三周目 伍
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さて、ここからの道は二つだ。
壱、炎柱邸に行く。
弐、長屋を借りる。
借りようとしていた長屋の一室は今回も空いているとみていいだろう。
問題は杏寿郎さんだ。もしこのことがバレたら確実に却下されてまぁた炎柱邸に住むことになってしまう。
バレないようにしつつ、さっさと煉獄家から離れて長屋に移動しよう……。
そう思っていた時期が私にもありました。
長屋が立ち並ぶ横丁についた瞬間、誰に声をかけられたと思う?
黄色と朱の御髪で炎の羽織を纏う杏寿郎さんだよ!
「見つけたぞ朝緋!本当に長屋横丁にいるとはな!」
「げぇっ!なんで杏寿郎さんがここにい…………って、あずま!?」
杏寿郎さんの肩に私の鎹烏、あずまがちょこんととまっていた。
「あずまが君の居場所を教えてくれてな!うむ!有難いことだ!」
そっぽを向いて私とは目を合わせない……。こンの裏切り者め〜!あとでシメる。
「!?」
ずいっ!上から杏寿郎さんが私の顔を覗きこんできた。圧すご……!?
「よもや、朝緋はここの長屋に住むのではなかろうなぁ?」
「ヒッ……こ、ここの長屋の一室借りる予定でいます……」
「許可しない!!!!」
尻すぼみになりながらもなんとか答えたら、耳元近くでうるさかった……。鼓膜破けちゃうでしょ!?
「生家を出るのなら、炎柱邸に住めばよかろう!正式な継子になるという話をしたばかりではないか!!」
あまりの大声にキンキンする耳を塞いだ瞬間、その手を取られた。手を外されたのではない、逃げられないよう拘束されたのだ。
「朝緋が出ていったと教えてくれたのは父上でな。藤の家紋の家ならまだしも、怪しい場所や危険な場所に住む可能性もあるから保護するようにとも言われている」
ほ、保護!?何言ってくれちゃってるの槇寿朗さぁん!!
あ、でもあれか。藤の家紋の家からは釣り書きが来てるから私が警戒して行かないと踏んだのかも。どこの藤の家から来てるかは知らないけれど。
「別に私がどこに住もうと勝手でしょ!大体任務はどうしたんですか!!」
鬼殺隊士の全力で以って、スパァンと手を振り払い一歩距離を取る。これだけじゃ逃げ切るなんて多分不可能だろうけれど、目は逃走ルートをしきりに探した。
「任務などとうに終わらせてきた!
そして継子の行動を見張るのも仕事の内!」
「ああそうです……かっ!」
今だ!掴まれそうになった肩を横にずらしてかわす。そしてそのまま走り抜ければ……!
けれど、それは見破られていた。
ドォォン!!
私の顔の横、壁を思い切り突いた杏寿郎さんの手。カクカクしながら手のひらから顔までをゆっくり確認していくと、彼は額に青筋を立てて、こちらを睨むように見据えていた。
「俺の継子だというなら炎柱邸に!住め!!」
ひいいっ!柱の全力壁ドン……!?
さっきより威圧感がすごすぎて、杏寿郎さんのお顔や圧に慣れている私でさえ、恐怖で腰が抜けてしまいそうになる。至近距離だから余計に怖い。
むしろ後ろの壁大丈夫?あ、そこだけは力の加減してあるぽい。長屋とて個人宅の外壁だもんね、よかった……。
いやよくない!現状よくない!
「い、嫌です」
「ほぉ………………?」
しゃがんで下から逃走を図っ……。
……出来なかった。
ドンッッッ!
ぎゃあっ!足の間に勢いよく膝を割り入れられた。今度は足ドンかいっ!!
「あ、足を退かしてください!煉獄家の長男ともあろう方が、お行儀が悪いですっ」
「今は行儀なんてどうでもよかろう。他に誰も見ていない」
うわほんとだ周りは長屋だらけなのに、時間帯のタイミングが悪いのか昼間なのに誰ーーも通ってない!
誰かに助けを乞いたくても無理だー!杏寿郎さんから助けてくれるような人がいるとは思えないけれどね!?
