三周目 参
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朽ちてブヨブヨボロボロの板張りの床は足を進める度にひどく軋み、どこもかしこも今にも抜け落ちそうだった。実際一度抜けた。
そんな床には引き摺るように血の跡が。
鬼によるものとわかっていなかったら、ただのホラー案件だ。霊障と思い込んでビビり散らしていたろう。
進む毎に血と肉の匂いが強くなってきた。むせ返る血と死の香りに、鼻が曲がりそうだ。
はてさて。お堂の最奥には、堂々と人間の亡骸を貪り食う鬼が居座っていた。人間の血肉を咀嚼するリアルな音が聞こえてきて、気分が悪かった。
「……女か」
暗がりの中、日輪刀を抜く。
刃に映る炎の煌めきを見ずともこちらの存在に気がついたろうに、私の方を一瞥したきり再び食事を再開した。
ここに鬼の天敵である鬼殺隊の隊士がいるのに襲ってこない……?杏寿郎さんが言った通りだ。
「へぇ……こっちを甘く見てるだけあるみたいね」
殺意マックスで睨みを利かせ、刀に炎の呼吸を纏わせる。これで壱ノ型・不知火をいつでも放てる。
「たしかに鬼は人間より強い力を持っているけれど、鬼になったからといって強くなったと勘違いする雑魚鬼の多いこと多いこと。
入隊試験用で藤襲山にいる鬼がお似合いだわ」
煽ってみても激昂してこない。無視されるなんて初めてのことで思わず怪訝な顔をしてしまった。
しかし攻撃を受けずに頸を落とせるならそれに越したことはないし、杏寿郎さんの手を借りるのも嫌だ。
警戒は解かないまま、先手必勝に飛び出す。
「鬼は滅してこそ!ーー炎の呼吸、壱ノ、!?」
その時視界の端でギラリと鋭いものが光る。
「は、針!?」
もはや槍にしか見えぬほど太く鋭い針が、私のいた場所に一直線に飛んできて突き刺さる。威力も高いのか、床は破壊されて割れていた。
そんなまさか。鬼からの殺意も攻撃の気配もなかったのに。
咄嗟に技の呼吸を解いてかわしたけれど、もしも貫かれていたらと思うとゾッとする。
「なかなか美味そうだな。どれ、食糧用に仕留めておくか……」
ひどく気だるげに起き上がった鬼の背丈はゆうに七尺を超えていてギョッとする。巨躯に見合わず短めな腕を地に向かって振り下ろすと同時、大量の針が降り注いだ。
「わっ、ちょ、ちょっと!?」
素早さ特化型の私なら避けるのは簡単だ。けれど次々に降ってくる大量の針に足場が消えていく。
自分の動ける範囲が少なくなってきたところで、新たな足場となる破壊された床の成れの果て……瓦礫の上へと降り立つ。
私の平衡感覚と速さ、そして軽さなら崩れることもないだろう。……ただしやがて蟲柱となるしのぶさんよりは重い。
「ちょこまか動くな……」
「動くに決まってるでしょ!」
この破壊の様子じゃ、いつ杏寿郎さんが突入してもおかしくはない。ドカドカ音もうるさいし。
私だけで仕留めなくては認めてもらえないのに……。こんな鬼一匹如きに苦戦するなんて。
ん?よく考えたら、鬼本体は動いてなくない?針が降ってくるだけで、鬼本体は一歩も歩いていない。
ならば落ちてくる針を避けつつ近づくまで。
「炎の呼吸、参ノ型ーー」
上段から斬りかかるその時だった。
ジャキッ!!
私の攻撃に気がついた鬼が体を装甲車のように丸め、飛ばしてきたものと同じ針を大量に全身から生やした!
まるでハリネズミではないか!!
けれど一度出した私の技も勢いも止まらない。何本かは確実に刺さる。
ならば。
「そのまま突っ込んで斬るのみ!気炎万象っ!!」
腕に何本もの針が刺さった。中には貫通したものもある。
けれどそれと引き換えに、私の刃は鬼に届いた。
あっけなく鬼の頸が飛部と同時に、ぶしゅりと飛び散りそしてポタポタと垂れる稀血。
私の稀血に気がついたようでその手を此方に向けて伸ばしているけれど、もうその体に頸はない。下にぽとりと落ちてあとは消えゆくだけ。
「やった、頸を落とせた……!」
これは『今回』の私の隊士としての第一歩。
杏寿郎さんを決して死なせない。あの鬼を殺す。その目標にまたひとつ歩を進めることができた。
……けれど。
「いっ……!!」
ものすごく痛い!貫通してるんだから当たり前っちゃ当たり前。まさかこの針、毒でも仕込まれてないよね??変な色になってないから大丈夫だとは思うけど……。あとで消毒しよう。
ただ、かつて杏寿郎さんのお腹に貫通していた猗窩座の腕よりマシだ。
腕に貫通していても、傷さえ治ればまた刀は持てる。鬼の懐に飛び込みつつ、攻撃を受ける位置を微調整できたおかげかな。
根本からポッキリ折れてもなお、貫通して刺さったままの針を抜こうとして……手拭いを被せて耐えた。
抜いたら大量出血が待っているもの。太陽が顔を出すまでにはまだ早いけれど、太陽にさえ当てなければ鬼の一部とはいえすぐに消えたりはしない。
