幕間 ノ 伍
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「ただいま!!」
お茶を飲んで待つこと一刻ほど。杏寿郎さんが箱を片手に帰ってきた。
……って、磯の香りがプンプンする。海でも行った??
あー、海いいなあ、杏寿郎さんと行って遊んでみたい。この時代って水着あったっけ?服のままで入るのかな……わからない。
言えば縫製係の前田さんあたり作ってくれそ……だめだあの人だけは絶対にだめだ変な水着作って持ってくる。
とか言って、任務があるから海に遊びになんていけないけれどね。
鬼のせいで鬼殺隊は年中無休のブラック企業だ。ムカつく鬼共め!!
「おかえりなさい。その箱はどうしたんです?」
「これの前にまずはこちらだ!」
そういって胸元から出てきたのは、瓊姿香と書かれた小瓶。
「これ、 鬢付油 ?」
「そうだ!
今はこのような匂い付きのものが売っているそうでな、一番効力が良いものを選んで買ってきたのだ!!」
鬢付油は椿など植物からとった油脂に、香木などの香りをつけたヘアオイルだ。
いいものは高いし、すごく良い匂いがするみたいなことを聞いた。
プレゼントされたキラキラの瓶をくるぅりと眺める。
ん?これ潤い成分も入ってそうな高いものなんだけど……!?
パチモンだとただの劣悪なオイルが入っていて、つけた時に逆に髪の毛がバサバサになったりするのだ。
ということは、三越にでも行ったかな……。こういうの置いてあるとなると、小物問屋よりデパート系の方が品揃えもいいし。
ここから結構遠いのに、任務でもない中行ってくれたのでは?それを想像して嬉しくなった。
お金についてもそうだ。
さすが柱、というか『どうせ使うなら良いものを』という方針で育った杏寿郎さんだ。
煉獄家って浪費はしないけど使う時はお金に糸目つけないもんね。
でもそれをわざわざ私如きに使うとは……。
そう思うと、嬉しくてたまらないよね。
胸がドキドキしてつらい。
「それとな、髪には海藻を食べるといいらしい。
こちらにはとろろ昆布が好物の伊黒がいるのでな、彼に美味い店を案内してもらって買ってきた!!塩蔵わかめも売っていたから買ったんだ!食おう!」
そう言って箱を開ける。
そこには塩漬けにされたわかめがみっちり入っており、その上に紙に包まれたとろろ昆布もたくさん乗せられていた。
開けるとまた、磯くさっ!!
「わー。こんなに箱いっぱいどうすんのさ」
「もちろん、俺と君が食べる!!すぐなくなるだろう!!」
「ソウデスネ」
塩漬けだし日持ちはするけれど、すぐになくなることはないと思う。
あときっと伊黒さんは杏寿郎さんに巻き込まれたのだろう、良い迷惑だ。
「……伊黒さんにはあとで私からもお礼言いますね」
「うむ!
さあ、髪につけて傷んだ箇所を治そうではないか!!」
「あはは、付けて一瞬で直るわけじゃないけどね……」
杏寿郎さんは手から小瓶を奪い取り、私の体をぐいぐい押して部屋に直行させた。
行動も早いが気も早い。
するぅりと髪をひとふさ取られ、杏寿郎さんの手によって油が塗り込まれていく。
……杏寿郎さん、ただ私の髪の毛をいじっているだけなのにすごく幸せそう。その様を鏡越しに見ていたら、笑顔の杏寿郎さんと目があった。
どきり。
常中が途切れるまではいかなかったからいいものの、胸が高鳴ってうるさい。聞こえてたら恥ずかしい……っ。
慌てて視線を逸らす。
「う、嬉しそうですね……っ」
「ああ、朝緋の髪の毛をいじるのは嬉しいし楽しい!自分の髪質とも全く違うしな!!」
「そうかなぁ。髪質は違うけどそんな変わらないと思うんですけど」
……っと、この匂い?
どこかで嗅いだことのある、爽やかで甘い匂いが鼻腔を擽る。
杏寿郎さんが追加で手の上にとろりと落とした鬢付油からだった。
「果物のような香り……」
「ああ、確か杏だったかな」
杏!!よく聞く白檀のような香りでもなく、 白薔薇でも桜でもなく、杏!!
