三周目 漆
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刀を振るいあげる杏寿郎さんを突き飛ばし、迫る猗窩座の腕の前に私は身を滑り込ませた。
「あぐっ……、」
「朝緋ーーーーっ!!」
ぐしゃ、ゴキ、……。私の中心から嫌な音がした。
私の腹から猗窩座の腕が生えている。ああ、杏寿郎さんの代わりに私が鬼に腹を貫かれたのね。
杏寿郎さんの叫ぶ声が聞こえる。至近距離で聞こえるはずのそれが、やけに凄く遠くからのものに感じた。
返事をしたいのに声も出ない。
意識があるのが不思議だ。経験したことのない激しい痛みが全身を駆け回る。
一瞬にして死に刈り取られる感覚。生命そのものが持っていかれる。
なんとか呼吸だけでもしようとして、けれども口からはごぼり、血だけが吐き出された。
腹からは大量の稀血が飛び散る。
後ろから私を支えた杏寿郎さんの体にも羽織にも、私の血が付着していることだろう。申し訳ない。
「朝緋!朝緋朝緋朝緋っ!!」
ぬるりと手についた私の血に、杏寿郎さんがなおも叫んでいた。私のことはいいから、日輪刀をしっかり握っていて……。まだ戦いは終わってない。
そんな中で猗窩座がよろめく。稀血酔いだ。
「お前、稀血か……っ!なんだこの、変な稀血は……っ!変な気分だ、頭がおかしくなる……!」
「…………っ!?」
普通ならここで特殊な稀血酔いが多少なりとも発動する。
ただ、おかしくなると言ったきり、頭を抱えるのみでどこも変わりはないように思えた。
やはり上弦の鬼クラスともなると、効きにくいのだろうか?痛みで消えそうな意識の中、私の頭はそう分析していた。
けれど頭を抱えている今だ。鬼の頸を斬るなら今しかない!!
「ごほ、杏寿郎さ、斬って!横からこいつの頸を斬って!!」
私の体なんて支えてくれなくてもいい!その間くらい自分の力で立つ!炎柱の継子を舐めるなよ!!
血でぬめる手のひらで、日輪刀を指す。鍛冶場の馬鹿力ともいうべき力を発揮して、私は杏寿郎さんに再び刃をしっかりと握らせた。
う……っ、倒れそう!
いや、倒れたって死んだっていい。杏寿郎さんが生きる未来があるなら!
でもこの鬼は道連れにしてやる。この鬼が存在する限り、杏寿郎さんはまた狙われるかもしれない。
倒れそうな体勢のまま猗窩座の胴に腕を回し固定する。稀血に酔ってる今なら、短時間の拘束をするくらい容易い!!
「横から斬ると朝緋に当たる!!どうすればいい!朝緋ごと斬るなど俺には……俺にはできないっ!!」
「斬りなさい!!
炎柱・煉獄杏寿郎!!斬れ!!
己が責務を全うしろ!鬼に苦しむ人々を救うべく、己の刃を振り下ろせ!!!!」
二の足を踏み、唇を戦慄かせて躊躇し恐怖する杏寿郎さんなんて、初めてみる。
けれどそんなに悠長にしている時間はない。
かすれるほど叫んだ。喉が切れたけれどもうそんなのどうだっていい!元よりもう、血の味しかしないのだから。
「っ!朝緋…………っ!う、ああああああ!!」
「あ゛ああぅっ!!」
日輪刀の刃が肩に食い込んだ。痛い、痛いよ……けれどこれでいい。
猗窩座の頸に杏寿郎さんの悪鬼滅殺が食い込み、憎き頸を刎ね飛ばそうとしていた。
「きっ、貴様等ぁぁぁぁ!!稀血女!離せ!!杏寿郎!お前もだ!!」
もう少しで頸を斬り落とせる。叫ぶ猗窩座を必死で押さえつけていると、私達の上に影ができた。
「加勢します!!」
「俺もきたぜ!!」
炭治郎の水面斬りが。伊之助の穿ちぬきが、猗窩座の防御を切り崩し、上から背中から貫いた。
「貴様ら退けええええええ!!」
「絶対に離さん!朝緋の作った好機は逃してなるものか!!」
「ああああああ!」
「うおおおおお!」
しかし、私の体を貫いた腕を引きちぎり、猗窩座は森の奥へと逃げていった。
またトカゲの尻尾切りみたいに……。こういうところは『前』と同じなのかぁ。
シリアスな場面真っ只中なのに、私の頭はそんなことを俯瞰して考えていた。
地面に倒れる中、炭治郎が一矢報いたのを視界の端で捉えた。刀投げちゃって失くして……。
どの刀鍛冶が炭治郎の刀を担当してるのか知らないけれど、刀鍛冶に怒られちゃうよ?
