二周目 壱
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瑠火さんや奉公人からの指示や教えにより、私は一通りの家事や、華道に茶道についても覚えた。
ただ、芸妓になるわけでもないのにお琴にまで手を出すとは思わなかった。
学校でも習うんじゃないかな……?『前』の記憶では煉獄家での思い出ばかりが蘇ってきてしまい、学校での思い出はあまりない。
体の弱い瑠火さんの代わりに千寿郎の面倒を見ることも増え、おんぶ紐でおぶりながらの家事に従事する。
その際、呼吸法を使うのを忘れない。まだまだ今の杏寿郎さんにも及ばないし、常中なんて夢のまた夢。原理は理解していても、体は追いついていなかった。
幼い体だから仕方ないけれど、今の私には体力も何もかもが足りていない。
力不足で途方に暮れていた私が、尋常小学校にもう少しで入るというある夜のことだった。
珍しく槇寿朗さんに鬼殺の任務がない非番の夜を待ち、私は酌を申し出た。
お琴こそ披露しないが、齢五つにして殿方への酌の仕方まで仕込まれてしまった私は、父である槇寿朗さんの機嫌をよくする手法にも長けている。
『鬼殺隊に入りたい』その希望を飲んでもらうために、今夜は女中のごとく隣を取ったのだ。……杏寿郎さんが少しだけ眉を顰めたのは見なかったふりをした。
「娘に酌をしてもらうのは嬉しい!……が、今夜の酌は理由があるのだろう。
それは何だ、言ってみろ。朝緋が望むのは紅が欲しい髪飾りがほしい。そういう叶え甲斐ある女子の我儘と違う事はわかっている」
快活に笑いお酒を煽っていたが、突然真面目な顔をして問いかけてきた。槇寿朗さんの顔は今、どちらかというと炎柱の顔だ。
少しでもご機嫌をとってから言おうと踏んだけど、しかしその魂胆は見破られていた。さすがは現炎柱……というより、家族だものね。あからさまで見え透いていたか。瞬時にバレるとはまだまだ精進が足りない。
「なに?鬼殺隊に入りたい、だと……?」
私が望みを申し出ると、声色も纏う空気も一瞬にして変わった。炎の呼吸使いなのに、まるで氷点下のように冷たく寒い空気にだ。
「それは男子の役目だ。女子である朝緋がその道に進む必要はない。
少しばかりのようだが普段から呼吸法にも手を出しているな?それもやめなさい。
朝緋の御両親も生計を立てる上で使っていたと話はしたが、本家たる我が家では呼吸法を鬼殺以外に使うことはない。覚えなくていい」
ジジジ……、静かに声が響く中、唯一の光源である燈明皿の灯火が大きく揺らいだ。
「……鬼殺隊には女子の隊員もいると聞きました。性別が違うだけでその道に進めないわけじゃない」
そして私自身、『前』も鬼殺隊の隊員だった。階級も甲で割と高く、望まぬ形とはいえ最後には柱にも任命された。なお、悪鬼滅殺と彫られた刀をもらう前日に過去に飛ばされたので、柱としての活動はひとつもしていない。
「はあ……朝緋にそんなこと教えたやつは一体誰なんだ。
確かに女の隊士もいる。柱になる者も中にはいるほどだ。
だがその考えは捨てろ。鬼殺の道には杏寿郎が進む。お前まで入隊して危険に飛び込む事はない」
「ごめんなさいとうさま。でも私もその道にどうしても進みたく思います。
何を言われようとも、呼吸法の鍛錬も止める気はありません。止めようにも『呼吸』ですからね〜。下手に止めれば命に関わりますよ〜」
私は本当の親を鬼に殺されている。
呼吸を止めるイコール死という命をかけた言葉遊び兼、脅しを加えてそう口にすれば、とうとう槇寿朗さんは言葉に詰まり、深いため息を吐いた。
