二周目 漆
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マー確かに速い。試しに刀をただ振ってみても簡単に避けられた。
けれど、それは一般人基準かもね。こちらは速さには慣れている。
杏寿郎さんは柱だからもっと速いし、私もその柱に鍛えられてより速い速度を身につけている。見くびるな!
それからの私と杏寿郎さんは微動だにせず、鬼の動きを目で追う。
杏寿郎さんが斬るのは簡単だ。だが、まだ少年は人質に取られている。万が一があってはいけないからね。
自分の速さに自信があるのだろう。過信気味だからそこを叩くしかないかも。
動かずいれば、鬼が人質がいては俺を殺りづらかろう?と人質に手をかけようとしている。
あまり舐めた真似するのはやめて欲しい。キレそう!!
大体この鬼は他にも私の気に触ることをしでかしている。杏寿郎さんが動かなくとももうそろそろ我慢の限界だった。
それに少年も助けを求めている。必ず助ける!と優しく声はかけているが、これ以上は彼の体も精神も持たない。
鬼は杏寿郎さんの高らかな宣言に、できっこないと昨晩の話をし出した。
昨晩……ああ、助けた女性の事だ。
けれど、鬼の話を聞いても杏寿郎さんが逆に鬼を見下して終わっただけだ。
お前は過信している。人間を殺せてもいないし彼女の居場所を突き止める事もできない。ただ「逃げ」足が速いだけの半端者だと。
「ちぃっ!ならそこの女を殺してやるよ」
「できると思うか?この子も日輪刀を持つ立派な鬼狩りだぞ」
「お前よりは弱いだろう?女だし色々小せえ」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。顔にビキ、と青筋が立つ。この感覚は久しぶりだ。
「なんですって?弱い?色々小さい?色々?ちょっと人質解放してその頸差し出せ!細切れにして陽光に晒してやる!!」
「ガキが吠えるなよぉ。
すんすん、ん……おいガキ、お前稀血だな?俺は鼻が利くんだ。なんだ美味そうじゃねぇか、食ってやろう!」
鼻が利くとは、炭治郎みたいなやつめ!
「刺激するな朝緋!鬼に君の稀血を直に嗅がせるわけにいかない」
そういえばそうだった。私の稀血は少々特殊で、鬼に催淫効果がある。あれは鬼の行動が読めなくなることも多い。
でも同性故か女の鬼には効果が薄めのよう。一応、あとで禰󠄀豆子ちゃんに会ったら確認しようと思うけど。
「わかってますよう。けど、腹立って仕方ない!無理!!」
「朝緋っ!」
大きい声で止めようとするも、やはり人質や私の体質が気になって見守る体勢になってしまった杏寿郎さん。
うん。杏寿郎さんはそれでいいよ!
「お、やる気か?人質に当たっても知らないぜ?それともお前がこいつの代わりになるか?我慢できずすぐ食っちまうだろうけどな!」
「残念だけど私の体も命もすでに私だけのものじゃないの。彼にならまだしも、鬼にあげるなんてーー」
軽やかに飛び上がり日輪刀を振るう。
「もってのほかだからっ」
「ギャァ!?」
青い炎が閃光のように走り抜け鬼の顔に二本の斬撃を入れた。頭蓋骨までをパッカーン!させる勢いだったが、頸でないからすぐ元通りだった。
「頸は斬れなかったなぁ、外したなぁ……」
頸付近に少年の頭があり、頸を狙っていないのだから当然だ。でも刃が近くを通って怖かったよね、ごめんね。
「悪いけどこれは型もつかないただの仕返し二連撃。
一つは私を女だからと舐めてかかった事。も一つは女性の顔に傷付けた事。乙女の顔に傷……ッ!治るとしても絶対許さない。
そして更にもう一つ!喰らえ!!」
炎の呼吸を全身に激らせる。青い炎が刀身に揺めき……一瞬私の姿がかき消える。
「食べ物の恨みっ!伍ノ型・炎虎改ならぬ怨恨改乱咬み!!」
人質に当たらないよう、細かい斬撃を鬼に無数に入れる。さすがに鬼がよろめいた。人質は決して離さなかったが。……粘るね。
「朝緋!俺はもうどう反応していいかわからん!言いたいことはたくさんあるはずだが感情が追いつかん!!」
「よくやったと言ってくれればいいです!私が貴方のものなのは本当ですし、恨み溜まってるのも本当。ついでに炎虎と怨恨は響きが似てますっ」
「そうかっ!!」
杏寿郎さんとしては咎めたい思いもあったようで、よくやったとは言ってくれなかった。鬼の頸を斬るでもなく、人質を先に助けるわけでもなかったのだ、当然か。
昨晩の女性も私の事も殺す事は難しいと踏んだか、今度は鬼は転がるお弁当に目を向ける。なんと、杏寿郎さんが知り合いだと言ったお弁当屋さんを殺すと脅してきた!
