四周目 参
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最終選別が無事に終わっ……全然無事じゃない!
今回私に絶大な被害をもたらした最終選別が終わった、と言った方がしっくりくる。
だって脇腹が薄くとはいえ抉れてるんだよ。ウエスト二センチは細くなったよ!わーいダイエットできたー!……じゃないよぜんっぜん嬉しくないよ!?痛いわ!!
誰相手にでもなくキレる私。いや、私は自分の弱さにキレている。同期を守れなかった事にもキレている。次点で手鬼。
杏寿郎さんもこんな気分で生家への帰路を歩いていたのかなあ……。
ううん、杏寿郎さんは出来た人だから私みたいに脳内でキレ散らかしていないと思う。
正面からは入らずお勝手口をひょこりと覗く。手元の様子を見てタイミングを見計らい、煮炊きをしていた千寿郎の後ろから声をかけた。
なるべく元気よく、ね。
「ハァイ千寿郎、朝緋ちゃん参上!たっだいまー!」
「姉上!!よくぞご無事で!おかえりなさ……、姉上ぇぇぇっ!?」
千寿郎が返事を大音量、杏寿郎さんに負けず劣らずのクソデカボイスで返してきた。詰め寄ってすぐ近くで。
「うるさっ!耳元で大声出さないでよ」
「だって兄上に続いて姉上までこんな怪我を……!」
「ん?……包帯巻いてるだけだよ」
「嘘おっしゃい!血が滲んでますよ!?ほら特に後ろに!」
「おわあほんとだ!?」
指摘されて初めて気がついた。帰る直前再び新しい包帯に替えてもらってまっちろぴかぴか新品だったそれが、今確認したら広範囲に渡って血の色に染まってしまっていた。
ぐっしょりと血で濡れている、とかではないから気がつかなかった。鼻の中は元々七日間の戦闘で血の匂いがこびりついてるし、新しく香る血の匂いもわからない。
千寿郎が慌て、そして怒っている。
「あちゃーバレたー。回復の呼吸してても駄目だったかー!!いやぁ目立つ目立つ!白地に赤とか、炎柱の羽織くらい目立つね!」
「馬鹿な事言ってないで、早く治療を!何ですかこの大雑把な巻き方は!?手当てするなら適切にしないと駄目じゃないですか!!」
千寿郎にまで馬鹿とか言われて姉上ショックなんだけど。あとこれは獪岳が巻いたやつだから仕方ないのだよ、うん。あの獪岳がこうして包帯を巻いてくれただけありがたいのだ。
「ほら、治療しますから姉上はお部屋に!そのまま勝手口から入っちゃっていいので!」
「はいはい」
「はいは一回ですよ!」
ぐいぐい中に入れようとする千寿郎に従い、その場で手足を拭いて台所からただいまする。普段はこんなことしないよ?お行儀悪いし怒られちゃう。
部屋に戻ると布団が既に敷いてあり、すぐに眠れるようになっていた。私も杏寿郎さんが帰ってくる日はこうして布団を敷いて待ってたし驚いたりはしない。
着替えて治療を受け、包帯を巻き直してもらう。千寿郎も手際が良くなったもんだ。
「父様は御在宅、だよね?挨拶しなきゃなぁ……千寿郎は手を上げられたり暴言吐かれたりはしなかったの?」
「それはあとです、あと!
父上はいつも通りです。僕への暴力も暴言も特にございませんでしたね」
「ならよかった」
話しぶりからも本当だとわかる。『前』とは違うなぁ。性格が丸くなった?食べ物が欧米化して体も丸く……は、なってなかったな。筋肉量は煉獄家全体で増大してるけど。
ムキムキマッスルボディー杏寿郎さん……抱かれたい。鼻血出そう。
「こんな怪我したのバレたら父様に怒られちゃいそう。杏寿郎兄さんの時もぷりぷり怒ってたし鬼殺隊に入るなーって言ってたもんね」
「怒られるも何も、元から怒ってますし姉上をかなりご心配されてます。
大体、父上どころではありません!姉上は稀血以前におなごなんですからね!?傷が残っては大変です!女性ならもっと怪我に気をつけなくてはいけません!!」
「あっ、そういう差別しちゃう感じ?傷物は結婚できないとかそういう感じ?男だって傷跡も何もない方がいいし心配の度合いだって同じにするべきじゃないの。
杏寿郎兄さんの時も、千寿郎は同じくらい心配したでしょ?」
「そういう問題ではありません、よっ!」
べちん!
