三周目 参
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
墓参りに向かう道すがら、アルコール依存症について杏寿郎さん達に教える。槇寿朗さんの人柄が顔つきごとがらりと変わってしまったのは、お酒のせいもあるのだ。
それがよく理解できるようになったのは、最近合同任務で当たることの多い、不死川さんのおかげだった。
「誰だそれは?」
「不死川実弥さん、まだ会ったことない?最近風柱になったばかりなんだよ。何故かあの方との任務が多くてさ」
「男か!」
「男性ですね。女性の柱は今、花柱のカナエさんしかいませんから」
なるほど、杏寿郎さんはまだ風柱との任務はしてないのか。つまり、柱との任務が必要ないほど杏寿郎さんが強いということである。柱に遅れを取らぬその強さ、うらやましー。
「姉上、その風柱様の風の呼吸はお強いですか?」
「御本人の顔も相まって、鬼が震え上がるほどに強くって恐ろしいよ」
ぱっと見は凄みある顔してるよね。杏寿郎さんとは大違……い?不死川さんほどじゃないけれど杏寿郎さんが険しい顔をしている。
「む、むむむ。………、」
「どうかしました?」
「いや!柱相手ならしかたなし!!たった今気持ちを切り替えた!!そのまま話を続けてくれ!!」
「そう?……この間任務後に甘味処へ行ったのですが」
「任務後に甘味処!!」
これでもかというほど目を見開いて、私を見る。よく見たらその目は血走っていた。
「こわいこわいなんかこわい兄さんこわい」
山の中での任務が長引き気がつけば朝焼けが照らしていたある日。はらぺこの中戻った町の食事処は開いておらず、代わりに開いていた甘味処に入ったのだ。いつもなら現地解散のところを私も奢っていただけるとのことで喜んで首を縦に振った。
が、私はわかっている。不死川さんがわざと甘味処をチョイスした事を。何故私をお供に任命したのかを。
案の定、不死川さんは自然な動きでおはぎを大量に注文した。彼の好物はおはぎだ。
男一人ではさすがに頼みにくいらしいそれも、女性隊士が一緒なら頼みやすかろう。
その後、何度か任務を共にした折に、毎回甘味処に入るようになった。
元から知っていることではあったが、おはぎが好物である事は勿論、彼が稀血である事すら知らないふりをした。
逆に私が稀血である事が先に知られたおかげで、身の上話やご自身が稀血である事を教えてもらえたから万々歳だ。
お酒のことを理解したのもそんな時だった。
「酒は百薬の長とはいうが、飲み過ぎれば悪さしかしねぇ。
酒を飲みすぎるといつもより暴力的になるわ、やめようとすると禁断症状で手足が震えて気持ちが不安定になるわ。……臓腑は壊すわ」
「そうですね。臓器は蝕まれていきますから……」
「ああ。悪循環でいいことねえ。あんなもん、嗜む程度でいいのさ。金ばっかかかって大した栄養にもならねぇしな」
まるで見てきたかのような話ぶりで、家族に手をあげることの多かった父親のことを言っているのだとすぐにわかった。
槇寿朗さんはそこまでではないけれど、まだ間に合ううちにお酒をやめさせられたらいいんだけどな。
槇寿朗さんがおかしくなっている一番の原因こそあの書物と愛する妻の死だけれど、お酒の影響も大きいのだから。
「酒なんざどーでもいいから、おら、おはぎ食えェェ。ここのおはぎは半殺しで美味い」
「……はい。いただきます」
怖い顔と物言いの人ではあったが、弟や妹が多かったらしく私への態度も妹に対する物のようで。
ふわりと笑った姿を見てしまえば、もう怖い人とは思えなくなった。や、柱って意味では勿論怖いけどね!!
「ってな感じだったの」
「むう……やはり駄目だ許せん!あとで俺ともおはぎを食べよう!!」
お腹すいたのかな??
千寿郎と顔を見合わせ、私達は墓参りのあとでおはぎを作ることにした。
「……しかし、酒のせいもあるとは」
「鬼殺隊士にとって、呼吸は要となる存在。なのにお酒で体を壊すと、その呼吸もままならなくなってきます」
「己が弱くなっていくのがわかると、余計に塞ぎ込むことになるのだろうなぁ……」
三人揃ってため息を吐き出す。
「それでも。いつまでも塞ぎ込んだままなんて……」
「朝緋?」
「姉上?」
「立ち直りに何年かかってるんでしょーねっっ!!
お酒のせいにするのはいいけどさ、引きこもった手前引っ込みつかないんじゃないですかねっ!?
気持ちもわかるけど、生きてるこっちをもーちょい気にかけてくれてもいいと思う!言葉にしなよ言葉にぃ!今までがコミュ障だったってわけじゃないんだからさ!?」
「こみゅ……?
よくわからんがあまり怒るな」
どうどう、と杏寿郎さんから嗜められ、千寿郎からは落ち着かせようと手を握られる。
けれど私の中の炎はなかなか鎮火しない。
ええぃこうなったら瑠火さんの墓前で愚痴ってやる。槇寿朗さんなんて、夢枕に立ってもらってしっかり怒って貰えばいいんだ。
気持ち的にはおはぎどころじゃなかったものの、お墓参りから帰ったあと怒りに任せておはぎを大量生産した。
千寿郎の分はともかく、私が作ったおはぎはどれもご飯の粒も餡子もよくよく潰された皆殺しおはぎに変わっていた。
あっこれじゃおはぎじゃなくてぼたもちだわ!!
