三周目 弐
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だけど、杏寿郎さんの気持ちが妹への家族愛と違うと私はわかってしまった。
……今はわかりたくなかった。
ボトボトボト。
杏寿郎さんが私と千寿郎の姿を見て、土産に持ってきたらしい果物を落とす。
私と千寿郎は風呂に入るところで、杏寿郎さんの帰宅の声を聞いて脱衣所から二人揃って顔を出したのだ。
「あ、お帰りなさい杏寿郎兄さん」
「お帰りなさい、兄上」
おかえりの答えは。
「…………は?」
だけだった。
その視線が私の体の上から下へと動き、顔がみるみる赤くなる。
「なっ、なんだ朝緋その格好は!!」
「なんだとはなんですか?千寿郎とお風呂に入るところだから襦袢姿なんです。それ以外に何が?」
「そうではなくて……!いや、待て……千寿郎と風呂だと!?」
「ええ、そうです。何か問題でも?」
「千寿郎は男だぞ!?それで君は女子だ!
と、共に風呂!?」
杏寿郎さん、千寿郎を指差すのはやめて。大声も相まって怖がってるじゃん。
「私は千寿郎と姉弟です。まだ小さい千寿郎に何言ってるんですか杏寿郎兄さん。
髪を洗ってあげたりしてるので、毎回一緒に
入ってますよ?言いませんでしたっけ??」
体幹のしっかりした杏寿郎さんともあろう人がふらつく。彼はそのままふらふらと後退し、壁に頭をぶつけた。
……ガンッて音がしたけど大丈夫?杏寿郎さんの頭で壁へこんでない?
杏寿郎さんの心配じゃなくて壁の心配をすべきなの、ごめんね。
「お、俺でも共に風呂など入ったことはないというに……」
「聞こえませんでした。今なんて?」
「なんでもない!」
何かをボソボソ呟いたみたいだけど聞こえなかった。
「だがな!千寿郎も学校に行っている歳だ!もう立派な男子だろう!風呂くらい一人で入れる!!
な!?千寿郎!!」
「ぼ、僕……一人ではいれます。姉上、入ってきますね」
「え、千寿郎……?」
「うむ!!
ほら、入れると言ったではないか!!!!」
千寿郎が脱衣所の中に消えた。姉を残して一人で入るというのか……。いや、一人で入るのはいいけどそれを杏寿郎さんが強制するのはおかしくない?
まるで悋気している人みたいに、
「なぁんか……おとなげなーい……」
「うっ……!いいから君は早く服を着てくれ!!」
「襦袢を着てますでしょうが」
服なら着てる。
「それは下着だろう!!?君ももう、子供というより年頃の若いお嬢さんだ!!
身なりを整えてから俺の前に出てくれ!!」
そういってくるぅり、回れ右をして後ろを向く。
「どうにかなってしまいそうだ!!!!」
「あ、ちょっと!?」
どこに行くのか、そのまま走り去ってしまった。落とした果物を置いて。
どうにか??
似たようなことを『前』の杏寿郎さんが言ったことがある。あれは確か、私の裸を見た時に……。
あっヤダ、恥ずかしい!
え、でもあの時の私はもっと成長してたし、こんな小さい体の時じゃない……よね?
つんつるてんの体に何いってるんだろう。いつも一緒の布団で寝てるくせに。
杏寿郎さんが落とした小ぶりな和林檎を拾い上げながら思い出す。最近は西洋林檎も入ってきてるけど、この日本古来の和林檎も美味しいんだよね。
その時はた、と気がついた。
……あれ?違う、最近一緒に寝てない。
杏寿郎さんが最終選抜から帰ってきた頃はまだ一緒に寝ていたよね。
けど最近は違う。
家に帰ってくること自体減ったけれど、帰った時に別の部屋で寝るようになってきていた……気がする。
あれあれあれあれ??
んんん??あれれ〜〜〜!??
男女間の羞恥が兄妹だからというのもあり、いつのまにか私の中から消え去っていた。
隣にいるのが当然で、くっついて眠ることにも慣れてしまっていた。杏寿郎さんと一緒じゃないときは、千寿郎と寝てることも多いし。
なのに、今になってそれが恥ずかしいことだと他でもない杏寿郎さんから認識させられた。
多分これは、杏寿郎さんが多感なお年頃の時期に入ったというのもあるだろうけど。
そして、もう一つ見誤りがあった。
いつの間にか私の体はつんつるてんではなくなってきていた。
ともすれば今の歳にしてみると『前』よりも胸の膨らみがある気がする。
『前』より、食に欧米のものを取り入れたから?牛乳を積極的に献立へ採用したから??
なのに、下着と同意だという襦袢姿で杏寿郎さんの前に出ていた?うわそれは恥ずかしい……。
杏寿郎さんに見せるべき代物ではなかった。私ったらなんて破廉恥な!!
