三周目 伍
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今回の任務は音柱との合同。
『前』の時に任務が一緒になったことはなく、たくさん話したこともあまりない。
しいていうなら、『以前』継子として紹介された折に、非常に腹の立つ物言いをされたくらいか。なんだっけ、イケメンアレルギーなのか?なんて言葉だったような。
あ、その更に『前』に、炎柱邸の縁側でどきどきさせられた事もあったよね……おっとこれはやめておこう。
おかげでちょっと苦手意識が強い。
ま、柱相手に苦手も何もないよね!柱はみんな総じて怖いものだから。
その音柱・宇髄天元は元忍びだという。
宝石のようなものをジャラジャラ吊り下げた額当て。キラキラ輝く金の腕輪。花火が咲いたような真っ赤な化粧。体も態度も常人の倍以上。おまけに技も派手。
全然忍んでないむしろ派手すぎる。これの何処が忍び……?とは思うけれど。
でも、屋根の上で眼下を見下ろす様は忍者そのもので。額当ても派手とはいえそれっぽい感じがする。
「遅い。普通下っ端は上官より早く着いてるもんだろ」
「申し訳ありません。屋根の上が集合場所だとは聞いておりませんでしたので」
おかげでずっと下を探す羽目になったじゃんか!などと言い返せないのは一般隊士ゆえ。
しかし気配に敏感というのは本当らしい。気配を殺して近寄ってもバレた。この人杏寿郎さん以上に鋭いなぁ。
「此度の任務同行者。階級丁・煉獄朝緋と申します」
頭を下げて挨拶すれば、言葉に引っ掛かりを覚えたかやっとこっちを見た。
自分で言っていた通り、改めて見るとかなりの美丈夫。美しい白銀の髪に、涼やかでキリリとした男らしい紅の目。他の女性隊士が騒ぐわけだよねぇ。私でも少しはドキドキする。
でも私は杏寿郎さんの方が好きだし、でも陰ながら応援してるだけのただの継子です。ただの継子です!
「煉獄だと?お前の苗字は煉獄なのか。炎柱の煉獄の血縁者?」
「どうも不出来な妹ですー。直接の血のつながりはないですけどね」
「へぇ。そういえば髪色も所々似てるし、目なんかはそっくりそのままの色彩だな。血のつながりがないのが不思議だぜ」
そう言って私の顔を鷲掴んだかと思うと、指で私の目を無理やり見開いて眺めてきた。
目の皮膚裂けるわ!
「痛い痛い、勝手に私の目を見開かないでくださいよ!」
「おっと、悪い悪い」
腕を振り回してやめさせる。腕がぶつかる前に避けてくれたのはいいけど、謝罪が軽すぎて腹立たしく感じた。
でもきっと、この人のペースに付き合っていては身が持たないし、任務の話を聞こう。
「こほん。
此度の任務についてですが……」
初めは一般隊士が討伐に向かった任務だった。
けれど、討伐することは叶わず逃げられてばかり。その内、任務に当たった隊士も何人かは帰らぬ人となっていた。
これ以上被害が拡大する前にと、新たに投入されたのが宇髄さんだ。一般隊士が手も足も出ないなら、柱に任務が回ってくるのは当然の事。
でも結果は同じで。
鬼には後少しのところで逃げられてしまったそうだ。柱の中でも相当な速さを誇る宇髄さんが追いつけない鬼。
これは速いというより、人並外れて危機管理能力が高い鬼なのだろう。ここまで来ると元人間の鬼というより、既に野生動物。
「俺と同じくらい気配に鋭く俊敏で逃げ足が速い。おかげでこの俺がいつまで経っても仕留められない。
けどな、そろそろ鬼の空腹が限界を越える頃でもある。俺が来てからは人間の肉を口にしてないからな」
ジリ貧にしかならない中、最終的に投下されたのがこの私。
「そこでより鬼が食いつきやすい餌を用意しようと考えた。鬼の餌。つまり人間だが、市井の人々を巻き込むのはだめだ。
