四周目 弐
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鬼による人の死にまだ慣れていない杏寿郎さんは、その晩また魘されていた。
わかるよ、わかる。私も人の死に慣れるまでは寝ても覚めても悪夢の中にいる気分だったもの。
ううん。慣れた今でもふとした時に悪夢は蘇る。『最初』の記憶なんてそうだ。貴方の死を未だ悪夢に見る。
でも、起こすべきか起こさぬべきか、迷いどころ……。先日、起こそうとして押し倒された記憶が蘇る。
あれは非常に眼福……んん゛っ!非常に恥ずかし……はい、認めます。素敵な杏寿郎さんの御姿を、ありがとうございます。ご馳走様でございました。
「奪うな、やめろ、……その者達は俺の、大切な……朝緋……千寿郎、」
……けど呼吸が荒い。前よりもっとだ。もっと、激しく魘されている。
常中が途切れ途切れで、塞がっていたはずの破れかけた鼓膜……耳から血が滲んで枕を濡らしていた。涙もだ。その目から涙が滲んでいた。
起こしはしない。ただ、井戸で冷やした手拭いで、額の汗を拭ってやる。こんなの付け焼き刃にしかならないだろうけれど……。
ひんやりした布で額、耳元に滲む血、そして首筋に浮かぶ汗の滴を吸い取れば。
「何奴!」
「ぎゃっっっ!!」
手首をものすごい勢いで掴まれ、布団に転がされてものすごい勢いで縫い止められた。押し倒す、なんて生ぬるい感じじゃない。
またか!またこのパターンか!
私も懲りないけど、杏寿郎さんも同じ轍を何度踏む気だ。
緊張と。そして目の前にいる少年から青年に変わる途中の美丈夫を前に、心臓がバクバクとうるさい。
かっこ良すぎるからそのアングルから髪をかき上げてこちらを見下ろすのやめて。
「は……なんだ、また朝緋か。
何をしている?夜這いか?俺と添い寝したいなら最初からそう言えばいいものを。全く、朝緋はまだまだ子供で困る」
「子供扱いに夜這い扱い!?ひっど!私は魘されてる貴方を起こそうとしただけなんですが!?前もそうだったけどこれは心臓に悪いよ!!」
「俺は今耳が聞こえにくい!かわりに感覚を研ぎ澄ませている!!
だというに眠っている男の寝所に断りを入れず、俺が気付かぬほどに気配を消して忍び込んできた朝緋が悪い!文句は言えないぞ!」
股にまでは押し付けてこなかったけれど、私の股の間に杏寿郎さんの膝が割り込んだ。肘も私を逃さぬよう、両脇から抱え込むようにして囲んでくる。
距離の近すぎる杏寿郎さんの丹精な顔立ちに、ぶわりと全身の毛が逆立った。
「け、気配なんか消してない!忍び込んでなんていない!!普通に入ってきましたが!?
貴方こそ毎回相手をよく見もせずに押し倒すのやめてくれないかなっ」
「毎回ではなかろうが!鬼ならどうする!拘束しておかねば危険だろう!」
「鬼なら押し倒す前に頸取りなよ。あ、でも……いきなり私の頸チョンパは困るけど」
その間にも今度は体重をかけて体を密着させてきた。
薄い寝巻きから伝わる筋肉の形、体温が私の熱をあげる。
「杏寿郎兄さん、いいからそろそろどいてよ。重いよぉ……」
嘘だ。重くはない。けれどこんなの、また貴方の熱を、雄を意識してしまって、どうにかなってしまいそうで。
鬼ではないけれど、目の前のくらくらするほど熱い太陽から逃げ出したい。
「隊士になった途端というわけではないが、俺も鼻が利くようになった。目も、耳もだ。今回の任務、君が言ってくれたように気をつけて行動したら、より一層五感が研ぎ澄まされるようになった。
そしてついでに言わせてもらうと君の匂いが数日前と少し変わったのもわかる」
「任務のお話なら後で聞きますから!重いしどいてって……え、匂い?くさいの私!?」
匂いとか、この人炭治郎みたいなこと言ってる!!
