二周目 捌
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またも窓を開けて飛び出しそうな伊之助を善逸が止めていた。
今はこの列車もかなりのスピードが出てるものね。このスピードの中出たら常中が出来ているだけの新人隊士……絶対死ぬ。
杏寿郎さんなら軽く飛べちゃう……柱だもの。
私が遠い目をし、彼ら二人が騒ぎ立てる中鬼が出るのはこの列車の中!と杏寿郎さんが言い放った。
その途端、それまで一番うるさかったのは伊之助だったのが一転、今度は善逸が叫び出した。
相変わらずの声量。さすがは雷の呼吸の使い手。雷が落ちる凄まじさと同じレベルの声。
獪岳嫌がるわけだ。え?嫌なのは声ではない?
というか、刀を抜いたら強かったよね。
そこまで鬼の出現を怖がることないと思うんだけどな。
私の目の前で顔芸しないで。本人は真剣なんだろうけど、どうしよう……笑っちゃう。
ごめんなさい。
笑い声をあげそうになる口元を押さえてみるも、あれ?周りを確認すれば、『また』乗客全員が眠りについていた。
ーーいつから?
『前』もそうだった。もしかして鬼の血鬼術はもうここまで迫っている??いや、もうかかっているのだろうか。
そんなはずは……。
「切符……拝見……いたします」
見覚えある車掌さんが私達のいる車両に入ってきたのはその時だった。
その車掌をじっと見つめる私。首を傾げたい。
うーーーん……不審だ。
どーしても、この車掌さんは不審に見えてしまう。なんとも正気のない目のせいだろうか。
気配は完全に人間。けれどおかしい、気配は人間なのになんで鬼のようななにかを感じるのだろう?
確か下弦の壱には人間の協力者がいた。この人も協力者だったりする?
それは、じわじわと鬼の罠が迫っているようで。自分から鬼が仕掛けた網にかかりに行くようで。
詰まるところ、私は今、非常に不快な気分を味わっていた。
「朝緋……?君も切符を出しなさい。それともなくしたのではなかろうな」
「いえ。持っていますけど……」
「ならば出すんだ。ほら、早く」
「はぁーい」
切符がなくては列車には乗れない。無賃乗車は犯罪で、その罪を犯すのは悪い子だけ。
かつて炭治郎に言ったのは私ではないか。
私は杏寿郎さんの指示通り、車掌に向かって渋々ではあったが切符を差し出した。
ぱちん。
鋏痕をつけられると、途端に空気が重くなった。
鬼の気配が濃く、鋭くなる。
鬼の気配?……で、合っているとは思うんだけど、それがどこか違う場所での事のような。
なぜか他の乗客だって起きているし。不思議な事だらけ。膜が張ってる感覚。
えぇと、そう!まるで外側からテレビ画面を見ている気分にさせられる。テレビの中の出来事のよう。この時代にまだテレビはないけどさ。
なんとも違和感まみれだった。
それでもそこに鬼が出るのならその頸斬り落とすまで。
見れば炭治郎が鬼の匂いを嗅ぎ分け、険しい顔をしている。いい顔をしている、鬼殺の顔だ。伊之助は被り物だからわからないし、善逸は恐怖の表情のまま固まっているけれど。
「火急のことゆえ、帯刀は不問にして頂きたい」
例によって杏寿郎さんが炎の鍔が煌めく日輪刀を手にした。
天井のガス灯が明滅し、現れるは図体が大きく気色の悪い鬼。
「その巨躯を!隠していたのは血鬼術か?
気配も探りづらかった」
杏寿郎さんが鞘を腰に戻し、燃えるような熱い気を纏う。
「しかし、罪なき人に牙を剥こうものなら、この煉獄の赫き炎刀が!
お前を骨まで焼き尽くす!!」
これからお前を斬る。
そう宣言した通り杏寿郎さんは鬼の頸を美しい己が刃を使い、炎の呼吸、壱ノ型・不知火。素早い斬撃一太刀で跳ね飛ばした。
杏寿郎さん!かぁっこいいーー!!