全く知らない相手を殺されるより、見知った相手を殺される方が絶望度が高いからという理由で狙う。お弁当を買うのに声をかけた、それだけだというに。
鬼の考えの不愉快さに二人、顔を歪めた。
「やはりお前は不愉快だ。
「稀血を前にして他へ思考が行くとは、中々理性的だね……。だけど同感です」
「何とでも言うがいい!こっちは愉快だぜ」
俺より先に駅に来い、そうのたまい逃走直前に人質に手をかけようとする。針を通すようなほんの一瞬の隙を杏寿郎さんは逃さなかった。
一閃の炎が走り抜ける。
鬼の両腕がすっぱりと切断され吹っ飛んだ。だが少し浅く、頸は斬れなかった。助くべき人が最優先だからだ。
私が解放された少年を抱きとめると、鬼はその隙に逃走した。
本当に「逃げ」足は早い。
杏寿郎さんと手当て、そして周りの人を落ち着かせる対応をしていれば、要達が呼んでくれたのか他の隊士が到着した。炎柱管轄区域に所属する者達で、全員ではないが面識もある。
医療班も向かっているそうで急げばこの子もまた、傷が残らずに済む。
「朝緋、君にはここの報告を任せる。終わったら来なさい」
応急処置の続きをしていれば、杏寿郎さんが言い残して消えた。さっすが杏寿郎さん!全集中の呼吸での移動、はやぁい。
私も報告書用の申し送りを終え、遅れて杏寿郎さんを追いかけ……いや、鬼が向かった先へと駆けた。
私も全集中の呼吸だ。杏寿郎さんほどの勢いある炎の揺らぎがこの身を纏うことはないけれど、それに匹敵する炎を発生させ、私は急いだ。
けれど、それは一般人基準かもね。こちらは速さには慣れている。
杏寿郎さんは柱だからもっと速いし、私もその柱に鍛えられてより速い速度を身につけている。見くびるな!
それからの私と杏寿郎さんは微動だにせず、鬼の動きを目で追う。
杏寿郎さんが斬るのは簡単だ。だが、まだ少年は人質に取られている。万が一があってはいけないからね。
自分の速さに自信があるのだろう。過信気味だからそこを叩くしかないかも。
動かずいれば、鬼が人質がいては俺を殺りづらかろう?と人質に手をかけようとしている。
あまり舐めた真似するのはやめて欲しい。キレそう!!
大体この鬼は他にも私の気に触ることをしでかしている。杏寿郎さんが動かなくとももうそろそろ我慢の限界だった。
それに少年も助けを求めている。必ず助ける!と優しく声はかけているが、これ以上は彼の体も精神も持たない。
鬼は杏寿郎さんの高らかな宣言に、できっこないと昨晩の話をし出した。
昨晩……ああ、助けた女性の事だ。
けれど、鬼の話を聞いても杏寿郎さんが逆に鬼を見下して終わっただけだ。
お前は過信している。人間を殺せてもいないし彼女の居場所を突き止める事もできない。ただ「逃げ」足が速いだけの半端者だと。
「ちぃっ!ならそこの女を殺してやるよ」
「できると思うか?この子も日輪刀を持つ立派な鬼狩りだぞ」
「お前よりは弱いだろう?女だし色々小せえ」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。顔にビキ、と青筋が立つ。この感覚は久しぶりだ。
「なんですって?弱い?色々小さい?色々?ちょっと人質解放してその頸差し出せ!細切れにして陽光に晒してやる!!」
「ガキが吠えるなよぉ。
すんすん、ん……おいガキ、お前稀血だな?俺は鼻が利くんだ。なんだ美味そうじゃねぇか、食ってやろう!」
鼻が利くとは、炭治郎みたいなやつめ!
