二周目 玖
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時間が経ってしまった。そこまでの時間ではないけれど、炭治郎に約束した百秒は少し超えてしまっている。
申し訳ないことをしたなあ。
お詫び代わりにと、途中に蔓延る鬼の触腕をしっかり処理しながら、全速力で炭治郎の元へと向かう。
かくして、半分を過ぎたあたりに炭治郎はいた。際限なく増える鬼の肉を前に、苦心しているようだった。
「竈門少年っ!」
「炭治郎っよく守ってくれたねありがとうっ!」
蹲る彼を見下ろして、上からかぶせて声をかける。炭治郎はいきなりの杏寿郎さんの大声におどろいていた。
「煉獄さん!朝緋さんっ!」
杏寿郎さんは早口で以って、炭治郎に指示を出した。
八両編成の内杏寿郎さんは後方五両、善逸と禰󠄀豆子ちゃんは前方の三両を守り、炭治郎と伊之助は鬼の首を探す。
ちなみに途中で見かけた伊之助にも既に同様の指示は出してある。あの子、自分より強い者相手だと結構素直だ。大人しく聞いてくれた。
「俺のところは心配ない!朝緋は黄色い少年と竈門妹の三両を手伝い余裕あれば竈門少年達に手を貸せ!やれるな!?」
気合を入れろ!とご自身が守る車両へ戻っていく。ここから別行動ってわけか。
相変わらずお速い……私の返事聞く前に行っちゃったわ。
「炭治郎、行くよっ!」
「は、はいっ」
杏寿郎さんの移動の速さや判断の早さにあんぐり口を開けて放心する炭治郎を立たせると、私達も前へと移動を開始した。
と言っても私はすぐ前の車両でお別れだ。
善逸達が守る三両の内、前側を少しの間守らせてもらう。
……それにしても杏寿郎さんは五両を一人で。『前』もそうだったけど、本当に凄い。
逆に今回の私はとても楽である。だって『前』は全車両の取り残しを斬って回っていたものね。
足に回していた体力が温存できるのはありがたいけれど、こんなに楽していいのかしら。
際限なく湧いてくる鬼の肉塊を斬りながら、車両の上を走る気配を探知する。この足音の感じ、伊之助だな。
「伊之助は上よっ!炭治郎も上に行って!」
「わかりまし……うぇぇっ!?」
「ヨイショオーッ!」
炭治郎を担ぐと、割った窓から車両の上側へと放り投げる。上手に着地した炭治郎にひらひらと手を振り鬼の頸を任せる。
「いってらっしゃ〜い」
「あ、ありがとうございます!」
その後列車の上からは伊之助の大きい声が響いていた。その大きな声と会話してるからか、炭治郎の声もなかなかに大きい。
……なるほどなるほど。伊之助が漆の型とやらで、鬼の急所を見つけているらしい。
鬼の頸はやはり前方。石炭が積まれている、運転席の付近。
あンの蚯蚓鬼、ほんっとにいつから前方に蔓延って……近くを張っておけばよかったかも?ううん、それだと警戒して出てこない、か。
この鬼はやたら警戒心が強い。
石橋を何十何百と叩いて渡るレベルにだ。
でも石橋だっていつかは壊れる。同じところを何十何百と叩いていればその強度は脆くなり、渡っている途中で崩れることもある。
それを忘れてはいけない。
斬っていれば、鬼の悲鳴が列車の中に響き渡った。列車内の肉壁が悲鳴に合わせて震え上がる。
ただ、今の悲鳴……まだ頸は取れていない。
強い攻撃で怯んだだけだ。
おかげでか、いよいよ鬼の胎内という感じが本格化してきた。
鬼というか、列車の化け物だわ。妖怪変化の類い。もう大正時代なんだから、妖怪は山へどうぞお帰りください。
斬られて力が足りなくなったか、より一層触腕の勢いが増した。向かってくる触腕を捌くのもいい加減疲れる……。
私も、乗客も喰われてなるものか!
でもきりがない!!
一か八か、消耗は激しいが大きい技を出すしかないか。そう思った時。
バチバチと火花、いや、雷が放たれる前のような音がした。次いで、それが落ちる轟音。
そう何度もは放つことは難しそうだな、なんて思っていた善逸の霹靂一閃が六連、走り抜けた。
続け様に禰󠄀豆子ちゃんが私の隣に降り立ち、肉壁を抉る。
二人とも、くぁっこいい〜〜っ!
「善逸……っ禰󠄀豆子ちゃん……っ」
来てくれて助かった!
三両の助っ人としての私の事を杏寿郎さんから聞いたのかもしれない。これではどちらが助っ人だかわかったものじゃないけどね。
しかし善逸にも禰󠄀豆子ちゃんにも疲労は見て取れる。それは私よりも明らかだ。
仕方ない、彼はまだ私よりも階級も経験も下なのだから……。
「…………朝緋さんは前へ」
「ムー!」
眠ったままなのに話せている!?
いや、そんな事に驚いてる場合じゃない。
その疲れがあってもなお、私を前に行かせてくれようとしているのか。
「ありがとうっ!
