三周目 参
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「え、ちょ、ええー??杏寿郎さ、いや、師範!私の初任務、師範と一緒だったの!?」
晴天の霹靂。これぞよもやよもや!でしょー。
だって一人任務か同じ癸の隊士との合同任務だと思っていたのに、行ってみれば杏寿郎さん。つい声を荒げてしまった。
「こらこら、俺の階級は君より上の己 だ!
私語は慎むように!」
「は、はい!申し訳ございません!!」
「……と、言いたいところだが」
先輩隊士である杏寿郎さんから嗜められた。
けれど、すぐに破顔して前言撤回される。
「朝緋と俺の仲だからな。他に誰もいないし、普段通りにしよう!!」
「ええっ!?い、いいのかな?それで慣れてしまうと、他の隊士のいる場で普段通りの振る舞いしてしまいそうなんですけど……」
仲がいいから。家族だから……と階級が違うもの同士の距離が近く、低い階級者が上の者に馴れ馴れしい口をきくのはどうなのだろう。
そんなことしたら隊規が乱れてしまいそうだ。柱や隊士の中には規律を慮る人物もいるし。せめて私が杏寿郎さんの正式な継子になっていたなら、緩和されるんだけどなぁ。
あ、炭治郎達は全員同じ階級だし同期同士だから別。
「君なら時と場合に合わせられるだろう?俺が保証する。
それに……俺が寂しいから普段通りにしてほしい!!」
言葉と共に両の手を取られ、繋がれた。
寂しいって、結局杏寿郎さんのわがままじゃん。
「ああはいはい、わかりましたよ!
鬼を仕留められるなら私語がどーたらこーたらなんて気にしていられないですもんね」
「うむ!そういうことだな!」
スパァン!繋がれた手は勢いよく外した。
だって鬼殺の際に手を繋いでなんていられないでしょ。
けれど繋ぎ直された手。それを外す、繋ぐの繰り返しの攻防戦が続き……。
「遊ばないで!?」
キレた。
「それにしても……だから、昨日笑ってたんですね。さては一緒の任務だってことも元から知ってました?」
「ははは!朝緋の任務先について不安だったが、よもや俺と合同任務だとはな」
「否定はしないんだ」
くす、目を細め柔らかく笑い、私の髪の毛をそっと撫でてくる杏寿郎さん。
その目には『愛しくてたまらない』と描かれているような感じすらする。そういう熱い思いに満ちた目だった。
「朝緋と同じ任務で嬉しい。
何より、君となら連携攻撃も慣れている上に息も合うからな」
そうだ。
共に鍛錬した期間は短くとも、私は杏寿郎さんとの修行の中で何度も何度も呼吸を合わせて重ね技を会得するべく励んできた。
使うものが同じ炎の呼吸に関するものなだけに、まさに息ぴったり。
「まるでおしどり夫婦のようだな!はっはっはっ!!」
けれど言うに事欠いておしどり!そんな言い方されても、実際のおしどりなんて、
「師範、知ってますか。おしどりって年毎にお相手を変えるからずっと一緒にいるわけじゃないんですよ。
お相手を毎年とっかえひっかえする夫婦だなんて、師範は随分と心が移ろいやすい人なのですね」
「よもや!?」
杏寿郎さんをからかいたくて言ってみたが別に嘘は言っていない。そうしたら頭に金の盤が落ちてきたような顔をされた。
ついでに言えば、橙色した夕陽も落ちた。
夜の闇が急速に迫り、地面に存在していた影帽子が消えていく。
「どうしますか」
しんと静まり返る朽ちた寺。ぶっちゃけ幽霊が出そうでものすごく怖いけれど、漂う気配は鬼のもののみ。
日が落ちたと同時に動き出した気配を前に、杏寿郎さんに指示を仰ぐ。
「こじんまりとした廃寺の中には逃げ場はなく、なのにこれだけ騒いでも逃げもせず隠れもしない。自分の力を過信しているのか、こちらを随分舐めているようだ。
場所がわかっているのだからこちらは鬼の頸を斬るのみだろう」
「それでも飛び出されて裏の林に逃げられたら厄介では?」
廃寺は壁も外観も全てボロボロ。鬼の力を以ってして激突すれば簡単に穴は開くし、裏手から逃げれば林の奥へと逃げられてしまう。
過信していようと逃げられれば終わりだ。
ぽむっ
その時、杏寿郎さんに肩を叩かれた。
「朝緋が仕留め損ない鬼が飛び出した時にのみ、俺が奴の頸を斬る!
君の刀で頸を落とすんだ」
私が仕留め損なう?私の刀で頸を落とす?
