三周目 壱
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「壱ノ型・不知火っ!!」
赤く力強い炎が轟々と音を立てて走り抜け、一瞬にして鬼の頸が消し飛んだ。次いで、体も炙られたかのようにじゅわり燃えていく。
「間に合ったようだな」
鬼の代わりにそこに立っていたのは、槇寿朗さんだ。
美しい焔の刀を携え、自らの炎の中仁王立ちして鬼の方を睨み据える様……。まるで闘神だった。
「ち、父上!」
杏寿郎さんからは見えないだろうが、鬼を射殺すような槇寿朗さんの視線を私はばっちり目撃してしまった。こういう顔、『前』も見たなあ……怖い。
けれど恐ろしい形相から一転。杏寿郎さんの言葉を聞いてほっとしたのか、その表情が和らいだ。柱の顔が一瞬にして親の顔である。
折れた木刀を放り出し飛んでコアラのように抱きついた杏寿郎さんを撫でながら、私のことを片手で抱き上げる。
二人とも大きくなったなあなどど軽く笑っているが、あまりの体幹のブレなさに驚く。こっちは六歳児と九歳児だよ?さすがは柱、腕力も強い。
浮いた状態でも何の心配がない、絶対的安心感がそこにあった。
ヒュッ!
が、未だ消えていなかった鬼の手が私を捕まえようと飛んでくる。
それを見もせず槇寿朗さんは避けてみせた。
「……鬼の最後の悪あがきか。この執念深さはなんだ?」
鬼が滅されたことで差してきた陽光。ようやく鬼のすべてが太陽に灼かれた。
そんな空を一瞥し、鬼の能力を言い当てる。
「なるほど、周囲を夜の闇のように暗くしてしまう血鬼術の類いだったようだな。強い鬼が持っていたら危なかったろう」
場数を踏んでいる柱は違う、状況や周囲の様子などを確認するだけでそこまでわかるのか。私も見習わなければ。
「杏寿郎、そんな中でよくぞ朝緋を守り抜いた。偉かったな」
今一度頭を撫でる手を、しかし杏寿郎さんは遮り拒んだ。
「ま、守れていません!俺は、俺は……朝緋に傷を負わせてしまった!!」
「だがお前も傷を負っているだろう?ひかない精神は称賛に値する。
朝緋も怖い目にあったのに泣かなくて偉い」
泣かなかったのではない。泣けなかったし、言葉すら発することができなかった。恐怖で動くこともできなかった。
悔しい……何もできなかった。
根本的な思いこそ違うが、心に燻る悔しさだけは杏寿郎さんと同じ。
あまりの不甲斐なさに腕から降り、俯くと槇寿朗さんが不思議そうに鬼の出現について語った。
「しかし何故柱の管轄区域内に鬼が?俺の屋敷の目と鼻の先だぞ……」
「父上!鬼は稀血がどうとか言って襲ってきました!なんでも朝緋が稀血だとか。稀血とは一体何のことですか!」
頭に視線が降ってくる。その視線は驚きと困惑に満ちている。私は顔を上げられなかった。
「稀血とは鬼が殊更好む血の持ち主のことだ。稀血を一人食えば五十から百もの人間を食ったのと同じくらいの強さが手に入る」
「そんな稀血の持ち主が朝緋……?」
今度は杏寿郎さんからの視線。
胸が詰まりそうで、無意識に着物の裾をぎゅっと握り締めた。
私のせいだ。私が稀血だから鬼に気付かれた。
「しかしもう大丈夫だ。二人共見た目より傷は浅いが痛むだろう?怪我の処置を終えたらゆっくり休むように」
そのまま杏寿郎さん共々抱き抱えられて煉獄家へ帰り、槇寿朗さんから怪我の処置を受けた。
