三周目 参
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回復し任務に次ぐ任務の日々に明け暮れる中、瑠火さんの命日を迎えた。
連絡を取り合わずとも私も杏寿郎さんも墓参りに行くべく、生家へと戻った。私の場合は遠方の任務でもない限りは生家である煉獄家から通いで鬼殺に当たっているけども。
生家にもどり、久しぶりに会った杏寿郎さんはまた背が伸びていた。そして怒っていた。
「朝緋!俺に知らせず、勝手に退院したろう!その後も烏で連絡もしてこないとは……。
俺からの手紙にも碌に返事はないし、ひどいではないか!!」
上から覆いかぶさるようにして言葉を被せてくる。
背丈が高くなった杏寿郎さんに詰め寄られると、威圧感半端ない。思わず萎縮してしまい縮こまって答える。私?まだ成長期だもの!
「すみません、色々と任務が立て込んで……って。階級違うしいちいち師範に報告する義務ないのでは。退院の知らせだって、教えるとはお約束してません」
今ワタシ貴方ノ継子違ウヨー。
それに返事って言っても、どう返していいかわからなかった。
下手に返せば告白の了承とも取られかねない内容、といえばわかるだろうか。
今は杏寿郎さんの思いに応えられない。
でもまあ、前は『応えるわけにいかない』だったものが、『今は応えられない』に変わったほどには絆されかけている。杏寿郎さんから向けられる感情に心が揺さぶられている。
この人、地頭もいいからなあ。気がつくと言葉や行動一つで手のひらの上で転がされちゃうのよね。
さすがは未来の炎柱になるだけある。
「しかし師範などと呼びたいならそれ相応に気を回すのが普通だろう!」
ええ〜!気を回せって……。私だって無限列車の任務に行くにあたってのこと、これからの計画とか色々と考えたいことはあったのよ。
でも、まだまだ弱い私には余裕がなく、鬼殺中心に考える以外できなかったわ。
「君の動向がわからなくて俺は不安だったのだぞ!?」
「ご、ごめんなさい??」
「あの後階級は上がったのか!?怪我はしていないか!?変な男に絡まれたりはしていないか!!?」
「ヒィーーッ」
勢いのまま謝るも、杏寿郎さんに両肩を掴まれて高速で左右にガックンガックン揺さぶられた!何かリバースしちゃうやめて!?
「兄上、そのくらいにしてください。姉上が目をぐるぐる回しています」
「む、すまん!」
千寿郎の言葉は地獄で仏に会ったかのようだった。神ーーっ。
「ただいま千寿郎……助かったわ〜」
「お帰りなさい、姉上。
庭での鍛錬が終わったところだったのですが、兄上が突然走っていってしまって。
僕ももっと早く来ればよかった」
なるほど、お墓参りの前に二人とも一汗流していたのか。千寿郎の顔からはまだ顔を洗った水滴がポタポタと垂れていた。
「いいのよ。
それより、支度してお墓参りに行きましょ」
「むむ。朝緋、話は終わっては……」
「ほら、杏寿郎兄さんも準備して!」
「むぅ」
ここでは師範ではなく兄の名を呼ぼう。師範と呼ばないことで、話を終わりにするという意味合いも強い。
「……庭で何を騒いでいる」
玉砂利の音の先にいたのは槇寿朗さんだ。命日だからか酒瓶は持っていない。
だけれど、千寿郎が少し固まったのがわかった。虐められて……は、いないだろうけれど、やはり私達が鬼殺の道を歩んでからというものの、槇寿朗さんと千寿郎のみで回すこの家は、千寿郎にとって心安らぐ物ではないらしい。
少しでも心落ち着くようにと、前に出るようにして千寿郎をその背に庇う。
「ふん……帰っていたのか。死に損ない共め」
「父上!父上も一緒に母上の墓参りへ……」
「うるさい!くだらん事をするな!!死んだ者は戻ってこない、墓参りなど無駄だ!!」
死に損ない発言にも腹は立ったけれど、愛した女性の墓参りをくだらない事?無駄?