女の子から女性になったから体臭が変わったとか!?ええええ、人間にもそういうのってあるの?野生動物のフェロモンじゃあるまいしさぁ……!
ドンッ!
頬の真横に手を叩き置かれた。下はお布団なのにかなりの衝撃で。思わず「ヒェ」と情けない声が漏れた。
「……臭くない。
むしろ芳しくて……思わず食べてしまいたくなる、なんともとろりと甘い美味そうな香りだ。ずっと嗅いでいたい。嗅いでいると不思議と心安らぐし落ち着く。
だからこうして俺は君を押し倒したままなんだ。お願いだ、あと少しだけこうさせてくれ」
心が安らぐなら仕方ない、我慢して許そう……と思っていたけれど、これはやばい。
ゼロ距離で抱きしめるのは、アウトじゃないの!?
何がとは言わないけど体に何か当たってるし、豊満とは言い難いけれど私のおっぱいが杏寿郎さんのおっぱいとおしくら饅頭してるよー!
「あ……っ、んぅ……」
それは変な声が出てしまうほどで。生理的なものだけど涙目にもなり。
もしも杏寿郎さんの心にやましいものがなかったとしても、私の中にはやましい思いが溢れている。
杏寿郎さんとキスしたいなぁ……。
ううん駄目駄目!まだこの人と私は兄妹!この人と私は兄妹!!大好きだけど兄妹!!
とある一定のボーダーラインは超えちゃ駄目。超えちゃ駄目……告白もなしに順番すっ飛ばすわけにいかないしここは生家煉獄家!!
「かーぐーなー!私は美味しい果実とかじゃないよ杏寿郎兄さんっ人間です!」
「そんなことわかっている!俺は鬼と違うから君を食べたりしない!!
しかし、なんだかこう……涙目の朝緋を見ていると変な気分にもなってくるな?安らいで心落ち着く反面、興奮する……」
布を通して体に当たる杏寿郎さんの杏寿郎さんが、むくりと大きくなったのを感じた瞬間、ぶわぶわぶわっ!再び全身の毛が激しく立ち上がった。
「せっ、千寿郎ー!!」
危機感を感じた私の口は、色々と。そう、色々と流される前に助けを呼んだ。
千寿郎どころか、槇寿朗さんまでもが私の声を聞きつけてすっ飛んできた。
わーお、いつのまにか帰ってたのね…。柱だからもっと大変な任務に赴いていて、まだ帰宅していないと思ってたわ。
押し倒されている私を見た時の、鬼に向けるような般若の顔はしばらく忘れられない……。
ううん。私より、杏寿郎さんの方が怖かったかもしれない。
襖まで壊れるほど吹っ飛ばされたもんね。痛そうだった。
翌日、腫れてしまい耳より痛々しい頬を晒す杏寿郎さんがこの家を後にした。これからまた、任務の日々が始まる。階級が低い内は、基本的にあちこち渡り歩くから仕方がないね。
私は家のこともやらなくてはいけないから、自宅からの通いが許されていただけで。
彼が出立する前に呼び止め、お茶をいただきながら話をする。
ちなみにこのお茶は千寿郎が淹れてくれたものだ。杏寿郎さんがその美味さに驚いていた。
ふふん、美味しいだろうそうだろう。
私の剣の強さ、体の成長が早いのに合わせるかのように、千寿郎もまた成長が早かったのだ。剣の修行の成果はもちろん、千寿郎が淹れるお茶の味は私のお墨付き。
千寿郎が物心ついた時にはもう教え始めていたので、今はとても美味しいお茶を淹れることができる。
そしてゆくゆくは「姉上、お紅茶の時間です。本日は英国産のダージリンをお淹れしました」だなんて執事のように淹れてくれちゃったりしてー!!はああああ、執事服が似合う成長した千寿郎、かっこいいだろうなぁ。てことは、杏寿郎さんの執事服姿も相当のかっこよさなわけで……こほん。妄想はここまでにしておこう。
土下座同様のスタイルで、頭を下げる私。
「急に改まってどうした!何か要り用か?」
「はい……まずは、呼び名を『兄』から『師範』に変えたいと思います」
「『兄』から『師範』に……。ああそうか、俺ももう隊士だからな。まだ隊士成り立てで柱ではないが、あの御様子の父上には師事してもらうのは難しい。俺も君も継子にはしてもらえない。
だから俺に師事をと、そういうことだな!」
「はい。各地を飛び回り、杏寿郎兄さ……いえ、師範もあまりこちらには帰っては来れぬでしょう。それでも私は貴方に導いてほしいし、貴方を目指したいのです」
「師範呼びについては了解した。普段は兄でも呼び捨てでもいいがな。他人行儀は悲しいものだ」
「そうですね。杏寿郎、さん……?」
「名を呼ばれると何故だか嬉しいものだな」
真っ直ぐに見つめ言えば、とろりと優しい瞳と目があった。
「毎日とはいかんが手紙を出そう。そこでもまた修行の内容を指示するし、帰って来れそうな時はここに来て稽古をつけよう。
君は今日から一人目の俺の継子だな!!」
「はいっ!師範!!
