三周目 参
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着物こそ『前』より身綺麗な状態だったけれど、そこかしこに無数の怪我をして帰ってきた私。
出迎えてくれた千寿郎も任務後に寄ってくれた杏寿郎さんも無事を喜んでくれたが、怪我の状態には二人ともかなり難色を示していた。
肩も腕も足も、大小少なからず探すたびに傷が見つかるんだものね。
「こちらにも傷が!なんと!こっちにもだ!?と思ったら、こんなところにまで!!
大好きな朝緋の体に傷を作られるとつらい。やめてくれ!
君は一体いくつの傷をこさえてきたんだ!?」
「えー、星の数ほど?……なんちゃって」
「………………俺の嫁になるから貰い手は不便しないからといってしていいことと悪いことがあるぞ」
冗談を言ったら最終的に杏寿郎さんに包帯でぐるぐる巻きにされた。ミイラ人間かな!?
とりあえず、好きだとか嫁がどうとかいう言葉は聞かなかったことにして無視しておこう。うん。
そして槇寿朗さんはというと、帰ってきた私を見るなりキレ散らかして掴みかかってきた。
こちとら怪我人ですが??
「誰が許可した!俺に黙って最終選別だと!?
俺を馬鹿にしているのか朝緋!!」
「ば、馬鹿にしているわけないです!!」
「合格しようとも構わん!任務など行かせんからな!隊士にはしない!!
お前は俺の選んだ嫁ぎ先に今すぐ行け!!」
「はぁー!?嫌です!私は隊士になるんです!!
大体なんでどこの馬の骨ともしれない殿方に嫁がなくてはいけないのですか!!」
この大正時代に何言ってるの?と思われそうだけど、好きな人じゃないと私は一緒になりたくない。
お見合い結婚も、婚儀をあげてようやく知る相手の顔も、絶対に嫌だ。
「お前がどこの馬の骨などと言葉を使うな!それは俺の台詞だ!!」
それはわかる。
私こそ相手からしたらどこの馬の骨だ。
煉獄家に長年いるし、私の元々の苗字も煉獄だけど、この家の者との直接の血の繋がりは私にないのだから。
「……お前なぞ鬼に食われて終わりだ。だがもういい俺は知らん。
この親不孝者が……勝手にしろ!」
「わぁ!?」
ガシャン!!
まーた酒瓶投げつけられた。
物は大切にしてください。誰が汚れた床を掃除すると思って??
そう、『前』と同じ大層な御立腹具合で、一応の報告を兼ねて挨拶したらこれだよ!
杏寿郎さんに引き続いて私まで鬼殺隊に入ってしまったから怒ってるんだろうなぁ。
たしかにそうだよね。どんなに鬼殺隊と関わらないように育てようとしても、子供達は勝手に鬼殺隊に入ってしまったんだから。
でもご自分だってなんだかんだで鬼殺隊の柱を務めてるし、途中までは鬼殺隊に入るよう杏寿郎さんを教育していたのだもの。そう簡単に鬼殺隊と関わらない生活だなんて、この煉獄家にいれば無理に決まってる。
ましてや、杏寿郎さんは瑠火さんの意志を継いでいるのだ。
弱き人を鬼から守るべく……槇寿朗さん、柱として誇り高き貴方の背を追うに決まっているでしょ?
ただ、きっとまだしばらくは槇寿朗さんにお小言は言われるし、事あるごとに鬼殺隊をやめるよう言われ続けるのだろう。それこそ、顔を合わせる度に。
……少なくともあの、無限列車の任務の頃までは。
早めに家を出て行こうかしら?なんて、心にもないことを思ってみる。でも千寿郎が槇寿朗さんに手を挙げられでもしないか不安なので、まだ家は出ませーん。
私が最終選別に行っている間も、言葉の暴力はあったらしい。手を出さなければ暴力じゃない?そんなわけない。
その後は今までと同じ通りに日輪刀が届いた。
最終選別で使わせていただいた薄い炎の刃文も綺麗だったが、さすがは自分の刀。杏寿郎さんの赤い日輪刀と引けを取らないくらい美しかった。青くて赤い独特の刃文が太陽の光に煌めいていた。
おかえり、私の日輪刀
それと、私の日輪刀を鍛えた刀鍛冶である鋼鐵塚が例によってプロポーズ擬きとも取れる発言をした時だけれど……。
これもまた『前』と一緒で、杏寿郎さんがムキになって反論していた。あの後最終的に恋仲になった私だからわかる。これは杏寿郎さんの悋気だ。
でもこんなところまで一緒とはね。
あとの基本的な流れは変わらないらしく隊服の流れも同じ、いただいた纏う羽織も同じ柄で一部槇寿朗さんが色を決めて手配したものだ。
女性らしい淡いグラデーションの色合いに、苛烈さを感じる激しく燃え盛る赤と青の私の炎。
これは私のことをよくわかっている槇寿朗さんにしか作れない色だ。
槇寿朗さん、口では憎まれ口を散々叩くけれど、その行動の根底にある物はは私にしっかりバレてますよ……。
なんなら、杏寿郎さんや千寿郎にもね。知らぬは本人ばかり、というやつだ。
普通に渡してくれればいいのになあ。
サンタさんみたいな真似しないでほしい。
あ、隊服の流れも一緒だったので、もちろんのこと前田呉服店に杏寿郎さんと訪れました。
露出の激しい隊服や洋服は、今回私も一緒になって杏寿郎さんと共に庭先を借りて燃やした。ついでに芋を焼けばよかったほど、炎は大きく燃え上がり、比例して前田さんがさめざめと泣いていた。
……ま、一部の洋服は貰い受けましたよ?
