三周目 陸
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ん、は……っ、ぁ…………きょ、じゅろさ、ん……」
「……ン、朝緋……、気持ち、いいな……?」
互いの吐息や汗が熱く蒸れて室内に、布団の中にこもる。むわりとした空気に混じるは、二人分の汗と体臭、その他の愛しい匂い。
何度唇を重ねただろう。何度体を重ねただろう。
任務のない日や、任務後で気の昂った夜半過ぎは布団の中、二人でこうして睦み合うことが増えた。
初めて見た時はかなり驚いたが、杏寿郎さんはさくらんぼの軸を結ぶことができてしまう人間だ。つまり、キスが上手な手合い。
ううん、『何度も』キスしてるから上手なのは、私の体が一番良く知っているけど。
今夜もまた、蕩けそうなほどに愛されて、快感を与えられて。
杏寿郎さんの口吸いが上手すぎてくらくらして何も考えられなくなる。頭がおかしくなりそうだ。
私の舌を分厚い自分の舌で捕まえ絡ませ引っ張り上げたかと思うと、じゅるじゅると吸い上げて逃さない。ぴりぴりとした刺激が快感となって全身を走り抜ける。
口内も舌も燃えるように熱くてまるで炎。私の口の中を、歯の裏から喉の奥に至るまで蹂躙し、時に優しく時に強く舐め上げていく。
全部が全部、杏寿郎さんのものだと、しるしをつけられていく。
「……はァ、杏寿ろ、さん……もっと、して……?」
「ッ……!ああ、朝緋の望みとあらば、時間の許す限りいくらでも……」
汗で濡れた杏寿郎さんの髪の毛に手を伸ばし、頭を抱え込んで自ら唇を押し付け応える。
もっと貴方のものになりたくてたまらない、はしたない私。
もっともっと、貴方が欲しくなる。この気持ちはもう隠せない。
こうやって普段二人の時に睦みあってはいるが、もちろん何事にもメリハリは大事で。
任務となるや否や。そして他人が入り込む場では、空気を読んで臨機応変にお互い『柱』と『継子』。『上官』と『部下』。『兄』と『妹』として振る舞うようにしている。
ちなみに恋仲であることは別に隠していない。むしろ杏寿郎さんは一部の隊士の間で噂になるよう、言いふらしている。おかげさまでこっちは杏寿郎さんに言いよる隊士に嫉妬する暇もない。
あでも、槇寿朗さんは私達が恋仲である事なんて、なーんにも知らないかもしれないね。言う必要性が出てきたら考えよう。
ただ。
体を何度も交えるのは寒い季節に互いの体温で暖をとる……それも理由の一つにあったかもしれない。
恋仲になったばかりの頃は冬本番で特に寒くって、外側からも内側からも温め合いたいって気持ちがあったから。だから杏寿郎さんは私の。私は杏寿郎さんの熱を求めた。
そして。
ーーシない日の夜ですら、私の体は貴方を求め。貴方の体は私を求める。
昔の家屋は令和や平成、未来の家屋と違ってどうしても隙間風が入り、気密性に少しばかり欠けた家が多い。
ぴゅーぴゅー鳴く風の音もまた、寒さに拍車をかける。
「うう〜、さむさむさむ……」
まだまだ寒い季節の今。もこもこのルームウェアなんてない時代、薄い寝巻きに褞袍程度では、部屋一つ越えるだけでも体が冷えてたまらない。
火鉢の火だって夜は消してしまうし、やることを終えたら体が本格的に冷える前にと布団に潜り込む。
ふあーあ、あくびとまらない〜。
けれどそこには先客がいた。
ん?あったかい??
そして、何か私に触れてくる。て、敵襲っ!?が、振り向くと布団の中に杏寿郎さんがいた。
早速伸びてきた腕が私の体を抱き込み、自身の元へ引き寄せていく。
「ええええっ!きょ、杏寿郎さんっ!?」
「ああ、朝緋か。おかえり」
「ただいまです……って違う!私、部屋間違えた……!?」
「ふふふ、そう思うのならそうなのかもな?」
至近距離でくつくつ笑っている姿に疑問を覚える。その笑いはなんだろう?
