三周目 陸
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列車に乗る前にあのお弁当屋さんからお弁当全てを買い占めた。
その時彼女達が手に持ってきていた分だけなので、多分売り切れる事はないだろう。他におむすびなんかも買った。
「師範、そのお弁当なんですが、せめて三個くらい残していただいてもいいですか?」
お茶を飲み飲み美味い美味いと言いながら、二人で食べる横で、そう直談判してみる。
これから合流することになるだろう、炭治郎達にも分けてあげたいのだ。
彼らが必ずしもここにくるという保証はないものの、彼は『主人公』だ。なら、ここに来ると見ていい。
「三個とはやけに具体的だな。誰か来るのか?」
「えーと……女の勘です!」
「勘!?ふむ、女性の勘は当たると聞く。朝緋がそういうならそうしよう!
うむ!うまい!!」
そう言ってまたお弁当に熱中してしまった。
またも美味いボイス製造機に……。
この人ったら全く、三大欲求に忠実なんだから。特に、食とその……なんでもない。
ん、でもほんと美味しいわこれ。おむすびもお稲荷さんも大好きだけど、このしっかりと味付けされた牛肉がご飯と絡んで……。
「「うまい!!」」
「もうそれはすごくよくわかりました……」
あ、炭治郎に声かけられてたぽい。私としたことが、杏寿郎さんと同じようにお弁当に熱中してしまっていた。恋人は似てくるって本当だね。
「君は、お館様の時の……」
杏寿郎さんが声をかければ、炭治郎達が自己紹介してきた。
顎で自己紹介するよう促され、便乗してご挨拶する。
「炎柱が継子、階級甲の煉獄朝緋です」
ぺこ、とお辞儀しながら炭治郎達の姿を見て考える。そういえば……。
「師範は初対面ではないのですね。竈門君とはお知り合いですか?」
「ああ、先の柱合会議で議題の一つにあがったのが、鬼を連れた隊士……この少年についてだったのだ。朝緋にも聞かせただろう?」
「あー。師範が言ってた気がするけど、場所が場所だっただけに……聞き流しちゃってましたね」
「人の話はちゃんと聞くべきだぞ?それが布団の中でもな……」
ひそりと囁かれ体温が上がる。頭でお湯が沸いちゃうやめてー!
ていうか布団の中で睦み合ってる時に言うか普通!そんなの耳に入ってこないっての!
……おっといけない。目の前には鼻と耳と感覚のいい、おまけに思春期らしい三人がいるのだから、思考にも気をつけないと。
私の足に伸びてきていた杏寿郎さんのいやらしい手の甲を抓る。
「い゛っ!」
「わあそうだったんですねー。柱合会議に一緒にいけばよかったなー!恋柱様達にも会いたいしー!!」
「……朝緋?」
睨まれたが無視。
話題は背負い籠の中に入っている禰󠄀豆子ちゃんの話に移った。
杏寿郎さんは禰󠄀豆子ちゃんが人を食うか食わないか。まだ判断はつかないと言いたげで。
そして私に鬼を憎まないのかと聞いてきた。
鬼は憎い。けれど、禰󠄀豆子ちゃんは信用できる子だ。人は食べない。私は他にも人を食べない鬼を知っているし。
気持ちを声に出して言うことは今はできないけれど、私は禰󠄀豆子ちゃんを味方だと。同じ鬼殺隊の一員だと思っている。
杏寿郎さん、貴方もそう思ってくれたのよ。
「お館様が太鼓判押してるんだよね?なら平気。よろしくね、禰󠄀豆子ちゃん」
思いを秘めて、炭治郎の背負う籠をそっと撫でた。
「お館様の言葉があったとはいえ朝緋が鬼を認めた!明日は槍が降るかもしれぬな!」
「失礼な言い方しないでくださいよ!
……さて、階級が下の隊士は基本呼び捨てにしている事が多いんだけど、貴方達もそれでいいよね?」
「え。あ、はい!」
「俺はね俺はね!善逸って愛を込めて呼んでくれると嬉しいでーす!」
「ああ!俺も問題ねぇぜまだら!」
おっふ。許可はもらったけど伊之助からはまーたまだら呼び。なんか他にないのかな……髪を染めたら変わる?
