二周目 陸
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少なくともここ数年朝緋から向けられる目は、家族に向けてくる目ではないこともわかっている。
あれは俺が初めての任務から帰り、鼓膜を破って耳があまり聞こえなかった時のことだ。
あの時朝緋は、俺が聞こえていないのを良いことに自身の気持ちを紡いでくれたのだ。
叶うなら貴方と一緒の未来を。
その言葉は聞こえていた。朝緋は知らないだろうがその時の俺の耳は完全に治っていたのだ。
とはいえだ。嫌われているとは思わないが、人の気持ちに絶対はありえん。人の気持ちは時間と共に変わることもある。
現に、あの青年隊士は俺の言葉一つで朝緋を諦めてしまった。そう仕向けたのは俺だとはいえ、諦めが早いものだな!
しかし朝緋が変わっていないなら、気持ちは同じ方向を向いているはず。その気持ちを正直な言葉にして聞かせてほしい。
口を何度か薄く開けては閉じてを繰り返し、口内で逡巡したのだろう。朝緋はこちらをまっすぐに見つめ、言葉を発した。
「私の好きな人は、炎のよく似合う人です。
快活に笑い、私を優しく、時に厳しく導く人」
ん?まさか父上?
昔の父上は快活に笑っていた。そして優しく厳しく、俺や朝緋を導く人だった。炎の羽織もよく似合っていた。よもやぁ……。
「常に心には熱き炎を燃やし続けていて、前を見据えるかっこいい人。
たくさんの食事をそれはもう美味しそうに平らげて。さつまいもが好きで、食べるとわっしょいって声が出ちゃう人」
……いや違う。父上じゃない!
芋が好きなのは俺だ。食べるとわっしょいと掛け声が出てしまう。
よもやよもや。それを聞くまで自分のことだとわからなかった!
そう考えると、心に熱き炎だとか、かっこいいだとか。こう……胸の内が熱くてむず痒い。口元がもにょりと動いてしまうな。
「貴方です。貴方が好きです。煉獄杏寿郎さん。
ずっと、ずうっと前から。きっと貴方が私を想ってくれるようになる前からずっと……私は貴方のことをお慕いしております」
丁寧に言い切り、俺に向かって土下座に近い位置まで頭を垂れてくる。
顔を上げた朝緋とぱちり、目があった。その顔は火を吹きそうなほど赤くなっていた。
「本当は今でなく、私の階級が甲に上がったら、言うつもりでした……だから、貴方の言葉を聞いて私がどれほど嬉しかったか」
なんと。待っていれば朝緋のほうから気持ちを伝えてくれていたのか。だが俺はせっかちだし、こういう事は男からが定石だ。俺から言えてよかった。
……それにしてもだ。
熟れた唇。潤む瞳。ふわりと笑う愛し子。
我慢の限界だった。体が動いていた。
「俺も嬉しいぞ朝緋ッ!」
「ぎぇ……っ」
強く、強く抱きしめる。
蛙を潰したような声で残念だが、それは勢いがよすぎたせいだ。致し方無しッ!む、今わかったが意外に腰が細いな……。
本当ならば口吸いの一つでも二つでも。いや!一日中でもしたい。
夜が明けてもなお、抱きしめて接吻を交わしたい!もちろん、慣れてきたらその先も欲しい。
代わりに俺は、朝緋の頭をものすごい勢いで撫でた。まるで行為下での抽送運動が如く。
「わっ!?ハゲるーッ!
高速よしよしはやめて下さい!貴方はムツゴロウ氏ですか!?髪が発火するぅ!頭の上での玖ノ型煉獄はやめてください〜!」
「ムツゴロウ氏が誰だか知らないが、君は本当に愛いなあ!嬉しいなあ!
かつてこれほどまでに喜ばしい出来事があっただろうか!
んんんんん〜〜〜っ愛いッ!!俺の煉獄ですべて燃やし尽くしてしまいそうだ!!」
「だから!やめ!て!?」
俺が満足する頃には朝緋は先程よりもぐったりと俺の体に身を預けていた。強く抱きしめすぎたか?
だがこの程度で根を上げるとは、鍛錬が足りんな。
ぐちゃぐちゃに大爆発してしまった髪の毛を整えてやり、今度はそっと髪を撫でる。
おっ?甘えるように擦り寄ってきたな。……やはり猫のようだ。愛い奴め。
「生家に帰ったら、父上にも報告せんとな。とりあえず、呼び方は変えてくれ」
「ン……呼び方……?師範っていうのを?」
「いーや、もう一つの方だ!『兄さん』は卒業だな!わはは!!」
「なら、『杏寿郎さん』?ですかね」
「…………うん」
もう一度今度は後ろから抱き寄せると、その腹に腕を回す。
「師範……ううん、杏寿郎さん、抱きつくの好きですねぇ。びっくりですよ」
「自分でも驚いている。俺はこんなに抱きつき魔だったのだな。
だがこれまで散々我慢していたんだ!思う存分堪能させてくれ!」
「マ、いいですけど……嬉しいし」
嬉しいなら何よりだ。腹に回した腕に重ねられた朝緋の手、俺の腕を抱きしめるように力が入る。なんと心地よく温かい手だ……。
思いが重なったことを表すような手を嬉しく思いながら、すんすんと軽く朝緋の匂いを嗅ぎつつ唇を首へと下ろしていく。
髪の毛、耳、耳たぶ、そして首の筋。
詰襟をどかし首筋を辿る唇からは、朝緋の血液の流れを感じる。
どく、どく、どく。
緊張か?いつもより流れが早く思う。
俺は薄く白いその首筋に、勢いよく吸い付いた。
「え、ちょっ……!ぎゃー!