あとで一人で墓参りに行くとわかっている私はいいよ?でも、杏寿郎さんや千寿郎の前でそんな言い方は流石にないと思うの。
「杏寿郎兄さん、父様は一緒に行かないので誘うだけそれこそ無駄です。三人で行きましょう」
「いやしかしさすがにそれは……」
杏寿郎さんと千寿郎を引っ張って、向こうへ行こうとする私。
こちらに向けられた槇寿朗さんの瞳が、少し寂しそうだったなんて私は知らない。それを見たのは杏寿郎さんと千寿郎だけだった。
「父上は本当にいいのでしょうか……」
「いいんじゃない?無駄って言われたし」
「朝緋は父上にキツイな」
そうはいうけどさ、『前』もだったけど槇寿朗さんがツンデレのツン多めなのが悪いと思うのよね。
「姉上。父上はあれでもいつも御二方を心配しているんですよ。姉上が任務で帰りが遅い時などは、気もそぞろで廊下や玄関のあたりをうろうろしています」
「ふーん」
槇寿朗さんがやりそうなことだ。
人が見てないところでデレだってしょうがないのになぁ……。
「朝緋は父上にとって大事な娘だからな。口ではああ言っても、心配しているのだろう」
「それは、そうなのかもしれないけど」
「先日はお墓の掃除をしに行ったら、母上の墓前に兄上と姉上の無事をお祈りをしていました……。姉上の言う通りでした」
千寿郎も私の言う通り、槇寿朗さんが優しい人だとわかってくれたのは何より。
でも心根が優しくたって、言葉にしなきゃ伝わらない。
千寿郎が良い子で偶然にもそういう場面を目撃してくれたからよかったけど、そうじゃなかったらただの頑固でヤな親父のままだった。私が何も知らない子だったら、すぐ見放してた。
「父上が俺にもそんな事を……。なんとも嬉しいものだ。なぁ、朝緋」
「まあね。
でも自分の無事を祈ればいいのに。お酒で呼吸もままならなくなってきてるし、体力も無くなってきてるんだからさ。
今日もお酒臭かったけど、あれ本当に命日と月命日は禁酒してる?
意地っ張りも治ってないけど、あの喋り方や態度……アルコール依存症と変わらないじゃない」
嬉しさから来る言葉よりも私はお小言の方が多かった。……どこの姑だろうね。
連絡を取り合わずとも私も杏寿郎さんも墓参りに行くべく、生家へと戻った。私の場合は遠方の任務でもない限りは生家である煉獄家から通いで鬼殺に当たっているけども。
生家にもどり、久しぶりに会った杏寿郎さんはまた背が伸びていた。そして怒っていた。
「朝緋!俺に知らせず、勝手に退院したろう!その後も烏で連絡もしてこないとは……。
俺からの手紙にも碌に返事はないし、ひどいではないか!!」
上から覆いかぶさるようにして言葉を被せてくる。
背丈が高くなった杏寿郎さんに詰め寄られると、威圧感半端ない。思わず萎縮してしまい縮こまって答える。私?まだ成長期だもの!
「すみません、色々と任務が立て込んで……って。階級違うしいちいち師範に報告する義務ないのでは。退院の知らせだって、教えるとはお約束してません」
今ワタシ貴方ノ継子違ウヨー。
それに返事って言っても、どう返していいかわからなかった。
下手に返せば告白の了承とも取られかねない内容、といえばわかるだろうか。
今は杏寿郎さんの思いに応えられない。
でもまあ、前は『応えるわけにいかない』だったものが、『今は応えられない』に変わったほどには絆されかけている。杏寿郎さんから向けられる感情に心が揺さぶられている。
この人、地頭もいいからなあ。気がつくと言葉や行動一つで手のひらの上で転がされちゃうのよね。
さすがは未来の炎柱になるだけある。
「しかし師範などと呼びたいならそれ相応に気を回すのが普通だろう!」
ええ〜!気を回せって……。私だって無限列車の任務に行くにあたってのこと、これからの計画とか色々と考えたいことはあったのよ。
でも、まだまだ弱い私には余裕がなく、鬼殺中心に考える以外できなかったわ。
「君の動向がわからなくて俺は不安だったのだぞ!?」
「ご、ごめんなさい??」
「あの後階級は上がったのか!?怪我はしていないか!?変な男に絡まれたりはしていないか!!?」
「ヒィーーッ」
勢いのまま謝るも、杏寿郎さんに両肩を掴まれて高速で左右にガックンガックン揺さぶられた!何かリバースしちゃうやめて!?
