三周目 漆
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素早い戦いを普段からしていなかったら目で追うだけでやっとな激しい攻防が、目まぐるしく繰り広げられ続けている。
素早く青白い拳撃が放たれ、豪速の赫き炎の炎刀が舞い踊りぶつかり合う。
斬り下ろした刃で猗窩座の腕が吹っ飛んだけれど、一瞬にして生やす。強すぎる、ジリ貧だ。
少しくらい『前』より杏寿郎さんが強くても。体力が有り余っていても、上弦の鬼がチートすぎるのだ。
その間にも杏寿郎さんと猗窩座の会話も続いているようだった。でもきっと、会話自体は『前』と同じーー。鬼に誘い続ける無意味なものだ。
「破壊殺ーー、空式!」
そのうち猗窩座が虚空から拳撃を撃ち放ってきた。
あれは私ならどうすればいい?もしも、もしも次にやり直し……することになったとして、私があの位置に立ったならどう対処するのが正解?駄目だ、全て避ける以外に思いつかない。
ーーいや、もうやり直しなんてしたくない!杏寿郎さんが死ぬのは嫌。『今回』でこの鬼は撃退したい!
そのために生きてきたのだもの!!
杏寿郎さんが炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねりで絡め取って打ち消した!
力のある杏寿郎さんだからこそできるこの方法。私に蜜璃ほどの筋力腕力、その他諸々の力があれば……。
悔しさに唇を噛み締め見守っていると、今度は杏寿郎さんが距離を詰めて攻撃をぶつけた。
速い!強い!!かっこいい!!!
勝てるという確証がある戦いであるなら、ぜひいつまでも見ていたいと思わせる杏寿郎さんの美しくしなやかで力強い剣技。
その時、炭治郎がそして合流した伊之助が加勢しようとしていたらしい。私たちに視線を寄越した杏寿郎さんから「待機命令」が出てしまった。
あまりの剣幕に、びくりと震える炭治郎達。
けれど私からしたら怖いなんて事一度も思ったことはないし、この鬼との戦いにおいては私は待機命令なんて聞かない。
私は私のすべきことを、杏寿郎さんの命令を無視してでも遂行する!
杏寿郎さんが猗窩座と斬り結び、奴を木々の中へと追い込んだ。私も追いたい……。
だって杏寿郎さん、確かこの後。
ドォォン!!
すごい衝撃音とともに杏寿郎さんが吹っ飛ばされてきた。
そうだ。思い切り頭を蹴り飛ばされて地に叩きつけられるんだった!!
「ぐっ……!!」
「杏寿郎さん!!」
「煉獄さん!」
「ギョロギョロ目ん玉!」
軽い脳震盪を起こしたか頭を振って立ち上がる杏寿郎さんは少しばかりふらついていた。
けれど、息は切れていない。刀を杖代わりにしていない。
叩きつけられた衝撃で羽織や隊服は汚れているけれど、怪我がないならよかった……!
「俺は君が嫌いだ!俺は鬼にはならない!」
なおも鬼になれと誘うしつこさに、杏寿郎さんがキレた。言葉こそ暴言のようなものではなく落ち着いているけれど、険しい顔がそれを物語る。
私だったら口の悪すぎる言葉で罵声飛んでたな……。槇寿朗さんに言った時みたいにね。
怒れる獅子のような杏寿郎さんが、強く刀を握りしめた瞬間、刀身がいつもの倍以上赤く熱く……燃えているように見えてしまった。
そのまま参ノ型・気炎万象が鬼めがけて降り注いだ。
戦いに苛烈さが増した。悪鬼滅殺と彫られた杏寿郎さんの日輪刀が折れてしまうのでは?と思うほどの激しさが続く。
隙がない、間合いに入れない。助太刀に入っても今のこの状況では足手まとい。
せめて、怒涛の連撃に僅かな隙があればあるいは。
とうとう、猗窩座の攻撃が杏寿郎さんの額に掠ってしまった。
拳の先が、それもただの拳圧にしか見えないそれが掠っただけなのに、杏寿郎さんの額は破け、血が噴き出した。
なんて破壊力だろう。上弦の鬼の力は強すぎる。狡い、狡すぎる!
壱ノ型が当たって腕が消し飛んでも、戦いに興が乗っている今はほんの一瞬でその腕を生やしてくる。
腕がなくなったなんて感じさせない強さ。
攻撃の応酬を前に、私はただ固唾を飲んでいた。
ーー待って。今行かなくてどうするの?でないと杏寿郎さんの肋が砕けてしまう!!
そうだ、この後だ。この後、杏寿郎さんの右脇腹には猗窩座の拳が入る!!
生き残ったとしてもだ。肋が折れるのではなく砕けて内臓に刺さればどうなる?
全集中の呼吸を続けるにも支障が出るけれど、健啖家である貴方の食が細くなることは避けられない。食べることが大好きな貴方から食べる喜びを奪ってしまう。
そんなの許せない!!