「む!朝緋は馴れ馴れしいな」
「いいじゃないですか、敬称なんかない方が呼びやすいのですから」
なぜこうも馴れ馴れしく呼ぶ事にしたのかって?『前』の時に既に炭治郎、善逸、伊之助と呼んでいたから、間違えないように初めからそう呼ぼうとしたまでで。
「ほう……俺がどんな男にも嫉妬する事を知らぬ朝緋ではないよな?そうまでして俺を嫉妬させていじめられたいとは。
全く、かわいいことをしてくれる!」
「あの……煉獄さんと朝緋さんは柱と継子の関係だけじゃないので?苗字も同じ煉獄だし……」
「血は繋がってないけど家族で「これから夫婦という名の家族になる予定の恋仲だな!」…………師範?」
「訂正せんぞ?」
にやりと杏寿郎さんが笑った。
「!!恋仲!!!!」
その瞬間、善逸が大きな声を出した。びっくりするから大声やめて!?
乗客もびっくりして善逸を見てるじゃない。
「ああ、うん。そうなの……」
こそりと肯定する。善逸の雄叫びは止まらなかった。
「チクショー柱ってのはかわいい女の子と付き合えて羨ましいな!しかも継子!?継子だからってあんなことやこんなこと、柱権限で命令してんだろズルい!!」
「む。たしかにあんなことやこんなことはしているが!だが朝緋はやらんぞ!」
「怖くて奪えねぇわ!大体、どう見ても相思相愛だろ!?さっきから甘い音!すけべな音!いっぱい聞こえてきてるんだよォー!!」
「つまりギョロ目とまだらは番ってことか!!」
「そうだな!番だぞ猪頭少年!!」
赤くなってぷるぷるして、ぷしゅーっ。顔からも頭からも火やら蒸気やら出そう。
耐えていたら炭治郎という癒し要員がそっと声をかけてくれた。
「大丈夫ですか朝緋さん……?」
「うう……たんじろ、だいじょぶ……もう何か言う気失せた。恥ずかしさ通り越してどうにでもなれという感じ」
杏寿郎さんの明け透けな言葉に恥ずかしすぎて頭から湯気が出たのよね。
いつから私は無限列車と同化してたのかな?頭が蒸気機関車ぽっぽーって。誰が機関車●ーマスじゃい!!
よし話変えよう!
「ねえねえお腹空いてない?こんなこともあろうかとお弁当を取っておいたのよ。ほら、君達の分も!」
未だいい匂いが漂うお弁当を三人に渡していく。美味しい匂いに釣られたか、ようやく話を終えてくれた。
「そういえば朝緋の言う通りだったな!ここに座るといい!!ゆっくり食べなさい!!」
それぞれ座って食べ始めてくれたので、やっと落ち着けるう……。
私も続き食べよう。たまご美味い。
「美味しいです」
「そうか!美味いならもっと食べるといい!たくさん食べないと強くなれんぞ!!」
「いえ、一つで結構です」
二人が会話しながら食べすすめている様子を見ていると、なんだろうな。ほっこりする。歳の頃が千寿郎とそう変わらないからだろうか。早くこの子達も交えて鍛錬してみたくなった。
もちろん、その場には杏寿郎さんが師範としてついていないと駄目。みんなみんなが揃った姿が見たい。
「俺はもっと食えるぞ!」
「伊之助は少し遠慮しろっての!」
「はっはっはっ!多めに残してあるから遠慮しなくていい!残った分は俺が全て平らげる予定だったからな!!」
「ぜ、全部ですか!?」
口をあんぐり開けて、弁当の残り箱数を見る炭治郎。普通ならびっくりする量だよね。でも通常運転です。
「吐くほど食べて限界を超えても鍛錬して。そうした血の滲むような努力の先に望む強さがあるからね。いっぱい食べるといいよ」
にこりと笑ってから、炭治郎の口元についた米粒を摘んで食べる。彼は赤い顔で礼を述べてから私の言葉を口の中で反芻していた。
「そうなんですか……。
朝緋さんもたくさん食べたんですか?だから甲にまで……?」
「んー……努力したッ!!けれどそうね、師範に負けないくらいいっぱい食べてきたし、今もたくさん食べてるよ。
炎の呼吸使いは、多分健啖家が多いって思うの。鬼がいない世の中になったら太っちゃうよねぇ。困った困った」
「幸せ太りはすごくいい事だと思います!」
「……そうね」
幸せそうに美味いを連呼している杏寿郎さんを眺めながら思う。
鬼がいない世の中になって、呼吸を使う必要がなくなって。それでもいっぱい食べて。
二人で太ったね!なんて笑い合えるようになるといいなって。
今のままでは夢のまた夢。
食べ終えて炭治郎が聞きに来たという、ヒノカミ神楽の話になった。けれど相変わらず、杏寿郎さんは「知らん」の一言で終わらせた。継子に誘うのは私も賛成だけれど、ほんとこの人、人の話すぐ終わらせたがるんだから!
