四周目 壱
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考えあぐねてジリジリと間合いだけを取っていれば。
「おねえちゃん、稀血だね?血の匂いはしないけど、僕は感覚的にわかるんだぁ」
……こいつ、結構な数の人間を食べている鬼だ。嗅覚に頼らずとも稀血を判別できる鬼は一定数いるが、その場合強いことが多い。
「へー、よくお分かり……でっ!その小さな体で一体、何人の人間を食べたのやら!!」
ドシュッ!!向かってきた舌をかわし、逆に木刀を当てる。片手なこともあり、大してダメージが入らない……いや元々鬼に木刀は通用しないけれどね!
「さあ?ご飯の数なんて数えないよ。おねえちゃんは今まで食べたごはんが何杯あったのかなんて覚えてるの?」
うわぁ、明槻が何かで言っていた漫画の台詞に似てる!
「体は小さいかもしれないけれど、この口は胃袋と直結しているんだぁ。歯で噛んだりしたら痛いしかわいそうでしょ?だからぜーんぶ丸呑みにしてじわじわ溶かしながら食べるのさ!」
それの方が苦しみが続いて余計に痛そうに感じる。どうせなら一思いにやってほしい。
「お姉ちゃんも痛くないように食べてあげるね!」
けどそれ以前に喰われたくなんてないし、私は稀血。血の一滴、髪の一本たりとも鬼に与えるわけにいかない。この妹ちゃんもだ。
家族の元へと絶対無事に帰す!!
その時、日輪刀を携えた黒い服の男が階段を駆け上がってきた。鬼殺隊だ……!
「鬼が出ると聞きました!大丈夫で……ひぃっ!鬼!?見た目気持ち悪っ!!
み、水の呼吸、壱ノ型・水面斬りっ!!」
水の効果が薄く、この鬼殺に慣れてない感じ……鬼殺隊入りたての階級の低い隊士!私よりは強かろうが振り抜きも甘い……っ!
「この鬼は強いです!そんな型じゃ……っ」
「うぐぁっ!?」
鞭のような舌が空を切り、隊士を弾き飛ばした。技が霧散する。
「ああ、言わんこっちゃない!お願い!柱を呼んで!あとこの子を安全なところへ!!」
「え、ちょ、」
木の根元に倒れた彼に妹ちゃんを渡す。ぐいと押しつけられ、彼は落とさぬよう震える子供の体を抱きかかえた。
「おねえちゃん、余所見は危ないよ?
他の人間に構っている暇ないと思うんだよね。だって、今や僕の狙いは稀血のおねえちゃんなんだもの」
ヒュンヒュンと触手と化した舌を振り回して音を立てている。……鬼め、そのご自慢の舌、長縄跳びにしてやろうか。
「稀血……君は稀血なのか!?なら放置できない!!それに子供だろう!大人に任せて君こそ逃げろ!!」
「貴方こそどう見ても隊士なりたてでしょ大人じゃないよね!?私はいいから早く!!」
顔や手、日輪刀や隊服の状態を見ればわかる。まだそう任務をこなしていない『癸』くらいの階級だ。
「どっっっせいっ!!」
「うわぁっ!?」
お行儀は悪いが、思い切り彼を蹴り飛ばしてここから御退場いただく。大丈夫、隊士ならばこの程度の高さから小さい子を抱えたまま落ちても、体勢を立て直して着地できる。
ドスッ!!
「ぁぐっ!?」
階段下に落下する彼らを一瞥した瞬間、鋭い槍状に変化した触手が私の足を突き刺し地面に縫い止めた。
「痛くしてごめんね。これ以上ちょこまか動かれるとやだなーって思ったんだ!」
貫通したそれにべっとり付着した私の血。鬼を強化する私の稀血。子供の無邪気な笑い声を響かせながら、まるで飴でも口の中で転がすかのように、伸ばした先に着いたその血を舐め、啜っている。
ああ駄目……鬼が強くなってしまう!
「ん、美味しい血だなぁ。美味しすぎて困っちゃうよ……!」
バキ、バキバキ!
言葉を発しながら鬼の体が強化されていく。
角が生え、力が増し、そして体がさらに巨大化していく。
今はもう、小さい体の鬼だったなんて思えぬほど大きな体で私を圧倒していた。
「ぁっ、やだっ……!」
どこまでも伸びる舌だというのか、足に舌先を貫通させたまま私の体をぐるぐる巻きにする。宙に浮かせ振り回し、ポタポタと落ちる血を浴びて楽しんでいる。
そりゃ軽いけど!女の子の体持ち上げてぶんぶん振り回すのは違うと思うの!
苦しい、痛い……!!
「うぐっ、離してっ!おろしてっっ!」
それにしてもこの鬼、特殊な稀血酔いはしていない……!匂いどころか、稀血そのものを口にしたのにっ!?なんで!?
……もしかして私の稀血って、幼い鬼には効きにくい?