私は行くね、ここは任せた!!」
二人はこくりと頷き、再び鬼の肉壁の戦いへと身を投じた。
私も炭治郎達のように上に上がり、前方の運転車両へと到着する。……と、気色の悪い光景が広がっていた。
「ヒィッなにこれキモッッ!!」
ここだけ鬼の肉壁がおかしなほどわんさか湧いているし、形状も窪み形の肉壁と、おかしすぎる。
決戦のバトルフィールド再び!?
第一回目のフィールド、槇寿朗さんの部屋よりおどろおどろしいんですけど。
それにすごい臭気……っ!
そちらにばかり気を取られがちだったがよく見れば炭治郎が腹を押さえながら、気を失っているらしい運転士を引っ張っているところだった。
「炭治郎、大丈夫!?何があった?」
「来たのかまだら!!」
「ええ、少しでも助けになればと」
「朝緋……さん……ぐっ、」
唸る炭治郎の顔に浮かぶ脂汗。そして腹からは血の匂い。黒いからわかりづらいが、隊服には血が滲んでいた。
「紋次郎がこいつにぶっ刺された!」
「えええ!?」
紋次郎誰だよ!いや、多分伊之助も杏寿郎さんと同じかそれ以上の名前覚えられない病だ!つまり紋次郎は炭治郎のことだろう。
覚えられない理由は杏寿郎さんと違うと思うけど。
杏寿郎さんは覚えられないのではない、覚える気がないだけなのだから。
それにしてもこの人も鬼の協力者ってことか。
してやられた……まさか運転してる人まで鬼側だとは……。乗客が全員眠らされてしまうわけだ。
その人を受け取り、少し離れた位置に寝かせる。鬼に協力していようとこの人も市井の人。守るべき存在だ。
裁くとしたら警察だ。それも鬼殺隊の息がかかった……ね。
警察の中にも一応、鬼殺隊の存在を認め、助力してくれている者がいる。政府の中にもだ。
だからこそ鬼殺隊はこれまで存続して来れているわけで。
周りに目玉の残骸のようなものが転がっているがそんなものどうでもいい。鬼の頸なんて斬ってしまえば問題ない。
「状況報告。鬼の頸は?」
「この真下、です」
「ああ、くそみたいにでかいぜ!」
腕のような肉壁で覆われた不自然な場所。そこの真下に鬼の頸が納められているようだった。
「よし、ならちゃっちゃと斬……」
鬼の殺気が強くなったのは、炎の呼吸を吐き出しながら私が日輪刀を向けた瞬間だった。
申し訳ないことをしたなあ。
お詫び代わりにと、途中に蔓延る鬼の触腕をしっかり処理しながら、全速力で炭治郎の元へと向かう。
かくして、半分を過ぎたあたりに炭治郎はいた。際限なく増える鬼の肉を前に、苦心しているようだった。
「竈門少年っ!」
「炭治郎っよく守ってくれたねありがとうっ!」
蹲る彼を見下ろして、上からかぶせて声をかける。炭治郎はいきなりの杏寿郎さんの大声におどろいていた。
「煉獄さん!朝緋さんっ!」
杏寿郎さんは早口で以って、炭治郎に指示を出した。
八両編成の内杏寿郎さんは後方五両、善逸と禰󠄀豆子ちゃんは前方の三両を守り、炭治郎と伊之助は鬼の首を探す。
ちなみに途中で見かけた伊之助にも既に同様の指示は出してある。あの子、自分より強い者相手だと結構素直だ。大人しく聞いてくれた。
「俺のところは心配ない!朝緋は黄色い少年と竈門妹の三両を手伝い余裕あれば竈門少年達に手を貸せ!やれるな!?」
気合を入れろ!とご自身が守る車両へ戻っていく。ここから別行動ってわけか。
相変わらずお速い……私の返事聞く前に行っちゃったわ。
「炭治郎、行くよっ!」
「は、はいっ」
杏寿郎さんの移動の速さや判断の早さにあんぐり口を開けて放心する炭治郎を立たせると、私達も前へと移動を開始した。
と言っても私はすぐ前の車両でお別れだ。
善逸達が守る三両の内、前側を少しの間守らせてもらう。
……それにしても杏寿郎さんは五両を一人で。『前』もそうだったけど、本当に凄い。
逆に今回の私はとても楽である。だって『前』は全車両の取り残しを斬って回っていたものね。
足に回していた体力が温存できるのはありがたいけれど、こんなに楽していいのかしら。
際限なく湧いてくる鬼の肉塊を斬りながら、車両の上を走る気配を探知する。この足音の感じ、伊之助だな。
「伊之助は上よっ!炭治郎も上に行って!」
「わかりまし……うぇぇっ!?」
「ヨイショオーッ!」
炭治郎を担ぐと、割った窓から車両の上側へと放り投げる。上手に着地した炭治郎にひらひらと手を振り鬼の頸を任せる。
「いってらっしゃ〜い」
「あ、ありがとうございます!」
その後列車の上からは伊之助の大きい声が響いていた。その大きな声と会話してるからか、炭治郎の声もなかなかに大きい。
……なるほどなるほど。伊之助が漆の型とやらで、鬼の急所を見つけているらしい。
鬼の頸はやはり前方。石炭が積まれている、運転席の付近。
あンの蚯蚓鬼、ほんっとにいつから前方に蔓延って……近くを張っておけばよかったかも?ううん、それだと警戒して出てこない、か。
この鬼はやたら警戒心が強い。
石橋を何十何百と叩いて渡るレベルにだ。
でも石橋だっていつかは壊れる。同じところを何十何百と叩いていればその強度は脆くなり、渡っている途中で崩れることもある。
それを忘れてはいけない。
斬っていれば、鬼の悲鳴が列車の中に響き渡った。列車内の肉壁が悲鳴に合わせて震え上がる。
ただ、今の悲鳴……まだ頸は取れていない。
強い攻撃で怯んだだけだ。
おかげでか、いよいよ鬼の胎内という感じが本格化してきた。
鬼というか、列車の化け物だわ。妖怪変化の類い。もう大正時代なんだから、妖怪は山へどうぞお帰りください。
斬られて力が足りなくなったか、より一層触腕の勢いが増した。向かってくる触腕を捌くのもいい加減疲れる……。
私も、乗客も喰われてなるものか!
