三周目 壱
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恋情の話は別として、杏寿郎さんは私の推しだ。彼の幸せは私の幸せ。
そして杏寿郎さんが好物を幸せそうに頬張る姿は、私にとって幸せの象徴とも言えるべき光景。
なので、庭にさつまいも畑を作りたい旨は、この家に馴染んですぐに話した。
幼い娘の体は便利だ。
背の関係上自然と上目遣いになる中で涙目にて訴えれば、破壊力抜群でおねだりはすんなり通る。相変わらず男親は娘に甘い。槇寿朗さんちょろ……ごほん。
ちなみに瑠火さんには普通にお願いをした。きちんと言えば槇寿朗さんの時よりあっさりと許可が出ることを私は知っていたから。
あったところで使えやしないけれど、トラクターや耕運機のない時代はみな手で耕す。
なので畑づくり、これはいい鍛錬になる。少しでも体を鍛えられる方法があるなら、私はそれを利用する。
だってこの幼い体だと、柱である槇寿朗さんに気付かれないように鍛錬するにはこういうことや遊びの中で何とかするしかなかった。もちろん、家の中でこっそり全集中の呼吸の鍛錬は忘れない。すべてこっそりだ。だって娘に甘い父親でも、柱は柱。ほーんと聡いんだよねぇ……。
早く日輪刀、ううん。せめて竹刀か木刀が振りたい。
でもこればっかりはおねだりしたところで、私は杏寿郎さんのように刀は持たせてもらえない。
今日も今日とて、杏寿郎さんは朝早くからの鍛錬に加え、時間になったら尋常小学校。からの帰ったあとにまた剣の稽古、鍛錬にと強くなるために弛まぬ努力を続けている。
それ以外はほぼ食べるか寝るかくらいの生活パターン……鍛錬ができて羨ましい。
私はきっと学校に行くだけで鍛錬はさせてもらえない。学校に通わせてもらえるだけでありがたいけれど。
芋やら他の植え物のお世話も家事のお手伝いやお花などのお稽古も終わり、私もこっそりと鍛錬に励む。
といっても部屋の中でできることなんて限られている。呼吸の基礎訓練に加え、よくある腹筋やスクワット、腕立て伏せなどの筋力トレーニング。
瑠火さんは幼い私が部屋の中ですることなど、挿絵の多い本での読書やお昼寝、折り紙や縫い物だと思っているようで、千寿郎のお世話に忙しなく見に来ない。これ幸いとばかりに、室内トレーニングに熱を上げるが……。
ちらり、障子戸の隙間から外を見やる。
庭先では杏寿郎さんが私よりも過酷な鍛錬に励み、掛け声と共に竹刀を振るっていた。
ああほんと、羨ましい。私もこの幼い内からたくさんの鍛錬がしたい。堂々と鍛錬さえできれば鬼殺隊に入った時、そして杏寿郎さんの継子に戻った時、もっともっと強くなれるはずなのに。
何が悲しくて隠れてこそこそやらねばいけないの。
「朝緋、明日は人日の節句です。七草を叩くのを手伝ってください」
「は、はい、母様」
呼びにきた瑠火さんの手前、トレーニングを慌ててやめ読んでいたフリということで適当に本を散らかす。……むむむ。いつまで誤魔化しが効くだろうか。瑠火さんはある意味、槇寿朗さんよりも聡い。
それにしても人日の節句……明日は一月の七日だから七草粥を食べる日か。奉公の人も年末年始しばらくは里帰りでいないし、作るなら自分達でに決まってるよねぇ。
お節もものすごい量食べたしなんなら私が樽いっぱいってくらい作った栗きんとんをぺろりと平らげてしまう煉獄家の男達……特に杏寿郎さんには、七草粥は物足りないのでは?などと思いつつ、七草を洗う。
自分の健啖家ぶりを棚に上げるなって?ひどい!いくら炎の呼吸を使う剣士になるからといって、私はそこまで健啖家じゃ……あ、普通の女性と比べたらめちゃくちゃ食べるわごめんなさい。
作る量が尋常じゃないせいか七草も多い。
蕪や大根はともかくセリにナズナ、ハハコグサにミドリハコベ、コオニタビラコ。こんなにたくさん……瑠火さんったら、採りに行く予定があったなら私も着いて行ったのに。
「七草なずな唐土の鳥と日本の鳥が渡らぬさきにストトントントン」
「あ、七草囃しの歌詞がちょっと違う……」
「地域によって違いますからね。そういえば朝緋のいたところは遠江 のあたりでしたが、どんな歌でしたか?」
包丁片手の瑠火さんの唇から紡がれた歌は、亡くなった私の母が歌っていたそれとは少し異なっていた。私の地域では確か。
「ええと、七草なずな唐土の鳥と日本の国に渡らぬ先に合わせてバタバタ合わせてバタバタ?だった気がします」
「バタバタですか、まあかわいらしい」
「ストトンも軽快でいいですね」
お勝手場は母と娘の交流場所にして、ちょっとしたお遊びの場所でもある。
ストトンバタバタ異なる歌詞を重ね、時に瑠火さんの背中の千寿郎のきゃっきゃとはしゃぐ声で遊んでいたら、聞きつけた杏寿郎さんが駆け込んできた。
「母上と朝緋は何を楽しそうに歌っているんだ!」
その後は杏寿郎さんも参加しての大合唱になった。
次の日の七草粥は、稀に見るほど具材細かくなったっけ……。これもまた、家族の楽しいひとときだった。