私の刀鍛冶なんて、刃毀れ一つで殺そうとしてくるんだもの。
刀鍛冶って刀にかける情熱はすごいけど、その分すごくこわいよね。
もうすぐ死ぬかもしれない。そんな時にも、私にはそんなことを考える余裕があった。
死ぬからこそ、なのかなあ。
「あぐっ……、」
「朝緋ーーーーっ!!」
ぐしゃ、ゴキ、……。私の中心から嫌な音がした。
私の腹から猗窩座の腕が生えている。ああ、杏寿郎さんの代わりに私が鬼に腹を貫かれたのね。
杏寿郎さんの叫ぶ声が聞こえる。至近距離で聞こえるはずのそれが、やけに凄く遠くからのものに感じた。
返事をしたいのに声も出ない。
意識があるのが不思議だ。経験したことのない激しい痛みが全身を駆け回る。
一瞬にして死に刈り取られる感覚。生命そのものが持っていかれる。
なんとか呼吸だけでもしようとして、けれども口からはごぼり、血だけが吐き出された。
腹からは大量の稀血が飛び散る。
後ろから私を支えた杏寿郎さんの体にも羽織にも、私の血が付着していることだろう。申し訳ない。
「朝緋!朝緋朝緋朝緋っ!!」
ぬるりと手についた私の血に、杏寿郎さんがなおも叫んでいた。私のことはいいから、日輪刀をしっかり握っていて……。まだ戦いは終わってない。
そんな中で猗窩座がよろめく。稀血酔いだ。
「お前、稀血か……っ!なんだこの、変な稀血は……っ!変な気分だ、頭がおかしくなる……!」
「…………っ!?」
普通ならここで特殊な稀血酔いが多少なりとも発動する。
ただ、おかしくなると言ったきり、頭を抱えるのみでどこも変わりはないように思えた。
やはり上弦の鬼クラスともなると、効きにくいのだろうか?痛みで消えそうな意識の中、私の頭はそう分析していた。
けれど頭を抱えている今だ。鬼の頸を斬るなら今しかない!!
「ごほ、杏寿郎さ、斬って!横からこいつの頸を斬って!!」
私の体なんて支えてくれなくてもいい!その間くらい自分の力で立つ!炎柱の継子を舐めるなよ!!
血でぬめる手のひらで、日輪刀を指す。鍛冶場の馬鹿力ともいうべき力を発揮して、私は杏寿郎さんに再び刃をしっかりと握らせた。
う……っ、倒れそう!
いや、倒れたって死んだっていい。杏寿郎さんが生きる未来があるなら!
でもこの鬼は道連れにしてやる。この鬼が存在する限り、杏寿郎さんはまた狙われるかもしれない。
倒れそうな体勢のまま猗窩座の胴に腕を回し固定する。稀血に酔ってる今なら、短時間の拘束をするくらい容易い!!
「横から斬ると朝緋に当たる!!どうすればいい!朝緋ごと斬るなど俺には……俺にはできないっ!!」
「斬りなさい!!
炎柱・煉獄杏寿郎!!斬れ!!
己が責務を全うしろ!鬼に苦しむ人々を救うべく、己の刃を振り下ろせ!!!!」
二の足を踏み、唇を戦慄かせて躊躇し恐怖する杏寿郎さんなんて、初めてみる。
けれどそんなに悠長にしている時間はない。
かすれるほど叫んだ。喉が切れたけれどもうそんなのどうだっていい!元よりもう、血の味しかしないのだから。
「っ!朝緋…………っ!う、ああああああ!!」
「あ゛ああぅっ!!」
日輪刀の刃が肩に食い込んだ。痛い、痛いよ……けれどこれでいい。
猗窩座の頸に杏寿郎さんの悪鬼滅殺が食い込み、憎き頸を刎ね飛ばそうとしていた。
「きっ、貴様等ぁぁぁぁ!!稀血女!離せ!!杏寿郎!お前もだ!!」
もう少しで頸を斬り落とせる。叫ぶ猗窩座を必死で押さえつけていると、私達の上に影ができた。
「加勢します!!」
「俺もきたぜ!!」
炭治郎の水面斬りが。伊之助の穿ちぬきが、猗窩座の防御を切り崩し、上から背中から貫いた。
「貴様ら退けええええええ!!」
「絶対に離さん!朝緋の作った好機は逃してなるものか!!」
「ああああああ!」
「うおおおおお!」
しかし、私の体を貫いた腕を引きちぎり、猗窩座は森の奥へと逃げていった。
またトカゲの尻尾切りみたいに……。こういうところは『前』と同じなのかぁ。
シリアスな場面真っ只中なのに、私の頭はそんなことを俯瞰して考えていた。
地面に倒れる中、炭治郎が一矢報いたのを視界の端で捉えた。刀投げちゃって失くして……。
どの刀鍛冶が炭治郎の刀を担当してるのか知らないけれど、刀鍛冶に怒られちゃうよ?
私の刀鍛冶なんて、刃毀れ一つで殺そうとしてくるんだもの。
刀鍛冶って刀にかける情熱はすごいけど、その分すごくこわいよね。
もうすぐ死ぬかもしれない。そんな時にも、私にはそんなことを考える余裕があった。
死ぬからこそ、なのかなあ。