物自体はあんず油ではないみたいだけど、でも匂いが杏……杏寿郎さんの名前と同じだ。
これではまるで杏寿郎さんに包まれているみたいではないか。
ああこれがよく明槻が言ってた『推しの匂い』ってことかぁ。
座っているから何もアクションできないけれど、ジタバタしたくなって足袋の中で足の指をきゅっと縮めた。
「ははは!君も嬉しそうで何よりだ。
……ん、良い匂いだな」
「ひゃう!?」
うなじに杏寿郎さんの指が触れた。
……だけならまだしも、するぅりと指の腹でくすぐっていった。
びくんと震え跳ねる私の体。
「髪に触っただけなのだがどうした!」
「違いますよね……?私のうなじくすぐりましたよね!?
首筋弱いんですからやめてくださ……ひゃぁぁっ!?」
またくすぐっていった!
今度は明確に、こちょこちょとだ!!
「師範〜〜っ」
「いや、反応が楽しくてな。すまんすまん!
首筋が弱いとは、朝緋はまるで鬼のようだな!!」
「鬼と一緒にするなんてひどい〜!ばかばかばか〜!!」
「わははは!!」
ポコポコ叩くも嬉しそうに笑う杏寿郎さん。
その手が正面から髪の毛に置かれ、愛おしむようにするする撫でた。
「ふ……だがこれで切らなくて済むな。朝緋の髪は今とてもさらさらしている」
「だからすぐに直るわけじゃ……」
「うーむ。この髪の毛で巻かれて眠りたいくらいだなぁ……」
くるくる指に巻き付け遊んだかと思うと、今度はご自身の首に私の髪を襟巻きのように巻いて暖を取ろうとする。
「わー、首に巻くのはだめですって!首絞まっちゃいますよ!?」
「はっはっは!!」
結局、毛先を揃える為にほんのちょっとだけ髪の先を切った。
その際また少しだけ杏寿郎さんと喧嘩になったのはいうまでもないが、それはまた別のお話。
お茶を飲んで待つこと一刻ほど。杏寿郎さんが箱を片手に帰ってきた。
……って、磯の香りがプンプンする。海でも行った??
あー、海いいなあ、杏寿郎さんと行って遊んでみたい。この時代って水着あったっけ?服のままで入るのかな……わからない。
言えば縫製係の前田さんあたり作ってくれそ……だめだあの人だけは絶対にだめだ変な水着作って持ってくる。
とか言って、任務があるから海に遊びになんていけないけれどね。
鬼のせいで鬼殺隊は年中無休のブラック企業だ。ムカつく鬼共め!!
「おかえりなさい。その箱はどうしたんです?」
「これの前にまずはこちらだ!」
そういって胸元から出てきたのは、瓊姿香と書かれた小瓶。
「これ、
「そうだ!
今はこのような匂い付きのものが売っているそうでな、一番効力が良いものを選んで買ってきたのだ!!」
鬢付油は椿など植物からとった油脂に、香木などの香りをつけたヘアオイルだ。
いいものは高いし、すごく良い匂いがするみたいなことを聞いた。
プレゼントされたキラキラの瓶をくるぅりと眺める。
ん?これ潤い成分も入ってそうな高いものなんだけど……!?
パチモンだとただの劣悪なオイルが入っていて、つけた時に逆に髪の毛がバサバサになったりするのだ。
ということは、三越にでも行ったかな……。こういうの置いてあるとなると、小物問屋よりデパート系の方が品揃えもいいし。
ここから結構遠いのに、任務でもない中行ってくれたのでは?それを想像して嬉しくなった。
お金についてもそうだ。
さすが柱、というか『どうせ使うなら良いものを』という方針で育った杏寿郎さんだ。
煉獄家って浪費はしないけど使う時はお金に糸目つけないもんね。
でもそれをわざわざ私如きに使うとは……。
そう思うと、嬉しくてたまらないよね。
胸がドキドキしてつらい。
「それとな、髪には海藻を食べるといいらしい。
こちらにはとろろ昆布が好物の伊黒がいるのでな、彼に美味い店を案内してもらって買ってきた!!塩蔵わかめも売っていたから買ったんだ!食おう!」
そう言って箱を開ける。
そこには塩漬けにされたわかめがみっちり入っており、その上に紙に包まれたとろろ昆布もたくさん乗せられていた。
開けるとまた、磯くさっ!!