ここに槇寿朗さんもいたら最高だっただろうなあ。残念ながらこの夜は任務でおらず、次の日に揃って粥を食べるのみだった。
そして杏寿郎さんが好物を幸せそうに頬張る姿は、私にとって幸せの象徴とも言えるべき光景。
なので、庭にさつまいも畑を作りたい旨は、この家に馴染んですぐに話した。
幼い娘の体は便利だ。
背の関係上自然と上目遣いになる中で涙目にて訴えれば、破壊力抜群でおねだりはすんなり通る。相変わらず男親は娘に甘い。槇寿朗さんちょろ……ごほん。
ちなみに瑠火さんには普通にお願いをした。きちんと言えば槇寿朗さんの時よりあっさりと許可が出ることを私は知っていたから。
あったところで使えやしないけれど、トラクターや耕運機のない時代はみな手で耕す。
なので畑づくり、これはいい鍛錬になる。少しでも体を鍛えられる方法があるなら、私はそれを利用する。
だってこの幼い体だと、柱である槇寿朗さんに気付かれないように鍛錬するにはこういうことや遊びの中で何とかするしかなかった。もちろん、家の中でこっそり全集中の呼吸の鍛錬は忘れない。すべてこっそりだ。だって娘に甘い父親でも、柱は柱。ほーんと聡いんだよねぇ……。
早く日輪刀、ううん。せめて竹刀か木刀が振りたい。
でもこればっかりはおねだりしたところで、私は杏寿郎さんのように刀は持たせてもらえない。
今日も今日とて、杏寿郎さんは朝早くからの鍛錬に加え、時間になったら尋常小学校。からの帰ったあとにまた剣の稽古、鍛錬にと強くなるために弛まぬ努力を続けている。
それ以外はほぼ食べるか寝るかくらいの生活パターン……鍛錬ができて羨ましい。
私はきっと学校に行くだけで鍛錬はさせてもらえない。学校に通わせてもらえるだけでありがたいけれど。
芋やら他の植え物のお世話も家事のお手伝いやお花などのお稽古も終わり、私もこっそりと鍛錬に励む。
といっても部屋の中でできることなんて限られている。呼吸の基礎訓練に加え、よくある腹筋やスクワット、腕立て伏せなどの筋力トレーニング。
瑠火さんは幼い私が部屋の中ですることなど、挿絵の多い本での読書やお昼寝、折り紙や縫い物だと思っているようで、千寿郎のお世話に忙しなく見に来ない。これ幸いとばかりに、室内トレーニングに熱を上げるが……。
ちらり、障子戸の隙間から外を見やる。
庭先では杏寿郎さんが私よりも過酷な鍛錬に励み、掛け声と共に竹刀を振るっていた。
ああほんと、羨ましい。私もこの幼い内からたくさんの鍛錬がしたい。堂々と鍛錬さえできれば鬼殺隊に入った時、そして杏寿郎さんの継子に戻った時、もっともっと強くなれるはずなのに。
何が悲しくて隠れてこそこそやらねばいけないの。
「朝緋、明日は人日の節句です。七草を叩くのを手伝ってください」
「は、はい、母様」
呼びにきた瑠火さんの手前、トレーニングを慌ててやめ読んでいたフリということで適当に本を散らかす。……むむむ。いつまで誤魔化しが効くだろうか。瑠火さんはある意味、槇寿朗さんよりも聡い。
それにしても人日の節句……明日は一月の七日だから七草粥を食べる日か。奉公の人も年末年始しばらくは里帰りでいないし、作るなら自分達でに決まってるよねぇ。
お節もものすごい量食べたしなんなら私が樽いっぱいってくらい作った栗きんとんをぺろりと平らげてしまう煉獄家の男達……特に杏寿郎さんには、七草粥は物足りないのでは?などと思いつつ、七草を洗う。
自分の健啖家ぶりを棚に上げるなって?ひどい!いくら炎の呼吸を使う剣士になるからといって、私はそこまで健啖家じゃ……あ、普通の女性と比べたらめちゃくちゃ食べるわごめんなさい。
作る量が尋常じゃないせいか七草も多い。
蕪や大根はともかくセリにナズナ、ハハコグサにミドリハコベ、コオニタビラコ。こんなにたくさん……瑠火さんったら、採りに行く予定があったなら私も着いて行ったのに。
「七草なずな唐土の鳥と日本の鳥が渡らぬさきにストトントントン」
「あ、七草囃しの歌詞がちょっと違う……」
「地域によって違いますからね。そういえば朝緋のいたところは
包丁片手の瑠火さんの唇から紡がれた歌は、亡くなった私の母が歌っていたそれとは少し異なっていた。私の地域では確か。
「ええと、七草なずな唐土の鳥と日本の国に渡らぬ先に合わせてバタバタ合わせてバタバタ?だった気がします」
「バタバタですか、まあかわいらしい」
「ストトンも軽快でいいですね」
お勝手場は母と娘の交流場所にして、ちょっとしたお遊びの場所でもある。
ストトンバタバタ異なる歌詞を重ね、時に瑠火さんの背中の千寿郎のきゃっきゃとはしゃぐ声で遊んでいたら、聞きつけた杏寿郎さんが駆け込んできた。
「母上と朝緋は何を楽しそうに歌っているんだ!」
その後は杏寿郎さんも参加しての大合唱になった。
次の日の七草粥は、稀に見るほど具材細かくなったっけ……。これもまた、家族の楽しいひとときだった。
ここに槇寿朗さんもいたら最高だっただろうなあ。残念ながらこの夜は任務でおらず、次の日に揃って粥を食べるのみだった。