二周目 玖
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「うん、やったね炭治郎!」
労いの言葉をかけるも、首を落とした張本人である炭治郎は突如として険しい表情に変わり、それを崩さない。
聞けば鬼の頸を斬った手応えがなかったとのこと。
「え、これが鬼の本体じゃない……?」
これも夢?なんて言い始める始末。
確かに、なかなか崩壊が始まらないから不安だよね。頸を取られた鬼の首って普通は体の崩壊がすぐ始まるもの。
止めなかったら、これも夢かもしれないからと自分の首を切るなんて言い始めそうだったので、ギリギリと強く頬を引っ張ってあげた。
痛い痛いと嫌がる顔は、年相応の男の子でかわいい。まだ少しもちもちしている頬っぺたも、触り心地が良くてたまらない。
先程までの鬼気迫る表情はどこへやらだ。
「あの方が……」
「ぴぇっ!」
わーにん!わーにん!ホラー案件発生!
切り落とした首が喋った!!
後ろに隠れるための杏寿郎さん……は、いないから代わりに炭治郎の後ろに隠れる。
おい階級甲だろ煉獄朝緋。下の子の背に隠れて情けないやつだ。そう思うけど無理。
だってさ?たまーに首のままおしゃべりする鬼も確かにいるけどさ?好きじゃないんだもの!
見るたび心臓が口からまろび出そうなくらいびっくりしちゃうから、生首でおしゃべりするのは本当にやめてほしい。
せめて首をくっつけてもらってから……は、助けるのと同じか。
鬼殺隊士としてやっちゃ駄目でしょ。
「柱に加えて耳飾りの君を殺せって言った気持ち、すごくよくわかったよ」
ぼこっ!そんな音が聞こえてくるようだ。
頸を中心として肉の塊が上へ上へ、そして横へ広がるように盛り上がってきた。
「うわ……きもちわるっ」
生肉が腐り始めたような匂いも発生している。はっきり言って臭い。
多分、鼻のきく炭治郎はもっともっと臭い思いをしているんだろう。想像しただけでつらい。
「存在自体がなんかこう、とにかく癪に触ってくる感じ?」
言いながら天空まで伸びるほどに膨れ上がった鬼の肉塊の頂点から、切った頸がぴょこんと飛び出した。
わーーーー!初見の時に斬ったやつそのままぁぁぁ!これぞジャイアントワーム!!
ぶわーっと鳥肌がたった。
炭治郎の驚愕の顔。そしてトラウマを前に真っ青になる私の顔。
この顔こそが、鬼の好物のようだ。
見たかった顔だと恍惚の表情を浮かべる首を揺らしながら、ウネウネと左右に動く鬼。
私はお前の顔なんて見たくなかった!
それ以上動かないで頼むから。頼むから!!
気分が高揚している鬼は、ご丁寧にも今がどういう状況なのかを教えてくれた。
お前らが斬ったのはすでに本体ではない。
この列車そのものが鬼の血であり肉であり骨。
内部はすでに鬼の体の中。
乗客二百人余りは餌であり人質である。
と。
まじですか。『前』にまるで鬼の胃袋だと言った気がするけれどそれはそのまま当たっていた。こんなことは当たってほしくなかった!
乗客に加え私も食べられてしまった場合の被害などは、絶大なものになるだろう。
一人で人間百人分ノ稀血と乗客二百人。合わせて三百ほど。
そんな事にでもなればこの鬼が上弦の鬼へと地位をあげる可能性も高い。夢を操る能力もかなり向上するだろう。……裏から鬼殺隊や人間社会を壊滅させられるほどには。
最善を考える時は最悪も想定しておくのは大事なため至った考えだが、恐ろしすぎる。
とにかく、気をつけなければいけない。
そうして、守り切れる?お預けさせられるならしてみてよ?と私達を鬼は煽ってくる。
煽りの呼吸使うなし!キィィー!何て性格の悪い鬼だろうか!!
本体ではないし斬ったところで無意味なのはわかっている。
けれど私は笑みを浮かべる肉塊の頸を壱ノ型で斬り捨てた。斬った頸も肉片ごと列車へと吸収された。手のひらの形の肉塊で「ばいばーい」とこちらへひらひら振りながら。
んもうっ!腹立つ!!
「ああああ遅かった!遅かった!悔しい!」
だあん、とブーツを踏みしめる。私の馬鹿力を前に列車の外装がメキョリとへこむ。
あの鬼、すでに列車と融合していた!
そもそもこの時間でもすでに融合って、一体いつから融合しているの!?
やっぱり列車ごと破壊しておけばよかったって事?