前田さんに後生だから着てください!と言われ着た時に、杏寿郎さんがよく似合う!と言ってくれたからではないからね!?
断じて違いますから!!
そしてとうとう初任務が言い渡された。
「カァー!カァー!朝緋チャン!初任務ダヨ!明日ノ夕暮レ、北北東!北北東!山ニアル廃寺ニ向カエ!!廃寺ニ向カエ!!」
鎹烏のあずまから言い渡された瞬間には偶然にも杏寿郎さんが手土産を持って帰ってきていたのだけれど、何故だろう……彼はにこにこと笑っていた。それも、何かを必死でこらえるような笑い方で。
「師範は何笑ってるんですか」
「いやなに、大したことではないから気にするな!!ただの思い出し笑いだ!!」
「??」
杏寿郎さんが思い出し笑い?珍しい……。しかもこのタイミングで?変なの……。
一晩ずっとそのことが引っかかり、不思議に思いながらも指定の場所……山の廃寺にたどり着いたと思ったら、そこにはまさかの人物がいた。
『前』の時の初任務の隊士?いいえ違う。
獪岳?それも違う。
他の柱でもないし、槇寿朗さんでもない。
「今日はよろしく頼む、煉獄朝緋隊士!」
そう言って笑いかけてきたのは、燃えるような黄と朱の髪、太陽や向日葵のように美しい色彩の目、そして元気いっぱい吊り上がった眉と口角の。
杏寿郎さんだった。
出迎えてくれた千寿郎も任務後に寄ってくれた杏寿郎さんも無事を喜んでくれたが、怪我の状態には二人ともかなり難色を示していた。
肩も腕も足も、大小少なからず探すたびに傷が見つかるんだものね。
「こちらにも傷が!なんと!こっちにもだ!?と思ったら、こんなところにまで!!
大好きな朝緋の体に傷を作られるとつらい。やめてくれ!
君は一体いくつの傷をこさえてきたんだ!?」
「えー、星の数ほど?……なんちゃって」
「………………俺の嫁になるから貰い手は不便しないからといってしていいことと悪いことがあるぞ」
冗談を言ったら最終的に杏寿郎さんに包帯でぐるぐる巻きにされた。ミイラ人間かな!?
とりあえず、好きだとか嫁がどうとかいう言葉は聞かなかったことにして無視しておこう。うん。
そして槇寿朗さんはというと、帰ってきた私を見るなりキレ散らかして掴みかかってきた。
こちとら怪我人ですが??
「誰が許可した!俺に黙って最終選別だと!?
俺を馬鹿にしているのか朝緋!!」
「ば、馬鹿にしているわけないです!!」
「合格しようとも構わん!任務など行かせんからな!隊士にはしない!!
お前は俺の選んだ嫁ぎ先に今すぐ行け!!」
「はぁー!?嫌です!私は隊士になるんです!!
大体なんでどこの馬の骨ともしれない殿方に嫁がなくてはいけないのですか!!」
この大正時代に何言ってるの?と思われそうだけど、好きな人じゃないと私は一緒になりたくない。
お見合い結婚も、婚儀をあげてようやく知る相手の顔も、絶対に嫌だ。
「お前がどこの馬の骨などと言葉を使うな!それは俺の台詞だ!!」
それはわかる。
私こそ相手からしたらどこの馬の骨だ。
煉獄家に長年いるし、私の元々の苗字も煉獄だけど、この家の者との直接の血の繋がりは私にないのだから。
「……お前なぞ鬼に食われて終わりだ。だがもういい俺は知らん。
この親不孝者が……勝手にしろ!」
「わぁ!?」
ガシャン!!
まーた酒瓶投げつけられた。
物は大切にしてください。誰が汚れた床を掃除すると思って??