言葉に出して言っていたなら、とてつもなくうるさい歓声だったろう。恐怖で叫ぶタイプの善逸とは正反対の黄色い声。
応援用の団扇作らなきゃ。
そこからは独壇場。
続く車両に巣食っていた手足の長い鬼を、杏寿郎さんは弐ノ型・昇り炎天で素早く仕留めた。
『前』と同じ展開のようだけれど、何度見たって惚れ惚れする美しい刀捌き。
私はこの人のようになれているだろうか?この人が継子へ真に認める強さには到達しているだろうか?
……だというのにだ。
心にそんな不安な気持ちが浮かんでいる状態なのに、私は心とはちぐはぐな行動をしていた。
炭治郎達三人も、そして杏寿郎さんもなんともコミカルな表情と楽しそうな状態なのだが、私は目の中にハートを乱舞させ杏寿郎さんに思い切り抱きついていた。師範と呼ばずに杏寿郎さんと呼んでいる。
そんな、なんで炭治郎達が見てる前で!?TPOを考える私はどこ行った!!
あっよく考えたらここも『前』と同じだ!
ということは……。
私が身を預けていた杏寿郎さんが、そのコミカルな表情から一転。どこぞのフランス革命期の男装の麗人のようにとてつもなくかっこいいお顔に変わった。
背景まで輝いて見える。ウッ眩しい。
こちらが抱きついていたと思ったのにいつのまにか抱かれているし、私の腰には強い力が込められていてほぼゼロ距離だ。
「朝緋……」
耳元で囁かれる声の何と甘美な事か。耳を通して脳に届くそれは麻薬のようで、私の腰がそして女の胎が甘やかに疼いた。
あ、顔が近い……。
私の姿が綺麗な金環の中に閉じ込められているのが見える。
これから与えられるであろう唇への愛撫に期待を抱きながら、私の意識は溶け落ちていった。
今はこの列車もかなりのスピードが出てるものね。このスピードの中出たら常中が出来ているだけの新人隊士……絶対死ぬ。
杏寿郎さんなら軽く飛べちゃう……柱だもの。
私が遠い目をし、彼ら二人が騒ぎ立てる中鬼が出るのはこの列車の中!と杏寿郎さんが言い放った。
その途端、それまで一番うるさかったのは伊之助だったのが一転、今度は善逸が叫び出した。
相変わらずの声量。さすがは雷の呼吸の使い手。雷が落ちる凄まじさと同じレベルの声。
獪岳嫌がるわけだ。え?嫌なのは声ではない?
というか、刀を抜いたら強かったよね。
そこまで鬼の出現を怖がることないと思うんだけどな。
私の目の前で顔芸しないで。本人は真剣なんだろうけど、どうしよう……笑っちゃう。
ごめんなさい。
笑い声をあげそうになる口元を押さえてみるも、あれ?周りを確認すれば、『また』乗客全員が眠りについていた。
ーーいつから?
『前』もそうだった。もしかして鬼の血鬼術はもうここまで迫っている??いや、もうかかっているのだろうか。
そんなはずは……。
「切符……拝見……いたします」
見覚えある車掌さんが私達のいる車両に入ってきたのはその時だった。
その車掌をじっと見つめる私。首を傾げたい。
うーーーん……不審だ。
どーしても、この車掌さんは不審に見えてしまう。なんとも正気のない目のせいだろうか。
気配は完全に人間。けれどおかしい、気配は人間なのになんで鬼のようななにかを感じるのだろう?
確か下弦の壱には人間の協力者がいた。この人も協力者だったりする?