まあ……この人の生活については非常に気になるところではある。生活能力ほぼ皆無だもの。
爆発させるから火は使えないし、お料理は下手だし。通いの奉公さんがいない時のお食事はどうするんだろう。
でもここでハイ住みます!なんて軽々しくは言いたくない。絶対逃してもらえない。
「…………。炎柱邸に住むとして」
「住むのか!そうかならよかった!さあ行こう!!」
手を握られる。甘酸っぱい握り方なのに、気分はドナドナの仔牛。
「ちょ、ちょっと待って!住むとして、の続き言わせてよ!」
「むう……」
「かわいいけど、むうじゃない!
……住むとしてですよ?そこに試用期間とかってのは無いんですか?」
「試用期間とはなんだ」
聞きながらも決して離さないこの手をどうしてくれよう。相手が鬼なら日輪刀でスッパリ!なのに。
「仮住まいってこと。ある一定期間住んでみて、気に入らなかったら出て行くってやつ」
「そんなものあるわけがなかろう!
この話はこれで終いだな!さあ行くぞ!」
ぎちぎちぎち……ミシッ。
ぎゃあああ手が折れる!?力入れすぎ!引っ張りすぎ!連れてかれるぅ!!
「嫌だ!!は、離してってば、痛いっ!ちょ、師範……っ!」
「断る!」
この柱、なんて力だよ!!今にも私の事を担ぎ出しそうなんだけど!人攫いじゃん!完全に人攫いじゃん!!
んんんん!?西の空にあの子がいる!よし、かくなる上は……!
「あっさつまいもが東の空飛んでる鬼の血鬼術かも!?」
「何っ!?」
鬼の言葉に杏寿郎さんが刀に手をかけて上を見上げる。つまり私の手は離されたわけで。
ついでにあずまも杏寿郎さんに倣って東の空を向いた。この子ってば誰かさんと同じで、さつまいもが好物だもんね!
けど、さつまいもが空を飛ぶわけがない。ましてや血鬼術で飛んでても誰に得があるの。そんなの杏寿郎さんしか引っかからないよ。
ちょっとした隙にあずまを杏寿郎さんの肩口からむんずと掴み、逃走を図る。
「!!あっこら待て朝緋!俺から逃げられると思……」
「師範はこれから多分また任務ですよー!要が西の空から飛んできてまーす!!炎柱さま頑張ってぇ〜!!」
「くっ……俺は諦めんからなー!!」
あずまの体ごと手を振り、全速力で駆ける。
杏寿郎さんの言葉は聞こえないふりをしておいた。
壱、炎柱邸に行く。
弐、長屋を借りる。
借りようとしていた長屋の一室は今回も空いているとみていいだろう。
問題は杏寿郎さんだ。もしこのことがバレたら確実に却下されてまぁた炎柱邸に住むことになってしまう。
バレないようにしつつ、さっさと煉獄家から離れて長屋に移動しよう……。
そう思っていた時期が私にもありました。
長屋が立ち並ぶ横丁についた瞬間、誰に声をかけられたと思う?
黄色と朱の御髪で炎の羽織を纏う杏寿郎さんだよ!
「見つけたぞ朝緋!本当に長屋横丁にいるとはな!」
「げぇっ!なんで杏寿郎さんがここにい…………って、あずま!?」
杏寿郎さんの肩に私の鎹烏、あずまがちょこんととまっていた。
「あずまが君の居場所を教えてくれてな!うむ!有難いことだ!」
そっぽを向いて私とは目を合わせない……。こンの裏切り者め〜!あとでシメる。
「!?」
ずいっ!上から杏寿郎さんが私の顔を覗きこんできた。圧すご……!?
「よもや、朝緋はここの長屋に住むのではなかろうなぁ?」
「ヒッ……こ、ここの長屋の一室借りる予定でいます……」
「許可しない!!!!」
尻すぼみになりながらもなんとか答えたら、耳元近くでうるさかった……。鼓膜破けちゃうでしょ!?
「生家を出るのなら、炎柱邸に住めばよかろう!正式な継子になるという話をしたばかりではないか!!」
あまりの大声にキンキンする耳を塞いだ瞬間、その手を取られた。手を外されたのではない、逃げられないよう拘束されたのだ。
「朝緋が出ていったと教えてくれたのは父上でな。藤の家紋の家ならまだしも、怪しい場所や危険な場所に住む可能性もあるから保護するようにとも言われている」
ほ、保護!?何言ってくれちゃってるの槇寿朗さぁん!!