……いや、それでも前方が怪しい!先に連結部分を切り離してしまえばよかったかもしれない。
ううん、いい。考えても仕方ない。
今すべきことは。
炭治郎と顔を見合わせ、列車の上を駆ける。
杏寿郎さんや他のみんなの名を、起きるよう大声で呼びかけながら。
ただ、起きている気配はない。寝起きがいいはずの杏寿郎さんが起きている感じも全くしない。
もぉぉぉ!同じお寝坊さんになるなら私が悪戯する朝にしてよねっ。
窓を突き破り車両の中へ戻ると、そこはすでに鬼の肉で溢れていた。
早速鬼の肉を斬り払う。
通常の鬼の肉体同様、それらは斬ったそばから燃え滓のように消えていった。
でもこの状況、この肉塊の量。炭治郎や階級の下の子……それに私で捌ききるのは不可能。
力ある者が、柱が必要だと判断する。
「炭治郎!百数える間でいい、この辺りの乗客を他の子と守って!私は寝坊助柱を起こしてくるッ」
「寝坊助柱……?煉獄さんか!!
でも!俺が守れるのは二両が限界で……!
それに俺達はここ一帯任せられるほど強くは……っ」
不安げに揺れる瞳を気にする余裕などない。
細かな斬撃を複数回繰り出せる技、伍ノ型炎虎の改良版を繰り出しながら、私は炭治郎に檄を、そして指示を飛ばした。
「守れる範囲でいい!直に伊之助も起きる!協力しなさい!
貴方には禰󠄀豆子ちゃんもいるでしょ!!
私は貴方達兄妹を信じてるっ!!」
出来ないじゃない、やるのだ。
炭治郎は強い子。禰󠄀豆子ちゃんも強い。伊之助や善逸もだ。
そして信じると言った私の強い瞳に、炭治郎も感化され励まされたよう。
「ありがとうございます!
ですがなぜ伊之助は直ぐ起きると!?」
「勘!」
いや、これがあの時と同じならば、禰󠄀豆子ちゃんがそろそろ伊之助を火だるまにして起こすはずだからだ。
逆に善逸は禰󠄀豆子ちゃんの血鬼術で火だるまにされていたとしても、無理に起こさない方がいいだろう。
確かあの子は睡剣の使い手だったはず。なら眠っていた方が強いのかもしれない。
起きている時だって、弱くなんてなさそうなのに。足腰は私と変わらないくらい強そうなのにももったいない子だ。
自己肯定感が少し低めな感じがする。もしかして獪岳はそこが気に入らないのかな?
とりあえずあの子は、鬼殺に対する自己の考え方、精神面を鍛えるべきだ。
この任務が終わったら炭治郎、伊之助と共に彼のこともびしびし鍛えてやらねば。
しかし今考えるべきは鬼の討伐だ。
労いの言葉をかけるも、首を落とした張本人である炭治郎は突如として険しい表情に変わり、それを崩さない。
聞けば鬼の頸を斬った手応えがなかったとのこと。
「え、これが鬼の本体じゃない……?」
これも夢?なんて言い始める始末。
確かに、なかなか崩壊が始まらないから不安だよね。頸を取られた鬼の首って普通は体の崩壊がすぐ始まるもの。
止めなかったら、これも夢かもしれないからと自分の首を切るなんて言い始めそうだったので、ギリギリと強く頬を引っ張ってあげた。
痛い痛いと嫌がる顔は、年相応の男の子でかわいい。まだ少しもちもちしている頬っぺたも、触り心地が良くてたまらない。
先程までの鬼気迫る表情はどこへやらだ。
「あの方が……」
「ぴぇっ!」
わーにん!わーにん!ホラー案件発生!
切り落とした首が喋った!!
後ろに隠れるための杏寿郎さん……は、いないから代わりに炭治郎の後ろに隠れる。
おい階級甲だろ煉獄朝緋。下の子の背に隠れて情けないやつだ。そう思うけど無理。
だってさ?たまーに首のままおしゃべりする鬼も確かにいるけどさ?好きじゃないんだもの!
見るたび心臓が口からまろび出そうなくらいびっくりしちゃうから、生首でおしゃべりするのは本当にやめてほしい。
せめて首をくっつけてもらってから……は、助けるのと同じか。
鬼殺隊士としてやっちゃ駄目でしょ。
「柱に加えて耳飾りの君を殺せって言った気持ち、すごくよくわかったよ」
ぼこっ!そんな音が聞こえてくるようだ。
頸を中心として肉の塊が上へ上へ、そして横へ広がるように盛り上がってきた。
「うわ……きもちわるっ」
生肉が腐り始めたような匂いも発生している。はっきり言って臭い。
多分、鼻のきく炭治郎はもっともっと臭い思いをしているんだろう。想像しただけでつらい。
「存在自体がなんかこう、とにかく癪に触ってくる感じ?」
言いながら天空まで伸びるほどに膨れ上がった鬼の肉塊の頂点から、切った頸がぴょこんと飛び出した。
わーーーー!初見の時に斬ったやつそのままぁぁぁ!これぞジャイアントワーム!!
