三周目 参
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ぷいと顔を背けてから元に戻すと、今度は目の前に稲荷寿司が差し出されていた。
こっくりと甘いお揚げの香りが鼻腔を刺激する……。
「えっと……さすがにお稲荷さんは自分で食べられますよ」
「朝緋は腕を怪我しているだろう?箸が持てん筈だ」
「怪我してたって腕は動くから箸くらい持てます。大体、お稲荷さんは箸なくても手でつまんで食べられるじゃないですか」
むにむにツンツンと唇にくっつけてこないで〜。あ〜〜汁だけで既に美味しい〜〜〜。
「テカテカして美味そうだな」
「なら師範が食べていいですよ」
「テカテカして美味そうなのは君の唇だぞ」
「!?」
稲荷寿司の油脂分で光る唇に、ギラついた視線を注がれ息がつまる思い。
「わーお稲荷さん嬉しいーあーんするので食べさせてー」
「素直でよろしい!」
一息で言い切ったあと、にっこり笑顔で好物を口に入れてもらった。
まろやかでコク深い甘さが口に広がる。ンー幸せ〜。
なんだかんだ言ってても、杏寿郎さんへの警戒心もなくなってしまいそうで。絆されそう……。胃袋から駄目にされるほどには、好物に目がない私。
大人しく幸せの味を次々餌付けされ……こほん。甘受していると、しのぶがひょこりと部屋を覗いた。背後に鬼のオーラを背負って。
「煉獄さんは今夜任務が入っていましたよね?何故まだこんなところにいるのですか?出てってください」
え。任務あるの?ここ来てたら休む暇ないじゃん……。
そう思いながら、目の前で繰り広げられるやりとりをオロオロ見守る。
「胡蝶妹!だがまだ来たばかりだぞ!」
「時間を計っていましたが煉獄さんは半刻以上滞在しています」
「よもや……」
半刻って一時間だよね。たしかにそれくらいの時間経ってるかも……。アイスクリームと稲荷寿司のくだりでかなり時間とったし。
「むう!ならばまた任務後に寄る!!」
「声もうるさいので来ないでください」
「うるさくしなければ来てもいいだろうか!」
「すでに声が大きいので却下です。患者さんが休まりません」
杏寿郎さん、めっちゃ迷惑って言われてるぅ〜!しのぶったら辛辣だなぁ……。
口を尖らせて不満そうにする杏寿郎さんの袖をくいと引っ張り、こちらを向かせる。
「師範。任務があるのなら私のところに来ないで、夜に備えてしっかりお休みしなきゃ駄目じゃないですか。それに任務先が遠方なら早めに行かなくちゃいけませんよ」
「朝緋まで……。俺の見舞いは迷惑だったろうか」
「ううん。お見舞いの品は嬉しかったけど、一番嬉しいのは貴方が無事でいることなんです。ちゃんと休んで万全な状態で任務に励んでほしい」
これは本当のことだ。鬼殺隊士たるもの、休める時に休まねばならないのは杏寿郎さんだってわかってる筈なのに。寝不足や休息不足で鬼殺に挑んで、万が一のことがあったらどうするの。
なのにだ。それが恋愛感情からかそれとも先輩としての責任からかはわからないけれど、杏寿郎さんはご自身のことより私のことを優先している。
「そうか。
だが俺は朝緋の顔を見なくてはよく眠れん。食事も喉を通らん」
いや貴方私の顔見なくても普段は任務行けてるじゃんしっかり眠れてるしご飯もりもりおかわりして食べてるじゃん。私が知らないとでも?
「せめて朝緋が退院するまでは通わせてもらいたい!!退院の時には連絡がほしい!」
「頭の隅に置いときますね」
その願いはしのぶも私も聞き入れず、私は結局杏寿郎さんに何も伝えずに退院した。
とにかく鬼殺に集中してほしい一心で。
こっくりと甘いお揚げの香りが鼻腔を刺激する……。
「えっと……さすがにお稲荷さんは自分で食べられますよ」
「朝緋は腕を怪我しているだろう?箸が持てん筈だ」
「怪我してたって腕は動くから箸くらい持てます。大体、お稲荷さんは箸なくても手でつまんで食べられるじゃないですか」
むにむにツンツンと唇にくっつけてこないで〜。あ〜〜汁だけで既に美味しい〜〜〜。
「テカテカして美味そうだな」
「なら師範が食べていいですよ」
「テカテカして美味そうなのは君の唇だぞ」
「!?」
稲荷寿司の油脂分で光る唇に、ギラついた視線を注がれ息がつまる思い。
「わーお稲荷さん嬉しいーあーんするので食べさせてー」
「素直でよろしい!」
一息で言い切ったあと、にっこり笑顔で好物を口に入れてもらった。
まろやかでコク深い甘さが口に広がる。ンー幸せ〜。
なんだかんだ言ってても、杏寿郎さんへの警戒心もなくなってしまいそうで。絆されそう……。胃袋から駄目にされるほどには、好物に目がない私。
大人しく幸せの味を次々餌付けされ……こほん。甘受していると、しのぶがひょこりと部屋を覗いた。背後に鬼のオーラを背負って。
「煉獄さんは今夜任務が入っていましたよね?何故まだこんなところにいるのですか?出てってください」
え。任務あるの?ここ来てたら休む暇ないじゃん……。
そう思いながら、目の前で繰り広げられるやりとりをオロオロ見守る。
「胡蝶妹!だがまだ来たばかりだぞ!」
「時間を計っていましたが煉獄さんは半刻以上滞在しています」
「よもや……」
半刻って一時間だよね。たしかにそれくらいの時間経ってるかも……。アイスクリームと稲荷寿司のくだりでかなり時間とったし。
「むう!ならばまた任務後に寄る!!」
「声もうるさいので来ないでください」
「うるさくしなければ来てもいいだろうか!」
「すでに声が大きいので却下です。患者さんが休まりません」
杏寿郎さん、めっちゃ迷惑って言われてるぅ〜!しのぶったら辛辣だなぁ……。
口を尖らせて不満そうにする杏寿郎さんの袖をくいと引っ張り、こちらを向かせる。
「師範。任務があるのなら私のところに来ないで、夜に備えてしっかりお休みしなきゃ駄目じゃないですか。それに任務先が遠方なら早めに行かなくちゃいけませんよ」
「朝緋まで……。俺の見舞いは迷惑だったろうか」
「ううん。お見舞いの品は嬉しかったけど、一番嬉しいのは貴方が無事でいることなんです。ちゃんと休んで万全な状態で任務に励んでほしい」
これは本当のことだ。鬼殺隊士たるもの、休める時に休まねばならないのは杏寿郎さんだってわかってる筈なのに。寝不足や休息不足で鬼殺に挑んで、万が一のことがあったらどうするの。
なのにだ。それが恋愛感情からかそれとも先輩としての責任からかはわからないけれど、杏寿郎さんはご自身のことより私のことを優先している。
「そうか。
だが俺は朝緋の顔を見なくてはよく眠れん。食事も喉を通らん」
いや貴方私の顔見なくても普段は任務行けてるじゃんしっかり眠れてるしご飯もりもりおかわりして食べてるじゃん。私が知らないとでも?
「せめて朝緋が退院するまでは通わせてもらいたい!!退院の時には連絡がほしい!」
「頭の隅に置いときますね」
その願いはしのぶも私も聞き入れず、私は結局杏寿郎さんに何も伝えずに退院した。
とにかく鬼殺に集中してほしい一心で。