親しい者や家族を鬼により喪う。その事実は、鬼へ復讐せんとする人間を修羅の道へ誘う最大の要因。
復讐が更なる復讐や悲しみしか生まないのは分かっていてもなお、人は復讐に身を焦がす。親だけではない、私はここに戻る前にトラウマになるほどの愛しい人の喪失を経験し、酷い悲しみと復讐心に襲われた。その黒い炎は、今もなお心の片隅で燻っている。
「………………わかった。
入る入らないは別として、入りたいというその気持ちだけは受け取っておこう。
ただし、畑づくりを許可した時同様、すべきことは完璧にこなしなさい。
学校にもせめて四年は休まずに通うこと。それが最低条件だ」
「休まずに四年……杏寿郎兄さんとは違うのですね」
義務教育が始まったのは明治の初頭か中頃。基本的に学校への通学が強制なのはわかっているが、『前』の時はここまでガチガチに「学校へ行け」なんて言われなかった気がする。
これは『前』よりも煉獄家により深い関心を持った弊害かも。家族に可愛がってもらうのは嬉しいが、過保護になってしまった。
下手をすれば鬼殺隊への道が閉ざされる。
「杏寿郎は煉獄家の嫡男だから当然だ。だが朝緋は女子だ。ゆくゆくはどこかへ嫁ぐのが当たり前なのだから、女子としての将来も考えずどうする」
時代柄か。自分の進みたい進路というのが他にあったとしても、その希望が叶う事はまだほとんどなく自由はゆるされていなかった。子が進む道は、初めから決まっている時代だ。
杏寿郎さんもまた、自分が望もうと望まなかろうと、生業だからと鬼殺隊へ進む道しかない。……まあ、本人もそうあるべきと考えているし、やりたい事も一緒のようだからいいけど。令和の世で生きた記憶がある私が特殊なのだ。
もしも杏寿郎さんよりも、私の方に鬼殺の才や力があったなら。
そうすれば性別の拘りなどなく、認めてもらえたのだろうか。そんなもしもを考えてしまった。
「御両親の使っていたものは鬼殺には向かない質のものだったようだが、朝緋はすでに鬼殺向きの呼吸を覚え始めている。万が一鬼殺の道に飛び込んでも支障なきよう、呼吸について教えておく。
知らないのと知っているのとでは天と地ほどの差があるからな」
「ありがとうございます!」
やれやれと苦笑しながら私の頭を撫でた槇寿朗さんだが、その直後には厳しい顔に戻る。
「炎の呼吸に適性が高いのは血筋ゆえわかりきったこと。もちろん、他の呼吸が合う事もあろうが、朝緋の場合は炎で確定だ。
ただ、お前の力を考えると炎の呼吸を扱うには相当の努力が必要だ。
呼吸法以外にもこっそりと鍛錬しているだろう?見ていたが朝緋の筋力のつき方では、鬼の頸を落とすまでに何度も刃を振るわねばならない。鬼が傷を修復する中それでは、命がいくつあっても足りない」
筋力や体力をつけようとしているところを見られていた。しかも、恥ずかしいくらい微々たる努力で以って足掻いている情けない姿をだ。
「でも今は子供だから筋肉がなくて当たり前じゃ……?」
この小さな体では、努力しようにも限界もある事だし。
「今は幼いからいいというわけではない。成長しても、そこまでたくさんの筋力は望めないだろう。限界が直に来る」
言われ、唇をギュッと噛み締める。
本当はわかっていた事だ。実際、私の筋力だけは炎の呼吸に合っていなかった。その状態で、必死に鬼の頸を討ち取っていた。
「……こほん。
とはいえ、筋力は鍛えれば徐々につく質でもある、矛盾しているがそのはずだ。その分、鍛錬を怠れば筋肉は最も簡単に落ちるだろうから朝緋は杏寿郎以上に鍛錬を積まねばならない。