「兄上、そのくらいにしてください。姉上が目をぐるぐる回しています」
「む、すまん!」
千寿郎の言葉は地獄で仏に会ったかのようだった。神ーーっ。
「ただいま千寿郎……助かったわ〜」
「お帰りなさい、姉上。
庭での鍛錬が終わったところだったのですが、兄上が突然走っていってしまって。
僕ももっと早く来ればよかった」
なるほど、お墓参りの前に二人とも一汗流していたのか。千寿郎の顔からはまだ顔を洗った水滴がポタポタと垂れていた。
「いいのよ。
それより、支度してお墓参りに行きましょ」
「むむ。朝緋、話は終わっては……」
「ほら、杏寿郎兄さんも準備して!」
「むぅ」
ここでは師範ではなく兄の名を呼ぼう。師範と呼ばないことで、話を終わりにするという意味合いも強い。
「……庭で何を騒いでいる」
玉砂利の音の先にいたのは槇寿朗さんだ。命日だからか酒瓶は持っていない。
だけれど、千寿郎が少し固まったのがわかった。虐められて……は、いないだろうけれど、やはり私達が鬼殺の道を歩んでからというものの、槇寿朗さんと千寿郎のみで回すこの家は、千寿郎にとって心安らぐ物ではないらしい。
少しでも心落ち着くようにと、前に出るようにして千寿郎をその背に庇う。
「ふん……帰っていたのか。死に損ない共め」
「父上!父上も一緒に母上の墓参りへ……」
「うるさい!くだらん事をするな!!死んだ者は戻ってこない、墓参りなど無駄だ!!」
死に損ない発言にも腹は立ったけれど、愛した女性の墓参りをくだらない事?無駄?
あとで一人で墓参りに行くとわかっている私はいいよ?でも、杏寿郎さんや千寿郎の前でそんな言い方は流石にないと思うの。
「杏寿郎兄さん、父様は一緒に行かないので誘うだけそれこそ無駄です。三人で行きましょう」
「いやしかしさすがにそれは……」
杏寿郎さんと千寿郎を引っ張って、向こうへ行こうとする私。
こちらに向けられた槇寿朗さんの瞳が、少し寂しそうだったなんて私は知らない。それを見たのは杏寿郎さんと千寿郎だけだった。
「父上は本当にいいのでしょうか……」
「いいんじゃない?無駄って言われたし」
「朝緋は父上にキツイな」
そうはいうけどさ、『前』もだったけど槇寿朗さんがツンデレのツン多めなのが悪いと思うのよね。
「姉上。父上はあれでもいつも御二方を心配しているんですよ。姉上が任務で帰りが遅い時などは、気もそぞろで廊下や玄関のあたりをうろうろしています」
「ふーん」
槇寿朗さんがやりそうなことだ。
人が見てないところでデレだってしょうがないのになぁ……。
「朝緋は父上にとって大事な娘だからな。口ではああ言っても、心配しているのだろう」
「それは、そうなのかもしれないけど」
「先日はお墓の掃除をしに行ったら、母上の墓前に兄上と姉上の無事をお祈りをしていました……。姉上の言う通りでした」
千寿郎も私の言う通り、槇寿朗さんが優しい人だとわかってくれたのは何より。
でも心根が優しくたって、言葉にしなきゃ伝わらない。
千寿郎が良い子で偶然にもそういう場面を目撃してくれたからよかったけど、そうじゃなかったらただの頑固でヤな親父のままだった。私が何も知らない子だったら、すぐ見放してた。
「父上が俺にもそんな事を……。なんとも嬉しいものだ。なぁ、朝緋」
「まあね。
でも自分の無事を祈ればいいのに。お酒で呼吸もままならなくなってきてるし、体力も無くなってきてるんだからさ。
今日もお酒臭かったけど、あれ本当に命日と月命日は禁酒してる?
意地っ張りも治ってないけど、あの喋り方や態度……アルコール依存症と変わらないじゃない」
嬉しさから来る言葉よりも私はお小言の方が多かった。……どこの姑だろうね。