……それと、次でも構いませんので、日輪刀が欲しいです」
「日輪刀をか?」
刀を望む言葉には怪訝な顔をされた。もうすぐ十一とはいえ、杏寿郎さんでさえ日輪刀をいただいたのは齢十二だったもんね。
「すぐに最終選別に参加するわけではありませんが、真剣に体を慣らしておきたくて。真剣を使った修行に移りたいのです」
「うーん。朝緋の歳にしては少し早い気がするが……君の剣の腕は俺も認めるもの。
わかった!炎の呼吸の剣士のもので、余っている日輪刀があれば探しておこう!ただ、時間をくれ!!」
「ありがとうございます!!」
これで私の強さは前よりももっと早く、先の段階に行けるはずだ。
他の呼吸についてだって、まだまだ諦めていない。鍛錬あるのみだ。
こんな私はやっぱり脳筋。
わかるよ、わかる。私も人の死に慣れるまでは寝ても覚めても悪夢の中にいる気分だったもの。
ううん。慣れた今でもふとした時に悪夢は蘇る。『最初』の記憶なんてそうだ。貴方の死を未だ悪夢に見る。
でも、起こすべきか起こさぬべきか、迷いどころ……。先日、起こそうとして押し倒された記憶が蘇る。
あれは非常に眼福……んん゛っ!非常に恥ずかし……はい、認めます。素敵な杏寿郎さんの御姿を、ありがとうございます。ご馳走様でございました。
「奪うな、やめろ、……その者達は俺の、大切な……朝緋……千寿郎、」
……けど呼吸が荒い。前よりもっとだ。もっと、激しく魘されている。
常中が途切れ途切れで、塞がっていたはずの破れかけた鼓膜……耳から血が滲んで枕を濡らしていた。涙もだ。その目から涙が滲んでいた。
起こしはしない。ただ、井戸で冷やした手拭いで、額の汗を拭ってやる。こんなの付け焼き刃にしかならないだろうけれど……。
ひんやりした布で額、耳元に滲む血、そして首筋に浮かぶ汗の滴を吸い取れば。
「何奴!」
「ぎゃっっっ!!」
手首をものすごい勢いで掴まれ、布団に転がされてものすごい勢いで縫い止められた。押し倒す、なんて生ぬるい感じじゃない。
またか!またこのパターンか!
私も懲りないけど、杏寿郎さんも同じ轍を何度踏む気だ。
緊張と。そして目の前にいる少年から青年に変わる途中の美丈夫を前に、心臓がバクバクとうるさい。
かっこ良すぎるからそのアングルから髪をかき上げてこちらを見下ろすのやめて。
「は……なんだ、また朝緋か。
何をしている?夜這いか?俺と添い寝したいなら最初からそう言えばいいものを。全く、朝緋はまだまだ子供で困る」
「子供扱いに夜這い扱い!?ひっど!私は魘されてる貴方を起こそうとしただけなんですが!?前もそうだったけどこれは心臓に悪いよ!!」
「俺は今耳が聞こえにくい!かわりに感覚を研ぎ澄ませている!!