まあ、冷え切っていたはずの私の煎餅布団がこんもりしていたから変だとは少し思ったよ?でも私がぐちゃぐちゃに敷いてしまったのかなぁ、などと多少寝ぼけていたから気にしなかったわけで。
そしてあまりの寒さで確認をする暇なく入ってしまい……イマココ。
「す、すすすすみません……っ!確認を怠りました!!」
「なんだ、わざとだと思ったんだがなあ」
炎柱邸での私室として、私の部屋と杏寿郎さんの部屋は隣同士。私物もあまりたくさん置かないため、内装もほとんど変わらない。
だからこうして寝ぼけていたりすると素で間違える事が……。
「いや違う!よく見たらここ私の部屋じゃん!!間違えてるの杏寿郎さんじゃん!!」
スパーーーン!
抱き寄せる腕を叩いて離れる。すぐにもう一度、今度は逃げられないよう強く抱きしめられて腕の中に閉じ込められてしまったが。
なぜ自分の部屋だとわかったか?
内装はほぼ一緒で私物もないに等しいと言っても私の部屋には杏寿郎さんの部屋にないものがある。
杏寿郎さんの顔が刺繍された座布団と、ひと月に数回使うだけの藤の香炉だ。
「なーにが、わざとだと思ったですか!わざとは貴方の方でしょ!杏寿郎さんのお部屋とお布団はお隣です!はーなーしーてー!」
「よもや、気がついてしまったか!まぁ気にするな!」
「気にするわ!!流石に今夜は杏寿郎さんハウス!自分の布団にお帰りください!!」
「ハウスとはなんだ!?また外つ国の言葉か!それと離しはしない!離れない!!」
じたばた暴れても、布団の端すら持ち上がらない。柱の全力で押さえつけられている。
これもう、抱き締めるって領域じゃないよね?プロレス技の域だと思う。
でも息はできるし、とにかくあたたかい。杏寿郎さんが布団を温めてくれていたから私は今、全然寒くない。
「俺の布団はもう主を失い冷えている……自分の布団に戻れなどと、そんな悲しいことを言うな……」
しょもーん。眉根を下げた杏寿郎さんの顔が目の前ドアップ。ああっ!そんな悲しそうなゴールデンレトリバーの視線で見てこないで……!
うん。でもそうね。私がこんなにぬくぬくと良い思いをしているのに、今更冷たくなった布団に戻れは酷だ。
大体私だってこの間、わざとではなく素で部屋を間違えてしまった。冷たい体のそのまま杏寿郎さんというおっきな懐炉に抱きついて熱を奪って。すやすや眠って。
だって寒かったんだもの……。
小さい頃なんてよく、添い寝してもらってたからその延長よ。杏寿郎さんは体温高くてあったかいからね。
仕方ない仕方ない。
……だから、互いの体温を求めるのは致し方ないことなのかもしれない。
「まあ、ここを温めておいてくれたのは杏寿郎さんですからね。追い出されるとしたら、冷たい体の私の方ですよ」
「朝緋を追い出したりはせんぞ」
「じゃあ、あったかいのちょうだい?」
ぎゅうぎゅうと擦り寄り、体温を奪う。
杏寿郎さんの乱れた寝巻きから、顔を潜り込ませてくっつく。
ひんやりした足や顔が皮膚に触れたからか、杏寿郎さんの体が一瞬ぴくりと反応をこぼし、そして更に熱を与えようと抱き込んできた。
「ン……頬がまだ冷たいな。どうだ、俺の胸元はあたたかろう?」
「うん。あったかくて、杏寿郎さんの心臓の音が伝わってきて……。すごく落ち着く」
とくとくとく、生きている音が聞こえる。ここにある生の喜びの音が、途切れることなくどこまでも伸びやかに奏でられている。
「俺にも君の熱を分けてくれ。朝緋を五感で感じたい」
意味深に絡んでくる足は夜のお誘いだ。
明日の予定や任務は……、と体に手を這わされながらも、頭の端で考える。
大丈夫そうだけど、相変わらず手が早い。
「っ、んん、まだ体があったまってないからもうちょっと待って。ぎゅーってしてて?」
「……お預けは苦手だがしばし我慢しよう!