けれどただの隊士では警戒もされる。で、白羽の矢が立ったのが『稀血』の隊士だ」
私はただの隊士ではない。『稀血』の、それもより一層狙われやすい女性の隊士。鬼の食いつきは普通の人間とは比べ物にならない。
「煉獄朝緋。お前は稀血と聞いている。鬼を誘い出してくることは可能か?」
「私が餌の役割と。そして誘い出した鬼を宇髄さ……、音柱様が仕留める、ですか。
誘い出すくらいワケないです。可能なら私が斬っちゃってもいいですよね?」
「もちろん斬って構わない。それと、宇髄さんでいい。祭りの神でもいいぞ!崇めろ!媚びへつらえ!」
「崇めないし媚びないし祭りの神は結構です」
宇髄さんが私の情報を知っているのは、彼が元忍びであることが大きいんだろうな。
それにしても他の隊士に聞いていた通り、本当に自分のこと神と呼べと言ってくるのかぁ。文字数が多いから言わないけれど。
「ンだよ、ノリの悪い堅い奴だな。その堅さ、たしかに煉獄杏寿郎の妹だわ」
「ありがとうございます……?」
「褒めてねぇよ」
妹と言われて喜んでいいかと思い笑ったのに思い切り小突かれたんだが!?
日が暮れるのを待って、鬼が潜むという森の中に入る。
ほんの少しだけ血を流せば、それだけなのに空気が一瞬にして変わり緊張感が走る。
なるほど。私の特殊な稀血に酔ったであろう事が遠くから感じ取れるに、鬼の素体は男性か。
稀血に酔っても自我を保つ鬼もたまにいることだし、日輪刀はあまり見られない方がいいだろうと踏んで背中に隠しておく。
「では行ってまいります」
「油断はすんなよ。相手が速いのは逃げ足だけじゃねぇ。追いかけてくる速さもお前より速いかもしれないし気をつけろ」
相手は人よりも強い鬼。
決して油断はしないし、宇髄さんがそう言うのだから私の足より確実に速いとみていいだろう。
けど稀血酔いが進行していれば、そこに隙は生まれる。取れる隙があれば自分で鬼の頸を取る!その気概で挑む。
「炎の呼吸、炎山渦!」
結果、鬼は稀血に酔いながらも逃げようとしたので、壱ノ型の速さのまま横軸に回転数をあげる私だけの回転斬りで私の日輪刀に頸を落とされた。
あと少し遅かったら、また逃していたろう。
仕留められてよかった……。
でもまさか、私のすぐ後を宇髄さんが追ってきて見ていたとは知らなかった。柱のとはいえ気配を察知できないとは私もまだまだね。
「見てたんですか」
「そりゃあ一般隊士が頑張ってるってのに上が胡座描いてるわけにもいかねぇからな。
煉獄……が鬼の気配を追うところも、稀血に酔ってもなお逃げる鬼をしとめる瞬間も見てたさ。
けど俺のところまで追い込むのかと思いきや、煉獄が……、」
煉獄杏寿郎のほうを呼んでいる気分になるのか、言いにくいようである。
「煉獄って言い難いんでしたら、お前呼びでもいいですよ。それか朝緋、と」
「んじゃ遠慮なく。朝緋が自ら仕留めちまうとは思わなかった」
「だって、本当に逃げ足が速くって。
まさか私の血の匂いを嗅いでもなお、逃走しようとするとは思いませんでしたけどねぇ」
絶対、匂いで酔って逆に追いかけられる羽目になると思ってた。
ああでも、あの速さで追いかけられたらと思うと、恐ろしくってたまらないよね。
「あれを逃せば、もう出てこないかもと踏んで速攻で頸をとらせていただきました」
「速攻ね……朝緋の斬撃の方が速かっただけのことだろ。足の速さもさることながら技も速いんだな。
朝緋の使ってるのって本当に炎の呼吸で合ってるのか?」
「当たり前じゃないですか。炎の呼吸ですよ?そして私の取り柄が速さというだけです」
「へぇ……」
えっへん!と胸を張って答える。
それを宇髄さんは目を細めて見てきたけど何だろう?