ちなみに大正時代を何年過ごそうと私の中の下着=ブラジャーとショーツのイメージはなかなか覆せず、襦袢が下着という感じはしない。何より、私の着てるお襦袢ってそんなに薄くないのよね。
……あ、そういう問題と違うか。
それで『どうにかなりそう』なんて発言、ということはだ。
杏寿郎さんから向けられる感情はやはり妹へのものではないと、理解せざるを得ない。ううん、本当はわかってたけど……。
和林檎は私の心の奥にある、甘酸っぱい感情と同じ香りがした。
……今はわかりたくなかった。
ボトボトボト。
杏寿郎さんが私と千寿郎の姿を見て、土産に持ってきたらしい果物を落とす。
私と千寿郎は風呂に入るところで、杏寿郎さんの帰宅の声を聞いて脱衣所から二人揃って顔を出したのだ。
「あ、お帰りなさい杏寿郎兄さん」
「お帰りなさい、兄上」
おかえりの答えは。
「…………は?」
だけだった。
その視線が私の体の上から下へと動き、顔がみるみる赤くなる。
「なっ、なんだ朝緋その格好は!!」
「なんだとはなんですか?千寿郎とお風呂に入るところだから襦袢姿なんです。それ以外に何が?」
「そうではなくて……!いや、待て……千寿郎と風呂だと!?」
「ええ、そうです。何か問題でも?」
「千寿郎は男だぞ!?それで君は女子だ!
と、共に風呂!?」
杏寿郎さん、千寿郎を指差すのはやめて。大声も相まって怖がってるじゃん。
「私は千寿郎と姉弟です。まだ小さい千寿郎に何言ってるんですか杏寿郎兄さん。
髪を洗ってあげたりしてるので、毎回一緒に
入ってますよ?言いませんでしたっけ??」
体幹のしっかりした杏寿郎さんともあろう人がふらつく。彼はそのままふらふらと後退し、壁に頭をぶつけた。
……ガンッて音がしたけど大丈夫?杏寿郎さんの頭で壁へこんでない?
杏寿郎さんの心配じゃなくて壁の心配をすべきなの、ごめんね。
「お、俺でも共に風呂など入ったことはないというに……」
「聞こえませんでした。今なんて?」
「なんでもない!」
何かをボソボソ呟いたみたいだけど聞こえなかった。
「だがな!千寿郎も学校に行っている歳だ!もう立派な男子だろう!風呂くらい一人で入れる!!
な!?千寿郎!!」
「ぼ、僕……一人ではいれます。姉上、入ってきますね」
「え、千寿郎……?」
「うむ!!
ほら、入れると言ったではないか!!!!」
千寿郎が脱衣所の中に消えた。姉を残して一人で入るというのか……。いや、一人で入るのはいいけどそれを杏寿郎さんが強制するのはおかしくない?
まるで悋気している人みたいに、
「なぁんか……おとなげなーい……」
「うっ……!いいから君は早く服を着てくれ!!」
「襦袢を着てますでしょうが」
服なら着てる。
「それは下着だろう!!?君ももう、子供というより年頃の若いお嬢さんだ!!
身なりを整えてから俺の前に出てくれ!!」
そういってくるぅり、回れ右をして後ろを向く。
「どうにかなってしまいそうだ!!!!」
「あ、ちょっと!?」
どこに行くのか、そのまま走り去ってしまった。落とした果物を置いて。
どうにか??
似たようなことを『前』の杏寿郎さんが言ったことがある。あれは確か、私の裸を見た時に……。
あっヤダ、恥ずかしい!
え、でもあの時の私はもっと成長してたし、こんな小さい体の時じゃない……よね?
つんつるてんの体に何いってるんだろう。いつも一緒の布団で寝てるくせに。
杏寿郎さんが落とした小ぶりな和林檎を拾い上げながら思い出す。最近は西洋林檎も入ってきてるけど、この日本古来の和林檎も美味しいんだよね。
その時はた、と気がついた。
……あれ?違う、最近一緒に寝てない。
杏寿郎さんが最終選抜から帰ってきた頃はまだ一緒に寝ていたよね。
けど最近は違う。
家に帰ってくること自体減ったけれど、帰った時に別の部屋で寝るようになってきていた……気がする。
あれあれあれあれ??
んんん??あれれ〜〜〜!??
男女間の羞恥が兄妹だからというのもあり、いつのまにか私の中から消え去っていた。
隣にいるのが当然で、くっついて眠ることにも慣れてしまっていた。杏寿郎さんと一緒じゃないときは、千寿郎と寝てることも多いし。
なのに、今になってそれが恥ずかしいことだと他でもない杏寿郎さんから認識させられた。
多分これは、杏寿郎さんが多感なお年頃の時期に入ったというのもあるだろうけど。
そして、もう一つ見誤りがあった。
いつの間にか私の体はつんつるてんではなくなってきていた。
ともすれば今の歳にしてみると『前』よりも胸の膨らみがある気がする。
『前』より、食に欧米のものを取り入れたから?牛乳を積極的に献立へ採用したから??
なのに、下着と同意だという襦袢姿で杏寿郎さんの前に出ていた?うわそれは恥ずかしい……。
杏寿郎さんに見せるべき代物ではなかった。私ったらなんて破廉恥な!!
ちなみに大正時代を何年過ごそうと私の中の下着=ブラジャーとショーツのイメージはなかなか覆せず、襦袢が下着という感じはしない。何より、私の着てるお襦袢ってそんなに薄くないのよね。
……あ、そういう問題と違うか。
それで『どうにかなりそう』なんて発言、ということはだ。
杏寿郎さんから向けられる感情はやはり妹へのものではないと、理解せざるを得ない。ううん、本当はわかってたけど……。
和林檎は私の心の奥にある、甘酸っぱい感情と同じ香りがした。