治療したてほやほやの場所を叩かれた。
「いっだぁーーーっ!?」
「この程度で痛がるなら怪我しないで下さい。
さああとは大人しく。いいですか、お、と、な、し、く!休んでいてくださいね?」
問答無用とばかりに上から布団をばさりとかけられてしまった。
「……はーい」
ぐぅぎゅるるるるるぅごごごぐぉぉぉ。
しかしその空気をぶち破るものすごい音がお腹から聞こえた。
「姉上のお腹には鬼でも住んでるんですか」
「うん。私のお腹に住んでる鬼ったら、すっごい唸ってるみたいだね……」
「はあ……途中でしたしご飯作ってきます」
ご飯の話をされ、余計お腹が空いた。
「あ、千寿郎。おむすびね、他の子にも結構食べられちゃって。だからおむすび、いやむしろ千寿郎のご飯欠乏症なんだけど、今すぐ食べられる物ってあるかな?怪我よりお腹すきすぎてやばい!お腹空いて休めない!!」
「うーん。おむすびならすぐできますが……他にも食べたいものはありますか?なるべく早く作ってまいります」
「ならお稲荷寿司が食べたい!じゅわっとお揚げで酢飯が柚子酢の爽やかなアレ!!」
柚子の果汁たっぷりのお酢で作ったお稲荷さんはめちゃくちゃ美味しいのだ。あれが登場した日は、杏寿郎さんにすら譲りはしない。私の分を食べられたら一年は根に持つ。
「わかりました。でも油揚げさんはないので後ほど買ってまいります。お待ちください」
「なんと!?……でも待つから今がいい〜」
あとでいいよとは絶対に言わない。だって、私頑張ったもの。ご褒美が欲しい!!
食べ物には妥協しない。譲らない。そして話しぶりすら童心に返る。
「……今我慢できないのでは?」
「いや、我慢する。おむすびと一緒にお稲荷さん追加で!!」
「わかりました。では今すぐ買って作ります。いいですか、くれぐれも大人しく「大人しくしてるってば!ほら布団で寝てるし!!」ならいいです」
この子ったら、まーた瑠火さんに似てきたよ……それも怖い面ばっかり。
今回私に絶大な被害をもたらした最終選別が終わった、と言った方がしっくりくる。
だって脇腹が薄くとはいえ抉れてるんだよ。ウエスト二センチは細くなったよ!わーいダイエットできたー!……じゃないよぜんっぜん嬉しくないよ!?痛いわ!!
誰相手にでもなくキレる私。いや、私は自分の弱さにキレている。同期を守れなかった事にもキレている。次点で手鬼。
杏寿郎さんもこんな気分で生家への帰路を歩いていたのかなあ……。
ううん、杏寿郎さんは出来た人だから私みたいに脳内でキレ散らかしていないと思う。
正面からは入らずお勝手口をひょこりと覗く。手元の様子を見てタイミングを見計らい、煮炊きをしていた千寿郎の後ろから声をかけた。
なるべく元気よく、ね。
「ハァイ千寿郎、朝緋ちゃん参上!たっだいまー!」
「姉上!!よくぞご無事で!おかえりなさ……、姉上ぇぇぇっ!?」
千寿郎が返事を大音量、杏寿郎さんに負けず劣らずのクソデカボイスで返してきた。詰め寄ってすぐ近くで。
「うるさっ!耳元で大声出さないでよ」
「だって兄上に続いて姉上までこんな怪我を……!」
「ん?……包帯巻いてるだけだよ」
「嘘おっしゃい!血が滲んでますよ!?ほら特に後ろに!」
「おわあほんとだ!?」
指摘されて初めて気がついた。帰る直前再び新しい包帯に替えてもらってまっちろぴかぴか新品だったそれが、今確認したら広範囲に渡って血の色に染まってしまっていた。
ぐっしょりと血で濡れている、とかではないから気がつかなかった。鼻の中は元々七日間の戦闘で血の匂いがこびりついてるし、新しく香る血の匂いもわからない。
千寿郎が慌て、そして怒っている。
「あちゃーバレたー。回復の呼吸してても駄目だったかー!!いやぁ目立つ目立つ!白地に赤とか、炎柱の羽織くらい目立つね!」
「馬鹿な事言ってないで、早く治療を!何ですかこの大雑把な巻き方は!?手当てするなら適切にしないと駄目じゃないですか!!」
千寿郎にまで馬鹿とか言われて姉上ショックなんだけど。あとこれは獪岳が巻いたやつだから仕方ないのだよ、うん。あの獪岳がこうして包帯を巻いてくれただけありがたいのだ。
「ほら、治療しますから姉上はお部屋に!そのまま勝手口から入っちゃっていいので!」
「はいはい」
「はいは一回ですよ!」
ぐいぐい中に入れようとする千寿郎に従い、その場で手足を拭いて台所からただいまする。普段はこんなことしないよ?お行儀悪いし怒られちゃう。
部屋に戻ると布団が既に敷いてあり、すぐに眠れるようになっていた。私も杏寿郎さんが帰ってくる日はこうして布団を敷いて待ってたし驚いたりはしない。
着替えて治療を受け、包帯を巻き直してもらう。千寿郎も手際が良くなったもんだ。
「父様は御在宅、だよね?挨拶しなきゃなぁ……千寿郎は手を上げられたり暴言吐かれたりはしなかったの?」
「それはあとです、あと!