だというに眠っている男の寝所に断りを入れず、俺が気付かぬほどに気配を消して忍び込んできた朝緋が悪い!文句は言えないぞ!」
股にまでは押し付けてこなかったけれど、私の股の間に杏寿郎さんの膝が割り込んだ。肘も私を逃さぬよう、両脇から抱え込むようにして囲んでくる。
距離の近すぎる杏寿郎さんの丹精な顔立ちに、ぶわりと全身の毛が逆立った。
「け、気配なんか消してない!忍び込んでなんていない!!普通に入ってきましたが!?
貴方こそ毎回相手をよく見もせずに押し倒すのやめてくれないかなっ」
「毎回ではなかろうが!鬼ならどうする!拘束しておかねば危険だろう!」
「鬼なら押し倒す前に頸取りなよ。あ、でも……いきなり私の頸チョンパは困るけど」
その間にも今度は体重をかけて体を密着させてきた。
薄い寝巻きから伝わる筋肉の形、体温が私の熱をあげる。
「杏寿郎兄さん、いいからそろそろどいてよ。重いよぉ……」
嘘だ。重くはない。けれどこんなの、また貴方の熱を、雄を意識してしまって、どうにかなってしまいそうで。
鬼ではないけれど、目の前のくらくらするほど熱い太陽から逃げ出したい。
「隊士になった途端というわけではないが、俺も鼻が利くようになった。目も、耳もだ。今回の任務、君が言ってくれたように気をつけて行動したら、より一層五感が研ぎ澄まされるようになった。
そしてついでに言わせてもらうと君の匂いが数日前と少し変わったのもわかる」
「任務のお話なら後で聞きますから!重いしどいてって……え、匂い?くさいの私!?」
匂いとか、この人炭治郎みたいなこと言ってる!!
女の子から女性になったから体臭が変わったとか!?ええええ、人間にもそういうのってあるの?野生動物のフェロモンじゃあるまいしさぁ……!
ドンッ!
頬の真横に手を叩き置かれた。下はお布団なのにかなりの衝撃で。思わず「ヒェ」と情けない声が漏れた。
「……臭くない。
むしろ芳しくて……思わず食べてしまいたくなる、なんともとろりと甘い美味そうな香りだ。ずっと嗅いでいたい。嗅いでいると不思議と心安らぐし落ち着く。
だからこうして俺は君を押し倒したままなんだ。お願いだ、あと少しだけこうさせてくれ」
心が安らぐなら仕方ない、我慢して許そう……と思っていたけれど、これはやばい。
ゼロ距離で抱きしめるのは、アウトじゃないの!?
何がとは言わないけど体に何か当たってるし、豊満とは言い難いけれど私のおっぱいが杏寿郎さんのおっぱいとおしくら饅頭してるよー!
「あ……っ、んぅ……」
それは変な声が出てしまうほどで。生理的なものだけど涙目にもなり。
もしも杏寿郎さんの心にやましいものがなかったとしても、私の中にはやましい思いが溢れている。
杏寿郎さんとキスしたいなぁ……。
ううん駄目駄目!まだこの人と私は兄妹!この人と私は兄妹!!大好きだけど兄妹!!
とある一定のボーダーラインは超えちゃ駄目。超えちゃ駄目……告白もなしに順番すっ飛ばすわけにいかないしここは生家煉獄家!!
「かーぐーなー!私は美味しい果実とかじゃないよ杏寿郎兄さんっ人間です!」
「そんなことわかっている!俺は鬼と違うから君を食べたりしない!!
