二周目 捌
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その時、下弦の壱が炭治郎の耳飾りを見てうっそりとした笑みを浮かべた。
嬉しそうに両手を上げて歓喜の声をあげている。
「夢みたいだ。これでもっと無惨様に血を分けていただける!」
鬼舞辻無惨の血を得ることで更なる強さを手に入れる。上弦の鬼へ入れ替わりのための血戦を申し込める。
と、恍惚の表情を浮かべて呟いている。
入れ替わりの血戦?上弦の鬼はそういう下剋上で順位が変わるのか。
「水の呼吸、拾ノ型!生生流転ッ!」
そして炭治郎が動いた。水神様と思わしき水の龍がとぐろを巻くかのように迸る。
どうして水の呼吸なんだろう?
水の呼吸が駄目という意味じゃない。けど炭治郎って、日の呼吸……ヒノカミ神楽の呼吸というのを使っているんじゃなかったっけ。
その考察は、鬼の血鬼術によって中断させられた。
「血鬼術……強制昏倒睡眠の囁き」
「炭治郎ッ、気をつけて!!」
何か来る!自分もだが、炭治郎の方がより鬼に近い!!
鬼が構えた左手。そこにある大きな口が開き声を発した。
「お〜ね〜む〜りぃ〜」
「…………っ!?」
耳障りな囁き声を聞いた瞬間、意識が遠のく感覚が襲ってきた!
手の口から発声される囁きを聞くことで眠りに落ちるのか!だがだめだ、落ちるわけにはいかない。
一秒以下の世界の中。それを理解する前に、私は声を張り上げた。
「アアアアアアア!!」
音というのは振動だ。鼓膜を震わせ脳へと信号を送ることで言葉などを認識する。
ならそれを聞かないためにはどうするか?その音を脳から。耳から追い出すように自分の声で相殺してしまえばいい。
言うだけなら簡単だが、これがまた難しい。
私達鬼殺隊は片手に刀を持っているから、片耳は必ず無防備になるからだ。
ちなみに、耳栓くらいだと特殊な音波もまじる血鬼術は防げない事も多い。
この戦法はかつて、杏寿郎さんが初めて相対した鬼の任務。耳の鼓膜を自身で破いた時、任務後の反省中に考えついたようだった。
こういう時はどうする?こんな鬼がもしいたら?というもしもを想定したその後の訓練は、厳しいものであったが大変ためになった。
そして眠らなかった私の横では、炭治郎が術中にはまり眠らされ……起きたぁ!?はっや!!
下弦の壱も眠りに落ちもしない私はともかくとして、眠ったはずの炭治郎の起床に目を見開いていた。
交互に刀を振るう私達だが、中々相手には決定打を与えられないのが悔しい。
意外にすばしっこいよねこの鬼。……いや、私の場合このブーツがちょびーっと邪魔らしい。靴底滑りすぎ!
早くこの足場に慣れなければ。
そして炭治郎に水の呼吸はあまり合っていないようにも感じた。
心と体。呼吸法と刀。双方が合致していない。合わないパズルピースを無理やり繋げようとしているような感じだ。
むしろ炎の呼吸の方がこの子の呼吸の仕方には適しているように思えてならない。
すばしっこい動きだけは水の呼吸でいいかもしれないけれど。
他の部分もなぜか、違う呼吸と合いそうな部分がちらほらと見て取れる。
思い出すのは炭治郎が黒刀の剣士だという話。
どの呼吸を極めればいいかわからない。それは逆に言えばどの呼吸とも合う。全ての呼吸に通ずる何かと合う、ともいえないだろうか?
戦闘中だというのに、炭治郎の動きを見た私はそんな事を考えていた。
そうしている間にも下弦の壱が血鬼術を使う。
響く私の大声。またも炭治郎が眠りに落ち、型が途切れる。
血鬼術。私の声。型の途切れ。血鬼術。また私の大声。型の途切れる炭治郎。
だがその度に、一呼吸で炭治郎は起きる。
「ねーむーれぇぇぇぇぇ!!!」
「寝なぁぁぁぁぁぁい!!!!」
鬼の左手が力一杯に叫んだ。
私もまた、負けないくらい叫んだ。
声が聞こえないほどの大声を出せばそんなもの怖くもなんともないわぁーー!!こちとら呼吸を極めた鬼殺隊だ驚異の肺活量なめんなーーーっ!!