あ、でもあれか。藤の家紋の家からは釣り書きが来てるから私が警戒して行かないと踏んだのかも。どこの藤の家から来てるかは知らないけれど。
「別に私がどこに住もうと勝手でしょ!大体任務はどうしたんですか!!」
鬼殺隊士の全力で以って、スパァンと手を振り払い一歩距離を取る。これだけじゃ逃げ切るなんて多分不可能だろうけれど、目は逃走ルートをしきりに探した。
「任務などとうに終わらせてきた!
そして継子の行動を見張るのも仕事の内!」
「ああそうです……かっ!」
今だ!掴まれそうになった肩を横にずらしてかわす。そしてそのまま走り抜ければ……!
けれど、それは見破られていた。
ドォォン!!
私の顔の横、壁を思い切り突いた杏寿郎さんの手。カクカクしながら手のひらから顔までをゆっくり確認していくと、彼は額に青筋を立てて、こちらを睨むように見据えていた。
「俺の継子だというなら炎柱邸に!住め!!」
ひいいっ!柱の全力壁ドン……!?
さっきより威圧感がすごすぎて、杏寿郎さんのお顔や圧に慣れている私でさえ、恐怖で腰が抜けてしまいそうになる。至近距離だから余計に怖い。
むしろ後ろの壁大丈夫?あ、そこだけは力の加減してあるぽい。長屋とて個人宅の外壁だもんね、よかった……。
いやよくない!現状よくない!
「い、嫌です」
「ほぉ………………?」
しゃがんで下から逃走を図っ……。
……出来なかった。
ドンッッッ!
ぎゃあっ!足の間に勢いよく膝を割り入れられた。今度は足ドンかいっ!!
「あ、足を退かしてください!煉獄家の長男ともあろう方が、お行儀が悪いですっ」
「今は行儀なんてどうでもよかろう。他に誰も見ていない」
うわほんとだ周りは長屋だらけなのに、時間帯のタイミングが悪いのか昼間なのに誰ーーも通ってない!
誰かに助けを乞いたくても無理だー!杏寿郎さんから助けてくれるような人がいるとは思えないけれどね!?
まあ……この人の生活については非常に気になるところではある。生活能力ほぼ皆無だもの。
爆発させるから火は使えないし、お料理は下手だし。通いの奉公さんがいない時のお食事はどうするんだろう。
でもここでハイ住みます!なんて軽々しくは言いたくない。絶対逃してもらえない。
「…………。炎柱邸に住むとして」
「住むのか!そうかならよかった!さあ行こう!!」
手を握られる。甘酸っぱい握り方なのに、気分はドナドナの仔牛。
「ちょ、ちょっと待って!住むとして、の続き言わせてよ!」
「むう……」
「かわいいけど、むうじゃない!
……住むとしてですよ?そこに試用期間とかってのは無いんですか?」
「試用期間とはなんだ」
聞きながらも決して離さないこの手をどうしてくれよう。相手が鬼なら日輪刀でスッパリ!なのに。
「仮住まいってこと。ある一定期間住んでみて、気に入らなかったら出て行くってやつ」
「そんなものあるわけがなかろう!
この話はこれで終いだな!さあ行くぞ!」
ぎちぎちぎち……ミシッ。
ぎゃあああ手が折れる!?力入れすぎ!引っ張りすぎ!連れてかれるぅ!!
「嫌だ!!は、離してってば、痛いっ!ちょ、師範……っ!」
「断る!」
この柱、なんて力だよ!!今にも私の事を担ぎ出しそうなんだけど!人攫いじゃん!完全に人攫いじゃん!!
んんんん!?西の空にあの子がいる!よし、かくなる上は……!
「あっさつまいもが東の空飛んでる鬼の血鬼術かも!?」
「何っ!?」
鬼の言葉に杏寿郎さんが刀に手をかけて上を見上げる。つまり私の手は離されたわけで。
ついでにあずまも杏寿郎さんに倣って東の空を向いた。この子ってば誰かさんと同じで、さつまいもが好物だもんね!
けど、さつまいもが空を飛ぶわけがない。ましてや血鬼術で飛んでても誰に得があるの。そんなの杏寿郎さんしか引っかからないよ。
ちょっとした隙にあずまを杏寿郎さんの肩口からむんずと掴み、逃走を図る。
「!!あっこら待て朝緋!俺から逃げられると思……」
「師範はこれから多分また任務ですよー!要が西の空から飛んできてまーす!!炎柱さま頑張ってぇ〜!!」
「くっ……俺は諦めんからなー!!」
あずまの体ごと手を振り、全速力で駆ける。
杏寿郎さんの言葉は聞こえないふりをしておいた。