それは、じわじわと鬼の罠が迫っているようで。自分から鬼が仕掛けた網にかかりに行くようで。
詰まるところ、私は今、非常に不快な気分を味わっていた。
「朝緋……?君も切符を出しなさい。それともなくしたのではなかろうな」
「いえ。持っていますけど……」
「ならば出すんだ。ほら、早く」
「はぁーい」
切符がなくては列車には乗れない。無賃乗車は犯罪で、その罪を犯すのは悪い子だけ。
かつて炭治郎に言ったのは私ではないか。
私は杏寿郎さんの指示通り、車掌に向かって渋々ではあったが切符を差し出した。
ぱちん。
鋏痕をつけられると、途端に空気が重くなった。
鬼の気配が濃く、鋭くなる。
鬼の気配?……で、合っているとは思うんだけど、それがどこか違う場所での事のような。
なぜか他の乗客だって起きているし。不思議な事だらけ。膜が張ってる感覚。
えぇと、そう!まるで外側からテレビ画面を見ている気分にさせられる。テレビの中の出来事のよう。この時代にまだテレビはないけどさ。
なんとも違和感まみれだった。
それでもそこに鬼が出るのならその頸斬り落とすまで。
見れば炭治郎が鬼の匂いを嗅ぎ分け、険しい顔をしている。いい顔をしている、鬼殺の顔だ。伊之助は被り物だからわからないし、善逸は恐怖の表情のまま固まっているけれど。
「火急のことゆえ、帯刀は不問にして頂きたい」
例によって杏寿郎さんが炎の鍔が煌めく日輪刀を手にした。
天井のガス灯が明滅し、現れるは図体が大きく気色の悪い鬼。
「その巨躯を!隠していたのは血鬼術か?
気配も探りづらかった」
杏寿郎さんが鞘を腰に戻し、燃えるような熱い気を纏う。
「しかし、罪なき人に牙を剥こうものなら、この煉獄の赫き炎刀が!
お前を骨まで焼き尽くす!!」
これからお前を斬る。
そう宣言した通り杏寿郎さんは鬼の頸を美しい己が刃を使い、炎の呼吸、壱ノ型・不知火。素早い斬撃一太刀で跳ね飛ばした。
杏寿郎さん!かぁっこいいーー!!
言葉に出して言っていたなら、とてつもなくうるさい歓声だったろう。恐怖で叫ぶタイプの善逸とは正反対の黄色い声。
応援用の団扇作らなきゃ。
そこからは独壇場。
続く車両に巣食っていた手足の長い鬼を、杏寿郎さんは弐ノ型・昇り炎天で素早く仕留めた。
『前』と同じ展開のようだけれど、何度見たって惚れ惚れする美しい刀捌き。
私はこの人のようになれているだろうか?この人が継子へ真に認める強さには到達しているだろうか?
……だというのにだ。
心にそんな不安な気持ちが浮かんでいる状態なのに、私は心とはちぐはぐな行動をしていた。
炭治郎達三人も、そして杏寿郎さんもなんともコミカルな表情と楽しそうな状態なのだが、私は目の中にハートを乱舞させ杏寿郎さんに思い切り抱きついていた。師範と呼ばずに杏寿郎さんと呼んでいる。
そんな、なんで炭治郎達が見てる前で!?TPOを考える私はどこ行った!!
あっよく考えたらここも『前』と同じだ!
ということは……。
私が身を預けていた杏寿郎さんが、そのコミカルな表情から一転。どこぞのフランス革命期の男装の麗人のようにとてつもなくかっこいいお顔に変わった。
背景まで輝いて見える。ウッ眩しい。
こちらが抱きついていたと思ったのにいつのまにか抱かれているし、私の腰には強い力が込められていてほぼゼロ距離だ。
「朝緋……」
耳元で囁かれる声の何と甘美な事か。耳を通して脳に届くそれは麻薬のようで、私の腰がそして女の胎が甘やかに疼いた。
あ、顔が近い……。
私の姿が綺麗な金環の中に閉じ込められているのが見える。
これから与えられるであろう唇への愛撫に期待を抱きながら、私の意識は溶け落ちていった。