四周目 壱
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徐々に強さを磨く中、『今回』幼少期に戻って初めて遭遇した鬼は、今までと違い幼い子供の姿をした鬼だった。
「まだ帰っていないのですか?」
瑠火さんの驚くようなその声に杏寿郎さんと幼い千寿郎と三人で覗いてみれば、玄関の三和土に私の同級生が母親と来ていた。
あ、目があった。けれど私に用事ではなく母親についてきたという感じであり、私の相手どころではなく不安を顔に滲ませている。
話を軽く聞いてみると、同級生の妹ちゃんが帰ってこないとのこと。ここらでは見かけない子供と夕暮れ時に遊んでいたのが最後に目撃された姿。
うわ、怪しい。ここらで見かけない子供、しかも夕暮れ時というのがめちゃ怪しい。
「いくら槇寿朗さんの管轄区域であっても、鬼の時間は夜でしょう?あの子に何かあってはと……でも鬼は怖い……どうしたらいいの」
そう言って瑠火さんに泣きついておられる。
同級生のお母さまは幼い頃に鬼に襲われたことがあるので鬼の恐ろしさを知っている。その時は炎柱をしていた槇寿朗さんの父、つまり杏寿郎さんからすれば祖父に助けてもらったとの話だった。
だからこうしてうちに来た。私の同級生の親御さんとしてではなく、鬼殺隊に。槇寿朗さんに助けを求めに来たのだ。
「母上、直に夜になります!早く探して連れ帰らねば。いくらこの付近は普段父上が見回っていようとも鬼は夜ならばどこからでも湧いて出ます!」
「杏寿郎……朝緋……」
話の切れ目を見計らい飛び出す杏寿郎さん。私も同じ気持ちで杏寿郎さんに続く。
槇寿朗さんはここら辺とは違う場所への任務に赴いていて不在。烏を飛ばしてもすぐには帰っては来れぬ距離。
そもそもが鬼の仕業とは限らないのに呼び戻して鬼が関係しなかったらどうする?いやもちろん、鬼なんかに遭遇しないで済むならばそれにこしたことはないんだけれども……。
でもあちらの任務は確実に鬼の出る任務なのに、そこから柱である槇寿朗さんがいなくなったことで、もし怪我人や死人が出たら取り返しがつかない。柱が行く任務は、力の強い鬼が出る事や厄介な任務である事が多い。
ならどうする?迷っている暇があるなら大人達を総動員して探しに行くべき。
このままだと時間を浪費するばかり。
「そう、ですね……。槇寿朗さんがいない今は、村の大人達に頼みます。貴女と娘さんは私とここで帰りを待ちましょう?」
「……はい」
受けごたえこそ普通だけれど一種の錯乱状態に近い今、このお母さまを捜索隊に入れるのは宜しくないもんね。
「母上、俺も探しに行きます!」
「ええ。杏寿郎、よろしく頼みましたよ。
……朝緋は駄目です」
「えっ」
杏寿郎さんも挙手した。が!続こうとした私は止められてしまった。なんで!?
渋々頷きはしたものの、納得いかない!
出かける準備をする杏寿郎さんを手伝い、木刀を持たせる。
「鬼かもしれん!こんな時に父上が不在とはな……」
杏寿郎さんが木刀をぎりぎりと握りしめながら、眉根を寄せて唸った。
木刀か……杏寿郎さんからまだ一本も取れていないけれど、やっぱり私も探しに行った方がいい気がする。
妹ちゃんは私と面識があるし……。
もやもやと悩んでいるうちに杏寿郎さんが出かけてしまった。私も探しに行こう……止められてしまったから裏からこっそりだけど。
大丈夫、瑠火さんは親子を励ますのに忙しい。
しかしもし鬼が出た場合私の剣は。木刀はどこまで通用するだろうか。
全集中の呼吸はまだまだ成長過程だ。習得は上手くいっているけれど途中で途切れることがほとんどで。移動速度も比例して速い時と遅い時がある。全盛期には程遠い。
さて、私が鬼ならどうする?どこに獲物を連れて行く?
普通鬼は時間をかけてゆっくり食べるなんて芸当しないけれど、でも遊びと称して誘い出すなら森ではない。大人達や杏寿郎さんは暗くて深い森の方を探しているけれどね。
いるなら多分、神社お寺、そういった場所だ。この辺で人のいない朽ちかけた神社仏閣といえば……あそこか。
常人にしては速い移動速度を上空から捉えたか、一匹の烏が低空飛行でついてきた。
「鬼殺隊の烏……っ!」
そうか、柱である槇寿朗さんがいない代わりに、こうして空から軽く見回りをしてくれているのかも。異常があればすぐに任務として隊士を向かわせるべく、知らせられるし。
「この付近の朽ちたお寺に鬼がいる可能性がある!!一刻も早く隊士を派遣して!!」
私の声を理解してくれたようで、カァッ!と鋭い鳴き声が響き、虚空へ飛んでいった。
これで少しは安心だ。その勢いで道を急ぎ、件の朽ちた寺への階段を駆け上がる。
はたして陽の落ちたそこには、子供達が遊んでいた。私もまだ子供だって?……違いない。
「はぁぁよかった、いた……おーい!」
安心したら少し気が抜けた。膝に手をついて呼び掛ければ。
「あっ!朝緋お姉ちゃん!!」
「迎えに来たよ、お母さんとお姉ちゃんが待ってる。家に帰ろう?」
ぱあっとした明るい笑顔を見せて、私の体に飛びついてきた。うおっととと!……元気だなー、こんな暗い中なのに小さい子って意外と周り気にせず遊ぶよね!?