「しっかし、鬼はお前が切っちまったし暴れたりねぇな」
「え?」
ボソリ、そうつぶやいた後。
「煉獄朝緋!!」
ブォン!!
呼びかけと共に、空を刃が薙いだ。
「なっ!?」
「ふーん。やっぱり避けられたか」
「あっぶな!いきなり何するんですか!!うわー、口の中に土入った!!ぺぺぺ」
宇髄さんが使う二対の特殊な日輪刀が、私の首スレスレを通って行ったのだ。
おかげで転けて顔から地面にダイブしてしまったではないか!避けなかったら首チョンパだったと思うとこれでいいけど。
「悪い。お前なら避けられると思ってたし、力を試したかった」
そう言って宇髄さんは、起き上がった私の顔についた汚れをごしごし落としてくれた。落とし方雑〜!
そのままじっと見つめられたかと思うと。
「煉獄朝緋、お前俺の継子になれ」
「アッ間に合ってます」
その言葉を前に即答した。
「なんでだよ。この俺がお前には見込みがありそうだから継子にしてやるって言ってるんだぞ?」
「いや、もう私一応炎柱の継子なんで……」
なったばかりだけれど。
「は?妹な上に継子かよ。あの炎柱、随分と過保護なことで」
過保護というより監視されてます。自分で言うのもなんだけど溺愛されてる感マックスです。
「ま、気が変わったら言えよ。それだけ速いお前には、音の……いや、雷の呼吸の才があると思うからな」
「!!ありがとうございます!」
炎だけでなく雷にも適性が!他の呼吸も使えたら、それはかなりの強みになる。強くなれる。
杏寿郎さんを助けられる確率が上がる!
幸せな未来を想像して笑顔が溢れた。
「お、そうやって笑うと案外かわい……」
「??」
顔をごしごしする時と同じ、宇髄さんの手が私に伸びてきた瞬間だった。
木まで薙ぎ倒されそうな強風、いや突風が吹き荒れ。……気がついたら杏寿郎さんに抱っこされていた。
えっ何で??
『前』の時に任務が一緒になったことはなく、たくさん話したこともあまりない。
しいていうなら、『以前』継子として紹介された折に、非常に腹の立つ物言いをされたくらいか。なんだっけ、イケメンアレルギーなのか?なんて言葉だったような。
あ、その更に『前』に、炎柱邸の縁側でどきどきさせられた事もあったよね……おっとこれはやめておこう。
おかげでちょっと苦手意識が強い。
ま、柱相手に苦手も何もないよね!柱はみんな総じて怖いものだから。
その音柱・宇髄天元は元忍びだという。
宝石のようなものをジャラジャラ吊り下げた額当て。キラキラ輝く金の腕輪。花火が咲いたような真っ赤な化粧。体も態度も常人の倍以上。おまけに技も派手。
全然忍んでないむしろ派手すぎる。これの何処が忍び……?とは思うけれど。
でも、屋根の上で眼下を見下ろす様は忍者そのもので。額当ても派手とはいえそれっぽい感じがする。
「遅い。普通下っ端は上官より早く着いてるもんだろ」
「申し訳ありません。屋根の上が集合場所だとは聞いておりませんでしたので」
おかげでずっと下を探す羽目になったじゃんか!などと言い返せないのは一般隊士ゆえ。
しかし気配に敏感というのは本当らしい。気配を殺して近寄ってもバレた。この人杏寿郎さん以上に鋭いなぁ。
「此度の任務同行者。階級丁・煉獄朝緋と申します」
頭を下げて挨拶すれば、言葉に引っ掛かりを覚えたかやっとこっちを見た。
自分で言っていた通り、改めて見るとかなりの美丈夫。美しい白銀の髪に、涼やかでキリリとした男らしい紅の目。他の女性隊士が騒ぐわけだよねぇ。私でも少しはドキドキする。
でも私は杏寿郎さんの方が好きだし、でも陰ながら応援してるだけのただの継子です。ただの継子です!
