就任パーティーでキバナさんにマスボぶつけられた
ジタバタもがき、オレ様の腕を叩いて訴えるユウリ。
その言葉も聞こえていなかったオレ様は、片手をポケットに突っ込んでとあるボールを探した。
……あった。いつもの手持ちポケモンのボールではなく、お守りがわりにと持ち歩いている『M』の文字が装飾された特別なボール。
オレ様が構えたそれに見覚えあったか、ユウリの動きが止まる。
「マスターボール!?
なんでそんなものキバナさんが持ってるんです?いえ、持っているのはともかくとして、なぜ構えて……。
はっ!私からは見えてないけど、ここに珍しいポケモンとか、幻のポケモンがいるんですね!?
キバナさんが気にしてるって事はもしかしてレシラムとか!!?」
なんでそうなる。それ違う地方のポケモンだろ。ここに来てたとして、あんなでかい図体見えないってことはないぞ。
まったく……ユウリはどこまでポケモンバカなんだろうな。
そういうところも好きだぜ。
原寸サイズ大きくしたマスターボールを、ユウリの頬へとぐい。と押し付ける。
これでゲットできるはずだが、おかしいな。作動しない。
人間にはもっと深く密着させないとだめか?
「え?え??」
ぐりぐり。
ボールがユウリの頬へとめり込む。ユウリの頬袋にはこんなに容量があるのか。
ってことはねずみポケモンのようにきのみはたくさん入るな。オレ様のもなんとか……いや、それも成長してからだな。
「んむーーー!、もー!何するんですか」
腕でめいっぱいオレ様を押し、隙間をつくってオレ様の抱擁から逃れるユウリ。
去ってしまったあたたかなぬくもりが名残惜しいが、またあとで堪能すれば問題ない。ゲットしたら親はオレ様だ!
握っていたマスターボールをスロー!ベシィッ!
それは放物線を描くこともなく、ユウリの頭へと勢いよくぶつかった。
「いったーい!ちょ、やめてください!
ボールはポケモンに投げてくださいよっ!キバナさんまだ酔ってた!?それともご乱心!?」
このポケモンまだ捕まらないな。
跳ね返ってオレ様の手元に戻って来たボールを再び投げつける。
剛速球がポケモ……ユウリの頭に思い切り当たった。
「私何かキバナさんにしました!?痛いですって!
ボールって硬いから意外と痛いんですよ!?」
涙目のユウリを見て、彼女がポケモンに見えてしまうだけで普通に人間なことを思いだした。
「ユウリの、ポケモンとしての親になりたい」
「はぁ?……ポケモンごっこですか?よくわからないのですが、痛かったことは忘れませんからね。
とにかくそろそろ会場に戻りましょうねー。ユウリ先に戻りまーす」
「あっ!くっそー逃げられた……」
するりとオレ様というトレーナーのゲット作戦から逃げ出したユウリ。ちょっぴり怒っていたようにも見えた。
まるでどこかの地方にあるとされる、サファリゾーンみたいだ。
餌を与えれば、逃げないけど捕まえにくい。攻撃すれば怒って捕まえやすくなるけど逃げやすい。
攻撃といってもサファリゾーンでは石だし、オレ様は愛の抱擁(物理)しただけだったが、逃げられたのには変わりない。
また投げよう…。
捕まるまで投げよう。
人間相手に投げただけなので、未使用状態に戻ったユウリ用マスターボールを再び仕舞うと、オレ様もユウリのあとを追うようにして会場へと足を進めた。
***
「遅かったなユウリ君!」
私が会場へ戻ると、笑顔のダンデさんがすぐさま近寄って迎えてくれた。
結構な時間をキバナさんと過ごしていたし、その様子を見るに探していたのかもしれない。このパーティーの主役って、チャンピオンである私だもんね。
抜けた時間が長すぎたかも。悪いことしちゃったなぁ。
「すみません!抜けてた時に何かありましたか?」
「いや、何もなかったよ。ただ、ホテルの中で迷ってしまったのかと心配したんだぜ!」
それはアンタだけだよ。と周りから小さく聞こえた気がする。
うーん、ダンデさんは迷子属性だからなあ。