お前にはもう、その変な技は使わせない!!
全集中の呼吸で日輪刀を振るうと同時、●ャイアンもびっくりの声量で私はその血鬼術を打ち消してやった。
私は今までの修行がめちゃくちゃにハードモードだったからなんとか出来た事だけど、炭治郎は声を出しながら全集中の呼吸で型を繰り出すなんて芸当、まだ少しむずかしかろう。
だがそのかわり彼は敵の血鬼術にかかっても類稀なる胆力で戻ってくる。
私にはできないことだ。
下弦の壱はようやく炭治郎が眠らない理由に気がついたようだ。
かかった瞬間に夢だと認識し、覚醒するために自決を選んでいるということに。
だが気がつくのが遅い。遅すぎる。
あの鬼は直に倒せる。
前だって結局最後は鬼殺隊がこの鬼を仕留めた。ここにいるのは今後が楽しみな隊士が数名、甲、そして柱。当然だといえる。
せめて私はあの血鬼術に全くかからないよう気をつけながら鬼殺にまわろう。どちらにせよ稀血の私は血の一滴たりとも食われてはならない。
そしてなるべくは炭治郎に頸を斬らせる!
これは炭治郎の成長のためもあるが、彼の心情を思ってのこと。
鬼が炭治郎の胆力に気がついて再び血鬼術を放った瞬間だった。
炭治郎の動きが止まった。
なんだ、何を見せられている?この隙を鬼は逃さない。その手が炭治郎に迫っていた。
「させるもんですかっ」
こんな場所での戦闘は初めてのことで炎の呼吸にはあまり向いていない。けれど、私は階級甲の炎柱が継子!下の子の前でみっともない姿は見せられない。
動きが安定しない?なら、動きと速度がある技を繰り出せば済むことだ。
「壱ノ型・不知火ーー」
炎の呼吸、その基本の型が鬼の体目掛け一直線に走り抜ける。
「改・六連火ッ!!」
その応用だ。炎の呼吸において最速であり動に属する不知火を往復にして三回。
熱く鋭い炎で鬼の体を何度も切り刻みながら、体勢を崩させ急所を狙う。
青い炎が周囲を舞った。
かーらーのー。
「炎の呼吸、参ノ型・気炎万象ッ!!」
上段から振り下ろした日輪刀が、鬼の血鬼術の要に届いた。手首が飛ぶ。
「お前の気色悪い手首は切り落とした!」
「俺は鬼だよ?手首なんてまたすぐ生やせば済むことだ」
いいや、一瞬あればいい。一瞬で十分だ。
あくまでも仕留めるのは炭治郎。
「今だ炭治郎!その怒りに任せ、刃を振るえ!!」
炭治郎は眠らされるたびに、怒りの表情にどんどん拍車がかかってきていた。
ただでさえ自決を繰り返しているのに、鬼によって相当にキツイ夢を見せられていたようだ。
今までの比じゃない。
「俺の家族を侮辱するなぁーーっ!!」
禰󠄀豆子ちゃんを大事にしている様子やその言動、性格からも見て取れるが、炭治郎の家族はそれはもう優しくてあたたかい人達だったのだろう。
なのに、炭治郎の家族なら決して言わないはずの言葉を、血鬼術の夢の中で下弦の壱は彼の家族に言わせた。
鬼は、炭治郎という龍の子の逆鱗に触れたのだ。
怒りに任せた刀の一閃は、かくして鬼の頸に届いた!回数を追う事に強くなる拾ノ型で。
それは私が振るう怒りの刃とは比べ物にならない強さ、正確さに溢れて見えた。
今はまだ羽化が始まる前の蛹かもしれない。けれど炭治郎は心や感情で、もっともっと強くなるはずだ。
下弦の壱の頸が宙を舞い、ごろごろと鬼の生首が転がる。次いで胴体が崩れ落ちた。
「やった!やりました!朝緋さん!」
これで倒せただろうか?列車と融合せず鬼を滅することができたのだろうか。
これまでの緊張で心臓を乱しつつ懐中時計を見れば、前の時よりいく分か時間も早い。
このまま脱線もせず列車が走り続ければ、憎い上弦の参に会うこともなく無事に朝を迎えられる……!