見えるとこに跡つけないで!?そこ!髪をおろしても見えちゃうとこ!!」
「善処しよう!!」
結局善処しなかった。
あれは俺が初めての任務から帰り、鼓膜を破って耳があまり聞こえなかった時のことだ。
あの時朝緋は、俺が聞こえていないのを良いことに自身の気持ちを紡いでくれたのだ。
叶うなら貴方と一緒の未来を。
その言葉は聞こえていた。朝緋は知らないだろうがその時の俺の耳は完全に治っていたのだ。
とはいえだ。嫌われているとは思わないが、人の気持ちに絶対はありえん。人の気持ちは時間と共に変わることもある。
現に、あの青年隊士は俺の言葉一つで朝緋を諦めてしまった。そう仕向けたのは俺だとはいえ、諦めが早いものだな!
しかし朝緋が変わっていないなら、気持ちは同じ方向を向いているはず。その気持ちを正直な言葉にして聞かせてほしい。
口を何度か薄く開けては閉じてを繰り返し、口内で逡巡したのだろう。朝緋はこちらをまっすぐに見つめ、言葉を発した。
「私の好きな人は、炎のよく似合う人です。
快活に笑い、私を優しく、時に厳しく導く人」
ん?まさか父上?
昔の父上は快活に笑っていた。そして優しく厳しく、俺や朝緋を導く人だった。炎の羽織もよく似合っていた。よもやぁ……。
「常に心には熱き炎を燃やし続けていて、前を見据えるかっこいい人。
たくさんの食事をそれはもう美味しそうに平らげて。さつまいもが好きで、食べるとわっしょいって声が出ちゃう人」
……いや違う。父上じゃない!
芋が好きなのは俺だ。食べるとわっしょいと掛け声が出てしまう。
よもやよもや。それを聞くまで自分のことだとわからなかった!
そう考えると、心に熱き炎だとか、かっこいいだとか。こう……胸の内が熱くてむず痒い。口元がもにょりと動いてしまうな。
「貴方です。貴方が好きです。煉獄杏寿郎さん。
ずっと、ずうっと前から。きっと貴方が私を想ってくれるようになる前からずっと……私は貴方のことをお慕いしております」
丁寧に言い切り、俺に向かって土下座に近い位置まで頭を垂れてくる。
顔を上げた朝緋とぱちり、目があった。その顔は火を吹きそうなほど赤くなっていた。
「本当は今でなく、私の階級が甲に上がったら、言うつもりでした……だから、貴方の言葉を聞いて私がどれほど嬉しかったか」
なんと。待っていれば朝緋のほうから気持ちを伝えてくれていたのか。だが俺はせっかちだし、こういう事は男からが定石だ。俺から言えてよかった。
……それにしてもだ。
熟れた唇。潤む瞳。ふわりと笑う愛し子。
我慢の限界だった。体が動いていた。
「俺も嬉しいぞ朝緋ッ!」
「ぎぇ……っ」
強く、強く抱きしめる。
蛙を潰したような声で残念だが、それは勢いがよすぎたせいだ。致し方無しッ!む、今わかったが意外に腰が細いな……。
本当ならば口吸いの一つでも二つでも。いや!一日中でもしたい。
夜が明けてもなお、抱きしめて接吻を交わしたい!もちろん、慣れてきたらその先も欲しい。
代わりに俺は、朝緋の頭をものすごい勢いで撫でた。まるで行為下での抽送運動が如く。
「わっ!?ハゲるーッ!
高速よしよしはやめて下さい!貴方はムツゴロウ氏ですか!?髪が発火するぅ!頭の上での玖ノ型煉獄はやめてください〜!」
「ムツゴロウ氏が誰だか知らないが、君は本当に愛いなあ!嬉しいなあ!
かつてこれほどまでに喜ばしい出来事があっただろうか!
んんんんん〜〜〜っ愛いッ!!俺の煉獄ですべて燃やし尽くしてしまいそうだ!!」
「だから!やめ!て!?」
俺が満足する頃には朝緋は先程よりもぐったりと俺の体に身を預けていた。強く抱きしめすぎたか?
だがこの程度で根を上げるとは、鍛錬が足りんな。
ぐちゃぐちゃに大爆発してしまった髪の毛を整えてやり、今度はそっと髪を撫でる。
おっ?甘えるように擦り寄ってきたな。……やはり猫のようだ。愛い奴め。
「生家に帰ったら、父上にも報告せんとな。とりあえず、呼び方は変えてくれ」
「ン……呼び方……?師範っていうのを?」
「いーや、もう一つの方だ!『兄さん』は卒業だな!わはは!!」
「なら、『杏寿郎さん』?ですかね」
「…………うん」
もう一度今度は後ろから抱き寄せると、その腹に腕を回す。
「師範……ううん、杏寿郎さん、抱きつくの好きですねぇ。びっくりですよ」
「自分でも驚いている。俺はこんなに抱きつき魔だったのだな。
だがこれまで散々我慢していたんだ!思う存分堪能させてくれ!」
「マ、いいですけど……嬉しいし」
嬉しいなら何よりだ。腹に回した腕に重ねられた朝緋の手、俺の腕を抱きしめるように力が入る。なんと心地よく温かい手だ……。
思いが重なったことを表すような手を嬉しく思いながら、すんすんと軽く朝緋の匂いを嗅ぎつつ唇を首へと下ろしていく。
髪の毛、耳、耳たぶ、そして首の筋。
詰襟をどかし首筋を辿る唇からは、朝緋の血液の流れを感じる。
どく、どく、どく。
緊張か?いつもより流れが早く思う。
俺は薄く白いその首筋に、勢いよく吸い付いた。
「え、ちょっ……!ぎゃー!
見えるとこに跡つけないで!?そこ!髪をおろしても見えちゃうとこ!!」
「善処しよう!!」
結局善処しなかった。