「えええっ!わ、私一人で!?」
「うむ。今回は君がどれほど戦えるのかを見定め、その結果で君の実力を認めるという目的もある。
けれどもできる限りは俺に頸を斬らせるな。俺が頸を斬るそれ即ち、君が鬼に負け殺されている可能性も考えなくてはならない。そのようなこと、俺は耐えられないからな」
「縁起でもない!!その辺の鬼になんて負けたりしませんよ!?」
「ああ。信じているとも。……だが朝緋には稀血もある。油断するなよ」
鬼に油断するなんて絶対にありえないことだ。
それに、鬼を殺して復讐を果たすならこちらも狩られることを常に意識しなければならない。でないと、腕をもぎ取られてしまうこともある。……あの時のように。
「さて、君のお手並み拝見といこう」
私の殺意に満ちた士気を確認し、鬼殺に入るよう背を押して促す。杏寿郎さんの目の合図と共に、私は建物内に侵入した。
晴天の霹靂。これぞよもやよもや!でしょー。
だって一人任務か同じ癸の隊士との合同任務だと思っていたのに、行ってみれば杏寿郎さん。つい声を荒げてしまった。
「こらこら、俺の階級は君より上の
私語は慎むように!」
「は、はい!申し訳ございません!!」
「……と、言いたいところだが」
先輩隊士である杏寿郎さんから嗜められた。
けれど、すぐに破顔して前言撤回される。
「朝緋と俺の仲だからな。他に誰もいないし、普段通りにしよう!!」
「ええっ!?い、いいのかな?それで慣れてしまうと、他の隊士のいる場で普段通りの振る舞いしてしまいそうなんですけど……」
仲がいいから。家族だから……と階級が違うもの同士の距離が近く、低い階級者が上の者に馴れ馴れしい口をきくのはどうなのだろう。
そんなことしたら隊規が乱れてしまいそうだ。柱や隊士の中には規律を慮る人物もいるし。せめて私が杏寿郎さんの正式な継子になっていたなら、緩和されるんだけどなぁ。
あ、炭治郎達は全員同じ階級だし同期同士だから別。
「君なら時と場合に合わせられるだろう?俺が保証する。
それに……俺が寂しいから普段通りにしてほしい!!」
言葉と共に両の手を取られ、繋がれた。
寂しいって、結局杏寿郎さんのわがままじゃん。
「ああはいはい、わかりましたよ!
鬼を仕留められるなら私語がどーたらこーたらなんて気にしていられないですもんね」
「うむ!そういうことだな!」
スパァン!繋がれた手は勢いよく外した。
だって鬼殺の際に手を繋いでなんていられないでしょ。
けれど繋ぎ直された手。それを外す、繋ぐの繰り返しの攻防戦が続き……。
「遊ばないで!?」
キレた。
「それにしても……だから、昨日笑ってたんですね。さては一緒の任務だってことも元から知ってました?」
「ははは!朝緋の任務先について不安だったが、よもや俺と合同任務だとはな」
「否定はしないんだ」
くす、目を細め柔らかく笑い、私の髪の毛をそっと撫でてくる杏寿郎さん。
その目には『愛しくてたまらない』と描かれているような感じすらする。そういう熱い思いに満ちた目だった。
「朝緋と同じ任務で嬉しい。
何より、君となら連携攻撃も慣れている上に息も合うからな」
そうだ。
共に鍛錬した期間は短くとも、私は杏寿郎さんとの修行の中で何度も何度も呼吸を合わせて重ね技を会得するべく励んできた。
使うものが同じ炎の呼吸に関するものなだけに、まさに息ぴったり。
「まるでおしどり夫婦のようだな!はっはっはっ!!」
けれど言うに事欠いておしどり!そんな言い方されても、実際のおしどりなんて、
「師範、知ってますか。おしどりって年毎にお相手を変えるからずっと一緒にいるわけじゃないんですよ。
お相手を毎年とっかえひっかえする夫婦だなんて、師範は随分と心が移ろいやすい人なのですね」
「よもや!?」
杏寿郎さんをからかいたくて言ってみたが別に嘘は言っていない。そうしたら頭に金の盤が落ちてきたような顔をされた。
ついでに言えば、橙色した夕陽も落ちた。
夜の闇が急速に迫り、地面に存在していた影帽子が消えていく。
「どうしますか」
しんと静まり返る朽ちた寺。ぶっちゃけ幽霊が出そうでものすごく怖いけれど、漂う気配は鬼のもののみ。
日が落ちたと同時に動き出した気配を前に、杏寿郎さんに指示を仰ぐ。
「こじんまりとした廃寺の中には逃げ場はなく、なのにこれだけ騒いでも逃げもせず隠れもしない。自分の力を過信しているのか、こちらを随分舐めているようだ。
場所がわかっているのだからこちらは鬼の頸を斬るのみだろう」
「それでも飛び出されて裏の林に逃げられたら厄介では?」
廃寺は壁も外観も全てボロボロ。鬼の力を以ってして激突すれば簡単に穴は開くし、裏手から逃げれば林の奥へと逃げられてしまう。
過信していようと逃げられれば終わりだ。
ぽむっ
その時、杏寿郎さんに肩を叩かれた。
「朝緋が仕留め損ない鬼が飛び出した時にのみ、俺が奴の頸を斬る!
君の刀で頸を落とすんだ」
私が仕留め損なう?私の刀で頸を落とす?
「えええっ!わ、私一人で!?」
「うむ。今回は君がどれほど戦えるのかを見定め、その結果で君の実力を認めるという目的もある。
けれどもできる限りは俺に頸を斬らせるな。俺が頸を斬るそれ即ち、君が鬼に負け殺されている可能性も考えなくてはならない。そのようなこと、俺は耐えられないからな」
「縁起でもない!!その辺の鬼になんて負けたりしませんよ!?」
「ああ。信じているとも。……だが朝緋には稀血もある。油断するなよ」
鬼に油断するなんて絶対にありえないことだ。
それに、鬼を殺して復讐を果たすならこちらも狩られることを常に意識しなければならない。でないと、腕をもぎ取られてしまうこともある。……あの時のように。
「さて、君のお手並み拝見といこう」
私の殺意に満ちた士気を確認し、鬼殺に入るよう背を押して促す。杏寿郎さんの目の合図と共に、私は建物内に侵入した。