幕間 ノ 伍
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あの時から杏の匂いは私の好きな香りの一つとなった。
庭にもさつまいもや野菜のほかに、生で食べられる杏の木を信濃から移植したくらいだ。もちろん、瓊姿香のこの匂いも好き。だって、杏寿郎さんが私のことを思って買ってくれたものだもの。
何度同じ時を繰り返そうと、杏寿郎さんが買わなかろうと、私個人で買ってくるくらいそれからの私には大切なものになるくらいで。
ふと鏡の中の杏寿郎さんが笑みを浮かべる。
「よもや君と同じ香りになろうとはな」
「嫌です?これ、女性用ですし殿方がつけるにはちょっと微妙ですよね。この匂い、落としましょうか?」
よく考えたらそうだった。瓊姿香は女性用の鬢付油だから、女性受けする香りであり男性が身に纏って嬉しいような香りではない。
それが杏寿郎さん。柱から香るとなると……。
「いやいい。今から匂いを落とすということは、一度洗い落とさねばならなくなる。そこまでの時間はかけたくない。朝緋にだって予定はあろう?」
「非番というわけでもないですし、いつ任務が入るかわかりません。なので特に予定は作ってないですね。
でも、洗うとなるとまた一から髪を整えなくてはなりませんから時間はかかるかと」
「ならこのままでよかろう。それに……」
「?」
また鏡の中の杏寿郎さんと目があった。
「朝緋の香りと揃いとはなかなかどうして、嬉しいものでな」
「他の隊士さんに勘違いされちゃいますよ」
私の匂いと同じものだと、少なくとも柱の誰かしらは気がつくことだろう。しのぶさんとか宇髄さんとか、あのあたりはその辺も聡い。
「勘違いさせておけばいいだろう。朝緋の虫除けにもなる」
「虫除けですか?」
梅雨が終われば夏だもんねえ。雨季の後ってボウフラの生息地が増えるから、どうやったって蚊は大量発生する。
かゆいの大嫌い。鬼の出現を山の中で待つ時なんか、蚊に刺されるだけで生存確率が下がる気がする。
稀血は関係ない。痒さで気が散り、鬼殺に影響が出る!
痒さとは痛みよりも我慢の利かない厄介な症状だ。
「蚊が出るのいやですもんねぇ」
「蚊とな!?……ああまあ、蚊も嫌なものだからな」
その後すごく時間がかかったが、杏寿郎さんの髪の毛は爆発ヘアーからサラサラヘアーに変わった。
世にも珍しい、ツヤサラストレート煉獄杏寿郎の完成だ。もちろん、これでおしまいではないけれど。
サラッサラの艶々だけど、ワックス代わりの美男葛を使えばあら不思議、いつもの杏寿郎さんだ。
「はい、おーわり!」
杏寿郎さんが鏡の中の自分をまじまじと観察する。目ぇでっか!でも360度どこから見てもかっこいい。
「おお……いつもと寸分違わぬ俺ではないか!」
「はい、いつもと同じ結び方ですよ。かっこいい炎柱様の出来上がりです」
達成感がすごくて満足気に微笑めば、くるりとこちらを向いた杏寿郎さんに両の手を握られた。
「ありがとう!助かった!!これで髪の心配をせず会議に行けるな!!
終わってもし俺にも朝緋にも任務が入らずいたら、さっそくお礼のあいすくりんを食べに行こう!!」
「えっほんとですか!嬉しいです!!」
私は好物に目がない。色気より食い気の鬼殺隊士だ。
「ああ!男に二言はない!!
だからその時は俺が前に贈った着物を着て、俺が贈ったものを身につけて、待っていてくれると嬉しい!」
全身杏寿郎さんコーデか……じゃあ箪笥から着物とか引っ張り出さないとだめかもしれな……、
「わきゃ、」
手を引っ張られ落ち着いたところは、杏寿郎さんの胸の中。
杏寿郎さんという箱の中に押し込められるかのように、ぎゅうぎゅうと抱き込まれ全身ですりすりされる。
「えっ、きょっ杏寿郎さ、師範!?」
「さて、こうすることで俺の匂いが君に移っているといいのだが……」
「やっ、くすぐった……っ、んぁッ!?」
髪の中に顔を入れられ、耳元や首筋に鼻先がつけられ、すんすんと嗅がれた。
ちゅく、
そしてあろうことか、首を思い切り吸われる。それだけで全身まで痺れる感覚。
この感じ久しぶりすぎる……!