「刺激するな朝緋!鬼に君の稀血を直に嗅がせるわけにいかない」
そういえばそうだった。私の稀血は少々特殊で、鬼に催淫効果がある。あれは鬼の行動が読めなくなることも多い。
でも同性故か女の鬼には効果が薄めのよう。一応、あとで禰󠄀豆子ちゃんに会ったら確認しようと思うけど。
「わかってますよう。けど、腹立って仕方ない!無理!!」
「朝緋っ!」
大きい声で止めようとするも、やはり人質や私の体質が気になって見守る体勢になってしまった杏寿郎さん。
うん。杏寿郎さんはそれでいいよ!
「お、やる気か?人質に当たっても知らないぜ?それともお前がこいつの代わりになるか?我慢できずすぐ食っちまうだろうけどな!」
「残念だけど私の体も命もすでに私だけのものじゃないの。彼にならまだしも、鬼にあげるなんてーー」
軽やかに飛び上がり日輪刀を振るう。
「もってのほかだからっ」
「ギャァ!?」
青い炎が閃光のように走り抜け鬼の顔に二本の斬撃を入れた。頭蓋骨までをパッカーン!させる勢いだったが、頸でないからすぐ元通りだった。
「頸は斬れなかったなぁ、外したなぁ……」
頸付近に少年の頭があり、頸を狙っていないのだから当然だ。でも刃が近くを通って怖かったよね、ごめんね。
「悪いけどこれは型もつかないただの仕返し二連撃。
一つは私を女だからと舐めてかかった事。も一つは女性の顔に傷付けた事。乙女の顔に傷……ッ!治るとしても絶対許さない。
そして更にもう一つ!喰らえ!!」
炎の呼吸を全身に激らせる。青い炎が刀身に揺めき……一瞬私の姿がかき消える。
「食べ物の恨みっ!伍ノ型・炎虎改ならぬ怨恨改乱咬み!!」
人質に当たらないよう、細かい斬撃を鬼に無数に入れる。さすがに鬼がよろめいた。人質は決して離さなかったが。……粘るね。
「朝緋!俺はもうどう反応していいかわからん!言いたいことはたくさんあるはずだが感情が追いつかん!!」
「よくやったと言ってくれればいいです!私が貴方のものなのは本当ですし、恨み溜まってるのも本当。ついでに炎虎と怨恨は響きが似てますっ」
「そうかっ!!」
杏寿郎さんとしては咎めたい思いもあったようで、よくやったとは言ってくれなかった。鬼の頸を斬るでもなく、人質を先に助けるわけでもなかったのだ、当然か。
昨晩の女性も私の事も殺す事は難しいと踏んだか、今度は鬼は転がるお弁当に目を向ける。なんと、杏寿郎さんが知り合いだと言ったお弁当屋さんを殺すと脅してきた!
全く知らない相手を殺されるより、見知った相手を殺される方が絶望度が高いからという理由で狙う。お弁当を買うのに声をかけた、それだけだというに。
鬼の考えの不愉快さに二人、顔を歪めた。
「やはりお前は不愉快だ。
「稀血を前にして他へ思考が行くとは、中々理性的だね……。だけど同感です」
「何とでも言うがいい!こっちは愉快だぜ」
俺より先に駅に来い、そうのたまい逃走直前に人質に手をかけようとする。針を通すようなほんの一瞬の隙を杏寿郎さんは逃さなかった。
一閃の炎が走り抜ける。
鬼の両腕がすっぱりと切断され吹っ飛んだ。だが少し浅く、頸は斬れなかった。助くべき人が最優先だからだ。
私が解放された少年を抱きとめると、鬼はその隙に逃走した。
本当に「逃げ」足は早い。
杏寿郎さんと手当て、そして周りの人を落ち着かせる対応をしていれば、要達が呼んでくれたのか他の隊士が到着した。炎柱管轄区域に所属する者達で、全員ではないが面識もある。
医療班も向かっているそうで急げばこの子もまた、傷が残らずに済む。
「朝緋、君にはここの報告を任せる。終わったら来なさい」
応急処置の続きをしていれば、杏寿郎さんが言い残して消えた。さっすが杏寿郎さん!全集中の呼吸での移動、はやぁい。
私も報告書用の申し送りを終え、遅れて杏寿郎さんを追いかけ……いや、鬼が向かった先へと駆けた。
私も全集中の呼吸だ。杏寿郎さんほどの勢いある炎の揺らぎがこの身を纏うことはないけれど、それに匹敵する炎を発生させ、私は急いだ。