「うおあああああ!!させるかこの鬼めが!!」
「ッ!?駄目だ朝緋さん!!」
「まだら!!」
タイミングなんてどうでもいい!邪魔者扱いされたっていい!怒られてもいい!!
日輪刀を抜いて横から割って入った私の姿に、杏寿郎さんの。そして本命の猗窩座の注意が逸れた。
「朝緋……っ!?」
杏寿郎さんの脇腹を狙っていた腕めがけ、まっすぐに気炎万象を振り下ろす!
パ、キ……!
「え」
刀の先端が、帽子の部分が欠けた!?
風鈴まみれの火男の面が浮かんだのは一瞬のこと。
いいやまだ使える!!私の炎は消えてない!!
杏寿郎さんの肋骨は折れなかった、まずはそれだけでもいいではないか!
「炎の呼吸ーー、炎山渦!!」
続け様に得意な技を猗窩座の頸狙って繰り出す。けれどそれは、一瞬で生やして飛んできた拳を前にかき消された。
「女!戦いの……邪魔を……するなぁ!!」
「ーーーかはっ!?」
ゴキ、鈍い音が響く。
脇腹を強く鷲掴みにされ、炭治郎達の元へと追い返すように投げ飛ばされた!
「まだら、大丈夫か!!」
「う……」
「ったく、無茶しやがって……」
飛んできた私を伊之助が受け止める。
感謝の言葉を出そうとして、でも口からは空気しか漏れてこなかった。
杏寿郎さんの代わりになれるならと思ったけれど、これは結構キツイな……。
折れた肋が肺に刺さって呼吸がしにくい!
すーぅ、はーぁ……無理やり呼吸を整えて言葉を発する。
「命令違反と怒られても罵られてもいいから、助太刀に入りたかったの……師範の骨が折れちゃう、ところだったから……」
「煉獄さんの骨が折れる!?それってどういう……?いや、それよりあの衝撃、逆に朝緋さんの骨が折れましたよね?」
「刀の先端が折れたけど私の骨は無事……いいから離しなさい!!」
支えてくれるのも抱えてくれるのもありがたい!けれど、そのまま私が再び戦いに行くのを止めようとするのはどうかやめてほしい!
「いや!朝緋さんの骨も折れてます!!俺の鼻は誤魔化せませんよ!離しません!休まないと!!」
「そうだぞまだら!肋が折れてんじゃねぇか!!俺も感覚でわかるぜ!!脂汗もかいてやがる!!無理すんな!!」
休まないと?無理するな?
休んでいる暇なんてない。今無理せずいつ無理するの。
「たった一本でしょ!こんなの掠り傷!!」
早く戦いの場に戻らないと!でないと次は……っ!
素早く青白い拳撃が放たれ、豪速の赫き炎の炎刀が舞い踊りぶつかり合う。
斬り下ろした刃で猗窩座の腕が吹っ飛んだけれど、一瞬にして生やす。強すぎる、ジリ貧だ。
少しくらい『前』より杏寿郎さんが強くても。体力が有り余っていても、上弦の鬼がチートすぎるのだ。
その間にも杏寿郎さんと猗窩座の会話も続いているようだった。でもきっと、会話自体は『前』と同じーー。鬼に誘い続ける無意味なものだ。
「破壊殺ーー、空式!」
そのうち猗窩座が虚空から拳撃を撃ち放ってきた。
あれは私ならどうすればいい?もしも、もしも次にやり直し……することになったとして、私があの位置に立ったならどう対処するのが正解?駄目だ、全て避ける以外に思いつかない。
ーーいや、もうやり直しなんてしたくない!杏寿郎さんが死ぬのは嫌。『今回』でこの鬼は撃退したい!
そのために生きてきたのだもの!!
杏寿郎さんが炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねりで絡め取って打ち消した!
力のある杏寿郎さんだからこそできるこの方法。私に蜜璃ほどの筋力腕力、その他諸々の力があれば……。
悔しさに唇を噛み締め見守っていると、今度は杏寿郎さんが距離を詰めて攻撃をぶつけた。
速い!強い!!かっこいい!!!
勝てるという確証がある戦いであるなら、ぜひいつまでも見ていたいと思わせる杏寿郎さんの美しくしなやかで力強い剣技。
その時、炭治郎がそして合流した伊之助が加勢しようとしていたらしい。私たちに視線を寄越した杏寿郎さんから「待機命令」が出てしまった。
あまりの剣幕に、びくりと震える炭治郎達。
けれど私からしたら怖いなんて事一度も思ったことはないし、この鬼との戦いにおいては私は待機命令なんて聞かない。
私は私のすべきことを、杏寿郎さんの命令を無視してでも遂行する!
杏寿郎さんが猗窩座と斬り結び、奴を木々の中へと追い込んだ。私も追いたい……。
だって杏寿郎さん、確かこの後。
ドォォン!!
すごい衝撃音とともに杏寿郎さんが吹っ飛ばされてきた。
そうだ。思い切り頭を蹴り飛ばされて地に叩きつけられるんだった!!