その際、母親である瑠火さんが寝巻きに羽織を引っ掛けた格好で出迎えてくれた。今回の槇寿朗さんは一度屋敷に帰り、私達がいるであろう付近の空が気になり駆けつけたらしい。そんなだから瑠火さんも心配して出てきたのだ。
瑠火さん、体調よくないのに……心配かけるようなことしてごめんなさい。
ちなみに夕飯は出前物を頼んでもらった。この状態では今から何か作るのは難しい。
「朝緋には少し話があるから残ってくれ。
…………杏寿郎は朝緋が戻った時のために、眠って布団を暖めておく係だ。退室しなさい」
包帯を巻き終えた後、膝を此方に向けて座り直した槇寿朗さん。同じように杏寿郎さんも座り直したが、残念かな。部屋から追い出されてしまった。
力強い瞳は最後まで心配そうに見ていた。
「やれやれ。杏寿郎は妹への愛が過ぎてかなわん。稀血のことを知ってからならわかるのだが元からだぞ」
杏寿郎さんが行ってしまわれてから苦笑混じりに言われ、同じく苦笑を返す。
その後、真面目な顔になった。
「傷も痛むだろうし疲れているだろうから時間は取らせんよ」
「いえ。
私も大した傷ではありません。疲れも……多少ありますが、これから明日の七草の仕込みもあるので」
「怪我をしたんだ。そんなもの別にいいだろう。いくら人日の節句とてそこまでして食わぬとも……」
そんなもの?そこまでして?鬼に襲われながらも、採ってきたのは槇寿朗さんや瑠火さんの健康を願ってのことなのに。
「人日の節句は毎年の習わしですよ。
七草粥は無病息災を願い、邪気を払う大切な料理。父様はもちろん、最近お身体の調子がよろしくない母様にこそ食べてもらいたいのです。
それに煮炊きを任されている女子に父様は意見しないでいただきたいです。厨は私たちの領域ですよ」
最終的に語尾を強めて言えば、自分の話が進まないと踏んで止められた。
「ああもうわかったわかった!
俺にはできぬこと故朝緋に任せるが、無理だけはするなよ」
できない?槇寿朗さんは、杏寿郎さんよりお料理のできる人だけどね。
「こほん。
それで、此度鬼に襲われた件についてだが……」
「はい、まさかあんなちょっぴりの血で気が付かれた挙句、昼間から襲われるなんて」
枝葉に引っ掛けた傷なんて本当に少しだけで出血だって舐めたら出なくなるほどだった。あの鬼も炭治郎並みの嗅覚を持っていたのだろうか。
でも、私があれを忘れさえしなければ。
「もともと近くに潜んでいたのだろう。昼間に使える血鬼術を持っていたことも大きい」
「違います……お守りを忘れてしまった私の失態なのです。ごめんなさい」
藤の守りがないとあんなにも鬼ホイホイだったのね。
自分で言ってなんだけど、鬼ホイホイってなかなか嫌な言葉だ。某Gじゃないんだから。
襲ってきた鬼も悪いけれど、元はといえば私が悪い。私の失態のせいでとんでもないことになるところだ。
深々と頭を下げる。
「煉獄家の大事な嫡男であらせられる杏寿郎兄さん……いえ、杏寿郎さんを鬼の前という危険に晒してしまいました。父様のお手を煩わせてしまいましたし、母様も大変な時なのに心労をおかけしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした……」
「…………顔を上げろ。……朝緋」
「はい」
「何故他人のように謝る?
