二周目 玖
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奴が杏寿郎さんの剣技の腕を誉め、嬉しそうなのに対し、片や手負いの炭治郎から狙う真意が理解できず、怒りと嫌悪感を露わにしている。
弱い人間が大嫌い。
弱者を見ると虫唾が走る。
猗窩座はそうのたまい会話が続き、素晴らしい提案だと杏寿郎さんを鬼になるよう誘った。
即答。ならないに決まってる。
お前お前とうるさいからか、それとも言葉をまともに返せる鬼に多少の敬意を払ってか、杏寿郎さんが名乗りをあげた。敬意は払う必要なしッ!
今一度鬼になろうと、猗窩座がその手を伸ばした。
鬼め……人を喰らった汚い手で、杏寿郎さんに触るなど言語道断だ。
凪いだような怒りが私を駆り立てた。
スパン!!
伸びた手を横から斬り伏せる。
またも手首から先が、どこかへ飛んだ。
……この調子で斬ってたらいつかなくなったりしないかしら。
でもそれだと、国民的パンのヒーローの顔みたいに、その辺に猗窩座の手がゴロゴロすることになりそうで気持ち悪い。ああ、太陽で燃え尽きるか。
「あーら!簡単にすっ飛んだ!虫唾が走る弱者に斬られる気分はどうかしら?」
「こいつ……ッ」
ブチリ、猗窩座の顔に青筋が立った。おおこわ!
でもお前の凄まじい鬼気、そして殺気なんてこちとらもう慣れっこじゃい!いや、めちゃくちゃ怖いけど『前』よりまし!!
「朝緋!いきなり斬りかかるんじゃない!相手は上弦、危険だ!!動くな!!」
ただ怒ったのは、鬼じゃなくて杏寿郎さんだった。しょんぼり。
炭治郎さえも私の突飛な行動にギョッとしていた。
「お前も女にしてはなかなかに強い。良い刀の腕を持っている。
だが、俺はお前を鬼になるよう誘いはしない」
ため息を吐き出した猗窩座の青筋が一瞬で消えた。やはりこの鬼は女に手を出さない……?なぜ??
けどそんなことより、私は怒り心頭のままだよこの鬼め!
「う……うるさいよくものこのこ来やがったなこ、このクソ野郎がぁ!お前如き鬼に剣の腕を誉められても嬉しくないし誘われたって頷くわけないでしょ!!こっちの陣営は誰一人鬼にならないって言ってるの!おとといきやがれ!!」
「「「………………」」」
あまりにひどい暴言と、親指を下に向ける仕草にその場が凍った。
……ねえ何か言ってよ。杏寿郎さんも炭治郎も無言やめて。
ええいこの際鬼でもいいから何か言って。
「朝緋っ!」
「!!っはい!」
「いくら上弦の鬼が相手とはいえ、口が悪すぎやしないか!まるで不死川のような口ぶりだったぞ!」
「しゅみましぇん……」
こちらを見もせずまっすぐ鬼だけを見据えたまま、深いため息と共に言われた。
うう、どこぞの風柱と一緒にしないで欲しい。
「今俺は杏寿郎と話をしている。口の減らん卑しい女め。
お前は死にたかったらどこかで勝手に死ね。俺からは手も出さん」
辟易したような顔でシッシッとあしらわれた。
憤怒と羞恥で刀を持つ手がぷるぷる震えた。
『老いることも死ぬことも人の生の美しさであり、愛おしく尊い。どんなことがあろうと、鬼になることはない』
そうこうしているうちに、杏寿郎さんが鬼という存在をあらためて拒否、拒絶した。
まっすぐに己が信念を言葉にする姿はさすが柱。
だがこの言葉で、これから戦闘が始まるのがわかった。
『前』もそうだった!!