「煉獄だと?お前の苗字は煉獄なのか。炎柱の煉獄の血縁者?」
「どうも不出来な妹ですー。直接の血のつながりはないですけどね」
「へぇ。そういえば髪色も所々似てるし、目なんかはそっくりそのままの色彩だな。血のつながりがないのが不思議だぜ」
そう言って私の顔を鷲掴んだかと思うと、指で私の目を無理やり見開いて眺めてきた。
目の皮膚裂けるわ!
「痛い痛い、勝手に私の目を見開かないでくださいよ!」
「おっと、悪い悪い」
腕を振り回してやめさせる。腕がぶつかる前に避けてくれたのはいいけど、謝罪が軽すぎて腹立たしく感じた。
でもきっと、この人のペースに付き合っていては身が持たないし、任務の話を聞こう。
「こほん。
此度の任務についてですが……」
初めは一般隊士が討伐に向かった任務だった。
けれど、討伐することは叶わず逃げられてばかり。その内、任務に当たった隊士も何人かは帰らぬ人となっていた。
これ以上被害が拡大する前にと、新たに投入されたのが宇髄さんだ。一般隊士が手も足も出ないなら、柱に任務が回ってくるのは当然の事。
でも結果は同じで。
鬼には後少しのところで逃げられてしまったそうだ。柱の中でも相当な速さを誇る宇髄さんが追いつけない鬼。
これは速いというより、人並外れて危機管理能力が高い鬼なのだろう。ここまで来ると元人間の鬼というより、既に野生動物。
「俺と同じくらい気配に鋭く俊敏で逃げ足が速い。おかげでこの俺がいつまで経っても仕留められない。
けどな、そろそろ鬼の空腹が限界を越える頃でもある。俺が来てからは人間の肉を口にしてないからな」
ジリ貧にしかならない中、最終的に投下されたのがこの私。
「そこでより鬼が食いつきやすい餌を用意しようと考えた。鬼の餌。つまり人間だが、市井の人々を巻き込むのはだめだ。
けれどただの隊士では警戒もされる。で、白羽の矢が立ったのが『稀血』の隊士だ」
私はただの隊士ではない。『稀血』の、それもより一層狙われやすい女性の隊士。鬼の食いつきは普通の人間とは比べ物にならない。
「煉獄朝緋。お前は稀血と聞いている。鬼を誘い出してくることは可能か?」
「私が餌の役割と。そして誘い出した鬼を宇髄さ……、音柱様が仕留める、ですか。
誘い出すくらいワケないです。可能なら私が斬っちゃってもいいですよね?」
「もちろん斬って構わない。それと、宇髄さんでいい。祭りの神でもいいぞ!崇めろ!媚びへつらえ!」
「崇めないし媚びないし祭りの神は結構です」
宇髄さんが私の情報を知っているのは、彼が元忍びであることが大きいんだろうな。
それにしても他の隊士に聞いていた通り、本当に自分のこと神と呼べと言ってくるのかぁ。文字数が多いから言わないけれど。
「ンだよ、ノリの悪い堅い奴だな。その堅さ、たしかに煉獄杏寿郎の妹だわ」
「ありがとうございます……?」
「褒めてねぇよ」
妹と言われて喜んでいいかと思い笑ったのに思い切り小突かれたんだが!?
