幕間 ノ 参
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目の前に差し出された皿と箸。
多少焦げたと言った、杏寿郎さん作の玉子焼き。
多少……これ多少なんだ?
最後の最後で火力つよつよ昇り炎天!にでもしたのか、焦げたどころじゃなくて、裏が完全に炭化している。
どうやって皿に乗せた?
でもまあ、形も几帳面な杏寿郎さんらしく、初めてなりに綺麗に巻かれている。几帳面なら、なぜ鍋の時に具材を切らなかったのかという話ではあるが。
そのあたり及第点。杏寿郎さんが真剣に玉子焼きを巻く姿、見たかったなぁ〜。絶対惚れ直す。
いや、そんな感動してる場合じゃない。肝心なのは味だ。炭になったくらいなんだ!
世の中には薬と称して、何かの黒焼きを丸呑みにする文化だってある!私も丸呑みにすればいい。
味付けは何だろう?なんかすごい匂いする……カレーのオールスパイスのように、いろんなものを混ぜることで味に深みを出すような、そんなものとは全く違う。
臭いとかそういうのでもないけれど、躊躇する感じのものだ。
「……食べないのか?」
『杏寿郎はしょんぼりしている!』を体現する眉毛と、前髪。
下がり眉とくったりしている前髪は、杏寿郎さんが心から落ち込んだ時の特徴だ。なぜか、私の前でばかり見せてくれるけれど。
「あっ食べる!食べるよ!?ちょっと観察してただけで、杏寿郎兄さんが作った玉子焼き、私食べてみたかったんだぁーーーっ!」
何度も言うけど食べられないとは絶対に言わない。
だってだってだって杏寿郎さんが他でもない私のために作ってくれたものだもの〜!!
女は度胸だ!箸をとり勢いつけてぱくっ!
んっ?……甘っ!!しょっぱ!!なのに。にが!にがい!!それに鼻にツンとくるくらい塩辛くて酸っぱ!
って、えええからい!からい!!!口から火が出……、
最後にまた甘くて劇物級にからいーー!?
「んぐゥッ……!」
自身の顔色が青くなって、赤くなって、白くなって、黒くなって……そしてまた青くなったのがなんとなく自分でもわかった。
「朝緋?おーい、朝緋ーー??どうした?美味しいか?」
箸を手にしたまま無言で動かなくなった私の肩を掴み、左右にガクガク揺さぶる杏寿郎さん。
うへぇ、揺らさないで……吐くというより、魂出ちゃう。
「……ああ遅かった……食べてしまわれたのですね」
「せん、じゅろ……ぉ?」
急ぎ戻ってきてくれた千寿郎を見たあと、私は布団の上に倒れ込んで顔を枕に埋めた。
それでも、感想を伝えねば。死んでも杏寿郎さんに伝えねば!
鬼殺隊に入ろうとする乙女の根性、ここでも発揮してやろうじゃないのさ。こんなことで倒れてたまるか。
私の根性の使い方は、普通とずれていた。
「ゥゥ゛、……………んん゛ッ!……ぉいじい、です……よ?」
「姉上、無理をなさらない方が」
「せんっ、千寿、ろっ!私のどこが無理じでる゛の゛っっ!
ごふッ……きょじゅろ兄゛ざん……おいしかっだ……です…………」
最後の『です』は、DEATHの意味が入っている。
それくらいその……すごい味だった。
ガクッ。
伝え終えて満足した私は、安らかに眠った。ちーーーん!
死んでない死んでない。
「そうかそうか!震えて倒れるほど美味かったか!
元気になるよう梅肉と!体が温まるようにと鷹の爪を一掴み入れてみたのだが正解なようだな!ならもっと食べるといい!」
「残りは兄上が食べるといいと思います。
姉上はもうお休みになられました」
「まだ少ししか食べてない!食事をとらんと治るものも治らないぞ。鍋はどうした!起こして食べさせるべきだ」
「姉上はもうお休みになられます。
鍋は兄上が責任持って食べましょう」
「だが!」
「兄上」
「………………」
母・瑠火そっくりな厳しい目を前に、さすがの杏寿郎さんも何も言えなくなったらしい。
そして千寿郎が慌てて駆け込んだ厨では、玉子焼きに使った平鍋が黒焦げで、なんならどうやったのか天井と壁にも焦げがついて天然の黒い壁紙の部屋と化していたらしい。
聞くと、炎の呼吸というより宇髄さんの音の呼吸かな?ここで何か爆発した?という惨状。
聞けば聞くほど、ああやっぱり炎の呼吸弐ノ型昇り炎天して、火事起こしかけたんだね……。と思いたくなる話だった。
そうして出来上がったありとあらゆる焦げは、落とすの大変だったとのこと。
仕事が増えた千寿郎の怒りは、それはもう私が震え上がるほどだった。
結局軽く火事騒ぎは起こすし、杏寿郎さんは決して厨に入らせては行けないタイプのメシマズ男だった。
でも、杏寿郎さんが千寿郎から「メシマズ」と言われて自尊心が傷ついたことを、私は知らない。
雑炊?千寿郎の手によって作り直されたので美味しくいただきました。
あっ!そうそう!
玉子焼きにはね、最初に誰もが失敗で通る道の卵の殻はひとつも入ってなかったらしいよ!!