そう、『前』と同じ大層な御立腹具合で、一応の報告を兼ねて挨拶したらこれだよ!
杏寿郎さんに引き続いて私まで鬼殺隊に入ってしまったから怒ってるんだろうなぁ。
たしかにそうだよね。どんなに鬼殺隊と関わらないように育てようとしても、子供達は勝手に鬼殺隊に入ってしまったんだから。
でもご自分だってなんだかんだで鬼殺隊の柱を務めてるし、途中までは鬼殺隊に入るよう杏寿郎さんを教育していたのだもの。そう簡単に鬼殺隊と関わらない生活だなんて、この煉獄家にいれば無理に決まってる。
ましてや、杏寿郎さんは瑠火さんの意志を継いでいるのだ。
弱き人を鬼から守るべく……槇寿朗さん、柱として誇り高き貴方の背を追うに決まっているでしょ?
ただ、きっとまだしばらくは槇寿朗さんにお小言は言われるし、事あるごとに鬼殺隊をやめるよう言われ続けるのだろう。それこそ、顔を合わせる度に。
……少なくともあの、無限列車の任務の頃までは。
早めに家を出て行こうかしら?なんて、心にもないことを思ってみる。でも千寿郎が槇寿朗さんに手を挙げられでもしないか不安なので、まだ家は出ませーん。
私が最終選別に行っている間も、言葉の暴力はあったらしい。手を出さなければ暴力じゃない?そんなわけない。
その後は今までと同じ通りに日輪刀が届いた。
最終選別で使わせていただいた薄い炎の刃文も綺麗だったが、さすがは自分の刀。杏寿郎さんの赤い日輪刀と引けを取らないくらい美しかった。青くて赤い独特の刃文が太陽の光に煌めいていた。
おかえり、私の
それと、私の日輪刀を鍛えた刀鍛冶である鋼鐵塚が例によってプロポーズ擬きとも取れる発言をした時だけれど……。
これもまた『前』と一緒で、杏寿郎さんがムキになって反論していた。あの後最終的に恋仲になった私だからわかる。これは杏寿郎さんの悋気だ。
でもこんなところまで一緒とはね。
あとの基本的な流れは変わらないらしく隊服の流れも同じ、いただいた纏う羽織も同じ柄で一部槇寿朗さんが色を決めて手配したものだ。
女性らしい淡いグラデーションの色合いに、苛烈さを感じる激しく燃え盛る赤と青の私の炎。
これは私のことをよくわかっている槇寿朗さんにしか作れない色だ。
槇寿朗さん、口では憎まれ口を散々叩くけれど、その行動の根底にある物はは私にしっかりバレてますよ……。
なんなら、杏寿郎さんや千寿郎にもね。知らぬは本人ばかり、というやつだ。
普通に渡してくれればいいのになあ。
サンタさんみたいな真似しないでほしい。
あ、隊服の流れも一緒だったので、もちろんのこと前田呉服店に杏寿郎さんと訪れました。
露出の激しい隊服や洋服は、今回私も一緒になって杏寿郎さんと共に庭先を借りて燃やした。ついでに芋を焼けばよかったほど、炎は大きく燃え上がり、比例して前田さんがさめざめと泣いていた。
……ま、一部の洋服は貰い受けましたよ?
前田さんに後生だから着てください!と言われ着た時に、杏寿郎さんがよく似合う!と言ってくれたからではないからね!?
断じて違いますから!!
そしてとうとう初任務が言い渡された。
「カァー!カァー!朝緋チャン!初任務ダヨ!明日ノ夕暮レ、北北東!北北東!山ニアル廃寺ニ向カエ!!廃寺ニ向カエ!!」
鎹烏のあずまから言い渡された瞬間には偶然にも杏寿郎さんが手土産を持って帰ってきていたのだけれど、何故だろう……彼はにこにこと笑っていた。それも、何かを必死でこらえるような笑い方で。
「師範は何笑ってるんですか」
「いやなに、大したことではないから気にするな!!ただの思い出し笑いだ!!」
「??」
杏寿郎さんが思い出し笑い?珍しい……。しかもこのタイミングで?変なの……。
一晩ずっとそのことが引っかかり、不思議に思いながらも指定の場所……山の廃寺にたどり着いたと思ったら、そこにはまさかの人物がいた。
『前』の時の初任務の隊士?いいえ違う。
獪岳?それも違う。
他の柱でもないし、槇寿朗さんでもない。
「今日はよろしく頼む、煉獄朝緋隊士!」
そう言って笑いかけてきたのは、燃えるような黄と朱の髪、太陽や向日葵のように美しい色彩の目、そして元気いっぱい吊り上がった眉と口角の。
杏寿郎さんだった。