今度こそ、無限列車編・完ッ!!
……で、いいよね?
嬉しそうに両手を上げて歓喜の声をあげている。
「夢みたいだ。これでもっと無惨様に血を分けていただける!」
鬼舞辻無惨の血を得ることで更なる強さを手に入れる。上弦の鬼へ入れ替わりのための血戦を申し込める。
と、恍惚の表情を浮かべて呟いている。
入れ替わりの血戦?上弦の鬼はそういう下剋上で順位が変わるのか。
「水の呼吸、拾ノ型!生生流転ッ!」
そして炭治郎が動いた。水神様と思わしき水の龍がとぐろを巻くかのように迸る。
どうして水の呼吸なんだろう?
水の呼吸が駄目という意味じゃない。けど炭治郎って、日の呼吸……ヒノカミ神楽の呼吸というのを使っているんじゃなかったっけ。
その考察は、鬼の血鬼術によって中断させられた。
「血鬼術……強制昏倒睡眠の囁き」
「炭治郎ッ、気をつけて!!」
何か来る!自分もだが、炭治郎の方がより鬼に近い!!
鬼が構えた左手。そこにある大きな口が開き声を発した。
「お〜ね〜む〜りぃ〜」
「…………っ!?」
耳障りな囁き声を聞いた瞬間、意識が遠のく感覚が襲ってきた!
手の口から発声される囁きを聞くことで眠りに落ちるのか!だがだめだ、落ちるわけにはいかない。
一秒以下の世界の中。それを理解する前に、私は声を張り上げた。
「アアアアアアア!!」
音というのは振動だ。鼓膜を震わせ脳へと信号を送ることで言葉などを認識する。
ならそれを聞かないためにはどうするか?その音を脳から。耳から追い出すように自分の声で相殺してしまえばいい。
言うだけなら簡単だが、これがまた難しい。
私達鬼殺隊は片手に刀を持っているから、片耳は必ず無防備になるからだ。
ちなみに、耳栓くらいだと特殊な音波もまじる血鬼術は防げない事も多い。
この戦法はかつて、杏寿郎さんが初めて相対した鬼の任務。耳の鼓膜を自身で破いた時、任務後の反省中に考えついたようだった。
こういう時はどうする?こんな鬼がもしいたら?というもしもを想定したその後の訓練は、厳しいものであったが大変ためになった。
そして眠らなかった私の横では、炭治郎が術中にはまり眠らされ……起きたぁ!?はっや!!
下弦の壱も眠りに落ちもしない私はともかくとして、眠ったはずの炭治郎の起床に目を見開いていた。
交互に刀を振るう私達だが、中々相手には決定打を与えられないのが悔しい。
意外にすばしっこいよねこの鬼。……いや、私の場合このブーツがちょびーっと邪魔らしい。靴底滑りすぎ!
早くこの足場に慣れなければ。
そして炭治郎に水の呼吸はあまり合っていないようにも感じた。
心と体。呼吸法と刀。双方が合致していない。合わないパズルピースを無理やり繋げようとしているような感じだ。
むしろ炎の呼吸の方がこの子の呼吸の仕方には適しているように思えてならない。
すばしっこい動きだけは水の呼吸でいいかもしれないけれど。
他の部分もなぜか、違う呼吸と合いそうな部分がちらほらと見て取れる。
思い出すのは炭治郎が黒刀の剣士だという話。
どの呼吸を極めればいいかわからない。それは逆に言えばどの呼吸とも合う。全ての呼吸に通ずる何かと合う、ともいえないだろうか?
戦闘中だというのに、炭治郎の動きを見た私はそんな事を考えていた。
そうしている間にも下弦の壱が血鬼術を使う。
響く私の大声。またも炭治郎が眠りに落ち、型が途切れる。
血鬼術。私の声。型の途切れ。血鬼術。また私の大声。型の途切れる炭治郎。
だがその度に、一呼吸で炭治郎は起きる。
「ねーむーれぇぇぇぇぇ!!!」
「寝なぁぁぁぁぁぁい!!!!」
鬼の左手が力一杯に叫んだ。
私もまた、負けないくらい叫んだ。
声が聞こえないほどの大声を出せばそんなもの怖くもなんともないわぁーー!!こちとら呼吸を極めた鬼殺隊だ驚異の肺活量なめんなーーーっ!!