その時彼女達が手に持ってきていた分だけなので、多分売り切れる事はないだろう。他におむすびなんかも買った。
「師範、そのお弁当なんですが、せめて三個くらい残していただいてもいいですか?」
お茶を飲み飲み美味い美味いと言いながら、二人で食べる横で、そう直談判してみる。
これから合流することになるだろう、炭治郎達にも分けてあげたいのだ。
彼らが必ずしもここにくるという保証はないものの、彼は『主人公』だ。なら、ここに来ると見ていい。
「三個とはやけに具体的だな。誰か来るのか?」
「えーと……女の勘です!」
「勘!?ふむ、女性の勘は当たると聞く。朝緋がそういうならそうしよう!
うむ!うまい!!」
そう言ってまたお弁当に熱中してしまった。
またも美味いボイス製造機に……。
この人ったら全く、三大欲求に忠実なんだから。特に、食とその……なんでもない。
ん、でもほんと美味しいわこれ。おむすびもお稲荷さんも大好きだけど、このしっかりと味付けされた牛肉がご飯と絡んで……。
「「うまい!!」」
「もうそれはすごくよくわかりました……」
あ、炭治郎に声かけられてたぽい。私としたことが、杏寿郎さんと同じようにお弁当に熱中してしまっていた。恋人は似てくるって本当だね。
「君は、お館様の時の……」
杏寿郎さんが声をかければ、炭治郎達が自己紹介してきた。
顎で自己紹介するよう促され、便乗してご挨拶する。
「炎柱が継子、階級甲の煉獄朝緋です」
ぺこ、とお辞儀しながら炭治郎達の姿を見て考える。そういえば……。
「師範は初対面ではないのですね。竈門君とはお知り合いですか?」
「ああ、先の柱合会議で議題の一つにあがったのが、鬼を連れた隊士……この少年についてだったのだ。朝緋にも聞かせただろう?」
「あー。師範が言ってた気がするけど、場所が場所だっただけに……聞き流しちゃってましたね」
「人の話はちゃんと聞くべきだぞ?それが布団の中でもな……」
ひそりと囁かれ体温が上がる。頭でお湯が沸いちゃうやめてー!
ていうか布団の中で睦み合ってる時に言うか普通!そんなの耳に入ってこないっての!
……おっといけない。目の前には鼻と耳と感覚のいい、おまけに思春期らしい三人がいるのだから、思考にも気をつけないと。
私の足に伸びてきていた杏寿郎さんのいやらしい手の甲を抓る。
「い゛っ!」
「わあそうだったんですねー。柱合会議に一緒にいけばよかったなー!恋柱様達にも会いたいしー!!」
「……朝緋?」
睨まれたが無視。
話題は背負い籠の中に入っている禰󠄀豆子ちゃんの話に移った。
杏寿郎さんは禰󠄀豆子ちゃんが人を食うか食わないか。まだ判断はつかないと言いたげで。
そして私に鬼を憎まないのかと聞いてきた。
鬼は憎い。けれど、禰󠄀豆子ちゃんは信用できる子だ。人は食べない。私は他にも人を食べない鬼を知っているし。
気持ちを声に出して言うことは今はできないけれど、私は禰󠄀豆子ちゃんを味方だと。同じ鬼殺隊の一員だと思っている。
杏寿郎さん、貴方もそう思ってくれたのよ。
「お館様が太鼓判押してるんだよね?なら平気。よろしくね、禰󠄀豆子ちゃん」
思いを秘めて、炭治郎の背負う籠をそっと撫でた。
「お館様の言葉があったとはいえ朝緋が鬼を認めた!明日は槍が降るかもしれぬな!」
「失礼な言い方しないでくださいよ!
……さて、階級が下の隊士は基本呼び捨てにしている事が多いんだけど、貴方達もそれでいいよね?」
「え。あ、はい!」
「俺はね俺はね!善逸って愛を込めて呼んでくれると嬉しいでーす!」
「ああ!俺も問題ねぇぜまだら!」
おっふ。許可はもらったけど伊之助からはまーたまだら呼び。なんか他にないのかな……髪を染めたら変わる?