それにこうしているだけでも、君が隣にいるという温かな幸せで満たされるからな」
鼻をこつんとぶつけ合ったその目には、奥に燃える情炎のほかに、お日様みたいに柔らかく優しく包み込むような慈しみの光があった。
大きな目には『君が愛しい』と書いてある。
それがすごくすごーく、嬉しくて、結局大して体が温まらないうちから私達は熱を分かち合った。
熱を求めるのはわかる。私だって杏寿郎さんの温かさをこうやって求めることがあるもの。
一緒に寝たくもなるよね。単純な熱も、体も、その全てを求め合いながら眠りにつきたくもなるよね。
そもそもまだ恋仲になってそんなに経っていないもの。今が一番、炎が燃えている時かもしれない。
「……ン、朝緋……、気持ち、いいな……?」
互いの吐息や汗が熱く蒸れて室内に、布団の中にこもる。むわりとした空気に混じるは、二人分の汗と体臭、その他の愛しい匂い。
何度唇を重ねただろう。何度体を重ねただろう。
任務のない日や、任務後で気の昂った夜半過ぎは布団の中、二人でこうして睦み合うことが増えた。
初めて見た時はかなり驚いたが、杏寿郎さんはさくらんぼの軸を結ぶことができてしまう人間だ。つまり、キスが上手な手合い。
ううん、『何度も』キスしてるから上手なのは、私の体が一番良く知っているけど。
今夜もまた、蕩けそうなほどに愛されて、快感を与えられて。
杏寿郎さんの口吸いが上手すぎてくらくらして何も考えられなくなる。頭がおかしくなりそうだ。
私の舌を分厚い自分の舌で捕まえ絡ませ引っ張り上げたかと思うと、じゅるじゅると吸い上げて逃さない。ぴりぴりとした刺激が快感となって全身を走り抜ける。
口内も舌も燃えるように熱くてまるで炎。私の口の中を、歯の裏から喉の奥に至るまで蹂躙し、時に優しく時に強く舐め上げていく。
全部が全部、杏寿郎さんのものだと、しるしをつけられていく。
「……はァ、杏寿ろ、さん……もっと、して……?」
「ッ……!ああ、朝緋の望みとあらば、時間の許す限りいくらでも……」
汗で濡れた杏寿郎さんの髪の毛に手を伸ばし、頭を抱え込んで自ら唇を押し付け応える。
もっと貴方のものになりたくてたまらない、はしたない私。
もっともっと、貴方が欲しくなる。この気持ちはもう隠せない。
こうやって普段二人の時に睦みあってはいるが、もちろん何事にもメリハリは大事で。
任務となるや否や。そして他人が入り込む場では、空気を読んで臨機応変にお互い『柱』と『継子』。『上官』と『部下』。『兄』と『妹』として振る舞うようにしている。
ちなみに恋仲であることは別に隠していない。むしろ杏寿郎さんは一部の隊士の間で噂になるよう、言いふらしている。おかげさまでこっちは杏寿郎さんに言いよる隊士に嫉妬する暇もない。
あでも、槇寿朗さんは私達が恋仲である事なんて、なーんにも知らないかもしれないね。言う必要性が出てきたら考えよう。
ただ。
体を何度も交えるのは寒い季節に互いの体温で暖をとる……それも理由の一つにあったかもしれない。
恋仲になったばかりの頃は冬本番で特に寒くって、外側からも内側からも温め合いたいって気持ちがあったから。だから杏寿郎さんは私の。私は杏寿郎さんの熱を求めた。
そして。
ーーシない日の夜ですら、私の体は貴方を求め。貴方の体は私を求める。
昔の家屋は令和や平成、未来の家屋と違ってどうしても隙間風が入り、気密性に少しばかり欠けた家が多い。
ぴゅーぴゅー鳴く風の音もまた、寒さに拍車をかける。
「うう〜、さむさむさむ……」
まだまだ寒い季節の今。もこもこのルームウェアなんてない時代、薄い寝巻きに褞袍程度では、部屋一つ越えるだけでも体が冷えてたまらない。
火鉢の火だって夜は消してしまうし、やることを終えたら体が本格的に冷える前にと布団に潜り込む。
ふあーあ、あくびとまらない〜。
けれどそこには先客がいた。
ん?あったかい??
そして、何か私に触れてくる。て、敵襲っ!?が、振り向くと布団の中に杏寿郎さんがいた。
早速伸びてきた腕が私の体を抱き込み、自身の元へ引き寄せていく。
「ええええっ!きょ、杏寿郎さんっ!?」
「ああ、朝緋か。おかえり」
「ただいまです……って違う!私、部屋間違えた……!?」
「ふふふ、そう思うのならそうなのかもな?」
至近距離でくつくつ笑っている姿に疑問を覚える。その笑いはなんだろう?
まあ、冷え切っていたはずの私の煎餅布団がこんもりしていたから変だとは少し思ったよ?でも私がぐちゃぐちゃに敷いてしまったのかなぁ、などと多少寝ぼけていたから気にしなかったわけで。
そしてあまりの寒さで確認をする暇なく入ってしまい……イマココ。
「す、すすすすみません……っ!確認を怠りました!!」
「なんだ、わざとだと思ったんだがなあ」
炎柱邸での私室として、私の部屋と杏寿郎さんの部屋は隣同士。私物もあまりたくさん置かないため、内装もほとんど変わらない。
だからこうして寝ぼけていたりすると素で間違える事が……。
「いや違う!よく見たらここ私の部屋じゃん!!間違えてるの杏寿郎さんじゃん!!」
スパーーーン!