卵液を混ぜる前によーく確認したんだって。
愛情を感じて、杏寿郎さん大好きぃー!ってなりました。
多少焦げたと言った、杏寿郎さん作の玉子焼き。
多少……これ多少なんだ?
最後の最後で火力つよつよ昇り炎天!にでもしたのか、焦げたどころじゃなくて、裏が完全に炭化している。
どうやって皿に乗せた?
でもまあ、形も几帳面な杏寿郎さんらしく、初めてなりに綺麗に巻かれている。几帳面なら、なぜ鍋の時に具材を切らなかったのかという話ではあるが。
そのあたり及第点。杏寿郎さんが真剣に玉子焼きを巻く姿、見たかったなぁ〜。絶対惚れ直す。
いや、そんな感動してる場合じゃない。肝心なのは味だ。炭になったくらいなんだ!
世の中には薬と称して、何かの黒焼きを丸呑みにする文化だってある!私も丸呑みにすればいい。
味付けは何だろう?なんかすごい匂いする……カレーのオールスパイスのように、いろんなものを混ぜることで味に深みを出すような、そんなものとは全く違う。
臭いとかそういうのでもないけれど、躊躇する感じのものだ。
「……食べないのか?」
『杏寿郎はしょんぼりしている!』を体現する眉毛と、前髪。
下がり眉とくったりしている前髪は、杏寿郎さんが心から落ち込んだ時の特徴だ。なぜか、私の前でばかり見せてくれるけれど。
「あっ食べる!食べるよ!?ちょっと観察してただけで、杏寿郎兄さんが作った玉子焼き、私食べてみたかったんだぁーーーっ!」
何度も言うけど食べられないとは絶対に言わない。
だってだってだって杏寿郎さんが他でもない私のために作ってくれたものだもの〜!!
女は度胸だ!箸をとり勢いつけてぱくっ!
んっ?……甘っ!!しょっぱ!!なのに。にが!にがい!!それに鼻にツンとくるくらい塩辛くて酸っぱ!
って、えええからい!からい!!!口から火が出……、
最後にまた甘くて劇物級にからいーー!?
「んぐゥッ……!」
自身の顔色が青くなって、赤くなって、白くなって、黒くなって……そしてまた青くなったのがなんとなく自分でもわかった。
「朝緋?おーい、朝緋ーー??どうした?美味しいか?」
箸を手にしたまま無言で動かなくなった私の肩を掴み、左右にガクガク揺さぶる杏寿郎さん。
うへぇ、揺らさないで……吐くというより、魂出ちゃう。
「……ああ遅かった……食べてしまわれたのですね」
「せん、じゅろ……ぉ?」
急ぎ戻ってきてくれた千寿郎を見たあと、私は布団の上に倒れ込んで顔を枕に埋めた。
それでも、感想を伝えねば。死んでも杏寿郎さんに伝えねば!
鬼殺隊に入ろうとする乙女の根性、ここでも発揮してやろうじゃないのさ。こんなことで倒れてたまるか。
私の根性の使い方は、普通とずれていた。
「ゥゥ゛、……………んん゛ッ!……ぉいじい、です……よ?」
「姉上、無理をなさらない方が」
「せんっ、千寿、ろっ!私のどこが無理じでる゛の゛っっ!
ごふッ……きょじゅろ兄゛ざん……おいしかっだ……です…………」
最後の『です』は、DEATHの意味が入っている。
それくらいその……すごい味だった。
ガクッ。
伝え終えて満足した私は、安らかに眠った。ちーーーん!
死んでない死んでない。
「そうかそうか!震えて倒れるほど美味かったか!
元気になるよう梅肉と!体が温まるようにと鷹の爪を一掴み入れてみたのだが正解なようだな!ならもっと食べるといい!」
「残りは兄上が食べるといいと思います。
姉上はもうお休みになられました」
「まだ少ししか食べてない!食事をとらんと治るものも治らないぞ。鍋はどうした!起こして食べさせるべきだ」
「姉上はもうお休みになられます。
鍋は兄上が責任持って食べましょう」
「だが!」
「兄上」
「………………」
母・瑠火そっくりな厳しい目を前に、さすがの杏寿郎さんも何も言えなくなったらしい。
そして千寿郎が慌てて駆け込んだ厨では、玉子焼きに使った平鍋が黒焦げで、なんならどうやったのか天井と壁にも焦げがついて天然の黒い壁紙の部屋と化していたらしい。
聞くと、炎の呼吸というより宇髄さんの音の呼吸かな?ここで何か爆発した?という惨状。
聞けば聞くほど、ああやっぱり炎の呼吸弐ノ型昇り炎天して、火事起こしかけたんだね……。と思いたくなる話だった。
そうして出来上がったありとあらゆる焦げは、落とすの大変だったとのこと。
仕事が増えた千寿郎の怒りは、それはもう私が震え上がるほどだった。
結局軽く火事騒ぎは起こすし、杏寿郎さんは決して厨に入らせては行けないタイプのメシマズ男だった。
でも、杏寿郎さんが千寿郎から「メシマズ」と言われて自尊心が傷ついたことを、私は知らない。
雑炊?千寿郎の手によって作り直されたので美味しくいただきました。
あっ!そうそう!
玉子焼きにはね、最初に誰もが失敗で通る道の卵の殻はひとつも入ってなかったらしいよ!!
卵液を混ぜる前によーく確認したんだって。
愛情を感じて、杏寿郎さん大好きぃー!ってなりました。