「む!朝緋は馴れ馴れしいな」
「いいじゃないですか、敬称なんかない方が呼びやすいのですから」
なぜこうも馴れ馴れしく呼ぶ事にしたのかって?『前』の時に既に炭治郎、善逸、伊之助と呼んでいたから、間違えないように初めからそう呼ぼうとしたまでで。
「ほう……俺がどんな男にも嫉妬する事を知らぬ朝緋ではないよな?そうまでして俺を嫉妬させていじめられたいとは。
全く、かわいいことをしてくれる!」
「あの……煉獄さんと朝緋さんは柱と継子の関係だけじゃないので?苗字も同じ煉獄だし……」
「血は繋がってないけど家族で「これから夫婦という名の家族になる予定の恋仲だな!」…………師範?」
「訂正せんぞ?」
にやりと杏寿郎さんが笑った。
「!!恋仲!!!!」
その瞬間、善逸が大きな声を出した。びっくりするから大声やめて!?
乗客もびっくりして善逸を見てるじゃない。
「ああ、うん。そうなの……」
こそりと肯定する。善逸の雄叫びは止まらなかった。
「チクショー柱ってのはかわいい女の子と付き合えて羨ましいな!しかも継子!?継子だからってあんなことやこんなこと、柱権限で命令してんだろズルい!!」
「む。たしかにあんなことやこんなことはしているが!だが朝緋はやらんぞ!」
「怖くて奪えねぇわ!大体、どう見ても相思相愛だろ!?さっきから甘い音!すけべな音!いっぱい聞こえてきてるんだよォー!!」
「つまりギョロ目とまだらは番ってことか!!」
「そうだな!番だぞ猪頭少年!!」
赤くなってぷるぷるして、ぷしゅーっ。顔からも頭からも火やら蒸気やら出そう。
耐えていたら炭治郎という癒し要員がそっと声をかけてくれた。
「大丈夫ですか朝緋さん……?」
「うう……たんじろ、だいじょぶ……もう何か言う気失せた。恥ずかしさ通り越してどうにでもなれという感じ」
杏寿郎さんの明け透けな言葉に恥ずかしすぎて頭から湯気が出たのよね。
いつから私は無限列車と同化してたのかな?頭が蒸気機関車ぽっぽーって。誰が機関車●ーマスじゃい!!
よし話変えよう!
「ねえねえお腹空いてない?こんなこともあろうかとお弁当を取っておいたのよ。ほら、君達の分も!」
未だいい匂いが漂うお弁当を三人に渡していく。美味しい匂いに釣られたか、ようやく話を終えてくれた。
「そういえば朝緋の言う通りだったな!ここに座るといい!!ゆっくり食べなさい!!」
それぞれ座って食べ始めてくれたので、やっと落ち着けるう……。
私も続き食べよう。たまご美味い。
「美味しいです」
「そうか!美味いならもっと食べるといい!たくさん食べないと強くなれんぞ!!」
「いえ、一つで結構です」
二人が会話しながら食べすすめている様子を見ていると、なんだろうな。ほっこりする。歳の頃が千寿郎とそう変わらないからだろうか。早くこの子達も交えて鍛錬してみたくなった。
もちろん、その場には杏寿郎さんが師範としてついていないと駄目。みんなみんなが揃った姿が見たい。
「俺はもっと食えるぞ!」
「伊之助は少し遠慮しろっての!」
「はっはっはっ!多めに残してあるから遠慮しなくていい!残った分は俺が全て平らげる予定だったからな!!」
「ぜ、全部ですか!?」
口をあんぐり開けて、弁当の残り箱数を見る炭治郎。普通ならびっくりする量だよね。でも通常運転です。
「吐くほど食べて限界を超えても鍛錬して。そうした血の滲むような努力の先に望む強さがあるからね。いっぱい食べるといいよ」
にこりと笑ってから、炭治郎の口元についた米粒を摘んで食べる。彼は赤い顔で礼を述べてから私の言葉を口の中で反芻していた。
「そうなんですか……。
朝緋さんもたくさん食べたんですか?だから甲にまで……?」
「んー……努力したッ!!けれどそうね、師範に負けないくらいいっぱい食べてきたし、今もたくさん食べてるよ。
炎の呼吸使いは、多分健啖家が多いって思うの。鬼がいない世の中になったら太っちゃうよねぇ。困った困った」
「幸せ太りはすごくいい事だと思います!」
「……そうね」
幸せそうに美味いを連呼している杏寿郎さんを眺めながら思う。
鬼がいない世の中になって、呼吸を使う必要がなくなって。それでもいっぱい食べて。
二人で太ったね!なんて笑い合えるようになるといいなって。
今のままでは夢のまた夢。
食べ終えて炭治郎が聞きに来たという、ヒノカミ神楽の話になった。けれど相変わらず、杏寿郎さんは「知らん」の一言で終わらせた。継子に誘うのは私も賛成だけれど、ほんとこの人、人の話すぐ終わらせたがるんだから!