杏寿郎が嫡男ならお前は長女。連れ帰った時から朝緋は俺の大事な一人娘だ。
危険だったのはむしろ朝緋だ。俺はもちろん、杏寿郎や瑠火が娘を守るのも、心配するのも当然のことなのだから気にするな。
もっと甘えていい。もっと子供らしくしていい」
「父様……」
「朝緋は口ぶりや言葉が既に子供のそれでなくていかんな」
頭を優しく撫でられる。
今以上の子供のふりはむずかしいけれど、槇寿朗さんが望む娘としてもうちょっと寄り添いたくなった。
「だがそれとこれとは別の話だからよく聞き、話すように。
朝緋は稀血について知っていた。そうだな?」
……聞かれると思った。
「はい、私の家には稀血が多く生まれていました。兄も稀血の者です。もしかしたら両親も稀血だった可能性があります」
「それは……鬼が喜んで狙いそうだな。
しかし、それなのに鬼殺隊に入りたいと申し出ていたと。
残念だが、稀血の女児である以上許可できない。稀血というだけで危険すぎるのに、それがおなごだった場合、より多くの鬼が寄ってきてしまう理由がある。
俺は柱ゆえ、これまで様々な任務をこなしてきた。
その中で稀血の効力は何度も目の当たりにした。稀血で女子。そういった人間が喰らわれる瞬間を見たこともある」
柱だって全ての命を救えるわけではない。救たくても手のひらから簡単にこぼれ落ちる。
「かつて俺が救えなかった稀血の女の子。稀血の話を聞いた今、いつか朝緋があの子と同じように鬼に食われてしまうのではないかと、不安でたまらなくなった。
俺のわがままで申し訳ないが許可はできない……すまないな。
鬼殺隊は杏寿郎が入隊を目指す。朝緋、お前は諦めて学業に専念しなさい」
ああ、また鬼殺隊を目指すのを禁止されてしまった。
今回は杏寿郎さんもいい顔をしないかもしれない。私の血がどれほどの効力を持つのかを、目の前で見てしまったから。
それでも私は諦めるわけにはいかない。ここでわかりましたというのは簡単だけれど、今諦めたら意味がない。
たとえ言い争いになってでも、私は鬼殺隊の入隊を目指す。まあ、このちっさい体で喧嘩はできないけれども。
そう、すべては杏寿郎さん。貴方の未来のために。
私の持てるカードを全て使い、ひとまず鬼殺隊士を目指すことについて許可を得る事ができた。
今の私の肉体年齢だと、許可があり尚且つ稽古をつけてもらえるのともらえないのとでは、のちの強さのレベルは桁違いなのだ。
赤く力強い炎が轟々と音を立てて走り抜け、一瞬にして鬼の頸が消し飛んだ。次いで、体も炙られたかのようにじゅわり燃えていく。
「間に合ったようだな」
鬼の代わりにそこに立っていたのは、槇寿朗さんだ。
美しい焔の刀を携え、自らの炎の中仁王立ちして鬼の方を睨み据える様……。まるで闘神だった。
「ち、父上!」
杏寿郎さんからは見えないだろうが、鬼を射殺すような槇寿朗さんの視線を私はばっちり目撃してしまった。こういう顔、『前』も見たなあ……怖い。
けれど恐ろしい形相から一転。杏寿郎さんの言葉を聞いてほっとしたのか、その表情が和らいだ。柱の顔が一瞬にして親の顔である。
折れた木刀を放り出し飛んでコアラのように抱きついた杏寿郎さんを撫でながら、私のことを片手で抱き上げる。
二人とも大きくなったなあなどど軽く笑っているが、あまりの体幹のブレなさに驚く。こっちは六歳児と九歳児だよ?さすがは柱、腕力も強い。
浮いた状態でも何の心配がない、絶対的安心感がそこにあった。
ヒュッ!
