。
この刀鍛冶は自分の打った刀一本一本が恋人だ。研いでいる時の目がそう語っていた。
「さあ、一番の目玉だな。
そいつを強く握って、早く俺に色変わりするところを見せろ!」
短く重い二本目の子を手渡される。
通常は色変わりの儀は一隊士につき一度きり。
けれど刀鍛冶ならば毎回見たいものなはずで。鋼鐵塚さんはその傾向が特に強く、ずずいと顔を至近距離まで近づけて迫ってきた。
ウッ……イケメンの圧がすごい。
どこか杏寿郎さんを彷彿とさせる力強い顔だ。こんなところ杏寿郎さんに見られたらやばいな。勘違いされそう。
とりあえず目の前のこの人には火男のお面を被ってて欲しい。
そんな思いを込めながら、強く、強く握りしめる。
ズ……ズズズ……。
根本からまず青に徐々に染まっていく。いつもと同じだ。
全てが一度青に染まり、そしてまた根本から炎の呼吸の赤に変わっていく。
まるで炎の温度変化のようにだ。
仕上げにと、熱い火の粉が飛ぶように、白の模様が刀身を美しく彩る。
いつもの色合いに染まりきった。
けれどそれだけでは終わらなかった。
刃がじわじわと黒ずんでいく。全体的に黒っぽく明度を落とした暗い色合いだ。
黒の絵の具をひとしずく混ぜ込んだような輝きと色。
仄暗い寺の中で、鈍く光る。
「……綺麗だが暗いな?」
「……そうですね」
美しさに見惚れてはいるので、刀鍛冶としては大変満足らしい。
この人は炎の呼吸使いの刀を作るのが好きなのか、昔から赤い色変わりの刀にご執心の気がある。
今回もまた、嬉しそうに刀を眺めていた。
それにしても黒まじりか。
炭治郎の刀は黒刀だ。
黒刀とはどの呼吸として扱えばいいのかわからない刀だと聞く。それだけ聞けばマイナスなイメージしかないけれど、プラスに考えてみよう。プラスに考えれば、どの呼吸とも合う可能性を秘めている、と取れると思うのだ。
ならこの黒を混ぜ込まれた炎刀は、他の呼吸と合わせやすく仕上がっているのかもしれない。
私が目指した日輪刀だ。
そうそう獪岳にお教授頼めるわけでもないし、まだちゃんと雷の呼吸は一つも習得できてないけれど。でも雷の呼吸に限らず他の呼吸を少しでも使えたなら。
私が強かったなら。
カナエさんも助けられたかもしれない。他の、鬼によって命を奪われた人を助けられたかもしれない。
この手のひらからこぼれ落ちる命を掬い上げられたのかも……。
せめてもう、誰も鬼に奪わせない。
杏寿郎さんの命も、それから私の命も鬼に奪わせやしない。