え、でも禰󠄀豆子ちゃんって会った時、実年齢はそこまで低くなさそうだったよね。炭治郎にはたくさん下に兄弟妹がいたらしいけれど、禰󠄀豆子ちゃんははすぐ下の妹だって言っていた。
禰󠄀豆子ちゃんには効く?効かない?
明槻と同じく、無惨の呪いを打ち破った特殊な鬼である禰󠄀豆子ちゃん。やはり彼女の体質についてはきちんと調べ直さなくては。
そうでなくても私の稀血、作用の法則性が微妙に見えてこない……!自分の血なのに。
「やだなあ今度は考え事?そんな暇あるのかな。このまま足を一本ずつもいでバリバリ食べちゃおうか。
稀血のおねえちゃんを食べれば僕はより早くもっと強くなれる!十二鬼月の仲間入りも近いよねっ!」
貫通させた足に力が加わる。傷の内側をゴリゴリと削るように蠢いてものすごい痛い!!
「うっ!!ァッ……イ゛ッッ!!」
でも痛みより何よりも私にとっての最悪は、足がなくなるかもしれない事実。食われて全てが終わるかもしれないことだ。
私の強みが、足が食われてしまう……!嫌だ、そんなの絶対嫌!!
なぜって足がなくなったら鍛錬がしにくくなる。修行ができない。それ即ち、鬼殺隊に入れない!!杏寿郎さんを、救えない……っ!!
そんなの絶対にいやだ。
次こそ、『今回』こそ、杏寿郎さんの未来がほしい!!そのために私は生きてるのに!!
「嫌、やめて……やなのっ!それだけはやめて……っ!まるっ、丸呑みで……お願いっ!丸呑みしてください……っ」
まだ丸呑みの方がましだ。
溶かされる前に中からその臓腑ぶち破って出てやる。木刀しかない?棒一本あれば十分だ。火事場の馬鹿力見せてやる。未来の炎柱が継子舐めんな!
さあ、木刀ごとすべて飲み込んでみやがれ!
「ふうん?丸呑みの方がいーんだ?
ならそうしてあげる!今から稀血をたぁっぷりくれるんだし、おねえちゃんのお願いを聞いてあげるね!」
ぐるぐる巻きが緩み、足の痛みが軽くなる。流れ落ちた先で鬼の飲む血の量は止まらなくとも、体が動……いや落下している。真下に待ち構えるのは、鬼の大口。
「いっただっきまーー……」
……あっ、やっぱ怖い。迫ってくる大きな口を前に、戦意が削がれた。
私、何も出来ずに死ぬの……?
『朝緋……』
私の名を呼んでくれる、貴方の笑顔はもう見れないの?
「おねえちゃん、稀血だね?血の匂いはしないけど、僕は感覚的にわかるんだぁ」
……こいつ、結構な数の人間を食べている鬼だ。嗅覚に頼らずとも稀血を判別できる鬼は一定数いるが、その場合強いことが多い。
「へー、よくお分かり……でっ!その小さな体で一体、何人の人間を食べたのやら!!」
ドシュッ!!向かってきた舌をかわし、逆に木刀を当てる。片手なこともあり、大してダメージが入らない……いや元々鬼に木刀は通用しないけれどね!
「さあ?ご飯の数なんて数えないよ。おねえちゃんは今まで食べたごはんが何杯あったのかなんて覚えてるの?」
うわぁ、明槻が何かで言っていた漫画の台詞に似てる!
「体は小さいかもしれないけれど、この口は胃袋と直結しているんだぁ。歯で噛んだりしたら痛いしかわいそうでしょ?だからぜーんぶ丸呑みにしてじわじわ溶かしながら食べるのさ!」
それの方が苦しみが続いて余計に痛そうに感じる。どうせなら一思いにやってほしい。
「お姉ちゃんも痛くないように食べてあげるね!」
けどそれ以前に喰われたくなんてないし、私は稀血。血の一滴、髪の一本たりとも鬼に与えるわけにいかない。この妹ちゃんもだ。
家族の元へと絶対無事に帰す!!
その時、日輪刀を携えた黒い服の男が階段を駆け上がってきた。鬼殺隊だ……!
「鬼が出ると聞きました!大丈夫で……ひぃっ!鬼!?見た目気持ち悪っ!!
み、水の呼吸、壱ノ型・水面斬りっ!!」
水の効果が薄く、この鬼殺に慣れてない感じ……鬼殺隊入りたての階級の低い隊士!私よりは強かろうが振り抜きも甘い……っ!
「この鬼は強いです!そんな型じゃ……っ」
「うぐぁっ!?」
鞭のような舌が空を切り、隊士を弾き飛ばした。技が霧散する。
「ああ、言わんこっちゃない!お願い!柱を呼んで!あとこの子を安全なところへ!!」
「え、ちょ、」
木の根元に倒れた彼に妹ちゃんを渡す。ぐいと押しつけられ、彼は落とさぬよう震える子供の体を抱きかかえた。
「おねえちゃん、余所見は危ないよ?
