三周目 参
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「朝緋!!」
廃寺から出ると杏寿郎さんがすぐに走り寄ってきた。
「鬼は討伐できたようで感心感し……、な、なんだその手拭いは!!血みどろだぞ!?」
鬼の討伐成功を喜んでくれる……と思いきや、腕の手拭いを見て目を大きく見開いていた。
手で押さえている手拭いを取り去ろうとしたので、さっと避ける。
「鬼の血鬼術で今もなお針が腕を貫通している状態です。下手に抜けば大量出血は免れません」
「すまん!触らないよう気をつける!!」
そういいながらも心配そうに、傷がある付近を焼き切れそうなほどじっと見つめてくる。
あんまり見られたら穴が開いちゃ……いや、穴空いてるんだったわ。
「大元は斬ったのなら大丈夫だとは思うが、万が一がないとも言い切れない。もしその針とやらに毒でも仕込まれていたら大変だ。
治療しに行こう!」
あ、杏寿郎さんも同じことを考えたんだね。
隊士を治療してくれる蝶屋敷の存在はすでに聞いている。だから私もこのまま急いで蝶屋敷に向かう予定でいた。
廃寺とはいえ中には鬼に食われていた人間の亡骸があるし、あとのことは隠の皆さんに任せよう。報告書も後日書けばいい。
「太陽に当てて鬼の針が消えるのも困るので、そのつも」
一つも揺れはしなかったけれど、体がふぅわりと浮いた。
「りぃッ!?」
見上げれば杏寿郎さんのドアップ。背中と膝裏に回る腕。
これはいわゆる、お 姫 様 抱 っ こ、というやつでは!?
「な、何して……」
「何とは?蝶屋敷までこうして運ぼうと思ってな!」
「は、
はあああ!?自分で歩けますけど!怪我したのは足じゃなくって腕ですよ!?過保護過ぎー!杏じゅろさ、いや師範!貴方にはすぐにでも他の任務が来るでしょうが!?」
「何を言っている!君が相手なのだから過保護になるに決まっているだろう!!
それにいくら君よりも階級が上だからといって俺の階級はまだ下の方だから今すぐに任務が来たりはしない!そもそもこの任務で本日は終いだ。お館様にそうしたいと申し出たら快く了承してくださった!!」
ええええお館様なに贔屓してくれちゃってるのーー!?将来有望どころか未来の炎柱様だからわがまま聞いてるんじゃないでしょうね!?
「朝緋は速い。が、まだまだ俺よりは遅い。そして今は腕を気にしてか、より足が遅くなるはずだ。
俺が運んだ方が早かろう?」
私を抱き上げたままの至近距離。
そしてあたたかくも静かな声音で言われれば、すっと耳に心地よく入ってきて安心ができて……。
ああ、もう、流されそう。
「う……でも私、重いし」
抗議代わりにぼそぼそと言ってみる。
脂肪よりも筋肉は重い。太くはないけれど、鍛錬を続けた結果そこそこの筋肉がついたこの体は、絶対普通の女の人より重いもの。
「重くなどない!
この腕の中に君がいるかと思うと、嬉しくてたまらない。俺からこの多幸感は奪わないでいただきたいな!!」
うわまぶしっ。光り輝くほどの笑顔で言われた。その笑顔の中には、私への愛しい気持ちも透けて見える。
私は何か言葉を発しようとして。
だけども、何も言えなかった。
……私は貴方を好きだと、決して言えない。言う気がない。
「大丈夫だ、決して揺らさんと約束しよう」
「それは……信頼してますけど……」
「掴まっていてくれ」
私を抱く指に力が込められた瞬間、脚を大きく踏み込んだ杏寿郎さんがものすごい速さで走り出した。すでに柱の頃の走りの片鱗を見せ、炎の軌跡が後に続いているようで。
しかし全く揺れていない。
……顔にビシビシ当たる風はすごいけど。
「わぁっ!?掴まってっていうか、捕まってるんですが!!」
杏寿郎さんは私を運びながらただ、嬉しそうに笑みを浮かべた。
そこ照れ臭そうにはにかむところと違う!