ぶわーっと鳥肌がたった。
炭治郎の驚愕の顔。そしてトラウマを前に真っ青になる私の顔。
この顔こそが、鬼の好物のようだ。
見たかった顔だと恍惚の表情を浮かべる首を揺らしながら、ウネウネと左右に動く鬼。
私はお前の顔なんて見たくなかった!
それ以上動かないで頼むから。頼むから!!
気分が高揚している鬼は、ご丁寧にも今がどういう状況なのかを教えてくれた。
お前らが斬ったのはすでに本体ではない。
この列車そのものが鬼の血であり肉であり骨。
内部はすでに鬼の体の中。
乗客二百人余りは餌であり人質である。
と。
まじですか。『前』にまるで鬼の胃袋だと言った気がするけれどそれはそのまま当たっていた。こんなことは当たってほしくなかった!
乗客に加え私も食べられてしまった場合の被害などは、絶大なものになるだろう。
一人で人間百人分ノ稀血と乗客二百人。合わせて三百ほど。
そんな事にでもなればこの鬼が上弦の鬼へと地位をあげる可能性も高い。夢を操る能力もかなり向上するだろう。……裏から鬼殺隊や人間社会を壊滅させられるほどには。
最善を考える時は最悪も想定しておくのは大事なため至った考えだが、恐ろしすぎる。
とにかく、気をつけなければいけない。
そうして、守り切れる?お預けさせられるならしてみてよ?と私達を鬼は煽ってくる。
煽りの呼吸使うなし!キィィー!何て性格の悪い鬼だろうか!!
本体ではないし斬ったところで無意味なのはわかっている。
けれど私は笑みを浮かべる肉塊の頸を壱ノ型で斬り捨てた。斬った頸も肉片ごと列車へと吸収された。手のひらの形の肉塊で「ばいばーい」とこちらへひらひら振りながら。
んもうっ!腹立つ!!
「ああああ遅かった!遅かった!悔しい!」
だあん、とブーツを踏みしめる。私の馬鹿力を前に列車の外装がメキョリとへこむ。
あの鬼、すでに列車と融合していた!
そもそもこの時間でもすでに融合って、一体いつから融合しているの!?
やっぱり列車ごと破壊しておけばよかったって事?
……いや、それでも前方が怪しい!先に連結部分を切り離してしまえばよかったかもしれない。
ううん、いい。考えても仕方ない。
今すべきことは。
炭治郎と顔を見合わせ、列車の上を駆ける。
杏寿郎さんや他のみんなの名を、起きるよう大声で呼びかけながら。
ただ、起きている気配はない。寝起きがいいはずの杏寿郎さんが起きている感じも全くしない。
もぉぉぉ!同じお寝坊さんになるなら私が悪戯する朝にしてよねっ。
窓を突き破り車両の中へ戻ると、そこはすでに鬼の肉で溢れていた。
早速鬼の肉を斬り払う。
通常の鬼の肉体同様、それらは斬ったそばから燃え滓のように消えていった。
でもこの状況、この肉塊の量。炭治郎や階級の下の子……それに私で捌ききるのは不可能。
力ある者が、柱が必要だと判断する。
「炭治郎!百数える間でいい、この辺りの乗客を他の子と守って!私は寝坊助柱を起こしてくるッ」
「寝坊助柱……?煉獄さんか!!
でも!俺が守れるのは二両が限界で……!
それに俺達はここ一帯任せられるほど強くは……っ」
不安げに揺れる瞳を気にする余裕などない。
細かな斬撃を複数回繰り出せる技、伍ノ型炎虎の改良版を繰り出しながら、私は炭治郎に檄を、そして指示を飛ばした。
「守れる範囲でいい!直に伊之助も起きる!協力しなさい!
貴方には禰󠄀豆子ちゃんもいるでしょ!!
私は貴方達兄妹を信じてるっ!!」
出来ないじゃない、やるのだ。
炭治郎は強い子。禰󠄀豆子ちゃんも強い。伊之助や善逸もだ。
そして信じると言った私の強い瞳に、炭治郎も感化され励まされたよう。
「ありがとうございます!
ですがなぜ伊之助は直ぐ起きると!?」
「勘!」
いや、これがあの時と同じならば、禰󠄀豆子ちゃんがそろそろ伊之助を火だるまにして起こすはずだからだ。
逆に善逸は禰󠄀豆子ちゃんの血鬼術で火だるまにされていたとしても、無理に起こさない方がいいだろう。
確かあの子は睡剣の使い手だったはず。なら眠っていた方が強いのかもしれない。
起きている時だって、弱くなんてなさそうなのに。足腰は私と変わらないくらい強そうなのにももったいない子だ。
自己肯定感が少し低めな感じがする。もしかして獪岳はそこが気に入らないのかな?
とりあえずあの子は、鬼殺に対する自己の考え方、精神面を鍛えるべきだ。
この任務が終わったら炭治郎、伊之助と共に彼のこともびしびし鍛えてやらねば。
しかし今考えるべきは鬼の討伐だ。