他の人間に構っている暇ないと思うんだよね。だって、今や僕の狙いは稀血のおねえちゃんなんだもの」
ヒュンヒュンと触手と化した舌を振り回して音を立てている。……鬼め、そのご自慢の舌、長縄跳びにしてやろうか。
「稀血……君は稀血なのか!?なら放置できない!!それに子供だろう!大人に任せて君こそ逃げろ!!」
「貴方こそどう見ても隊士なりたてでしょ大人じゃないよね!?私はいいから早く!!」
顔や手、日輪刀や隊服の状態を見ればわかる。まだそう任務をこなしていない『癸』くらいの階級だ。
「どっっっせいっ!!」
「うわぁっ!?」
お行儀は悪いが、思い切り彼を蹴り飛ばしてここから御退場いただく。大丈夫、隊士ならばこの程度の高さから小さい子を抱えたまま落ちても、体勢を立て直して着地できる。
ドスッ!!
「ぁぐっ!?」
階段下に落下する彼らを一瞥した瞬間、鋭い槍状に変化した触手が私の足を突き刺し地面に縫い止めた。
「痛くしてごめんね。これ以上ちょこまか動かれるとやだなーって思ったんだ!」
貫通したそれにべっとり付着した私の血。鬼を強化する私の稀血。子供の無邪気な笑い声を響かせながら、まるで飴でも口の中で転がすかのように、伸ばした先に着いたその血を舐め、啜っている。
ああ駄目……鬼が強くなってしまう!
「ん、美味しい血だなぁ。美味しすぎて困っちゃうよ……!」
バキ、バキバキ!
言葉を発しながら鬼の体が強化されていく。
角が生え、力が増し、そして体がさらに巨大化していく。
今はもう、小さい体の鬼だったなんて思えぬほど大きな体で私を圧倒していた。
「ぁっ、やだっ……!」
どこまでも伸びる舌だというのか、足に舌先を貫通させたまま私の体をぐるぐる巻きにする。宙に浮かせ振り回し、ポタポタと落ちる血を浴びて楽しんでいる。
そりゃ軽いけど!女の子の体持ち上げてぶんぶん振り回すのは違うと思うの!
苦しい、痛い……!!
「うぐっ、離してっ!おろしてっっ!」
それにしてもこの鬼、特殊な稀血酔いはしていない……!匂いどころか、稀血そのものを口にしたのにっ!?なんで!?
……もしかして私の稀血って、幼い鬼には効きにくい?
え、でも禰󠄀豆子ちゃんって会った時、実年齢はそこまで低くなさそうだったよね。炭治郎にはたくさん下に兄弟妹がいたらしいけれど、禰󠄀豆子ちゃんははすぐ下の妹だって言っていた。
禰󠄀豆子ちゃんには効く?効かない?
明槻と同じく、無惨の呪いを打ち破った特殊な鬼である禰󠄀豆子ちゃん。やはり彼女の体質についてはきちんと調べ直さなくては。
そうでなくても私の稀血、作用の法則性が微妙に見えてこない……!自分の血なのに。
「やだなあ今度は考え事?そんな暇あるのかな。このまま足を一本ずつもいでバリバリ食べちゃおうか。
稀血のおねえちゃんを食べれば僕はより早くもっと強くなれる!十二鬼月の仲間入りも近いよねっ!」
貫通させた足に力が加わる。傷の内側をゴリゴリと削るように蠢いてものすごい痛い!!
「うっ!!ァッ……イ゛ッッ!!」
でも痛みより何よりも私にとっての最悪は、足がなくなるかもしれない事実。食われて全てが終わるかもしれないことだ。
私の強みが、足が食われてしまう……!嫌だ、そんなの絶対嫌!!
なぜって足がなくなったら鍛錬がしにくくなる。修行ができない。それ即ち、鬼殺隊に入れない!!杏寿郎さんを、救えない……っ!!
そんなの絶対にいやだ。
次こそ、『今回』こそ、杏寿郎さんの未来がほしい!!そのために私は生きてるのに!!
「嫌、やめて……やなのっ!それだけはやめて……っ!まるっ、丸呑みで……お願いっ!丸呑みしてください……っ」
まだ丸呑みの方がましだ。
溶かされる前に中からその臓腑ぶち破って出てやる。木刀しかない?棒一本あれば十分だ。火事場の馬鹿力見せてやる。未来の炎柱が継子舐めんな!
さあ、木刀ごとすべて飲み込んでみやがれ!
「ふうん?丸呑みの方がいーんだ?
ならそうしてあげる!今から稀血をたぁっぷりくれるんだし、おねえちゃんのお願いを聞いてあげるね!」
ぐるぐる巻きが緩み、足の痛みが軽くなる。流れ落ちた先で鬼の飲む血の量は止まらなくとも、体が動……いや落下している。真下に待ち構えるのは、鬼の大口。
「いっただっきまーー……」
……あっ、やっぱ怖い。迫ってくる大きな口を前に、戦意が削がれた。
私、何も出来ずに死ぬの……?
『朝緋……』
私の名を呼んでくれる、貴方の笑顔はもう見れないの?