「上弦の鬼、お前フラれたね?交渉決裂ということで……」
握る刀に力をこめ、呼吸の精度を上げる。
「師範とこれ以上の会話なんてさせないし私は死なないし私からは手を出すからねっ!炎の呼吸ーー炎山渦改・六連火!!」
不知火と同じくらい素早い速度の不知火横回転版が、猗窩座を狙う。
斬っても斬っても届かない、大した傷にもならないのはわかっているからこそ、六斬撃もの回数を穿ち放つ。
「根に持つな鬱陶しい蝿女め!貴様邪魔だ!!」
頸にも届くか?そう思われた斬撃が、払われた。刃先を掴まれ、投げ飛ばされる。
まるで大人と赤子のようで悔しい。
「くっ!蝿とは失礼な……っ」
そうして、猗窩座が大きく地均しした。
「杏寿郎ぉ!鬼にならないなら貴様も邪魔だ!殺す……ッ!!」
『あの時』と同じ戦いが再び始まる。
鬼の血鬼術である「破壊殺羅針」という術式が発動した。
地に描かれるのも、かつて見た氷の結晶のような紋様。
この鬼は己の肉体に固執した根っからの武闘派であり、氷系の特殊な技を使うような鬼ではないのになぜに紋様がその模様なのだろう。
実は相手を凍えさせるような何かをまだ隠しているのだろうか?
だが、冷気は全く発生してこず、そこにあるのは鬼が放つ肌を指すような純粋な殺意と狂気だけだった。
飛び散る炎の呼吸の火花。そして拳撃の嵐。目で追うのがやっとの戦い。
いや、『前』よりも確実に追えている!
だが、それだけ。
鬼は一方的に杏寿郎さんに会話を吹っかけながら、空式と呼ばれた拳を宙を舞い打ってくる。
対する杏寿郎さんが、接近戦に持ち込み、炎の呼吸を次々に繰り出し対抗する。
たたらを踏んでいるわけにいかないのに、猛攻の中にいつ飛び込もうか、私は『また』二の足を踏んでいた。
「うお、なんだあの戦い……目で追えねえ!」
伊之助がこちらに合流した。
善逸と禰󠄀豆子ちゃんがいないところを見るに、『前』と同じようにあの二人は疲れ切って共に眠りに落ちているようだ。
仕方ない。あの子達もそれほどの頑張りを見せたのだから。
「目で追えないけど、助太刀に入らなくちゃ……そう思うのに俺……動けないんだ!」
いいんだよ炭治郎。君もまた、伊之助、善逸、禰󠄀豆子ちゃんと同じように十分頑張った!
悔しそうに言葉をこぼす炭治郎を、伊之助に任せた。
弱い人間が大嫌い。
弱者を見ると虫唾が走る。
猗窩座はそうのたまい会話が続き、素晴らしい提案だと杏寿郎さんを鬼になるよう誘った。
即答。ならないに決まってる。
お前お前とうるさいからか、それとも言葉をまともに返せる鬼に多少の敬意を払ってか、杏寿郎さんが名乗りをあげた。敬意は払う必要なしッ!
今一度鬼になろうと、猗窩座がその手を伸ばした。
鬼め……人を喰らった汚い手で、杏寿郎さんに触るなど言語道断だ。
凪いだような怒りが私を駆り立てた。
スパン!!
伸びた手を横から斬り伏せる。
またも手首から先が、どこかへ飛んだ。
……この調子で斬ってたらいつかなくなったりしないかしら。
でもそれだと、国民的パンのヒーローの顔みたいに、その辺に猗窩座の手がゴロゴロすることになりそうで気持ち悪い。ああ、太陽で燃え尽きるか。
「あーら!簡単にすっ飛んだ!虫唾が走る弱者に斬られる気分はどうかしら?」
「こいつ……ッ」
ブチリ、猗窩座の顔に青筋が立った。おおこわ!
でもお前の凄まじい鬼気、そして殺気なんてこちとらもう慣れっこじゃい!いや、めちゃくちゃ怖いけど『前』よりまし!!
「朝緋!いきなり斬りかかるんじゃない!相手は上弦、危険だ!!動くな!!」
ただ怒ったのは、鬼じゃなくて杏寿郎さんだった。しょんぼり。
炭治郎さえも私の突飛な行動にギョッとしていた。
「お前も女にしてはなかなかに強い。良い刀の腕を持っている。
だが、俺はお前を鬼になるよう誘いはしない」
ため息を吐き出した猗窩座の青筋が一瞬で消えた。やはりこの鬼は女に手を出さない……?なぜ??
けどそんなことより、私は怒り心頭のままだよこの鬼め!