ただ、お前は力がつくのが遅くとも、代わりその速さがある。
駆け足は速かろう?この足はそういう足だ」
落としてから拾い上げてくれた。そうだ、私にはこの足がある。もっとこの速さを磨こう。誰にも追いつけぬくらいの速さを。あの音柱にすら負けぬ速さを。
「して、呼吸の話だ。
炎は剛……力強く、少ない動きで鬼を相手にすることが多い。
その反対の呼吸に水がある。流れるような動きや素早い動きを得意とするのが柔。そちらの呼吸だ。
つまりその速度、動きだけで言えば朝緋の体には水の呼吸の方が合う可能性が高い。あれは筋力が少ない者にも扱いやすい呼吸だしな。他にも呼吸には種類がある。適性は他にある可能性も否めん。
もちろん炎の呼吸を覚えるだけならできるだろう。それを使い鬼を相手にするには相当な努力が必要ということなのだ」
他の呼吸が合うかどうかは試していなかったからわからないけれど、炎の呼吸を扱う事は今までだってやってこれた事。
その相当な努力も、血反吐を吐きながらもやってこれた。大丈夫だ。
「まあ俺としては、かわいい娘には幸せになってもらいたいからな。学校の事もあるし今は育手を紹介しないし俺自ら稽古はつける予定も今のところない。
この先の考えが変わらなければ、またその時に言いなさい」
相当ぬるくなってしまった酒を自ら手酌で煽り、槇寿朗さんは最後にそう言った。
そのあとは杏寿郎さんや近所の子達と遊びがてら。そして無事に入った小学校の体操の時間などで体を鍛え、呼吸の訓練に勤しんだ。
訓導の方々は、私の鬼気迫る体の痛めつけ方にそれはもう大層ひいていた。
もちろん、ほかの授業……国語、修身、算術、図画に国史。唱歌に至るまでどの教科についても手を抜くことはなく、全力で取り組んだ。
長子でもなんでもなくとも、これでも煉獄家の娘。教養も大事だから学校に通えというのは、よくわかっているつもりだ。
ただ、芸妓になるわけでもないのにお琴にまで手を出すとは思わなかった。
学校でも習うんじゃないかな……?『前』の記憶では煉獄家での思い出ばかりが蘇ってきてしまい、学校での思い出はあまりない。
体の弱い瑠火さんの代わりに千寿郎の面倒を見ることも増え、おんぶ紐でおぶりながらの家事に従事する。
その際、呼吸法を使うのを忘れない。まだまだ今の杏寿郎さんにも及ばないし、常中なんて夢のまた夢。原理は理解していても、体は追いついていなかった。
幼い体だから仕方ないけれど、今の私には体力も何もかもが足りていない。
力不足で途方に暮れていた私が、尋常小学校にもう少しで入るというある夜のことだった。
珍しく槇寿朗さんに鬼殺の任務がない非番の夜を待ち、私は酌を申し出た。
お琴こそ披露しないが、齢五つにして殿方への酌の仕方まで仕込まれてしまった私は、父である槇寿朗さんの機嫌をよくする手法にも長けている。
『鬼殺隊に入りたい』その希望を飲んでもらうために、今夜は女中のごとく隣を取ったのだ。……杏寿郎さんが少しだけ眉を顰めたのは見なかったふりをした。
「娘に酌をしてもらうのは嬉しい!……が、今夜の酌は理由があるのだろう。
それは何だ、言ってみろ。朝緋が望むのは紅が欲しい髪飾りがほしい。そういう叶え甲斐ある女子の我儘と違う事はわかっている」
快活に笑いお酒を煽っていたが、突然真面目な顔をして問いかけてきた。槇寿朗さんの顔は今、どちらかというと炎柱の顔だ。
少しでもご機嫌をとってから言おうと踏んだけど、しかしその魂胆は見破られていた。さすがは現炎柱……というより、家族だものね。あからさまで見え透いていたか。瞬時にバレるとはまだまだ精進が足りない。