でもきりがない!!
一か八か、消耗は激しいが大きい技を出すしかないか。そう思った時。
バチバチと火花、いや、雷が放たれる前のような音がした。次いで、それが落ちる轟音。
そう何度もは放つことは難しそうだな、なんて思っていた善逸の霹靂一閃が六連、走り抜けた。
続け様に禰󠄀豆子ちゃんが私の隣に降り立ち、肉壁を抉る。
二人とも、くぁっこいい〜〜っ!
「善逸……っ禰󠄀豆子ちゃん……っ」
来てくれて助かった!
三両の助っ人としての私の事を杏寿郎さんから聞いたのかもしれない。これではどちらが助っ人だかわかったものじゃないけどね。
しかし善逸にも禰󠄀豆子ちゃんにも疲労は見て取れる。それは私よりも明らかだ。
仕方ない、彼はまだ私よりも階級も経験も下なのだから……。
「…………朝緋さんは前へ」
「ムー!」
眠ったままなのに話せている!?
いや、そんな事に驚いてる場合じゃない。
その疲れがあってもなお、私を前に行かせてくれようとしているのか。
「ありがとうっ!
私は行くね、ここは任せた!!」
二人はこくりと頷き、再び鬼の肉壁の戦いへと身を投じた。
私も炭治郎達のように上に上がり、前方の運転車両へと到着する。……と、気色の悪い光景が広がっていた。
「ヒィッなにこれキモッッ!!」
ここだけ鬼の肉壁がおかしなほどわんさか湧いているし、形状も窪み形の肉壁と、おかしすぎる。
決戦のバトルフィールド再び!?
第一回目のフィールド、槇寿朗さんの部屋よりおどろおどろしいんですけど。
それにすごい臭気……っ!
そちらにばかり気を取られがちだったがよく見れば炭治郎が腹を押さえながら、気を失っているらしい運転士を引っ張っているところだった。
「炭治郎、大丈夫!?何があった?」
「来たのかまだら!!」
「ええ、少しでも助けになればと」
「朝緋……さん……ぐっ、」
唸る炭治郎の顔に浮かぶ脂汗。そして腹からは血の匂い。黒いからわかりづらいが、隊服には血が滲んでいた。
「紋次郎がこいつにぶっ刺された!」
「えええ!?」
紋次郎誰だよ!いや、多分伊之助も杏寿郎さんと同じかそれ以上の名前覚えられない病だ!つまり紋次郎は炭治郎のことだろう。
覚えられない理由は杏寿郎さんと違うと思うけど。
杏寿郎さんは覚えられないのではない、覚える気がないだけなのだから。
それにしてもこの人も鬼の協力者ってことか。
してやられた……まさか運転してる人まで鬼側だとは……。乗客が全員眠らされてしまうわけだ。
その人を受け取り、少し離れた位置に寝かせる。鬼に協力していようとこの人も市井の人。守るべき存在だ。
裁くとしたら警察だ。それも鬼殺隊の息がかかった……ね。
警察の中にも一応、鬼殺隊の存在を認め、助力してくれている者がいる。政府の中にもだ。
だからこそ鬼殺隊はこれまで存続して来れているわけで。
周りに目玉の残骸のようなものが転がっているがそんなものどうでもいい。鬼の頸なんて斬ってしまえば問題ない。
「状況報告。鬼の頸は?」
「この真下、です」
「ああ、くそみたいにでかいぜ!」
腕のような肉壁で覆われた不自然な場所。そこの真下に鬼の頸が納められているようだった。
「よし、ならちゃっちゃと斬……」
鬼の殺気が強くなったのは、炎の呼吸を吐き出しながら私が日輪刀を向けた瞬間だった。