父上はいつも通りです。僕への暴力も暴言も特にございませんでしたね」
「ならよかった」
話しぶりからも本当だとわかる。『前』とは違うなぁ。性格が丸くなった?食べ物が欧米化して体も丸く……は、なってなかったな。筋肉量は煉獄家全体で増大してるけど。
ムキムキマッスルボディー杏寿郎さん……抱かれたい。鼻血出そう。
「こんな怪我したのバレたら父様に怒られちゃいそう。杏寿郎兄さんの時もぷりぷり怒ってたし鬼殺隊に入るなーって言ってたもんね」
「怒られるも何も、元から怒ってますし姉上をかなりご心配されてます。
大体、父上どころではありません!姉上は稀血以前におなごなんですからね!?傷が残っては大変です!女性ならもっと怪我に気をつけなくてはいけません!!」
「あっ、そういう差別しちゃう感じ?傷物は結婚できないとかそういう感じ?男だって傷跡も何もない方がいいし心配の度合いだって同じにするべきじゃないの。
杏寿郎兄さんの時も、千寿郎は同じくらい心配したでしょ?」
「そういう問題ではありません、よっ!」
べちん!
治療したてほやほやの場所を叩かれた。
「いっだぁーーーっ!?」
「この程度で痛がるなら怪我しないで下さい。
さああとは大人しく。いいですか、お、と、な、し、く!休んでいてくださいね?」
問答無用とばかりに上から布団をばさりとかけられてしまった。
「……はーい」
ぐぅぎゅるるるるるぅごごごぐぉぉぉ。
しかしその空気をぶち破るものすごい音がお腹から聞こえた。
「姉上のお腹には鬼でも住んでるんですか」
「うん。私のお腹に住んでる鬼ったら、すっごい唸ってるみたいだね……」
「はあ……途中でしたしご飯作ってきます」
ご飯の話をされ、余計お腹が空いた。
「あ、千寿郎。おむすびね、他の子にも結構食べられちゃって。だからおむすび、いやむしろ千寿郎のご飯欠乏症なんだけど、今すぐ食べられる物ってあるかな?怪我よりお腹すきすぎてやばい!お腹空いて休めない!!」
「うーん。おむすびならすぐできますが……他にも食べたいものはありますか?なるべく早く作ってまいります」
「ならお稲荷寿司が食べたい!じゅわっとお揚げで酢飯が柚子酢の爽やかなアレ!!」
柚子の果汁たっぷりのお酢で作ったお稲荷さんはめちゃくちゃ美味しいのだ。あれが登場した日は、杏寿郎さんにすら譲りはしない。私の分を食べられたら一年は根に持つ。
「わかりました。でも油揚げさんはないので後ほど買ってまいります。お待ちください」
「なんと!?……でも待つから今がいい〜」
あとでいいよとは絶対に言わない。だって、私頑張ったもの。ご褒美が欲しい!!
食べ物には妥協しない。譲らない。そして話しぶりすら童心に返る。
「……今我慢できないのでは?」
「いや、我慢する。おむすびと一緒にお稲荷さん追加で!!」
「わかりました。では今すぐ買って作ります。いいですか、くれぐれも大人しく「大人しくしてるってば!ほら布団で寝てるし!!」ならいいです」
この子ったら、まーた瑠火さんに似てきたよ……それも怖い面ばっかり。