いやしかしほんと、面識ある子でよかった。
「もう夜だよ、君も早く帰りなさい」
傍にいた男の子にも声をかける。
鬼じゃ……ないのかな?妹ちゃんも無事みたいだし。
鬼でないなら別にいいんだけど、男の子とはいえまだ小さいし親は心配してないのかな。
「そうだね。もう夜だからねえ」
下手すれば今の千寿郎と同じくらいだぞこの子。ほんと、どこの子なんだろう?
「遊んでくれてありがとう!またね!!」
妹ちゃんに手を振らせて踵を返す。妹もいいな……なんて思ってみたりして。いや、可愛すぎる千寿郎って弟がいるからお姉ちゃんはもう十分に幸せでお腹いっぱいだったわ!
うちの弟の可愛さに思い馳せながらその場を後にしようと階段の一段目へ足を踏み出す。その背に声がかかった。
「また?『また』なんてお前達に来ないよ」
足元の影が伸びる。大きく、長く、太く。
「!?」
まずい、やはり鬼!
その瞬間、相手を見もせずに妹ちゃんを抱えて横に飛んだ。
「反応が速いなあ」
飛んできたのは鞭のようにしなる長い舌。またこのパターンなの?触手系にはもううんざりだ!
舌の先を辿り見れば、少年の姿をした鬼の頭だけが肥大化し巨大な口へと変化していた。目も鼻も耳も見当たらずほぼ口!なのに体はそのままだという。
「きゃーっ!お、おばけっ!!」
「妹ちゃんは私の後ろに隠れていて!」
妹ちゃんの叫ぶ通り、頭以外人間の形態のままだとか、どっからどうみても化け物だわ。まだ子供なのに腰を抜かさなかった私を誰か褒めて。
退路はすぐ後ろ。階段の下だけど、そう簡単には逃してもらえないだろうな。それにこちらには私に縋り付く妹ちゃんがいる。
木刀は持っているけれど、戦うにしてもどう動けば?守りながら戦うなんて無理。私の呼吸も型もまだ危ういし、日輪刀もないのに。
「まだ帰っていないのですか?」
瑠火さんの驚くようなその声に杏寿郎さんと幼い千寿郎と三人で覗いてみれば、玄関の三和土に私の同級生が母親と来ていた。
あ、目があった。けれど私に用事ではなく母親についてきたという感じであり、私の相手どころではなく不安を顔に滲ませている。
話を軽く聞いてみると、同級生の妹ちゃんが帰ってこないとのこと。ここらでは見かけない子供と夕暮れ時に遊んでいたのが最後に目撃された姿。
うわ、怪しい。ここらで見かけない子供、しかも夕暮れ時というのがめちゃ怪しい。
「いくら槇寿朗さんの管轄区域であっても、鬼の時間は夜でしょう?あの子に何かあってはと……でも鬼は怖い……どうしたらいいの」
そう言って瑠火さんに泣きついておられる。
同級生のお母さまは幼い頃に鬼に襲われたことがあるので鬼の恐ろしさを知っている。その時は炎柱をしていた槇寿朗さんの父、つまり杏寿郎さんからすれば祖父に助けてもらったとの話だった。
だからこうしてうちに来た。私の同級生の親御さんとしてではなく、鬼殺隊に。槇寿朗さんに助けを求めに来たのだ。
「母上、直に夜になります!早く探して連れ帰らねば。いくらこの付近は普段父上が見回っていようとも鬼は夜ならばどこからでも湧いて出ます!」
「杏寿郎……朝緋……」
話の切れ目を見計らい飛び出す杏寿郎さん。私も同じ気持ちで杏寿郎さんに続く。
槇寿朗さんはここら辺とは違う場所への任務に赴いていて不在。烏を飛ばしてもすぐには帰っては来れぬ距離。
そもそもが鬼の仕業とは限らないのに呼び戻して鬼が関係しなかったらどうする?いやもちろん、鬼なんかに遭遇しないで済むならばそれにこしたことはないんだけれども……。
でもあちらの任務は確実に鬼の出る任務なのに、そこから柱である槇寿朗さんがいなくなったことで、もし怪我人や死人が出たら取り返しがつかない。柱が行く任務は、力の強い鬼が出る事や厄介な任務である事が多い。
ならどうする?迷っている暇があるなら大人達を総動員して探しに行くべき。
このままだと時間を浪費するばかり。
「そう、ですね……。槇寿朗さんがいない今は、村の大人達に頼みます。貴女と娘さんは私とここで帰りを待ちましょう?」
「……はい」
受けごたえこそ普通だけれど一種の錯乱状態に近い今、このお母さまを捜索隊に入れるのは宜しくないもんね。
「母上、俺も探しに行きます!」
「ええ。杏寿郎、よろしく頼みましたよ。
……朝緋は駄目です」
「えっ」
杏寿郎さんも挙手した。が!続こうとした私は止められてしまった。なんで!?