「ぐっ……!!」
「杏寿郎さん!!」
「煉獄さん!」
「ギョロギョロ目ん玉!」
軽い脳震盪を起こしたか頭を振って立ち上がる杏寿郎さんは少しばかりふらついていた。
けれど、息は切れていない。刀を杖代わりにしていない。
叩きつけられた衝撃で羽織や隊服は汚れているけれど、怪我がないならよかった……!
「俺は君が嫌いだ!俺は鬼にはならない!」
なおも鬼になれと誘うしつこさに、杏寿郎さんがキレた。言葉こそ暴言のようなものではなく落ち着いているけれど、険しい顔がそれを物語る。
私だったら口の悪すぎる言葉で罵声飛んでたな……。槇寿朗さんに言った時みたいにね。
怒れる獅子のような杏寿郎さんが、強く刀を握りしめた瞬間、刀身がいつもの倍以上赤く熱く……燃えているように見えてしまった。
そのまま参ノ型・気炎万象が鬼めがけて降り注いだ。
戦いに苛烈さが増した。悪鬼滅殺と彫られた杏寿郎さんの日輪刀が折れてしまうのでは?と思うほどの激しさが続く。
隙がない、間合いに入れない。助太刀に入っても今のこの状況では足手まとい。
せめて、怒涛の連撃に僅かな隙があればあるいは。
とうとう、猗窩座の攻撃が杏寿郎さんの額に掠ってしまった。
拳の先が、それもただの拳圧にしか見えないそれが掠っただけなのに、杏寿郎さんの額は破け、血が噴き出した。
なんて破壊力だろう。上弦の鬼の力は強すぎる。狡い、狡すぎる!
壱ノ型が当たって腕が消し飛んでも、戦いに興が乗っている今はほんの一瞬でその腕を生やしてくる。
腕がなくなったなんて感じさせない強さ。
攻撃の応酬を前に、私はただ固唾を飲んでいた。
ーー待って。今行かなくてどうするの?でないと杏寿郎さんの肋が砕けてしまう!!
そうだ、この後だ。この後、杏寿郎さんの右脇腹には猗窩座の拳が入る!!
生き残ったとしてもだ。肋が折れるのではなく砕けて内臓に刺さればどうなる?
全集中の呼吸を続けるにも支障が出るけれど、健啖家である貴方の食が細くなることは避けられない。食べることが大好きな貴方から食べる喜びを奪ってしまう。
そんなの許せない!!
「うおあああああ!!させるかこの鬼めが!!」
「ッ!?駄目だ朝緋さん!!」
「まだら!!」
タイミングなんてどうでもいい!邪魔者扱いされたっていい!怒られてもいい!!
日輪刀を抜いて横から割って入った私の姿に、杏寿郎さんの。そして本命の猗窩座の注意が逸れた。
「朝緋……っ!?」
杏寿郎さんの脇腹を狙っていた腕めがけ、まっすぐに気炎万象を振り下ろす!
パ、キ……!
「え」
刀の先端が、帽子の部分が欠けた!?
風鈴まみれの火男の面が浮かんだのは一瞬のこと。
いいやまだ使える!!私の炎は消えてない!!
杏寿郎さんの肋骨は折れなかった、まずはそれだけでもいいではないか!
「炎の呼吸ーー、炎山渦!!」
続け様に得意な技を猗窩座の頸狙って繰り出す。けれどそれは、一瞬で生やして飛んできた拳を前にかき消された。
「女!戦いの……邪魔を……するなぁ!!」
「ーーーかはっ!?」
ゴキ、鈍い音が響く。
脇腹を強く鷲掴みにされ、炭治郎達の元へと追い返すように投げ飛ばされた!
「まだら、大丈夫か!!」
「う……」
「ったく、無茶しやがって……」
飛んできた私を伊之助が受け止める。
感謝の言葉を出そうとして、でも口からは空気しか漏れてこなかった。
杏寿郎さんの代わりになれるならと思ったけれど、これは結構キツイな……。
折れた肋が肺に刺さって呼吸がしにくい!
すーぅ、はーぁ……無理やり呼吸を整えて言葉を発する。
「命令違反と怒られても罵られてもいいから、助太刀に入りたかったの……師範の骨が折れちゃう、ところだったから……」
「煉獄さんの骨が折れる!?それってどういう……?いや、それよりあの衝撃、逆に朝緋さんの骨が折れましたよね?」
「刀の先端が折れたけど私の骨は無事……いいから離しなさい!!」
支えてくれるのも抱えてくれるのもありがたい!けれど、そのまま私が再び戦いに行くのを止めようとするのはどうかやめてほしい!
「いや!朝緋さんの骨も折れてます!!俺の鼻は誤魔化せませんよ!離しません!休まないと!!」
「そうだぞまだら!肋が折れてんじゃねぇか!!俺も感覚でわかるぜ!!脂汗もかいてやがる!!無理すんな!!」
休まないと?無理するな?
休んでいる暇なんてない。今無理せずいつ無理するの。
「たった一本でしょ!こんなの掠り傷!!」
早く戦いの場に戻らないと!でないと次は……っ!