が、未だ消えていなかった鬼の手が私を捕まえようと飛んでくる。
それを見もせず槇寿朗さんは避けてみせた。
「……鬼の最後の悪あがきか。この執念深さはなんだ?」
鬼が滅されたことで差してきた陽光。ようやく鬼のすべてが太陽に灼かれた。
そんな空を一瞥し、鬼の能力を言い当てる。
「なるほど、周囲を夜の闇のように暗くしてしまう血鬼術の類いだったようだな。強い鬼が持っていたら危なかったろう」
場数を踏んでいる柱は違う、状況や周囲の様子などを確認するだけでそこまでわかるのか。私も見習わなければ。
「杏寿郎、そんな中でよくぞ朝緋を守り抜いた。偉かったな」
今一度頭を撫でる手を、しかし杏寿郎さんは遮り拒んだ。
「ま、守れていません!俺は、俺は……朝緋に傷を負わせてしまった!!」
「だがお前も傷を負っているだろう?ひかない精神は称賛に値する。
朝緋も怖い目にあったのに泣かなくて偉い」
泣かなかったのではない。泣けなかったし、言葉すら発することができなかった。恐怖で動くこともできなかった。
悔しい……何もできなかった。
根本的な思いこそ違うが、心に燻る悔しさだけは杏寿郎さんと同じ。
あまりの不甲斐なさに腕から降り、俯くと槇寿朗さんが不思議そうに鬼の出現について語った。
「しかし何故柱の管轄区域内に鬼が?俺の屋敷の目と鼻の先だぞ……」
「父上!鬼は稀血がどうとか言って襲ってきました!なんでも朝緋が稀血だとか。稀血とは一体何のことですか!」
頭に視線が降ってくる。その視線は驚きと困惑に満ちている。私は顔を上げられなかった。
「稀血とは鬼が殊更好む血の持ち主のことだ。稀血を一人食えば五十から百もの人間を食ったのと同じくらいの強さが手に入る」
「そんな稀血の持ち主が朝緋……?」
今度は杏寿郎さんからの視線。
胸が詰まりそうで、無意識に着物の裾をぎゅっと握り締めた。
私のせいだ。私が稀血だから鬼に気付かれた。
「しかしもう大丈夫だ。二人共見た目より傷は浅いが痛むだろう?怪我の処置を終えたらゆっくり休むように」
そのまま杏寿郎さん共々抱き抱えられて煉獄家へ帰り、槇寿朗さんから怪我の処置を受けた。
その際、母親である瑠火さんが寝巻きに羽織を引っ掛けた格好で出迎えてくれた。今回の槇寿朗さんは一度屋敷に帰り、私達がいるであろう付近の空が気になり駆けつけたらしい。そんなだから瑠火さんも心配して出てきたのだ。
瑠火さん、体調よくないのに……心配かけるようなことしてごめんなさい。
ちなみに夕飯は出前物を頼んでもらった。この状態では今から何か作るのは難しい。
「朝緋には少し話があるから残ってくれ。
…………杏寿郎は朝緋が戻った時のために、眠って布団を暖めておく係だ。退室しなさい」
包帯を巻き終えた後、膝を此方に向けて座り直した槇寿朗さん。同じように杏寿郎さんも座り直したが、残念かな。部屋から追い出されてしまった。
力強い瞳は最後まで心配そうに見ていた。
「やれやれ。杏寿郎は妹への愛が過ぎてかなわん。稀血のことを知ってからならわかるのだが元からだぞ」
杏寿郎さんが行ってしまわれてから苦笑混じりに言われ、同じく苦笑を返す。
その後、真面目な顔になった。
「傷も痛むだろうし疲れているだろうから時間は取らせんよ」
「いえ。
私も大した傷ではありません。疲れも……多少ありますが、これから明日の七草の仕込みもあるので」
「怪我をしたんだ。そんなもの別にいいだろう。いくら人日の節句とてそこまでして食わぬとも……」
そんなもの?そこまでして?鬼に襲われながらも、採ってきたのは槇寿朗さんや瑠火さんの健康を願ってのことなのに。
「人日の節句は毎年の習わしですよ。
七草粥は無病息災を願い、邪気を払う大切な料理。父様はもちろん、最近お身体の調子がよろしくない母様にこそ食べてもらいたいのです。
それに煮炊きを任されている女子に父様は意見しないでいただきたいです。厨は私たちの領域ですよ」
最終的に語尾を強めて言えば、自分の話が進まないと踏んで止められた。
「ああもうわかったわかった!