それがよく理解できるようになったのは、最近合同任務で当たることの多い、不死川さんのおかげだった。
「誰だそれは?」
「不死川実弥さん、まだ会ったことない?最近風柱になったばかりなんだよ。何故かあの方との任務が多くてさ」
「男か!」
「男性ですね。女性の柱は今、花柱のカナエさんしかいませんから」
なるほど、杏寿郎さんはまだ風柱との任務はしてないのか。つまり、柱との任務が必要ないほど杏寿郎さんが強いということである。柱に遅れを取らぬその強さ、うらやましー。
「姉上、その風柱様の風の呼吸はお強いですか?」
「御本人の顔も相まって、鬼が震え上がるほどに強くって恐ろしいよ」
ぱっと見は凄みある顔してるよね。杏寿郎さんとは大違……い?不死川さんほどじゃないけれど杏寿郎さんが険しい顔をしている。
「む、むむむ。………、」
「どうかしました?」
「いや!柱相手ならしかたなし!!たった今気持ちを切り替えた!!そのまま話を続けてくれ!!」
「そう?……この間任務後に甘味処へ行ったのですが」
「任務後に甘味処!!」
これでもかというほど目を見開いて、私を見る。よく見たらその目は血走っていた。
「こわいこわいなんかこわい兄さんこわい」
山の中での任務が長引き気がつけば朝焼けが照らしていたある日。はらぺこの中戻った町の食事処は開いておらず、代わりに開いていた甘味処に入ったのだ。いつもなら現地解散のところを私も奢っていただけるとのことで喜んで首を縦に振った。
が、私はわかっている。不死川さんがわざと甘味処をチョイスした事を。何故私をお供に任命したのかを。
案の定、不死川さんは自然な動きでおはぎを大量に注文した。彼の好物はおはぎだ。
男一人ではさすがに頼みにくいらしいそれも、女性隊士が一緒なら頼みやすかろう。
その後、何度か任務を共にした折に、毎回甘味処に入るようになった。
元から知っていることではあったが、おはぎが好物である事は勿論、彼が稀血である事すら知らないふりをした。
逆に私が稀血である事が先に知られたおかげで、身の上話やご自身が稀血である事を教えてもらえたから万々歳だ。
お酒のことを理解したのもそんな時だった。
「酒は百薬の長とはいうが、飲み過ぎれば悪さしかしねぇ。
酒を飲みすぎるといつもより暴力的になるわ、やめようとすると禁断症状で手足が震えて気持ちが不安定になるわ。……臓腑は壊すわ」
「そうですね。臓器は蝕まれていきますから……」
「ああ。悪循環でいいことねえ。あんなもん、嗜む程度でいいのさ。金ばっかかかって大した栄養にもならねぇしな」
まるで見てきたかのような話ぶりで、家族に手をあげることの多かった父親のことを言っているのだとすぐにわかった。
槇寿朗さんはそこまでではないけれど、まだ間に合ううちにお酒をやめさせられたらいいんだけどな。
槇寿朗さんがおかしくなっている一番の原因こそあの書物と愛する妻の死だけれど、お酒の影響も大きいのだから。
「酒なんざどーでもいいから、おら、おはぎ食えェェ。ここのおはぎは半殺しで美味い」
「……はい。いただきます」
怖い顔と物言いの人ではあったが、弟や妹が多かったらしく私への態度も妹に対する物のようで。
ふわりと笑った姿を見てしまえば、もう怖い人とは思えなくなった。や、柱って意味では勿論怖いけどね!!
「ってな感じだったの」
「むう……やはり駄目だ許せん!あとで俺ともおはぎを食べよう!!」
お腹すいたのかな??
千寿郎と顔を見合わせ、私達は墓参りのあとでおはぎを作ることにした。
「……しかし、酒のせいもあるとは」
「鬼殺隊士にとって、呼吸は要となる存在。なのにお酒で体を壊すと、その呼吸もままならなくなってきます」
「己が弱くなっていくのがわかると、余計に塞ぎ込むことになるのだろうなぁ……」
三人揃ってため息を吐き出す。
「それでも。いつまでも塞ぎ込んだままなんて……」
「朝緋?」
「姉上?」
「立ち直りに何年かかってるんでしょーねっっ!!
お酒のせいにするのはいいけどさ、引きこもった手前引っ込みつかないんじゃないですかねっ!?
気持ちもわかるけど、生きてるこっちをもーちょい気にかけてくれてもいいと思う!言葉にしなよ言葉にぃ!今までがコミュ障だったってわけじゃないんだからさ!?」
「こみゅ……?
よくわからんがあまり怒るな」
どうどう、と杏寿郎さんから嗜められ、千寿郎からは落ち着かせようと手を握られる。
けれど私の中の炎はなかなか鎮火しない。
ええぃこうなったら瑠火さんの墓前で愚痴ってやる。槇寿朗さんなんて、夢枕に立ってもらってしっかり怒って貰えばいいんだ。
気持ち的にはおはぎどころじゃなかったものの、お墓参りから帰ったあと怒りに任せておはぎを大量生産した。
千寿郎の分はともかく、私が作ったおはぎはどれもご飯の粒も餡子もよくよく潰された皆殺しおはぎに変わっていた。
あっこれじゃおはぎじゃなくてぼたもちだわ!!