二周目 玖
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一歩踏み出した時だ。
杏寿郎さんの強く厳しい目が一瞬だけこちらを向いた。
「動くな!待機命令!!」
待機命令が出た。
だけどその言葉はもう聞けない。私は聞かない。
このあとなのだ。
このあと杏寿郎さんは猗窩座を木々の方へ切り飛ばし、自身も追う。
そして少なくはない怪我を負い、逆に杏寿郎さんが吹き飛ばされてしまうのだ。
「そんなことさせてたまるものか……」
杏寿郎さんが傷つく姿はもう見たくない。
一度は止めた足を私は動かした。後ろで炭治郎や伊之助が何か言っているが、私は聞かない聞こえない!
ただただ目の前の敵を排除するのみ!!
「不知火ッ!!」
木々の中でいい動きだ!と、飛び出す猗窩座に向かい、最速の炎の呼吸を繰り出す。
杏寿郎さんに攻撃が及ぶ前に。杏寿郎さんが怪我をする前に。
私が間に入ってでも止める!!
「朝緋!何故いるっ!」
私の登場に信じられないものを見たように声を張り上げられた。
「貴方の傷は私の傷です!
貴方が傷つくことが怖い!それが私があの夜泣いた理由ッ私も戦う!!」
「……っ、勝手にしろ!!」
鬼の腕と日輪刀。二つで激しくぶつかり合う杏寿郎さんに助太刀するように、私の刃が間に入り鬼の胴、そして脛を叩き斬る。
これは地味に痛いはずだ。
「ひっこんでいろ女ァ!!これは俺と杏寿郎の戦いだ!!!」
「引っ込むわけないでしょこちとらお前の頸が飛ぶ瞬間まで出しゃばるわよ!!」
「朝緋ッ!連撃だ!!」
連撃、つまり炎の呼吸弐と参の挟み討ちだ!
「炎の呼吸、弐ノ型・昇り炎天!」
「炎の呼吸、参ノ型・気炎万象!」
軽やかに跳べる私が参ノ型を上から、どっしり構えた杏寿郎さんが下から弐ノ型を繰り出し猗窩座の頸をとらえる。
「貴様らまとめて蹴り飛ばしてやる!!」
だがそれすらも猗窩座の屈強な体の前には功をなさず。
体の前に交差した腕で防ぎきると、後ろに足を踏ん張ってから勢いをつけて三日月蹴りを放ってきた!
「!!」
まずいっ!
咄嗟に杏寿郎さんを庇ったが、結局二人共に胴へと猗窩座の蹴りが入ってしまった。
渾身の一撃!というほどの威力はなく、奴も少しは加減したのか腹に穴が開くことはなかったものの、二人仲良く吹き飛ばされた。
「煉獄さん!朝緋さん!!」
「ギョロギョロ目ん玉!まだらっ!」
……いや、上々。杏寿郎さんが怪我をほとんど負わずに済んだ!
でも右腕が痛くて力が入りにくい!……軽く折れたみたいだ。
そう。『今回』刀を杖にしてようやく立ち上がれたのは、杏寿郎さんではなく私の方だった。
「ハァハァ…………ぅぐっ、」
「朝緋、よもや血は流れていなかろうな」
「……っ、はい」
鬼の好物である稀血があたりに飛び散っていないかを静かな声音で聞かれた。……私は血を流してはならない。
息絶え絶えに小さく言葉を返す。
「ならもう下がれ!あとは俺がやるッ!!」
「なっ……、だけどっ!」
そして吼えるように戦線離脱を命令された。けど、今の私は隊律違反だろうと罰だろうと受ける覚悟がある。今までのように貴方の命を聞く私でもない。
ーーが。
「下がれぇっ!!」
ふわり、浮く身体は一瞬にして、炭治郎と伊之助のところまで飛ばされる。
私の性格をわかっているからこそ、杏寿郎さんは強制的に私を場外へと投げ飛ばした。
「朝緋さんっ!?」
「だ、大丈夫かっ!」
「……つぅ……!ハァッ、杏寿郎さんの分からず屋ぁっ!!」
あまりの事に師範と呼ぶことすら忘れた。
炭治郎と伊之助に受け止められた瞬間、私の放つ技なんかより強く美しく鮮やかな杏寿郎さんの参ノ型・気炎万象が夜空に輝く。
攻撃の応酬に次ぐ応酬。
刀と硬い拳がぶつかる激しい音の感覚、鋭さで戦いの苛烈さがこちらまで伝わってくる。
「ふはっ!やっと邪魔が入らずお前と戦えるな!杏寿郎っ!!」
「……くっ!」
上弦相手に柱が一人ではだめなのか。杏寿郎さんが押されている!