俺にはできぬこと故朝緋に任せるが、無理だけはするなよ」
できない?槇寿朗さんは、杏寿郎さんよりお料理のできる人だけどね。
「こほん。
それで、此度鬼に襲われた件についてだが……」
「はい、まさかあんなちょっぴりの血で気が付かれた挙句、昼間から襲われるなんて」
枝葉に引っ掛けた傷なんて本当に少しだけで出血だって舐めたら出なくなるほどだった。あの鬼も炭治郎並みの嗅覚を持っていたのだろうか。
でも、私があれを忘れさえしなければ。
「もともと近くに潜んでいたのだろう。昼間に使える血鬼術を持っていたことも大きい」
「違います……お守りを忘れてしまった私の失態なのです。ごめんなさい」
藤の守りがないとあんなにも鬼ホイホイだったのね。
自分で言ってなんだけど、鬼ホイホイってなかなか嫌な言葉だ。某Gじゃないんだから。
襲ってきた鬼も悪いけれど、元はといえば私が悪い。私の失態のせいでとんでもないことになるところだ。
深々と頭を下げる。
「煉獄家の大事な嫡男であらせられる杏寿郎兄さん……いえ、杏寿郎さんを鬼の前という危険に晒してしまいました。父様のお手を煩わせてしまいましたし、母様も大変な時なのに心労をおかけしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした……」
「…………顔を上げろ。……朝緋」
「はい」
「何故他人のように謝る?
杏寿郎が嫡男ならお前は長女。連れ帰った時から朝緋は俺の大事な一人娘だ。
危険だったのはむしろ朝緋だ。俺はもちろん、杏寿郎や瑠火が娘を守るのも、心配するのも当然のことなのだから気にするな。
もっと甘えていい。もっと子供らしくしていい」
「父様……」
「朝緋は口ぶりや言葉が既に子供のそれでなくていかんな」
頭を優しく撫でられる。
今以上の子供のふりはむずかしいけれど、槇寿朗さんが望む娘としてもうちょっと寄り添いたくなった。
「だがそれとこれとは別の話だからよく聞き、話すように。
朝緋は稀血について知っていた。そうだな?」
……聞かれると思った。
「はい、私の家には稀血が多く生まれていました。兄も稀血の者です。もしかしたら両親も稀血だった可能性があります」
「それは……鬼が喜んで狙いそうだな。
しかし、それなのに鬼殺隊に入りたいと申し出ていたと。
残念だが、稀血の女児である以上許可できない。稀血というだけで危険すぎるのに、それがおなごだった場合、より多くの鬼が寄ってきてしまう理由がある。
俺は柱ゆえ、これまで様々な任務をこなしてきた。
その中で稀血の効力は何度も目の当たりにした。稀血で女子。そういった人間が喰らわれる瞬間を見たこともある」
柱だって全ての命を救えるわけではない。救たくても手のひらから簡単にこぼれ落ちる。
「かつて俺が救えなかった稀血の女の子。稀血の話を聞いた今、いつか朝緋があの子と同じように鬼に食われてしまうのではないかと、不安でたまらなくなった。
俺のわがままで申し訳ないが許可はできない……すまないな。
鬼殺隊は杏寿郎が入隊を目指す。朝緋、お前は諦めて学業に専念しなさい」
ああ、また鬼殺隊を目指すのを禁止されてしまった。
今回は杏寿郎さんもいい顔をしないかもしれない。私の血がどれほどの効力を持つのかを、目の前で見てしまったから。
それでも私は諦めるわけにはいかない。ここでわかりましたというのは簡単だけれど、今諦めたら意味がない。
たとえ言い争いになってでも、私は鬼殺隊の入隊を目指す。まあ、このちっさい体で喧嘩はできないけれども。
そう、すべては杏寿郎さん。貴方の未来のために。
私の持てるカードを全て使い、ひとまず鬼殺隊士を目指すことについて許可を得る事ができた。
今の私の肉体年齢だと、許可があり尚且つ稽古をつけてもらえるのともらえないのとでは、のちの強さのレベルは桁違いなのだ。