あ、杏寿郎さんのお腹にあった猗窩座の腕も、同じ方法で保存すれば杏寿郎さんは助かるかもしれな…………私ったら何変なこと考えてるんだろう。
そんな都合のいいことがあるわけがない。
そんな床には引き摺るように血の跡が。
鬼によるものとわかっていなかったら、ただのホラー案件だ。霊障と思い込んでビビり散らしていたろう。
進む毎に血と肉の匂いが強くなってきた。むせ返る血と死の香りに、鼻が曲がりそうだ。
はてさて。お堂の最奥には、堂々と人間の亡骸を貪り食う鬼が居座っていた。人間の血肉を咀嚼するリアルな音が聞こえてきて、気分が悪かった。
「……女か」
暗がりの中、日輪刀を抜く。
刃に映る炎の煌めきを見ずともこちらの存在に気がついたろうに、私の方を一瞥したきり再び食事を再開した。
ここに鬼の天敵である鬼殺隊の隊士がいるのに襲ってこない……?杏寿郎さんが言った通りだ。
「へぇ……こっちを甘く見てるだけあるみたいね」
殺意マックスで睨みを利かせ、刀に炎の呼吸を纏わせる。これで壱ノ型・不知火をいつでも放てる。
「たしかに鬼は人間より強い力を持っているけれど、鬼になったからといって強くなったと勘違いする雑魚鬼の多いこと多いこと。
入隊試験用で藤襲山にいる鬼がお似合いだわ」
煽ってみても激昂してこない。無視されるなんて初めてのことで思わず怪訝な顔をしてしまった。
しかし攻撃を受けずに頸を落とせるならそれに越したことはないし、杏寿郎さんの手を借りるのも嫌だ。
警戒は解かないまま、先手必勝に飛び出す。
「鬼は滅してこそ!ーー炎の呼吸、壱ノ、!?」
その時視界の端でギラリと鋭いものが光る。
「は、針!?」
もはや槍にしか見えぬほど太く鋭い針が、私のいた場所に一直線に飛んできて突き刺さる。威力も高いのか、床は破壊されて割れていた。
そんなまさか。鬼からの殺意も攻撃の気配もなかったのに。
咄嗟に技の呼吸を解いてかわしたけれど、もしも貫かれていたらと思うとゾッとする。
「なかなか美味そうだな。どれ、食糧用に仕留めておくか……」
ひどく気だるげに起き上がった鬼の背丈はゆうに七尺を超えていてギョッとする。巨躯に見合わず短めな腕を地に向かって振り下ろすと同時、大量の針が降り注いだ。
「わっ、ちょ、ちょっと!?」
素早さ特化型の私なら避けるのは簡単だ。けれど次々に降ってくる大量の針に足場が消えていく。
自分の動ける範囲が少なくなってきたところで、新たな足場となる破壊された床の成れの果て……瓦礫の上へと降り立つ。
私の平衡感覚と速さ、そして軽さなら崩れることもないだろう。……ただしやがて蟲柱となるしのぶさんよりは重い。
「ちょこまか動くな……」
「動くに決まってるでしょ!」
この破壊の様子じゃ、いつ杏寿郎さんが突入してもおかしくはない。ドカドカ音もうるさいし。
私だけで仕留めなくては認めてもらえないのに……。こんな鬼一匹如きに苦戦するなんて。
ん?よく考えたら、鬼本体は動いてなくない?針が降ってくるだけで、鬼本体は一歩も歩いていない。
ならば落ちてくる針を避けつつ近づくまで。
「炎の呼吸、参ノ型ーー」
上段から斬りかかるその時だった。
ジャキッ!!
私の攻撃に気がついた鬼が体を装甲車のように丸め、飛ばしてきたものと同じ針を大量に全身から生やした!
まるでハリネズミではないか!!
けれど一度出した私の技も勢いも止まらない。何本かは確実に刺さる。
ならば。
「そのまま突っ込んで斬るのみ!気炎万象っ!!」
腕に何本もの針が刺さった。中には貫通したものもある。
けれどそれと引き換えに、私の刃は鬼に届いた。
あっけなく鬼の頸が飛部と同時に、ぶしゅりと飛び散りそしてポタポタと垂れる稀血。
私の稀血に気がついたようでその手を此方に向けて伸ばしているけれど、もうその体に頸はない。下にぽとりと落ちてあとは消えゆくだけ。
「やった、頸を落とせた……!」
これは『今回』の私の隊士としての第一歩。
杏寿郎さんを決して死なせない。あの鬼を殺す。その目標にまたひとつ歩を進めることができた。
……けれど。
「いっ……!!」
ものすごく痛い!貫通してるんだから当たり前っちゃ当たり前。まさかこの針、毒でも仕込まれてないよね??変な色になってないから大丈夫だとは思うけど……。あとで消毒しよう。
ただ、かつて杏寿郎さんのお腹に貫通していた猗窩座の腕よりマシだ。
腕に貫通していても、傷さえ治ればまた刀は持てる。鬼の懐に飛び込みつつ、攻撃を受ける位置を微調整できたおかげかな。
根本からポッキリ折れてもなお、貫通して刺さったままの針を抜こうとして……手拭いを被せて耐えた。
抜いたら大量出血が待っているもの。太陽が顔を出すまでにはまだ早いけれど、太陽にさえ当てなければ鬼の一部とはいえすぐに消えたりはしない。
あ、杏寿郎さんのお腹にあった猗窩座の腕も、同じ方法で保存すれば杏寿郎さんは助かるかもしれな…………私ったら何変なこと考えてるんだろう。
そんな都合のいいことがあるわけがない。