渋々頷きはしたものの、納得いかない!
出かける準備をする杏寿郎さんを手伝い、木刀を持たせる。
「鬼かもしれん!こんな時に父上が不在とはな……」
杏寿郎さんが木刀をぎりぎりと握りしめながら、眉根を寄せて唸った。
木刀か……杏寿郎さんからまだ一本も取れていないけれど、やっぱり私も探しに行った方がいい気がする。
妹ちゃんは私と面識があるし……。
もやもやと悩んでいるうちに杏寿郎さんが出かけてしまった。私も探しに行こう……止められてしまったから裏からこっそりだけど。
大丈夫、瑠火さんは親子を励ますのに忙しい。
しかしもし鬼が出た場合私の剣は。木刀はどこまで通用するだろうか。
全集中の呼吸はまだまだ成長過程だ。習得は上手くいっているけれど途中で途切れることがほとんどで。移動速度も比例して速い時と遅い時がある。全盛期には程遠い。
さて、私が鬼ならどうする?どこに獲物を連れて行く?
普通鬼は時間をかけてゆっくり食べるなんて芸当しないけれど、でも遊びと称して誘い出すなら森ではない。大人達や杏寿郎さんは暗くて深い森の方を探しているけれどね。
いるなら多分、神社お寺、そういった場所だ。この辺で人のいない朽ちかけた神社仏閣といえば……あそこか。
常人にしては速い移動速度を上空から捉えたか、一匹の烏が低空飛行でついてきた。
「鬼殺隊の烏……っ!」
そうか、柱である槇寿朗さんがいない代わりに、こうして空から軽く見回りをしてくれているのかも。異常があればすぐに任務として隊士を向かわせるべく、知らせられるし。
「この付近の朽ちたお寺に鬼がいる可能性がある!!一刻も早く隊士を派遣して!!」
私の声を理解してくれたようで、カァッ!と鋭い鳴き声が響き、虚空へ飛んでいった。
これで少しは安心だ。その勢いで道を急ぎ、件の朽ちた寺への階段を駆け上がる。
はたして陽の落ちたそこには、子供達が遊んでいた。私もまだ子供だって?……違いない。
「はぁぁよかった、いた……おーい!」
安心したら少し気が抜けた。膝に手をついて呼び掛ければ。
「あっ!朝緋お姉ちゃん!!」
「迎えに来たよ、お母さんとお姉ちゃんが待ってる。家に帰ろう?」
ぱあっとした明るい笑顔を見せて、私の体に飛びついてきた。うおっととと!……元気だなー、こんな暗い中なのに小さい子って意外と周り気にせず遊ぶよね!?
いやしかしほんと、面識ある子でよかった。
「もう夜だよ、君も早く帰りなさい」
傍にいた男の子にも声をかける。
鬼じゃ……ないのかな?妹ちゃんも無事みたいだし。
鬼でないなら別にいいんだけど、男の子とはいえまだ小さいし親は心配してないのかな。
「そうだね。もう夜だからねえ」
下手すれば今の千寿郎と同じくらいだぞこの子。ほんと、どこの子なんだろう?
「遊んでくれてありがとう!またね!!」
妹ちゃんに手を振らせて踵を返す。妹もいいな……なんて思ってみたりして。いや、可愛すぎる千寿郎って弟がいるからお姉ちゃんはもう十分に幸せでお腹いっぱいだったわ!
うちの弟の可愛さに思い馳せながらその場を後にしようと階段の一段目へ足を踏み出す。その背に声がかかった。
「また?『また』なんてお前達に来ないよ」
足元の影が伸びる。大きく、長く、太く。
「!?」
まずい、やはり鬼!
その瞬間、相手を見もせずに妹ちゃんを抱えて横に飛んだ。
「反応が速いなあ」
飛んできたのは鞭のようにしなる長い舌。またこのパターンなの?触手系にはもううんざりだ!
舌の先を辿り見れば、少年の姿をした鬼の頭だけが肥大化し巨大な口へと変化していた。目も鼻も耳も見当たらずほぼ口!なのに体はそのままだという。
「きゃーっ!お、おばけっ!!」
「妹ちゃんは私の後ろに隠れていて!」
妹ちゃんの叫ぶ通り、頭以外人間の形態のままだとか、どっからどうみても化け物だわ。まだ子供なのに腰を抜かさなかった私を誰か褒めて。
退路はすぐ後ろ。階段の下だけど、そう簡単には逃してもらえないだろうな。それにこちらには私に縋り付く妹ちゃんがいる。
木刀は持っているけれど、戦うにしてもどう動けば?守りながら戦うなんて無理。私の呼吸も型もまだ危ういし、日輪刀もないのに。