「キバナはどうした。休憩ついでに迎えに行くと言っていたよな」
「あー……もうすぐ来ると思いますよ」
「そうか!」
快活に笑うダンデさんの姿は相変わらず眩しい。
ガラルの頂点からこの太陽のような人を奪った私を、どれだけの人が本心から受け入れてくれているだろう。
これから先、ガラルを背負うにふさわしいチャンピオンになれるのか、まったく自信がない。キバナさんは自信持てっていってくれたけど……でも……。
あ、今はその話じゃなかったんだった。
「あの、ダンデさん」
「うん?」
「困ったことがあればいつでも頼りなさいって言ってましたよね」
「早速何か問題があったのか。どうしたんだ?聞くぜ!」
ダンデさんにとってキバナさんは元チャンプとジムリーダーの関係だけじゃない。プライベートでも友人同士だし、私とホップの関係性と似ているところがある。
告げ口するのは少しだけ気が引けたけど、さっきのはあまりうれしくなかったし。
何より、ボールをぶつけられた頭には小さくたんこぶができた気がする。まだ痛い。
「あの……キバナさんについて困ってる場合はどうしたらいいです?キバナさんが私をいじめてくるんです」
「いじめ……?あのキバナがユウリ君をか?」
ダンデさんは信じられないと言いたげな目で見てきたけど、ことの経緯やマスターボールを何度も投げられたことを詳しく話したらハッとしてからその目の色が変わった。
ダンデさんは人の感情の機微に疎いと思われがちだが、実際は違う。
でなくては10年もチャンピオンをやれるわけがない。
トレーナーの目からその作戦を読み取れるほどには、人の感情の変化に敏感だ。
だからか、キバナさんが私をいじめてきたその理由に気が付いたようだった。
聞いても、決して教えてはくれなかったけれど。
でも、会場に遅れて入って来たキバナさんに、怒り心頭で突撃していた。
まるでバッフロンの突進みたいだった。
「キバナァーーーーー!!
それ以降のダンデさんは、キバナさんが私にちょっかい出してるところを目撃すると、警備会社でもあるマクロコスモス・コンストラクションもびっくりのセ●ム具合で阻止してくるようになった。
その言葉も聞こえていなかったオレ様は、片手をポケットに突っ込んでとあるボールを探した。
……あった。いつもの手持ちポケモンのボールではなく、お守りがわりにと持ち歩いている『M』の文字が装飾された特別なボール。
オレ様が構えたそれに見覚えあったか、ユウリの動きが止まる。
「マスターボール!?
なんでそんなものキバナさんが持ってるんです?いえ、持っているのはともかくとして、なぜ構えて……。
はっ!私からは見えてないけど、ここに珍しいポケモンとか、幻のポケモンがいるんですね!?
キバナさんが気にしてるって事はもしかしてレシラムとか!!?」
なんでそうなる。それ違う地方のポケモンだろ。ここに来てたとして、あんなでかい図体見えないってことはないぞ。
まったく……ユウリはどこまでポケモンバカなんだろうな。
そういうところも好きだぜ。
原寸サイズ大きくしたマスターボールを、ユウリの頬へとぐい。と押し付ける。
これでゲットできるはずだが、おかしいな。作動しない。
人間にはもっと深く密着させないとだめか?
「え?え??」
ぐりぐり。
ボールがユウリの頬へとめり込む。ユウリの頬袋にはこんなに容量があるのか。
ってことはねずみポケモンのようにきのみはたくさん入るな。オレ様のもなんとか……いや、それも成長してからだな。
「んむーーー!、もー!何するんですか」
腕でめいっぱいオレ様を押し、隙間をつくってオレ様の抱擁から逃れるユウリ。
去ってしまったあたたかなぬくもりが名残惜しいが、またあとで堪能すれば問題ない。ゲットしたら親はオレ様だ!
握っていたマスターボールをスロー!ベシィッ!
それは放物線を描くこともなく、ユウリの頭へと勢いよくぶつかった。
「いったーい!ちょ、やめてください!