お前にはもう、その変な技は使わせない!!
全集中の呼吸で日輪刀を振るうと同時、●ャイアンもびっくりの声量で私はその血鬼術を打ち消してやった。
私は今までの修行がめちゃくちゃにハードモードだったからなんとか出来た事だけど、炭治郎は声を出しながら全集中の呼吸で型を繰り出すなんて芸当、まだ少しむずかしかろう。
だがそのかわり彼は敵の血鬼術にかかっても類稀なる胆力で戻ってくる。
私にはできないことだ。
下弦の壱はようやく炭治郎が眠らない理由に気がついたようだ。
かかった瞬間に夢だと認識し、覚醒するために自決を選んでいるということに。
だが気がつくのが遅い。遅すぎる。
あの鬼は直に倒せる。
前だって結局最後は鬼殺隊がこの鬼を仕留めた。ここにいるのは今後が楽しみな隊士が数名、甲、そして柱。当然だといえる。
せめて私はあの血鬼術に全くかからないよう気をつけながら鬼殺にまわろう。どちらにせよ稀血の私は血の一滴たりとも食われてはならない。
そしてなるべくは炭治郎に頸を斬らせる!
これは炭治郎の成長のためもあるが、彼の心情を思ってのこと。
鬼が炭治郎の胆力に気がついて再び血鬼術を放った瞬間だった。
炭治郎の動きが止まった。
なんだ、何を見せられている?この隙を鬼は逃さない。その手が炭治郎に迫っていた。
「させるもんですかっ」
こんな場所での戦闘は初めてのことで炎の呼吸にはあまり向いていない。けれど、私は階級甲の炎柱が継子!下の子の前でみっともない姿は見せられない。
動きが安定しない?なら、動きと速度がある技を繰り出せば済むことだ。
「壱ノ型・不知火ーー」
炎の呼吸、その基本の型が鬼の体目掛け一直線に走り抜ける。
「改・六連火ッ!!」
その応用だ。炎の呼吸において最速であり動に属する不知火を往復にして三回。
熱く鋭い炎で鬼の体を何度も切り刻みながら、体勢を崩させ急所を狙う。
青い炎が周囲を舞った。
かーらーのー。
「炎の呼吸、参ノ型・気炎万象ッ!!」
上段から振り下ろした日輪刀が、鬼の血鬼術の要に届いた。手首が飛ぶ。
「お前の気色悪い手首は切り落とした!」
「俺は鬼だよ?手首なんてまたすぐ生やせば済むことだ」
いいや、一瞬あればいい。一瞬で十分だ。
あくまでも仕留めるのは炭治郎。
「今だ炭治郎!その怒りに任せ、刃を振るえ!!」
炭治郎は眠らされるたびに、怒りの表情にどんどん拍車がかかってきていた。
ただでさえ自決を繰り返しているのに、鬼によって相当にキツイ夢を見せられていたようだ。
今までの比じゃない。
「俺の家族を侮辱するなぁーーっ!!」
禰󠄀豆子ちゃんを大事にしている様子やその言動、性格からも見て取れるが、炭治郎の家族はそれはもう優しくてあたたかい人達だったのだろう。
なのに、炭治郎の家族なら決して言わないはずの言葉を、血鬼術の夢の中で下弦の壱は彼の家族に言わせた。
鬼は、炭治郎という龍の子の逆鱗に触れたのだ。
怒りに任せた刀の一閃は、かくして鬼の頸に届いた!回数を追う事に強くなる拾ノ型で。
それは私が振るう怒りの刃とは比べ物にならない強さ、正確さに溢れて見えた。
今はまだ羽化が始まる前の蛹かもしれない。けれど炭治郎は心や感情で、もっともっと強くなるはずだ。
下弦の壱の頸が宙を舞い、ごろごろと鬼の生首が転がる。次いで胴体が崩れ落ちた。
「やった!やりました!朝緋さん!」
これで倒せただろうか?列車と融合せず鬼を滅することができたのだろうか。
これまでの緊張で心臓を乱しつつ懐中時計を見れば、前の時よりいく分か時間も早い。
このまま脱線もせず列車が走り続ければ、憎い上弦の参に会うこともなく無事に朝を迎えられる……!
今度こそ、無限列車編・完ッ!!
……で、いいよね?