女の部分がありえないくらいびくびくと反応するのを抑えるのがやっとで、つい変な声が出てしまった。
身を捩って耐えることしばらく、ようやく杏寿郎さんが私の首から顔を離した。
……ただし抱きしめられる行為は続いているし、首はジンジンしてる。絶対、痕ついてるわ。
「うむ、多少は俺の匂いになったな。
瓊姿香の香りと俺の匂いが朝緋の匂いに混ざって、なんとも手放したくなくなる香りだ……」
「あの、離してくださいませんか……?」
なんか下の方で固いものも私の足に当たってるし……。とは、間違っても指摘しない。
「これで虫除けにはなると思うが、朝緋もほかに目移りしてくれるなよ。
わかったな?」
「は、はひ……」
そう耳元に囁かれて、誰にも目移りなんかできっこない。
庭にもさつまいもや野菜のほかに、生で食べられる杏の木を信濃から移植したくらいだ。もちろん、瓊姿香のこの匂いも好き。だって、杏寿郎さんが私のことを思って買ってくれたものだもの。
何度同じ時を繰り返そうと、杏寿郎さんが買わなかろうと、私個人で買ってくるくらいそれからの私には大切なものになるくらいで。
ふと鏡の中の杏寿郎さんが笑みを浮かべる。
「よもや君と同じ香りになろうとはな」
「嫌です?これ、女性用ですし殿方がつけるにはちょっと微妙ですよね。この匂い、落としましょうか?」
よく考えたらそうだった。瓊姿香は女性用の鬢付油だから、女性受けする香りであり男性が身に纏って嬉しいような香りではない。
それが杏寿郎さん。柱から香るとなると……。
「いやいい。今から匂いを落とすということは、一度洗い落とさねばならなくなる。そこまでの時間はかけたくない。朝緋にだって予定はあろう?」
「非番というわけでもないですし、いつ任務が入るかわかりません。なので特に予定は作ってないですね。
でも、洗うとなるとまた一から髪を整えなくてはなりませんから時間はかかるかと」
「ならこのままでよかろう。それに……」
「?」
また鏡の中の杏寿郎さんと目があった。
「朝緋の香りと揃いとはなかなかどうして、嬉しいものでな」
「他の隊士さんに勘違いされちゃいますよ」
私の匂いと同じものだと、少なくとも柱の誰かしらは気がつくことだろう。しのぶさんとか宇髄さんとか、あのあたりはその辺も聡い。
「勘違いさせておけばいいだろう。朝緋の虫除けにもなる」
「虫除けですか?」
梅雨が終われば夏だもんねえ。雨季の後ってボウフラの生息地が増えるから、どうやったって蚊は大量発生する。
かゆいの大嫌い。鬼の出現を山の中で待つ時なんか、蚊に刺されるだけで生存確率が下がる気がする。
稀血は関係ない。痒さで気が散り、鬼殺に影響が出る!
痒さとは痛みよりも我慢の利かない厄介な症状だ。
「蚊が出るのいやですもんねぇ」
「蚊とな!?……ああまあ、蚊も嫌なものだからな」
その後すごく時間がかかったが、杏寿郎さんの髪の毛は爆発ヘアーからサラサラヘアーに変わった。
世にも珍しい、ツヤサラストレート煉獄杏寿郎の完成だ。もちろん、これでおしまいではないけれど。
サラッサラの艶々だけど、ワックス代わりの美男葛を使えばあら不思議、いつもの杏寿郎さんだ。
「はい、おーわり!」
杏寿郎さんが鏡の中の自分をまじまじと観察する。目ぇでっか!でも360度どこから見てもかっこいい。
「おお……いつもと寸分違わぬ俺ではないか!」
「はい、いつもと同じ結び方ですよ。かっこいい炎柱様の出来上がりです」
達成感がすごくて満足気に微笑めば、くるりとこちらを向いた杏寿郎さんに両の手を握られた。
「ありがとう!助かった!!これで髪の心配をせず会議に行けるな!!
終わってもし俺にも朝緋にも任務が入らずいたら、さっそくお礼のあいすくりんを食べに行こう!!」
「えっほんとですか!嬉しいです!!」
私は好物に目がない。色気より食い気の鬼殺隊士だ。
「ああ!男に二言はない!!
だからその時は俺が前に贈った着物を着て、俺が贈ったものを身につけて、待っていてくれると嬉しい!」
全身杏寿郎さんコーデか……じゃあ箪笥から着物とか引っ張り出さないとだめかもしれな……、
「わきゃ、」
手を引っ張られ落ち着いたところは、杏寿郎さんの胸の中。
杏寿郎さんという箱の中に押し込められるかのように、ぎゅうぎゅうと抱き込まれ全身ですりすりされる。
「えっ、きょっ杏寿郎さ、師範!?」
「さて、こうすることで俺の匂いが君に移っているといいのだが……」
「やっ、くすぐった……っ、んぁッ!?」
髪の中に顔を入れられ、耳元や首筋に鼻先がつけられ、すんすんと嗅がれた。
ちゅく、
そしてあろうことか、首を思い切り吸われる。それだけで全身まで痺れる感覚。
この感じ久しぶりすぎる……!
女の部分がありえないくらいびくびくと反応するのを抑えるのがやっとで、つい変な声が出てしまった。
身を捩って耐えることしばらく、ようやく杏寿郎さんが私の首から顔を離した。
……ただし抱きしめられる行為は続いているし、首はジンジンしてる。絶対、痕ついてるわ。
「うむ、多少は俺の匂いになったな。
瓊姿香の香りと俺の匂いが朝緋の匂いに混ざって、なんとも手放したくなくなる香りだ……」
「あの、離してくださいませんか……?」
なんか下の方で固いものも私の足に当たってるし……。とは、間違っても指摘しない。
「これで虫除けにはなると思うが、朝緋もほかに目移りしてくれるなよ。
わかったな?」
「は、はひ……」
そう耳元に囁かれて、誰にも目移りなんかできっこない。