そしてとうとう杏寿郎さんの額から血が噴き出た!肋骨が折られた!!
目じゃない、けれど。けれど、このままだと……。
『あの時』の怒りを忘れない。悲しみを、悔しさを、憎しみを忘れない。
太陽のような目も、私を強く抱きしめてくれた体も……これ以上傷つけさせていいの?
「弐ノ型・昇り炎天っ!!」
大きく踏み込んだ杏寿郎さんの弐ノ型が燃え上がった。
『あれ』はこのあとだった。
今動かなければ、私の大好きなものがまた一つ失われてしまう!
「離して炭治郎っ伊之助っ!!」
稀血でもあり、柱でない私を行かせないよう押さえてくる二人に肘鉄を食らわす。
炭治郎なんかは顔にあたったのかもしれない。鼻血を出したまま必死に私にしがみついていた。
「だめだ!俺達じゃ……朝緋さんでもだめだ!俺は絶対離さないぞっ!!」
「行っても足手まといだろ!?」
更に羽交締めにし、のし掛かるように拘束する伊之助。
でも私は止まらなかった。
「いいから、どきなさいっ!!」
槇寿朗さんの拘束から逃げた時同様、いや、それよりも強い力で二人を突き飛ばし逃れる。
その勢いのまま、私は自らの炎を手に加勢した。
「はぁぁぁーーっ気炎万象!!」
猗窩座の拳が杏寿郎さんの目に迫る瞬間、刃を間に滑り込ませて軌道を逸らす!
目は無事だ!……けれど、代わりに杏寿郎さんの耳が削がれた。逸らしが甘かった!
目よりまし?そんなわけないでしょう!!
やっぱりこの鬼は絶対殺す。必ず報いを受けさせる。
杏寿郎さんを傷つける鬼の全てを許さない。
杏寿郎さんの強く厳しい目が一瞬だけこちらを向いた。
「動くな!待機命令!!」
待機命令が出た。
だけどその言葉はもう聞けない。私は聞かない。
このあとなのだ。
このあと杏寿郎さんは猗窩座を木々の方へ切り飛ばし、自身も追う。
そして少なくはない怪我を負い、逆に杏寿郎さんが吹き飛ばされてしまうのだ。
「そんなことさせてたまるものか……」
杏寿郎さんが傷つく姿はもう見たくない。
一度は止めた足を私は動かした。後ろで炭治郎や伊之助が何か言っているが、私は聞かない聞こえない!
ただただ目の前の敵を排除するのみ!!
「不知火ッ!!」
木々の中でいい動きだ!と、飛び出す猗窩座に向かい、最速の炎の呼吸を繰り出す。
杏寿郎さんに攻撃が及ぶ前に。杏寿郎さんが怪我をする前に。
私が間に入ってでも止める!!
「朝緋!何故いるっ!」
私の登場に信じられないものを見たように声を張り上げられた。
「貴方の傷は私の傷です!
貴方が傷つくことが怖い!それが私があの夜泣いた理由ッ私も戦う!!」
「……っ、勝手にしろ!!」
鬼の腕と日輪刀。二つで激しくぶつかり合う杏寿郎さんに助太刀するように、私の刃が間に入り鬼の胴、そして脛を叩き斬る。
これは地味に痛いはずだ。
「ひっこんでいろ女ァ!!これは俺と杏寿郎の戦いだ!!!」
「引っ込むわけないでしょこちとらお前の頸が飛ぶ瞬間まで出しゃばるわよ!!」
「朝緋ッ!連撃だ!!」
連撃、つまり炎の呼吸弐と参の挟み討ちだ!
「炎の呼吸、弐ノ型・昇り炎天!」
「炎の呼吸、参ノ型・気炎万象!」
軽やかに跳べる私が参ノ型を上から、どっしり構えた杏寿郎さんが下から弐ノ型を繰り出し猗窩座の頸をとらえる。
「貴様らまとめて蹴り飛ばしてやる!!」
だがそれすらも猗窩座の屈強な体の前には功をなさず。
体の前に交差した腕で防ぎきると、後ろに足を踏ん張ってから勢いをつけて三日月蹴りを放ってきた!