日が暮れるのを待って、鬼が潜むという森の中に入る。
ほんの少しだけ血を流せば、それだけなのに空気が一瞬にして変わり緊張感が走る。
なるほど。私の特殊な稀血に酔ったであろう事が遠くから感じ取れるに、鬼の素体は男性か。
稀血に酔っても自我を保つ鬼もたまにいることだし、日輪刀はあまり見られない方がいいだろうと踏んで背中に隠しておく。
「では行ってまいります」
「油断はすんなよ。相手が速いのは逃げ足だけじゃねぇ。追いかけてくる速さもお前より速いかもしれないし気をつけろ」
相手は人よりも強い鬼。
決して油断はしないし、宇髄さんがそう言うのだから私の足より確実に速いとみていいだろう。
けど稀血酔いが進行していれば、そこに隙は生まれる。取れる隙があれば自分で鬼の頸を取る!その気概で挑む。
「炎の呼吸、炎山渦!」
結果、鬼は稀血に酔いながらも逃げようとしたので、壱ノ型の速さのまま横軸に回転数をあげる私だけの回転斬りで私の日輪刀に頸を落とされた。
あと少し遅かったら、また逃していたろう。
仕留められてよかった……。
でもまさか、私のすぐ後を宇髄さんが追ってきて見ていたとは知らなかった。柱のとはいえ気配を察知できないとは私もまだまだね。
「見てたんですか」
「そりゃあ一般隊士が頑張ってるってのに上が胡座描いてるわけにもいかねぇからな。
煉獄……が鬼の気配を追うところも、稀血に酔ってもなお逃げる鬼をしとめる瞬間も見てたさ。
けど俺のところまで追い込むのかと思いきや、煉獄が……、」
煉獄杏寿郎のほうを呼んでいる気分になるのか、言いにくいようである。
「煉獄って言い難いんでしたら、お前呼びでもいいですよ。それか朝緋、と」
「んじゃ遠慮なく。朝緋が自ら仕留めちまうとは思わなかった」
「だって、本当に逃げ足が速くって。
まさか私の血の匂いを嗅いでもなお、逃走しようとするとは思いませんでしたけどねぇ」
絶対、匂いで酔って逆に追いかけられる羽目になると思ってた。
ああでも、あの速さで追いかけられたらと思うと、恐ろしくってたまらないよね。
「あれを逃せば、もう出てこないかもと踏んで速攻で頸をとらせていただきました」
「速攻ね……朝緋の斬撃の方が速かっただけのことだろ。足の速さもさることながら技も速いんだな。
朝緋の使ってるのって本当に炎の呼吸で合ってるのか?」
「当たり前じゃないですか。炎の呼吸ですよ?そして私の取り柄が速さというだけです」
「へぇ……」
えっへん!と胸を張って答える。
それを宇髄さんは目を細めて見てきたけど何だろう?
「しっかし、鬼はお前が切っちまったし暴れたりねぇな」
「え?」
ボソリ、そうつぶやいた後。
「煉獄朝緋!!」
ブォン!!
呼びかけと共に、空を刃が薙いだ。
「なっ!?」
「ふーん。やっぱり避けられたか」
「あっぶな!いきなり何するんですか!!うわー、口の中に土入った!!ぺぺぺ」
宇髄さんが使う二対の特殊な日輪刀が、私の首スレスレを通って行ったのだ。
おかげで転けて顔から地面にダイブしてしまったではないか!避けなかったら首チョンパだったと思うとこれでいいけど。
「悪い。お前なら避けられると思ってたし、力を試したかった」
そう言って宇髄さんは、起き上がった私の顔についた汚れをごしごし落としてくれた。落とし方雑〜!
そのままじっと見つめられたかと思うと。
「煉獄朝緋、お前俺の継子になれ」
「アッ間に合ってます」
その言葉を前に即答した。
「なんでだよ。この俺がお前には見込みがありそうだから継子にしてやるって言ってるんだぞ?」
「いや、もう私一応炎柱の継子なんで……」
なったばかりだけれど。
「は?妹な上に継子かよ。あの炎柱、随分と過保護なことで」
過保護というより監視されてます。自分で言うのもなんだけど溺愛されてる感マックスです。
「ま、気が変わったら言えよ。それだけ速いお前には、音の……いや、雷の呼吸の才があると思うからな」
「!!ありがとうございます!」
炎だけでなく雷にも適性が!他の呼吸も使えたら、それはかなりの強みになる。強くなれる。
杏寿郎さんを助けられる確率が上がる!
幸せな未来を想像して笑顔が溢れた。
「お、そうやって笑うと案外かわい……」
「??」
顔をごしごしする時と同じ、宇髄さんの手が私に伸びてきた瞬間だった。
木まで薙ぎ倒されそうな強風、いや突風が吹き荒れ。……気がついたら杏寿郎さんに抱っこされていた。
えっ何で??