ボールはポケモンに投げてくださいよっ!キバナさんまだ酔ってた!?それともご乱心!?」
このポケモンまだ捕まらないな。
跳ね返ってオレ様の手元に戻って来たボールを再び投げつける。
剛速球がポケモ……ユウリの頭に思い切り当たった。
「私何かキバナさんにしました!?痛いですって!
ボールって硬いから意外と痛いんですよ!?」
涙目のユウリを見て、彼女がポケモンに見えてしまうだけで普通に人間なことを思いだした。
「ユウリの、ポケモンとしての親になりたい」
「はぁ?……ポケモンごっこですか?よくわからないのですが、痛かったことは忘れませんからね。
とにかくそろそろ会場に戻りましょうねー。ユウリ先に戻りまーす」
「あっ!くっそー逃げられた……」
するりとオレ様というトレーナーのゲット作戦から逃げ出したユウリ。ちょっぴり怒っていたようにも見えた。
まるでどこかの地方にあるとされる、サファリゾーンみたいだ。
餌を与えれば、逃げないけど捕まえにくい。攻撃すれば怒って捕まえやすくなるけど逃げやすい。
攻撃といってもサファリゾーンでは石だし、オレ様は愛の抱擁(物理)しただけだったが、逃げられたのには変わりない。
また投げよう…。
捕まるまで投げよう。
人間相手に投げただけなので、未使用状態に戻ったユウリ用マスターボールを再び仕舞うと、オレ様もユウリのあとを追うようにして会場へと足を進めた。
***
「遅かったなユウリ君!」
私が会場へ戻ると、笑顔のダンデさんがすぐさま近寄って迎えてくれた。
結構な時間をキバナさんと過ごしていたし、その様子を見るに探していたのかもしれない。このパーティーの主役って、チャンピオンである私だもんね。
抜けた時間が長すぎたかも。悪いことしちゃったなぁ。
「すみません!抜けてた時に何かありましたか?」
「いや、何もなかったよ。ただ、ホテルの中で迷ってしまったのかと心配したんだぜ!」
それはアンタだけだよ。と周りから小さく聞こえた気がする。
うーん、ダンデさんは迷子属性だからなあ。
「キバナはどうした。休憩ついでに迎えに行くと言っていたよな」
「あー……もうすぐ来ると思いますよ」
「そうか!」
快活に笑うダンデさんの姿は相変わらず眩しい。
ガラルの頂点からこの太陽のような人を奪った私を、どれだけの人が本心から受け入れてくれているだろう。
これから先、ガラルを背負うにふさわしいチャンピオンになれるのか、まったく自信がない。キバナさんは自信持てっていってくれたけど……でも……。
あ、今はその話じゃなかったんだった。
「あの、ダンデさん」
「うん?」
「困ったことがあればいつでも頼りなさいって言ってましたよね」
「早速何か問題があったのか。どうしたんだ?聞くぜ!」
ダンデさんにとってキバナさんは元チャンプとジムリーダーの関係だけじゃない。プライベートでも友人同士だし、私とホップの関係性と似ているところがある。
告げ口するのは少しだけ気が引けたけど、さっきのはあまりうれしくなかったし。
何より、ボールをぶつけられた頭には小さくたんこぶができた気がする。まだ痛い。
「あの……キバナさんについて困ってる場合はどうしたらいいです?キバナさんが私をいじめてくるんです」
「いじめ……?あのキバナがユウリ君をか?」
ダンデさんは信じられないと言いたげな目で見てきたけど、ことの経緯やマスターボールを何度も投げられたことを詳しく話したらハッとしてからその目の色が変わった。
ダンデさんは人の感情の機微に疎いと思われがちだが、実際は違う。
でなくては10年もチャンピオンをやれるわけがない。
トレーナーの目からその作戦を読み取れるほどには、人の感情の変化に敏感だ。
だからか、キバナさんが私をいじめてきたその理由に気が付いたようだった。
聞いても、決して教えてはくれなかったけれど。
でも、会場に遅れて入って来たキバナさんに、怒り心頭で突撃していた。
まるでバッフロンの突進みたいだった。
「キバナァーーーーー!!
それ以降のダンデさんは、キバナさんが私にちょっかい出してるところを目撃すると、警備会社でもあるマクロコスモス・コンストラクションもびっくりのセ●ム具合で阻止してくるようになった。