「!!」
まずいっ!
咄嗟に杏寿郎さんを庇ったが、結局二人共に胴へと猗窩座の蹴りが入ってしまった。
渾身の一撃!というほどの威力はなく、奴も少しは加減したのか腹に穴が開くことはなかったものの、二人仲良く吹き飛ばされた。
「煉獄さん!朝緋さん!!」
「ギョロギョロ目ん玉!まだらっ!」
……いや、上々。杏寿郎さんが怪我をほとんど負わずに済んだ!
でも右腕が痛くて力が入りにくい!……軽く折れたみたいだ。
そう。『今回』刀を杖にしてようやく立ち上がれたのは、杏寿郎さんではなく私の方だった。
「ハァハァ…………ぅぐっ、」
「朝緋、よもや血は流れていなかろうな」
「……っ、はい」
鬼の好物である稀血があたりに飛び散っていないかを静かな声音で聞かれた。……私は血を流してはならない。
息絶え絶えに小さく言葉を返す。
「ならもう下がれ!あとは俺がやるッ!!」
「なっ……、だけどっ!」
そして吼えるように戦線離脱を命令された。けど、今の私は隊律違反だろうと罰だろうと受ける覚悟がある。今までのように貴方の命を聞く私でもない。
ーーが。
「下がれぇっ!!」
ふわり、浮く身体は一瞬にして、炭治郎と伊之助のところまで飛ばされる。
私の性格をわかっているからこそ、杏寿郎さんは強制的に私を場外へと投げ飛ばした。
「朝緋さんっ!?」
「だ、大丈夫かっ!」
「……つぅ……!ハァッ、杏寿郎さんの分からず屋ぁっ!!」
あまりの事に師範と呼ぶことすら忘れた。
炭治郎と伊之助に受け止められた瞬間、私の放つ技なんかより強く美しく鮮やかな杏寿郎さんの参ノ型・気炎万象が夜空に輝く。
攻撃の応酬に次ぐ応酬。
刀と硬い拳がぶつかる激しい音の感覚、鋭さで戦いの苛烈さがこちらまで伝わってくる。
「ふはっ!やっと邪魔が入らずお前と戦えるな!杏寿郎っ!!」
「……くっ!」
上弦相手に柱が一人ではだめなのか。杏寿郎さんが押されている!
そしてとうとう杏寿郎さんの額から血が噴き出た!肋骨が折られた!!
目じゃない、けれど。けれど、このままだと……。
『あの時』の怒りを忘れない。悲しみを、悔しさを、憎しみを忘れない。
太陽のような目も、私を強く抱きしめてくれた体も……これ以上傷つけさせていいの?
「弐ノ型・昇り炎天っ!!」
大きく踏み込んだ杏寿郎さんの弐ノ型が燃え上がった。
『あれ』はこのあとだった。
今動かなければ、私の大好きなものがまた一つ失われてしまう!
「離して炭治郎っ伊之助っ!!」
稀血でもあり、柱でない私を行かせないよう押さえてくる二人に肘鉄を食らわす。
炭治郎なんかは顔にあたったのかもしれない。鼻血を出したまま必死に私にしがみついていた。
「だめだ!俺達じゃ……朝緋さんでもだめだ!俺は絶対離さないぞっ!!」
「行っても足手まといだろ!?」
更に羽交締めにし、のし掛かるように拘束する伊之助。
でも私は止まらなかった。
「いいから、どきなさいっ!!」
槇寿朗さんの拘束から逃げた時同様、いや、それよりも強い力で二人を突き飛ばし逃れる。
その勢いのまま、私は自らの炎を手に加勢した。
「はぁぁぁーーっ気炎万象!!」
猗窩座の拳が杏寿郎さんの目に迫る瞬間、刃を間に滑り込ませて軌道を逸らす!
目は無事だ!……けれど、代わりに杏寿郎さんの耳が削がれた。逸らしが甘かった!
目よりまし?そんなわけないでしょう!!
やっぱりこの鬼は絶対殺す。必ず報いを受けさせる。
杏寿郎さんを傷つける鬼の全てを許さない。