廃寺から出ると杏寿郎さんがすぐに走り寄ってきた。
「鬼は討伐できたようで感心感し……、な、なんだその手拭いは!!血みどろだぞ!?」
鬼の討伐成功を喜んでくれる……と思いきや、腕の手拭いを見て目を大きく見開いていた。
手で押さえている手拭いを取り去ろうとしたので、さっと避ける。
「鬼の血鬼術で今もなお針が腕を貫通している状態です。下手に抜けば大量出血は免れません」
「すまん!触らないよう気をつける!!」
そういいながらも心配そうに、傷がある付近を焼き切れそうなほどじっと見つめてくる。
あんまり見られたら穴が開いちゃ……いや、穴空いてるんだったわ。
「大元は斬ったのなら大丈夫だとは思うが、万が一がないとも言い切れない。もしその針とやらに毒でも仕込まれていたら大変だ。
治療しに行こう!」
あ、杏寿郎さんも同じことを考えたんだね。
隊士を治療してくれる蝶屋敷の存在はすでに聞いている。だから私もこのまま急いで蝶屋敷に向かう予定でいた。
廃寺とはいえ中には鬼に食われていた人間の亡骸があるし、あとのことは隠の皆さんに任せよう。報告書も後日書けばいい。
「太陽に当てて鬼の針が消えるのも困るので、そのつも」
一つも揺れはしなかったけれど、体がふぅわりと浮いた。
「りぃッ!?」
見上げれば杏寿郎さんのドアップ。背中と膝裏に回る腕。
これはいわゆる、お 姫 様 抱 っ こ、というやつでは!?
「な、何して……」
「何とは?蝶屋敷までこうして運ぼうと思ってな!」
「は、
はあああ!?自分で歩けますけど!怪我したのは足じゃなくって腕ですよ!?過保護過ぎー!杏じゅろさ、いや師範!貴方にはすぐにでも他の任務が来るでしょうが!?」
「何を言っている!君が相手なのだから過保護になるに決まっているだろう!!
それにいくら君よりも階級が上だからといって俺の階級はまだ下の方だから今すぐに任務が来たりはしない!そもそもこの任務で本日は終いだ。お館様にそうしたいと申し出たら快く了承してくださった!!」
ええええお館様なに贔屓してくれちゃってるのーー!?将来有望どころか未来の炎柱様だからわがまま聞いてるんじゃないでしょうね!?
「朝緋は速い。が、まだまだ俺よりは遅い。そして今は腕を気にしてか、より足が遅くなるはずだ。
俺が運んだ方が早かろう?」
私を抱き上げたままの至近距離。
そしてあたたかくも静かな声音で言われれば、すっと耳に心地よく入ってきて安心ができて……。
ああ、もう、流されそう。
「う……でも私、重いし」
抗議代わりにぼそぼそと言ってみる。
脂肪よりも筋肉は重い。太くはないけれど、鍛錬を続けた結果そこそこの筋肉がついたこの体は、絶対普通の女の人より重いもの。
「重くなどない!
この腕の中に君がいるかと思うと、嬉しくてたまらない。俺からこの多幸感は奪わないでいただきたいな!!」
うわまぶしっ。光り輝くほどの笑顔で言われた。その笑顔の中には、私への愛しい気持ちも透けて見える。
私は何か言葉を発しようとして。
だけども、何も言えなかった。
……私は貴方を好きだと、決して言えない。言う気がない。
「大丈夫だ、決して揺らさんと約束しよう」
「それは……信頼してますけど……」
「掴まっていてくれ」
私を抱く指に力が込められた瞬間、脚を大きく踏み込んだ杏寿郎さんがものすごい速さで走り出した。すでに柱の頃の走りの片鱗を見せ、炎の軌跡が後に続いているようで。
しかし全く揺れていない。
……顔にビシビシ当たる風はすごいけど。
「わぁっ!?掴まってっていうか、捕まってるんですが!!」
杏寿郎さんは私を運びながらただ、嬉しそうに笑みを浮かべた。
そこ照れ臭そうにはにかむところと違う!