「なに?鬼殺隊に入りたい、だと……?」
私が望みを申し出ると、声色も纏う空気も一瞬にして変わった。炎の呼吸使いなのに、まるで氷点下のように冷たく寒い空気にだ。
「それは男子の役目だ。女子である朝緋がその道に進む必要はない。
少しばかりのようだが普段から呼吸法にも手を出しているな?それもやめなさい。
朝緋の御両親も生計を立てる上で使っていたと話はしたが、本家たる我が家では呼吸法を鬼殺以外に使うことはない。覚えなくていい」
ジジジ……、静かに声が響く中、唯一の光源である燈明皿の灯火が大きく揺らいだ。
「……鬼殺隊には女子の隊員もいると聞きました。性別が違うだけでその道に進めないわけじゃない」
そして私自身、『前』も鬼殺隊の隊員だった。階級も甲で割と高く、望まぬ形とはいえ最後には柱にも任命された。なお、悪鬼滅殺と彫られた刀をもらう前日に過去に飛ばされたので、柱としての活動はひとつもしていない。
「はあ……朝緋にそんなこと教えたやつは一体誰なんだ。
確かに女の隊士もいる。柱になる者も中にはいるほどだ。
だがその考えは捨てろ。鬼殺の道には杏寿郎が進む。お前まで入隊して危険に飛び込む事はない」
「ごめんなさいとうさま。でも私もその道にどうしても進みたく思います。
何を言われようとも、呼吸法の鍛錬も止める気はありません。止めようにも『呼吸』ですからね〜。下手に止めれば命に関わりますよ〜」
私は本当の親を鬼に殺されている。
呼吸を止めるイコール死という命をかけた言葉遊び兼、脅しを加えてそう口にすれば、とうとう槇寿朗さんは言葉に詰まり、深いため息を吐いた。
親しい者や家族を鬼により喪う。その事実は、鬼へ復讐せんとする人間を修羅の道へ誘う最大の要因。
復讐が更なる復讐や悲しみしか生まないのは分かっていてもなお、人は復讐に身を焦がす。親だけではない、私はここに戻る前にトラウマになるほどの愛しい人の喪失を経験し、酷い悲しみと復讐心に襲われた。その黒い炎は、今もなお心の片隅で燻っている。
「………………わかった。
入る入らないは別として、入りたいというその気持ちだけは受け取っておこう。
ただし、畑づくりを許可した時同様、すべきことは完璧にこなしなさい。
学校にもせめて四年は休まずに通うこと。それが最低条件だ」
「休まずに四年……杏寿郎兄さんとは違うのですね」
義務教育が始まったのは明治の初頭か中頃。基本的に学校への通学が強制なのはわかっているが、『前』の時はここまでガチガチに「学校へ行け」なんて言われなかった気がする。
これは『前』よりも煉獄家により深い関心を持った弊害かも。家族に可愛がってもらうのは嬉しいが、過保護になってしまった。
下手をすれば鬼殺隊への道が閉ざされる。
「杏寿郎は煉獄家の嫡男だから当然だ。だが朝緋は女子だ。ゆくゆくはどこかへ嫁ぐのが当たり前なのだから、女子としての将来も考えずどうする」
時代柄か。自分の進みたい進路というのが他にあったとしても、その希望が叶う事はまだほとんどなく自由はゆるされていなかった。子が進む道は、初めから決まっている時代だ。
杏寿郎さんもまた、自分が望もうと望まなかろうと、生業だからと鬼殺隊へ進む道しかない。……まあ、本人もそうあるべきと考えているし、やりたい事も一緒のようだからいいけど。令和の世で生きた記憶がある私が特殊なのだ。
もしも杏寿郎さんよりも、私の方に鬼殺の才や力があったなら。
そうすれば性別の拘りなどなく、認めてもらえたのだろうか。そんなもしもを考えてしまった。