「う……うるさいよくものこのこ来やがったなこ、このクソ野郎がぁ!お前如き鬼に剣の腕を誉められても嬉しくないし誘われたって頷くわけないでしょ!!こっちの陣営は誰一人鬼にならないって言ってるの!おとといきやがれ!!」
「「「………………」」」
あまりにひどい暴言と、親指を下に向ける仕草にその場が凍った。
……ねえ何か言ってよ。杏寿郎さんも炭治郎も無言やめて。
ええいこの際鬼でもいいから何か言って。
「朝緋っ!」
「!!っはい!」
「いくら上弦の鬼が相手とはいえ、口が悪すぎやしないか!まるで不死川のような口ぶりだったぞ!」
「しゅみましぇん……」
こちらを見もせずまっすぐ鬼だけを見据えたまま、深いため息と共に言われた。
うう、どこぞの風柱と一緒にしないで欲しい。
「今俺は杏寿郎と話をしている。口の減らん卑しい女め。
お前は死にたかったらどこかで勝手に死ね。俺からは手も出さん」
辟易したような顔でシッシッとあしらわれた。
憤怒と羞恥で刀を持つ手がぷるぷる震えた。
『老いることも死ぬことも人の生の美しさであり、愛おしく尊い。どんなことがあろうと、鬼になることはない』
そうこうしているうちに、杏寿郎さんが鬼という存在をあらためて拒否、拒絶した。
まっすぐに己が信念を言葉にする姿はさすが柱。
だがこの言葉で、これから戦闘が始まるのがわかった。
『前』もそうだった!!
「上弦の鬼、お前フラれたね?交渉決裂ということで……」
握る刀に力をこめ、呼吸の精度を上げる。
「師範とこれ以上の会話なんてさせないし私は死なないし私からは手を出すからねっ!炎の呼吸ーー炎山渦改・六連火!!」
不知火と同じくらい素早い速度の不知火横回転版が、猗窩座を狙う。
斬っても斬っても届かない、大した傷にもならないのはわかっているからこそ、六斬撃もの回数を穿ち放つ。
「根に持つな鬱陶しい蝿女め!貴様邪魔だ!!」
頸にも届くか?そう思われた斬撃が、払われた。刃先を掴まれ、投げ飛ばされる。
まるで大人と赤子のようで悔しい。
「くっ!蝿とは失礼な……っ」
そうして、猗窩座が大きく地均しした。
「杏寿郎ぉ!鬼にならないなら貴様も邪魔だ!殺す……ッ!!」
『あの時』と同じ戦いが再び始まる。
鬼の血鬼術である「破壊殺羅針」という術式が発動した。
地に描かれるのも、かつて見た氷の結晶のような紋様。
この鬼は己の肉体に固執した根っからの武闘派であり、氷系の特殊な技を使うような鬼ではないのになぜに紋様がその模様なのだろう。
実は相手を凍えさせるような何かをまだ隠しているのだろうか?
だが、冷気は全く発生してこず、そこにあるのは鬼が放つ肌を指すような純粋な殺意と狂気だけだった。
飛び散る炎の呼吸の火花。そして拳撃の嵐。目で追うのがやっとの戦い。
いや、『前』よりも確実に追えている!
だが、それだけ。
鬼は一方的に杏寿郎さんに会話を吹っかけながら、空式と呼ばれた拳を宙を舞い打ってくる。
対する杏寿郎さんが、接近戦に持ち込み、炎の呼吸を次々に繰り出し対抗する。
たたらを踏んでいるわけにいかないのに、猛攻の中にいつ飛び込もうか、私は『また』二の足を踏んでいた。
「うお、なんだあの戦い……目で追えねえ!」
伊之助がこちらに合流した。
善逸と禰󠄀豆子ちゃんがいないところを見るに、『前』と同じようにあの二人は疲れ切って共に眠りに落ちているようだ。
仕方ない。あの子達もそれほどの頑張りを見せたのだから。
「目で追えないけど、助太刀に入らなくちゃ……そう思うのに俺……動けないんだ!」
いいんだよ炭治郎。君もまた、伊之助、善逸、禰󠄀豆子ちゃんと同じように十分頑張った!
悔しそうに言葉をこぼす炭治郎を、伊之助に任せた。