「わー。こんなに箱いっぱいどうすんのさ」
「もちろん、俺と君が食べる!!すぐなくなるだろう!!」
「ソウデスネ」
塩漬けだし日持ちはするけれど、すぐになくなることはないと思う。
あときっと伊黒さんは杏寿郎さんに巻き込まれたのだろう、良い迷惑だ。
「……伊黒さんにはあとで私からもお礼言いますね」
「うむ!
さあ、髪につけて傷んだ箇所を治そうではないか!!」
「あはは、付けて一瞬で直るわけじゃないけどね……」
杏寿郎さんは手から小瓶を奪い取り、私の体をぐいぐい押して部屋に直行させた。
行動も早いが気も早い。
するぅりと髪をひとふさ取られ、杏寿郎さんの手によって油が塗り込まれていく。
……杏寿郎さん、ただ私の髪の毛をいじっているだけなのにすごく幸せそう。その様を鏡越しに見ていたら、笑顔の杏寿郎さんと目があった。
どきり。
常中が途切れるまではいかなかったからいいものの、胸が高鳴ってうるさい。聞こえてたら恥ずかしい……っ。
慌てて視線を逸らす。
「う、嬉しそうですね……っ」
「ああ、朝緋の髪の毛をいじるのは嬉しいし楽しい!自分の髪質とも全く違うしな!!」
「そうかなぁ。髪質は違うけどそんな変わらないと思うんですけど」
……っと、この匂い?
どこかで嗅いだことのある、爽やかで甘い匂いが鼻腔を擽る。
杏寿郎さんが追加で手の上にとろりと落とした鬢付油からだった。
「果物のような香り……」
「ああ、確か杏だったかな」
杏!!よく聞く白檀のような香りでもなく、 白薔薇でも桜でもなく、杏!!
物自体はあんず油ではないみたいだけど、でも匂いが杏……杏寿郎さんの名前と同じだ。
これではまるで杏寿郎さんに包まれているみたいではないか。
ああこれがよく明槻が言ってた『推しの匂い』ってことかぁ。
座っているから何もアクションできないけれど、ジタバタしたくなって足袋の中で足の指をきゅっと縮めた。
「ははは!君も嬉しそうで何よりだ。
……ん、良い匂いだな」
「ひゃう!?」
うなじに杏寿郎さんの指が触れた。
……だけならまだしも、するぅりと指の腹でくすぐっていった。
びくんと震え跳ねる私の体。
「髪に触っただけなのだがどうした!」
「違いますよね……?私のうなじくすぐりましたよね!?
首筋弱いんですからやめてくださ……ひゃぁぁっ!?」
またくすぐっていった!
今度は明確に、こちょこちょとだ!!
「師範〜〜っ」
「いや、反応が楽しくてな。すまんすまん!
首筋が弱いとは、朝緋はまるで鬼のようだな!!」
「鬼と一緒にするなんてひどい〜!ばかばかばか〜!!」
「わははは!!」
ポコポコ叩くも嬉しそうに笑う杏寿郎さん。
その手が正面から髪の毛に置かれ、愛おしむようにするする撫でた。
「ふ……だがこれで切らなくて済むな。朝緋の髪は今とてもさらさらしている」
「だからすぐに直るわけじゃ……」
「うーむ。この髪の毛で巻かれて眠りたいくらいだなぁ……」
くるくる指に巻き付け遊んだかと思うと、今度はご自身の首に私の髪を襟巻きのように巻いて暖を取ろうとする。
「わー、首に巻くのはだめですって!首絞まっちゃいますよ!?」
「はっはっは!!」
結局、毛先を揃える為にほんのちょっとだけ髪の先を切った。
その際また少しだけ杏寿郎さんと喧嘩になったのはいうまでもないが、それはまた別のお話。