抱き寄せる腕を叩いて離れる。すぐにもう一度、今度は逃げられないよう強く抱きしめられて腕の中に閉じ込められてしまったが。
なぜ自分の部屋だとわかったか?
内装はほぼ一緒で私物もないに等しいと言っても私の部屋には杏寿郎さんの部屋にないものがある。
杏寿郎さんの顔が刺繍された座布団と、ひと月に数回使うだけの藤の香炉だ。
「なーにが、わざとだと思ったですか!わざとは貴方の方でしょ!杏寿郎さんのお部屋とお布団はお隣です!はーなーしーてー!」
「よもや、気がついてしまったか!まぁ気にするな!」
「気にするわ!!流石に今夜は杏寿郎さんハウス!自分の布団にお帰りください!!」
「ハウスとはなんだ!?また外つ国の言葉か!それと離しはしない!離れない!!」
じたばた暴れても、布団の端すら持ち上がらない。柱の全力で押さえつけられている。
これもう、抱き締めるって領域じゃないよね?プロレス技の域だと思う。
でも息はできるし、とにかくあたたかい。杏寿郎さんが布団を温めてくれていたから私は今、全然寒くない。
「俺の布団はもう主を失い冷えている……自分の布団に戻れなどと、そんな悲しいことを言うな……」
しょもーん。眉根を下げた杏寿郎さんの顔が目の前ドアップ。ああっ!そんな悲しそうなゴールデンレトリバーの視線で見てこないで……!
うん。でもそうね。私がこんなにぬくぬくと良い思いをしているのに、今更冷たくなった布団に戻れは酷だ。
大体私だってこの間、わざとではなく素で部屋を間違えてしまった。冷たい体のそのまま杏寿郎さんというおっきな懐炉に抱きついて熱を奪って。すやすや眠って。
だって寒かったんだもの……。
小さい頃なんてよく、添い寝してもらってたからその延長よ。杏寿郎さんは体温高くてあったかいからね。
仕方ない仕方ない。
……だから、互いの体温を求めるのは致し方ないことなのかもしれない。
「まあ、ここを温めておいてくれたのは杏寿郎さんですからね。追い出されるとしたら、冷たい体の私の方ですよ」
「朝緋を追い出したりはせんぞ」
「じゃあ、あったかいのちょうだい?」
ぎゅうぎゅうと擦り寄り、体温を奪う。
杏寿郎さんの乱れた寝巻きから、顔を潜り込ませてくっつく。
ひんやりした足や顔が皮膚に触れたからか、杏寿郎さんの体が一瞬ぴくりと反応をこぼし、そして更に熱を与えようと抱き込んできた。
「ン……頬がまだ冷たいな。どうだ、俺の胸元はあたたかろう?」
「うん。あったかくて、杏寿郎さんの心臓の音が伝わってきて……。すごく落ち着く」
とくとくとく、生きている音が聞こえる。ここにある生の喜びの音が、途切れることなくどこまでも伸びやかに奏でられている。
「俺にも君の熱を分けてくれ。朝緋を五感で感じたい」
意味深に絡んでくる足は夜のお誘いだ。
明日の予定や任務は……、と体に手を這わされながらも、頭の端で考える。
大丈夫そうだけど、相変わらず手が早い。
「っ、んん、まだ体があったまってないからもうちょっと待って。ぎゅーってしてて?」
「……お預けは苦手だがしばし我慢しよう!
それにこうしているだけでも、君が隣にいるという温かな幸せで満たされるからな」
鼻をこつんとぶつけ合ったその目には、奥に燃える情炎のほかに、お日様みたいに柔らかく優しく包み込むような慈しみの光があった。
大きな目には『君が愛しい』と書いてある。
それがすごくすごーく、嬉しくて、結局大して体が温まらないうちから私達は熱を分かち合った。
熱を求めるのはわかる。私だって杏寿郎さんの温かさをこうやって求めることがあるもの。
一緒に寝たくもなるよね。単純な熱も、体も、その全てを求め合いながら眠りにつきたくもなるよね。
そもそもまだ恋仲になってそんなに経っていないもの。今が一番、炎が燃えている時かもしれない。