しかし、なんだかこう……涙目の朝緋を見ていると変な気分にもなってくるな?安らいで心落ち着く反面、興奮する……」
布を通して体に当たる杏寿郎さんの杏寿郎さんが、むくりと大きくなったのを感じた瞬間、ぶわぶわぶわっ!再び全身の毛が激しく立ち上がった。
「せっ、千寿郎ー!!」
危機感を感じた私の口は、色々と。そう、色々と流される前に助けを呼んだ。
千寿郎どころか、槇寿朗さんまでもが私の声を聞きつけてすっ飛んできた。
わーお、いつのまにか帰ってたのね…。柱だからもっと大変な任務に赴いていて、まだ帰宅していないと思ってたわ。
押し倒されている私を見た時の、鬼に向けるような般若の顔はしばらく忘れられない……。
ううん。私より、杏寿郎さんの方が怖かったかもしれない。
襖まで壊れるほど吹っ飛ばされたもんね。痛そうだった。
翌日、腫れてしまい耳より痛々しい頬を晒す杏寿郎さんがこの家を後にした。これからまた、任務の日々が始まる。階級が低い内は、基本的にあちこち渡り歩くから仕方がないね。
私は家のこともやらなくてはいけないから、自宅からの通いが許されていただけで。
彼が出立する前に呼び止め、お茶をいただきながら話をする。
ちなみにこのお茶は千寿郎が淹れてくれたものだ。杏寿郎さんがその美味さに驚いていた。
ふふん、美味しいだろうそうだろう。
私の剣の強さ、体の成長が早いのに合わせるかのように、千寿郎もまた成長が早かったのだ。剣の修行の成果はもちろん、千寿郎が淹れるお茶の味は私のお墨付き。
千寿郎が物心ついた時にはもう教え始めていたので、今はとても美味しいお茶を淹れることができる。
そしてゆくゆくは「姉上、お紅茶の時間です。本日は英国産のダージリンをお淹れしました」だなんて執事のように淹れてくれちゃったりしてー!!はああああ、執事服が似合う成長した千寿郎、かっこいいだろうなぁ。てことは、杏寿郎さんの執事服姿も相当のかっこよさなわけで……こほん。妄想はここまでにしておこう。
土下座同様のスタイルで、頭を下げる私。
「急に改まってどうした!何か要り用か?」
「はい……まずは、呼び名を『兄』から『師範』に変えたいと思います」
「『兄』から『師範』に……。ああそうか、俺ももう隊士だからな。まだ隊士成り立てで柱ではないが、あの御様子の父上には師事してもらうのは難しい。俺も君も継子にはしてもらえない。
だから俺に師事をと、そういうことだな!」
「はい。各地を飛び回り、杏寿郎兄さ……いえ、師範もあまりこちらには帰っては来れぬでしょう。それでも私は貴方に導いてほしいし、貴方を目指したいのです」
「師範呼びについては了解した。普段は兄でも呼び捨てでもいいがな。他人行儀は悲しいものだ」
「そうですね。杏寿郎、さん……?」
「名を呼ばれると何故だか嬉しいものだな」
真っ直ぐに見つめ言えば、とろりと優しい瞳と目があった。
「毎日とはいかんが手紙を出そう。そこでもまた修行の内容を指示するし、帰って来れそうな時はここに来て稽古をつけよう。
君は今日から一人目の俺の継子だな!!」
「はいっ!師範!!
……それと、次でも構いませんので、日輪刀が欲しいです」
「日輪刀をか?」
刀を望む言葉には怪訝な顔をされた。もうすぐ十一とはいえ、杏寿郎さんでさえ日輪刀をいただいたのは齢十二だったもんね。
「すぐに最終選別に参加するわけではありませんが、真剣に体を慣らしておきたくて。真剣を使った修行に移りたいのです」
「うーん。朝緋の歳にしては少し早い気がするが……君の剣の腕は俺も認めるもの。
わかった!炎の呼吸の剣士のもので、余っている日輪刀があれば探しておこう!ただ、時間をくれ!!」
「ありがとうございます!!」
これで私の強さは前よりももっと早く、先の段階に行けるはずだ。
他の呼吸についてだって、まだまだ諦めていない。鍛錬あるのみだ。
こんな私はやっぱり脳筋。