「御両親の使っていたものは鬼殺には向かない質のものだったようだが、朝緋はすでに鬼殺向きの呼吸を覚え始めている。万が一鬼殺の道に飛び込んでも支障なきよう、呼吸について教えておく。
知らないのと知っているのとでは天と地ほどの差があるからな」
「ありがとうございます!」
やれやれと苦笑しながら私の頭を撫でた槇寿朗さんだが、その直後には厳しい顔に戻る。
「炎の呼吸に適性が高いのは血筋ゆえわかりきったこと。もちろん、他の呼吸が合う事もあろうが、朝緋の場合は炎で確定だ。
ただ、お前の力を考えると炎の呼吸を扱うには相当の努力が必要だ。
呼吸法以外にもこっそりと鍛錬しているだろう?見ていたが朝緋の筋力のつき方では、鬼の頸を落とすまでに何度も刃を振るわねばならない。鬼が傷を修復する中それでは、命がいくつあっても足りない」
筋力や体力をつけようとしているところを見られていた。しかも、恥ずかしいくらい微々たる努力で以って足掻いている情けない姿をだ。
「でも今は子供だから筋肉がなくて当たり前じゃ……?」
この小さな体では、努力しようにも限界もある事だし。
「今は幼いからいいというわけではない。成長しても、そこまでたくさんの筋力は望めないだろう。限界が直に来る」
言われ、唇をギュッと噛み締める。
本当はわかっていた事だ。実際、私の筋力だけは炎の呼吸に合っていなかった。その状態で、必死に鬼の頸を討ち取っていた。
「……こほん。
とはいえ、筋力は鍛えれば徐々につく質でもある、矛盾しているがそのはずだ。その分、鍛錬を怠れば筋肉は最も簡単に落ちるだろうから朝緋は杏寿郎以上に鍛錬を積まねばならない。
ただ、お前は力がつくのが遅くとも、代わりその速さがある。
駆け足は速かろう?この足はそういう足だ」
落としてから拾い上げてくれた。そうだ、私にはこの足がある。もっとこの速さを磨こう。誰にも追いつけぬくらいの速さを。あの音柱にすら負けぬ速さを。
「して、呼吸の話だ。
炎は剛……力強く、少ない動きで鬼を相手にすることが多い。
その反対の呼吸に水がある。流れるような動きや素早い動きを得意とするのが柔。そちらの呼吸だ。
つまりその速度、動きだけで言えば朝緋の体には水の呼吸の方が合う可能性が高い。あれは筋力が少ない者にも扱いやすい呼吸だしな。他にも呼吸には種類がある。適性は他にある可能性も否めん。
もちろん炎の呼吸を覚えるだけならできるだろう。それを使い鬼を相手にするには相当な努力が必要ということなのだ」
他の呼吸が合うかどうかは試していなかったからわからないけれど、炎の呼吸を扱う事は今までだってやってこれた事。
その相当な努力も、血反吐を吐きながらもやってこれた。大丈夫だ。
「まあ俺としては、かわいい娘には幸せになってもらいたいからな。学校の事もあるし今は育手を紹介しないし俺自ら稽古はつける予定も今のところない。
この先の考えが変わらなければ、またその時に言いなさい」
相当ぬるくなってしまった酒を自ら手酌で煽り、槇寿朗さんは最後にそう言った。
そのあとは杏寿郎さんや近所の子達と遊びがてら。そして無事に入った小学校の体操の時間などで体を鍛え、呼吸の訓練に勤しんだ。
訓導の方々は、私の鬼気迫る体の痛めつけ方にそれはもう大層ひいていた。
もちろん、ほかの授業……国語、修身、算術、図画に国史。唱歌に至るまでどの教科についても手を抜くことはなく、全力で取り組んだ。
長子でもなんでもなくとも、これでも煉獄家の娘。教養も大事だから学校に通えというのは、よくわかっているつもりだ。